2019年5月19日日曜日

アンモニアいらずの超Birch還元

上野は御徒町駅前通りにあるまぐろ人系列の立ち飲み海鮮居酒屋に行ったときのメモです↓

-ふぶき memo-

-スルメの「イカワタルイベ」 (190 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ルイベならではの"ヒヤッ"っとする感覚が心地良い。薄く軟らかくプリプリの食感と、適度な魚くささと、溢れ迸るfresh感じが最高!

-ブラック・ニッカウィスキー (ハイボール) (330 JPY)-

-あん肝ポン酢 (290 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ほどよい硬さと口の中で崩れる感覚、それとネットリ感がいい感じ。
oily & fattyで滋味深い味。

-だし巻オムレツ (290 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
鉄板に薄く伸ばして、焼きながら畳んでいく。
薄く、ふわっっとしていて素敵な食感で、控えめな味付けで美味しい。
大根おろしに醤油を垂らして一緒にいただくのも良い。

-本鮪の鉄火丼 (500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ご飯は冷ました酢飯。お酢の柔らかい香りがふんわり薫る。ご飯の上に中落ちが敷かれ、さらに赤身の切り身と沢庵が載る。そして、薬味は本山葵。
中落ちはjuicyな脂ふんだんでとても甘く、トロッとした食感で瑞々しい。
厚めに切り出された赤身は心地良い軟らかさと歯触り。少し脂が回っているようで甘い。
そして、鮪がご飯(酢飯)によく合う。
沢庵はボクの好みの味にしっかり漬かっている。
ワンコインで食べれるこの丼は喰っといた方がいい!


閑話休題


遅れ馳せながら、2018年の注目論文の一つをメモしてみたいと思います↓

A Practical and Chemoselective Ammonia-Free Birch Reduction
Org. Lett., 2018, 20, 3439-3442.

アンモニア・フリーの室温Birch還元のお話です。
有機化学論文研究所さん(https://moro-chemistry.org/archives/1584)や、たゆたえども沈まずさん(http://orgchemical.seesaa.net/article/463139924.html)でとっくの昔に紹介されていますが、あえて自分用にメモしてみたいと思います(基本、このブログはボクの個人的な備忘録です)。

Birch還元は70年も前に開発された反応ですが、いまなお液体アンモニア中にアルカリ金属を溶解して反応を行うのが主流のようです。液体アンモニアの使用、選択性の低さ、面倒な実験捜査が強烈なデメリットです(Classic Birch Reduction)。

Classic Birch Reduction

液体アンモニアの使用を回避する方法として、低分子量のアミンを使うBenkeser Reductionが開発されました。しかしながら、オーバーリダクションの副生が問題だといいます。

Benkeser Reduction



J. Am. Chem. Soc., 1955, 77, 3230.

Birch還元様のトランスフォーメーションとしては芳香環の接触還元がありますが、概して飽和度が高くなりがちで、生成物の予測は困難だといいます。

最近、古典的なBirch還元に代わるアンモニア・フリーのSET還元による脱芳香族化が報告されています↓

11 examples, modest to high yield
J. Org. Chem., 2009, 74, 5790.


Tetrahedron Lett., 2009, 50, 5463.

Na2K-SG(I)とNa-SG(I)はシリカゲルナノ構造多孔質酸化物中にカプセル化したアルカリ金属を封入したもので、自然発火性がないさらさらした粉末で、取り扱いが簡単です(https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01SRM11-1020.html)。

J. Org. Chem., 2014, 79, 2522.

J. Org. Chem., 2006, 71, 1576.

しかしながら、これらの反応はベンゼンや電子リッチなベンゾノイドの還元は難しいようです。

ということで、アンモニア・フリー、マイルドな反応条件、高選択性を具現化した実用的なBirch還元のニーズはあるわけで、それを実現したのがThis Workです。

This Work

まず、ナトリウム源として市販かつbench-stableなSodium Dispersion (SD, 金属ナトリウム分散体)を使用することでハンドリングが容易になります。ちなみに、Sodium Dispersionは危険物第4類第3石油類非水溶性液体で、液体と同様の取り扱いが可能です(これは凄い!!!)。


そして、アンモニア・フリーのBirch還元の最大のキモはクラウンエーテルを使うことです。クラウンエーテルやクリプタントが有機溶媒中でアルカリ金属の溶解性を改善することが報告されていて(Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1979, 18, 587.; Science, 1990, 247, 663.; Science, 2003, 301, 607.; Science, 2011, 333, 49.)、そいつを一丁Birch還元に使ってみようかというのが本報です。
Sodium Dispersionに15-crown-5 (Naと一番フィットするサイズのクラウンエーテル)を作用させると、ナトリウムの包接錯体と溶媒和電子からなるElectride (電子化物)を形成、結果還元モード(電子移動)が外圏電子移動となり、Birch還元が実現するということなのかなと思います。

実際、15-crown-5の有無で選択性が大きく変化します。↓

3-phenyl-1-(1-pyrrolidinyl)-1-propanoneの還元で、クラウンエーテル無しだと芳香環は還元されずに三級アミドが還元されるのに対して、クラウンエーテル有りだと芳香環のみが還元されます。さらに興味深いことに、Classic Birch Reduction (Na/NH3)だと通常還元されてしまう三級アミドがクラウンエーテル(15-crown-5)有りの条件では影響を受けません。素人なのでよく分かんないんだけど、Na/15-crown-5の方がNa/NH3よりも外圏電子移動性が高いってことなんでしょうか?
兎にも角にも、手頃な反応条件で選択性もでるのは喜ばしい限りです。

因みにウィキペディア情報によると、詳しく研究された最初の電子化物は、アルカリ金属の液体アンモニア溶液だったといいます(https://ja.wikipedia.org/wiki/電子化物)。

以下、本報の"アンモニアいらずの超Birch還元"の特徴です↓

(1) polyconjugated aromatic compound

共役系の連なった化合物は、通常のBirch還元だと還元され過ぎちゃった副生成物との混合物になるようです。

(2) 脂肪族三級アミド
Conditions: Na/i-PrOH/15-crown-5 (3-5 eq.), THF, 0˚C.

上述した3-phenyl-1-(1-pyrrolidinyl)-1-propanoneと同様に、通常のBirch還元では還元されてしまう脂肪族三級アミドが残ります。かなりレアな例のようです。

(3) 脱ベンジルもオッケー


(3) 選択性が出そう

OHがフリーのフェノールやNHがフリーなインドールは還元されません。また、ベンゾフランは還元されるけど、フランは還元されないです。


(4) limitation

とりあえず、1-phenylbutan-1-one, methyl benzoate, N,N-dimethylbenzamideは複雑な副生成物が生成して低収率です。


ボクはやったことないんですけど、古典的Birch還元って、話を聞くと面倒くさそうだし、反応条件的にも猛烈にやりたくないじゃないですか?でも、本報で報告されている"アンモニアいらずの超Birch還元"だったら反応を仕込んでみたい気持ちでいっぱいになりました。しかも、基本、基質一般性、位置選択性、化学選択性がClasic Birchに比べて大きく改善しています。

以上、今後この新Birch還元の使用例をウォッチングしていきないなと思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


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