2014年3月2日日曜日

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (4)

また、銀杏で蕎麦食べてきました。
(cf. http://researcher-station.blogspot.jp/2013/09/diaziridinone-old-and-new-reagent.html)

-お通し (315 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
胡麻豆腐。あまり胡麻胡麻しておらず、あっさりした味で好感が持てる味。山葵の香味がとても良いアクセントになっている。

-新政 No. 6-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
微弱なmilky note。口に含むと甘みが広がる、そして、この甘みはクセになる甘みで、綺麗にfinishしてゆく。微弱な酸味も伴う。
-DATA-
分類(Grade)/
原料米(Rice variety used)/ 吟の精、酒こまち、美山錦
精米歩合(Rice polishing ratio)/ 50%
アルコール分(Percentage of Alcohol)/ -%
日本酒度(Sake meter value)/
酸度(Acidity)/
アミノ酸度(Amino acid degree)/
酵母(Yeast)/ 六号酵母
杜氏(Toji)/
仕込み水(Water)/
-COMPANY-
新政酒造(株)
http://www.aramasa.jp/top.html


-淡雪 (1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ぶっかけのとろろ蕎麦です。まず、いきなる柚子の良い香りがプーンと漂ってくる(とろろの上に柚子の小さい粒が浮いている)。ツユはpale yellow。白しょうゆチックな色で、まろやかに塩味が効いていて良い。少し細めの蕎麦はエッジが立っていて、ピシッと締まっていてとても旨い。とろろはフワフワで弾力に富んでいてとても良い感じ。とろろの中には卵黄が仕込んであって、これがまた心憎い。総じて、とても旨い。料理として洗練されていて完成されている。

-ソレイユ甲州-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
マリアージュ的に淡雪とはシナジーがないが、喧嘩もしない。軽くふくよかで、基本、スッキリ系で普通に旨い。個人的にはグレイスの方が好き。
-COMPANY-
旭洋酒(有)
http://www5e.biglobe.ne.jp/~soleilwn/


閑話休題


[1,4-reduction]のメモの続きです。

1,4-還元に有効な試薬としてStryker's reagent ([(Ph3P)CuH]6)がChem-Stationや「たゆたえども沈まず」さん、「ほろ酔い化学者のブログ」さんなどで紹介されています。


9 examples, 82-96% Yield
J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 291-293.

使用可能な溶媒はベンゼン、トルエン、THF。α,β-不飽和ケトン、エステルの基質一般性は良好そうです。塩基が触媒するアルドール縮合にセンシティブな基質を用いると不安定な中間体が分解し、副生成物がたくさんできるらしいですが、水存在下で反応を行うことでこの副反応を完全に抑制できます(量論量の水で飽和させたベンゼンで実施。2-20 eq.の範囲で収率、選択性に変化なし)。また、生成する銅エノレートをTMSClで処理すれば、シリルエノールエーテルへと誘導できます(2 examples, 95% Yield)。

α,β-不飽和アルデヒドの還元は少し難しいようですが、反応条件を適切に選択すれば1,4-還元体と、カルボニルも還元されたものとをつくり分けることができます。

A: 0.32 eq. [(Ph3P)CuH]6, 2.5 eq. TBDMSCl, PhH, rt.
B: 0.40 eq. [(Ph3P)CuH]6, 20 eq. H2O, PhH, rt.
C: same as B, except THF solvent
D: 0.40 eq. [(Ph3P)CuH]6, 3.0 eq. TMSCl. PhH, rt.
E: 0.5 eq. [(Ph3P)CuH]6, 3.5 eq. TMSCl. PhH, rt.
F: TBAF, excess pH 7 phosphate buffer, THF, rt.
G: 10% HCl aq., THF, rt.
H: 5% AcOH in 7:1 THF/H2O

Tetrahedron, 1989, 30, 5677-5680.


さらに、Stryker's reagentは触媒反応にも対応可能で、複数の報告例があります。

まず、水素を使ったHeterolytic hydrogen activation-Catalytic hydride reduction



J.Am. Chem. Soc., 1989, 111, 8818-8823.

