2019年12月29日日曜日

もっと、交換反応 (6):リン酸カリ(K3PO4)って神なの?

(増税前に)神楽坂にチャーハンを食べに行ったときのメモです↓

-龍朋 memo-

新宿区矢来町123 第一矢来ビルB1

-菊姫 純米酒 (700 JPY)-
-REVIEW-
コップになみなみと注いでくれるのが嬉しい。
温度は雪冷え(かな)。
普通に美味しいです。








-チャーハン (770 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
しっとり系のチャーハン。最初に香ってくるのは、僅かに焦げた香ばしいかおり。次いで、ふわっと漂う玉子のいい匂い。具材は、葱、刻みチャーシュー(大きさはけっこう不揃い)と極めてシンプル。
そして、刻みチャーシューが抜群に旨い!ウェット感とレア感たっぷりでジューシーな仕上がり。味付けは少し塩気強め(ちょっとしょっぱい)。
提供時、ご飯の水分多めで、少し置いておくと水気が落ち着いてきて、いい感じに食感が良くなる。
それから、セットのスープが美味。(多分)鶏ガラのお出汁リッチでマイルドなテイストが素敵。


あと、別アングルから撮ったお店の写真がこちら↓


多分、ラーメンのことだと思うんだけど、なぜか、

Lahmen

の表示(不思議です)。英語?ドイツ語?オリジナルの造語?


それから、もう一軒↓

-創作小料理とぱらぱらチャーハンの店 幸せのはし memo-

新宿区天神町22-5

-ウィスキー (ロック) (490 JPY)-
-REVIEW-
自信ないけど、銘柄は「角」でしょうか?









-お通し (150 JPY)-
-RATING- ★★★
-REVIEW-
煮玉子のお通し。
オイリーな中華サラダちっくなテイストを纏っていて、美味しい。






-幸せのはし特製チャーハン ハーフ (1人前) (750 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ご飯のパラパラ感が最高に心地いい!パラパラ系チャーハンにお手本のような食感。
そして、玉子の良い香りがふんわりと口腔内に広がっていく。
具材は、刻み葱、レタス、チャーシューっぽい豚肉、海老。
海老はプリッとしていていい感じだが、豚肉は少しパサついている。
味付けは少し控えめの濃さで、大人しいめ。それでも、スパイシーな香味はしっかり。そして、やはり米粒のキックは素晴らしい。


閑話休題


これまで交換反応系の話を幾つかメモしてきました↓(最近の枕詞)

(1) ZnTAC24 : Environmentally Friendly and Unique Transesterification
(2) もっと、交換反応 : NaOMe最強伝説
(3) もっと、交換反応 (2) : アセタールをつけたり、とったり
(4) またまた交換反応:今度はオニウム塩が主役
そして今回もまた、しつこく交換反応のメモを書きます。
読んだ文献はこちら↓

Transition-Metal-Free Esterification of Amides via Selective N-C Cleavage under Mild Conditions
Org. Lett., 2018, 20, 5622-5625.

Szostak等の報告で、(しつこく)アミド-エステル交換反応のお話です。

アミドからエステルへの変換が難しいのは、アミド結合が共鳴にって強固なものになっているからです(15-20 kcal/mol, nN→π*CO conjugation)。アミド結合を開裂させるための反応条件下では、エステルの方がより開裂しやすいため、アミドからエステルへの直接的な変換は難しく、成功例はそう多くはありません。そして、著者等は数少ない成功例として以下の研究を挙げています↓(過去のメモと重複します)

Previous work:

(A) Ni- and Co-catalyzed esterification of amides


Garg et. al., Nature, 2015, 524, 79.; Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 15129.; ACS Catal., 2017, 7, 1413.
Danoun et. al., Chem. Eur. J., 2017, 23, 10043.

