2019年5月1日水曜日

Triazox : Bench-Stable Epoxidizing Reagent

ビートたけしの歌に出てくる浅草にある"煮込みしかない鯨屋"こと捕鯨船に行ったときのメモです(煮込みしかないわけじゃないです)。

-牛にこみ (630 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
めっちゃ甘口のとってもマイルドtaste。複数部位が入っている(小腸とかも入っている)。肉の他は豆腐と大根。
よそられた量は少なめ。脂ふんだん(脂の層が上部に浮いているのが確認できる)で、攻撃力がある(胃がもたれる)。胃が強くない人はおかわりはやめておいた方がいい。

-ウィスキーハイボール (550 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
ピックで割った大きめで透明度の高い氷をたっぷりとジョッキに放り込み、水で面取り後、メジャーカップで秤量したウィスキーを放り込み、たっぷりのソーダ水を注ぎ込む。
作り方は職人っぽいけど、出来上がったハイボールはかなり薄い。はっきり言って、コスパ悪い。ウィスキーの銘柄は角だと思う。

-皮と赤肉のミックス (1,600 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
赤肉(赤身)と皮(あぶら)のミックスで、凍った状態で提供される。お店の人からは、「凍ったままでも、少し溶かしてからでもお好みで」と言われる。
赤肉は、凍った状態だと魚感強めで、溶けてくると獣感がup↑する。身も軟らかくなり溶けた方が圧倒的に好み。
皮はまっ白。ちょっと脂くさくて、あぶらに加えて皮もついている。けっこう弾力があり、口の中で次第にゆっくりと溶けていく。最後に皮っぽいところがが口の中に残る。脂くさいので"皮"のみのオーダーは相当ハイブローと思う。皮と赤肉を一緒に食べるとBest Match!
あと、高いね。

-チューハイ (480 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
ハイボールと同様な作業を行いソーダまで注ぎ、最後に梅シロップを加えて完成。そして、梅シロップの色が下層へと沈降していく。トータルとして清涼感のある甘い味。

はっきり言って、大分割高なお店と思いました(浅草観光客プライス?)。ボク的には雰囲気を楽しむ系の店と思いました。

それから、ボクがこの店を訪れたとき、坂本真(俳優)と博報堂の女性社員1人とグーグラー2人(男性と女性)が連れ立って入店してきました。博報堂のお姉さんがアテンドしてたんだけど、やっぱ物見湯山的接待系の店なのかなと思いました(因みにオレ、坂本真(俳優)の隣の席になったから)。


閑話休題


前回のDMT-MMのメモに引き続き、トリアジン系試薬のはなしです。今回はTriazoxです。2018年の注目論文の一つですね↓

An Isolable and Bench-Stable  Based on Triazine : Triazox
Org. Lett., 2018, 20, 2015-2019.
Munetaka Kunishima et al.

ケムステさんで既に詳細に紹介されていますが、敢えてボクもメモしてみます。
https://www.chem-station.com/blog/2018/03/triazox.html

主にエポキシ化のおはなしです。まずは、既存の主だったエポキシ化試薬を概観してみましょう。

entry 1   m-CPBA
ラボ・ユースで真っ先に思い浮かぶのがm-CPBAでしょう(ボク的に工業ユースだったら三菱ガス化学謹製の40%過酢酸)。特徴としては、3-クロロ安息香酸(pKa  3.83)を含有していて、反応後にも3-クロロ安息香酸が生成するので、酸に不安定な化合物を酸化する際には、重曹などのプロトンスカベンジャーを加えて反応を行う必要があります。爆発性。

entry 2   DMDO (Dimethyldioxirane)
中性かつマイルドな条件でエポキシ化できる。酸に不安定なglycal類のエポキシ化に使用される。基本不安定な試薬なので要事調製しなければならず、面倒。

entry 3   Triphenylsilyl hydrogen peroxide
純粋な形で単離できるらしいです(Tetrahedron Lett., 1979, 20, 4337.)。
反応性が低いようで、過剰量(2 eq.)の使用が必要で、反応時間も長時間を要し、1日反応させても中程度の収率(らしいです)。

entry 4   過酸化水素とactivating reagentsの組み合わせいろいろ
activating reagentとしては、ニトリルやカルボジイミドなどがあるようです(J. Org. Chem., 1961, 26, 659.; J. Org. Chem., 1983, 48, 888.; Synlett, 1996, 649.; J. Org. Chem., 1979, 44, 1485.)。
MeOHのような水と混和する溶媒を使用しなければならず、activating reagentに応じて特定のpHに調整しなければいけないようです。


