前回のブログの続きです。
N-Benzyl-4-ethoxycarbonylpiperidineの部分還元に、Red-Al (VITRIDE)をピロリジンで修飾したRed-ALPを用いると、オーバーリダクションを抑制することができますが(対応するアルコールは蒸留で分離困難)、それ以外にも副生成物があります↓
上の絵の真ん中にあるアミン体もそこそこ生成し、しかも(蒸留による)分離が困難ということで、次なる検討の焦点は、アミン体の抑制に移っていきます。
さて、著者らが検討を進めて行くと、用いるRed-Alのロットによって、アミン体の生成量が変動(3~26%)することが明らかになりました。
そこで、Red-AlのNaコンテントをイオンクロマトで測定したところ、Naコンテントが理論量より少ないことが分かりました。
ちなみにRed-Alはこんな風に製造されているそうで↓(はじめて知った)
還元力のみを指標にしてRed-Alを調製すると、Naコンテントの少ない試薬ができる可能性が示唆されました。すなわち、少量の3価アルミニウムハイドライド(CH3OCH2CH2OAlH2)の混入です。で、著者等は3価アルミニウムハイドライドがアミン体生成に関与しているのではないかという仮説を立てました。
ということで次は、この仮説の検証です。つまり、NaOCH2CH2OCH3を添加すれば、3価アルミニウムハイドライドが4価のRed-Alに変わり、アミン体の生成が抑制されるであろうということです。結果、アミン体の生成が完全に抑制されました。じゃあもっと汎用性の高い(安い)塩基じゃどう?という感じで検討を続けたところ、NaOt-Bu, KOt-Bu, PhONaでアミン体の生成が抑制されました。ちなみに、Et3Nだと抑制効果はナッシングでした(これがアルカリ金属アルコキシドがアルミニウムハイドライドを3価→4価に変換させるという仮説を裏付ける証左であると著者等は考えました)。
で、以上の検討結果を踏まえて反応を最適化したにがこれ↓
こうして、プロセス化学の肝である、ある一つのプロセスに対する「深化」を積み重ねてベストプラクティスが確立されましたが、
何故アミン体が副生し、KTBの添加によりその生成が抑制されるかを明らかにしなければ反応を完全にコントロールできたとは言えない
ということで著者らの検討(反応機構の考察)はまだ続きます。
このRed-ALPブログもまだ続きます。
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2008年3月22日土曜日
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