反応条件の条件の一般化は難しく、水素圧、トリフェニルホスフィンの量、反応時間の調整が基質毎に必要となります。


それからヒドリド源にシランを使った触媒反応
Tetrahedron, 2000, 56, 2779-2788.

シリルエノールエーテルが生成します。これをTBAFで処理すれば対応する1,4-還元体である飽和カルボニル化合物が得られ、Lewis酸存在下で求電子剤を作用させることでconjugate reduction / α-alkylationのタンデム反応(11 examples, 68-89%)が可能となります。

シランはPhMe2SiH, Me2HSiOSiHMe2, PhSiH3, PMHS (polymethylhydrosiloxane)が使用可能その活性は

PhMe2SiH < Me2HSiOSiHMe2 < PMHS


PhMe2SiHPhSiH3 <より安くて安定。で、Me2HSiOSiHMe2, PMHSはPhSiH3より安くて高活性(Et3SiHは活性を示さない)


Stryker類似試薬の報告↓


Tetrahedron, 1999, 55, 4573-4582.

CuF(PPh3)3•2EtOH (市販されてる)はstoichiometric version (6 substrates, 52-98%)で、CuCl/PPh3/TBAFはcatalytic version (8 substrates, 54-94%)です。立体的に混んでいる基質だと原料回収に終わります。ケトン、エステルの1,4-還元に有効で、アルデヒドだとcomplex mixtureを与えます。


比較的最近報告された改良法

14 examples, 42-96%
J. Org. Chem., 2009, 74, 7598-7601.

P(OiPr)3は安価で工業的に利用可能であり、(i
PrO)3PCuH, [(iPrO)3P]2CuH, [(iPrO)3P]2(CuH)3といった結晶性の安定な銅ヒドリド種を形成することが知られているらしです(Zh. Obshch. Khim., 1971, 41, 2103-2104.; Zh. Obshch. Khim., 1967, 37, 2364-2365.)。

ちなみに。R1=Me, R2=H, R3=Phのとき、ホスフィンが

P(OiPr)3→ 1,4-reduction: 76%, 1,2-reduction: 19%
PPh3→ 1,4-reduction: 61%, 1,2-reduction: 38%

なにります。

もともとこの改良法はAmaninol Aの合成中間体の1,4-還元のために開発された手法です↓

Org. Lett., 2007, 9, 5043-5045.

上記基質は極めてエピマー化しやすく、Stryker試薬も含めて既存の方法では上手く目的物を得ることができなかったそうです。で、ホスフィンをスクリーニングした結果、P(OiPr)3がベスト・プラクティスでした。


あと、e-EROSとかに書いてあったStryker's reagentの性質ですが↓

水に安定
不活性雰囲気下であれば、室温で長期間保存可能
秤量時、空気中での取り扱いオッケー
溶液状態で酸素に極めてセンシティブ(厳格な脱気が必要)
CH2Cl2, CHCl3とは反応する

こんな感じです。

ところで、Stryker's reagentは市販されているのですが、市販品はその品質に大きな差異があるようです。Lipshutzらは市販二サンプルとStryker protpcolに従って調製したサンプルの活性と1H NMRのスペクトル・データを比較しています(Tetrahedron2000, 56, 2779-2788.)。市販サンプルのうちの一つは全く活性を示さず(活性なヒドリドがない)、もう一つのサンプルはちょっとだけしか活性を示さなかった(一応、Stryker試薬のシグナルはある)そうです。それに対して、調製したサンプル(ほぼpure)はちゃんと活性を示したそうです。


試薬が市販されていて、触媒化できて、経済的なトルエン溶媒中で反応ができるというところに魅力を感じますが、"市販品の品質"と"溶液状態で酸素に極めてセンシティブ(厳格な脱気が必要)"っていう性質が非常に気になります、どんだけ脱気すればいいのかとかが。


まあ、ちょっと気難しそうな試薬なのかなと思いました。

まだ[1,4-reduction]のメモは続く.....

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