ということで、簡単に使えて(ハンドリングが楽)、bench-stableで、長期保存可能で、マイルドな反応条件を醸し出す試薬が求められているという訳です。

そこで登場したのが国嶋先生が開発したTriazoxです↓


15 substrates, 64-98% yield


(国嶋先生得意(?)の)トリアジンベースの試薬です。

国嶋先生といえば、異彩を放つ孤高の縮合剤であるDMT-MMが超有名ですが、TirAT系のトリアジンベースのアルキル化試薬も開発しています。

Previous work
ref. Tetrahedron Lett., 1999, 40, 5327.; Tetrahedron, 1999, 55, 13159.; Tetrahedron, 2001, 57, 1551.

ref. Org. Lett., 2012, 14, 5026.; Eur. J. Org. Chem., 2015, 7997.; J. Org. Chem., 2015, 80, 11200.; Synthesis, 2013, 45, 2989.; Eur. J. Org. Chem., 2016, 4093.; Eur. J. Org. Chem., 2017, 833.

これらの反応は、より安定なtriazinoneの形成がドライビング・フォースになっているようです。ということで、同様にtriazinone形成をドライビング・フォースとして見込める酸化剤ということで考え出されたのがこちら↓

This work

で、新酸化剤の実際の合成ですが、はじめはDMT-MM同様、CDMTからの合成を試みましたがが、目的物の水溶性の高さと、メトキシ基部位の副反応に悩まされて断念。結果、メトキシ基本をフェニル基に変えることで新酸化剤Triazoxの合成を達成しました。


ここでTriazoxの物性ですが、空気中で安定で、非吸湿性、冷蔵庫中で保管して少なくとも6ヶ月は安定で、結晶水を含みません。分解開始温度は110˚C (m-CPBAは88˚C)、分解熱は213 cal/g (m-CPBAは472 cal/g)です。さらに副生するtriazinoneのpKaは6.88で、反応はほぼ中性条件で実施することが出来ます。
(Supporting InformationにDSC測定の件は"Differential scanning calorimetric (DSC) analysis was performed on Shimadzu DSC-60Plus (heating rate of 10.0 °C/min) under a nitrogen atmosphere."って書いてあっただけなんで、測定が開放系で行われてのか密閉系で行われてのかは分かりません。ついでにパンの材質も分かりませんね。それから、昇温速度粗すぎね?って思います。仮に密閉しないで測定してるとしたら、正味の分解熱はもっと大きいかもです。余談だけど、密閉系でDSC測定するとき、分解して気体が発生するサンプルの測定でサンプル量が多過ぎると、蓋がぶっ飛んで装置が壊れるかもなので注意しましょう。っていうか、想定される気体発生量を勘定して、容器の耐圧の範囲内におさまるようにサンプル量を調整しましょう)。

次にエポキシ化への応用についてですが、著者らはジクロロメタンを最適溶媒のセレクトしていますが、モデル化合物を使った溶媒のスクリーニング結果では、トルエンと醋エチも遜色ないでです。反応速度がちょっと遅いけどアセトニトリルもいけると思います。

基質一般性は高く、酸に不安定な保護基(PMB)や基質(glycal)でもいい収率を叩き出しています。過酸によるエポキシ化と同様に、電子リッチなアルケンで反応が速く、電子不足オレフィンで反応性が遅いです。因みに、著者らはglycalのエポキシ化を"worth noting"と述べています↓

それから、TriazoxはBaeyer-Villiger酸化にも使えます↓


ベンゾフェノンでは反応が殆ど進行せず、マイルドな反応性のようです(選択性が出るね)。

ボク的には使い勝手の良さそうな酸化剤と思うんですけど、どうですか?ケミカルカンパニーの皆さん、この試薬、造っていただけませんか?

TCIくらいから市販されるのを心待ちにする二流大出のテクニシャン(研究補助員)の試薬メモでした。


0 件のコメント:

コメントを投稿