という本を読みました。著者は、リチャード・フロリダ。今年の春のダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューで彼の特集やってたと思います。
一応、コンキチは企業で研究員をやってるので、クリエイティブというタームに興味をそそられ(研究員だからといって、必ずしも仕事がクリエイティブなわけではありませんが...)、この書を手に取ってみることにしました(ちなみに市立図書館で借りました)。
で、氏の主張するところは、昨今、世界では工業化社会からクリエイティブ社会へとパラダイム・シフトしていると言います。また、クリエイティブ経済の発展には、三つのT(テクノロジジー、タレント、トレランス)が重要であると主張しています。その中でも、「トレランス」の重要性を重点的に取り扱っています(新しい主張だからかな)。そして、クリエイティブ経済(頭脳労働がベースとなる経済)下では「都市」が重要なユニットになると言います。
平たく言えば、あらゆる人種、思想、民族、あとゲイに寛容な都市は、才能ある人材(クリエイティブ人材)を引きつける(クリエイティブ人材を排除しない)からだそうです(多分)。で、国策としてクリエイティブ人材を引きつける都市を多く造りだすことが、その国の発展につながると主張しているようです。
具体的には、クリエイティブな社会資本への投資、っていうか教育システムへの投資が重要です(クリエイティブ人材の底上げになる。あと、魅力的な大学は優秀な人材を吸い寄せる)
クリエイティブ経済の基本ユニットが「都市」なのは、多分、クリエイティブ経済を牽引するのはクリエイティブ人材を多く輩出する可能性の高い「大学」ベースで考えているからだと思います。仮に日本で考えてみた場合、我が国最高の頭脳が集積する東京大学がカバーできる地域は、東京であると考えるのが妥当なような気がします。
あと、格差の過度な拡大は、クリエイティブ経済に悪影響を与えると言います(著しい格差は経済成長阻害するという研究成果がけっこうあるそうです。賃金・給与の平準化が購買力のある中産階級(クリティカル・マス)を台頭させる。)。著しい格差社会下では、下層階級の子供は充分な教育をい享受できす、階層間の移動(下層階級→クリエイティブ・クラス)がより困難になり、それが教育の機会が与えられていればなりえたであろうクリエイティブ人材の機会損失につながるからのようです。(そういった観点から考えると、戦後の日本の復興も理解しやすいような気がします)
一方、クリエイティブ経済の創世記(現在)においては、所得格差が進み易いそうです。理由は、経済を牽引するであろうクリエイティブ人材の大規模な移動によるもので、クリエイティブ人材を引きつける地域(高所得の労働者を集めている)とそうでない地域(低所得の労働者を集めている)での地域間格差が進行するから。それから、クリエイティブな地域内でも格差が進行しているそうです。クリエイティブだからといって、クリエイティブな産業のみでは地域社会がなりたちませんからね。多分、非クリエイティブなサービス業とか小売業とかに従事している人(マックの店員とか)もそれなりにいるからでしょう。
まあ、ユニフォーメーションな社会は気持ち悪いけど、格差のバランスをはかっていかなければならないということでしょうか?「中庸」ですね。
本書では、国のクリエイティビティを計測する指数は幾つか開発されているらしいのですが、その中でグローバル・クリエイティビティ・インデックス(著者らが開発した)とううのがあって、グローバル・クリエイティビティ・インデックスを基にした国別のランキングは↓
1位 スウェーデン
2位 日本
3位 フィンランド
4位 アメリカ
5位 スイス
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ということでした。正直、我が国が第2位にランクしているのには驚きました(完璧予想外でした)。だって、三つのTのうちテクノロジーんは光ってるかもしれないけど、タレントはイマイチでトレランスに至っては、かなり偏屈なのではないかと思っていたからです。
ただ、ダメダメだと思っていたトレランスについては、
a) 移民政策に対して否定的。
b) 前例主義的。官僚主義的。
c) 実益よりも儀式を重んじるところがある。
d)エスタブリッシュメント(っていうか頭の堅い爺さん)が幅を効かせている。
といったマイナス要素に
a) 宗教に対して寛容(っていうか関心がない?)。
b) 世界に冠たるオタク文化がある(最近富みに市民権を得てきたと思う)。
c)過去においては大陸からの文化を柔軟に吸収してきた。
d)気が弱く自虐的なせいか、他国の人と激しく対立しない(=仲良くなる確率が上がる)。和を持って尊しとなす。
e) 原爆を落とした国とも仲良く出来る。
的なプラス要因を加味すると、日本もそれなりに寛容性がある国家なのかもしれません。
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