若干ふざけたタイトルと感じるかもしれませんが、はっきり言って良書と思います。著者の一人のスティーブン・D・レヴィットはジョン・ベイツ・クラーク・メダルを受賞した気鋭の経済学者らしいです。
で、レヴィットが経済学というか、人々の行動を支配し規定するもの、その結果具現化される世界の有様の根底にある最も主要なものは、
であると言います。
<以下引用>
インセンティブは現代の日常の礎である。そして、インセンティブを理解することが-おうおうにして壊してしまうことにもなるけれど-凶悪犯罪からスポーツの八百長、出会い系サイトまで、どんな問題もほとんど解決できる鍵になる。
<引用終了>
コンキチも同感ですね。正と負のインセンティブ(飴とムチ)の与奪こそが、人の行動を制御すると常々感じています。
で、本書で最もコンキチの心に残った事例は、保育園の事例でしたね↓
親が午後4時に子供を迎えにこなければならないという決まりの保育園があり、親達はよく遅れてくると言う。で、10分以上遅れた場合は、その親には毎回3ドル(子供1人あたり)の罰金をとることにしたところ、
週に8件の遅刻が20件に増えた
そうです。
それからもう1例。
献血をした人に小額の奨励金を払ったところ、献血は減る傾向がある。
さらにもう1例。
売春と戦っているアメリカの街には、売春した男と売春婦の写真をWebで晒していることろがあるという。
最後にもう1例。
レヴィットの娘(当時2歳)がおまるを使わなくなった時、おまるでおしっこをしたらチョコレートをあげることにしたといいます。最初の2、3日は思惑は達せられミッション・コンプリートの様相を呈してたそうです。がしかし、4日目になると、娘は数滴おしっこしてはチョコをせしめ。またすぐにおしっこしたいといっては数的しかおしっこをしなかったと言います。
さて、インセンティブには下に示す4つのインセンティブがあると言います。
1) 経済的インセンティブ
2) 社会的インセンティブ
3) 道徳的インセンティブ
4) インセンティブの暗黒面(ダークサイド)
保育園の例は、罰金3ドルが安すぎるというプライシングの問題と、道徳的インセンティブから経済的インセンティブへのインセンティブの転移が起こったことが、現実の結果を誘起した例。
献血の例も、道徳的インセンティブから経済的インセンティブへのインセンティブの転移の例。但し、プライシングがより高額になれば、インセンティブの暗黒面が発現して輸血ビジネスのブラックマーケットが生成するかもしれない(本書でも言及している)。
売春の例は、負のインセンティブを罰金という経済的インセンティブから「晒し者」の刑という社会的インセンティブに移転した例で、Web上で晒された写真が家族や知人に見つかったら超はずかしいという恐怖に訴えた抑止策の例。
そして、レヴィットの娘の例は、インセンティブの暗黒面(ダークサイド)の発現の例。
ですね。
人は常に日々の生活を送る上で裁定取引を行っていると思います。経済性、道徳、社会性を考慮して最も自分に有利な選択肢は何か? とうことを考慮して行動に移すわけです。個々人の(経済性、道徳、社会性に対する)価値観は、必ずしも一致する訳ではないので、一見すると「なんでそんなアホなことするの?」という疑義が発生するかもしれませんが、当人にとっては、インセンティブのトレード・オフをはかりながら(一般的にはそうではにかもしれないけれど)それなりの合理的な判断をした結果なんだろうと思います。
かなりまとまりがなくなってきましたが、要は
こそが現世で人々の行動を規制するの最も重要な事柄なのではないかなということです。
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