(B) Fluoride-catalyzed method


Chem. Eur. J., 2018, 24, 3444.; ACS Catal., 2018, 8, 203,; Acc. Chem. Res., 2018, 51, 1185.
(see http://researcher-station.blogspot.com/2019/12/5.html)

これらの先行研究の何れもが、アミド周りの立体を嵩高してアミド結合を捩り、その共役平面性を崩してやることでアミド結合の強度を弱める(活性化)ことを戦略に組み込んでいます。

で、著者等もこの戦略(amide bond destabilization platform)を踏襲して、次のような反応を開発しました↓

This work

33 examples, 71-97% yield

っていうか、アミドが捩れて活性化されてるとはいえ、リン酸カリ入れただけで、こんなマイルドな条件(室温)で、アミドがエルテルに変わっちゃうわけ?
これまでの研究で、遷移金属使ってたのは何だったわけ?

超絶信じがたいぜ?
オレが浅学なだけ?

前回のメモで、CsFでアミド-エステル交換が進行するのが凄いって書いたけど、今回のはそれ以上に神じゃね?

参考までに、
Z = Boc, R1 = Ph, R2 = Phで、RE = 7.2 kcal/mol, τ = 29.1º, xN = 8.4º
Z = Ts, R1 = Ph, R2 = Phで、RE = 9.7 kcal/mol, τ = 18.8º, xN = 18.9º
で、けっこう捩れてます。

それから、著者らは塩基のスクリーニングをしていて、K2CO3, KF, KOH, Na2CO3, Cs2CO3 はless effectiveです(Cs2CO3, K2CO3はそこそこ反応が進行する)。

溶媒効果もそこそこあって、

THF > CH3CN > DMF >> acetone  CH2Cl2

です。

塩基は必須で、K3PO4が1.2 eq.では中程度の収率で、最適条件では3.0 eq.投入しています。

それでは、基質一般性をみてみましょう↓


アミドの置換基がBoc, Phで活性化された基質では、種々のタイプ(電子状態、立体障害、複素環、)で中程度から高収率で反応が進行します(電子不足はちょっと収率低め?)。


Ts, Meで活性化されたアミドでもイケイケです。


アミド周りの活性化基は多様なタイプが適用可能です。そして、電子不足な4-ニトロフェノールとの反応が進行するのは凄い(反応温度110˚Cだけど)。


チオエステル合成もイケイケ。


著者ら曰く、late-stage (盛り過ぎ)でもイケイケ。多少、複雑な基質でもいい感じです。


競合反応の結果は予想(想定)通り。選択的エステル化が可能です。あと、アミドの活性化がBoc, Meでもオッケーなのも好感触です。

真剣、リン酸カリ(K3PO4)って、神ですか?

機会があったら、是非、試してみたい反応と思いました。

以上、国内二流大出のテクニシャン(研究補助員)の、"神"交換反応メモでした。

炒飯のお供に↓

4 件のコメント:

  1. Bocアミドを切る手法は昔から報告がありますがこの辺とはどう違うんでしょう?
    (J. Org. Chem. 1983, 48, 2424とか)

    返信削除
  2. JOCの交換反応はメチルエステルの例だけで、MeOH中、NaOMe (1.1 eq.)を使用しています。
    アルコールの使用量が化学両論量に近いことと、塩基が弱めなのがウリなんだと思います。貴重なアルコールが使用できることに加えて、塩基性条件下で不安定な基質にもそこそこ適用できるかと。

    返信削除
  3. 要はBoc化されたアミドが切れるって言うのは昔からたくさん報告例がある珍しくもなんともない反応なんですよ。
    酸性度の高いフェノールやチオールのような求核剤なら弱い塩基でも反応は進行するだろうってのは容易に想像が付きます。
    (一般的な脂肪族アルコールはこの条件ではおそらくキツイでしょう。)


    アミドの切断はBocの有無でその難度・価値が天と地ほどの差があると思います。
    GargのNiを使う反応はBocがついてなくてもアミドが切れるので、Natureに載るのもうなずけますね。

    返信削除
  4. コメントどうもです。ボクが浅学なだけだったようですね。
    まぁ、ベンジルアルコールで反応が速いので、それなりに使い道があるんだろうと思います。
    それから、Gargのケミストリーは純粋に興味深いと思います。
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi/74/8/74_824/_pdf/-char/ja

    返信削除