2012年1月9日月曜日

"I"のチカラ

←去年行ったなかなか秀逸な蕎麦屋です(店の名前は関やど)。

で、食べたもののメモです↓

-大(おお)せいろう 800 JPY memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
瑞々しく、良い食感。蕎麦の甘みがツユで誘起される。ツユは中庸で良い塩梅で旨い。そば粉は北海道沼田産。

-月の柱 にごり酒 大極上中汲 750 JPY memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
湯呑みで提供される。温度域は花冷えか。微発泡性。かなり上品な味。酸味が効いていて甘さはくどくない。bodyも強い。はっきり言って旨い。

ここのお店、席に通された後なんですが、塩味の効いた桜の花びらのとっても上品な香りのお茶を持ってきて貰えます。また、これがエクセレント!店内も趣きがあり、是非再訪したいお蕎麦屋さんでした。


閑話休題


今回は超原子価ヨウ素の話を書きます。しかも、ちょっと古い文献なんですが、名古屋大の石原一彰先生のグループが開発したIBSのおはなしです。

IBSに関しては、若き有機合成化学者の奮闘記さんの記事でも紹介されていて、日産化学も展示会とかでアピールしているので、広く周知されていることと思いますが、先日、IBSを使う機会があってなかなか好感触で嬉しかったのでメモしてみます。

IBS (2-Iodoxybenzesulfonic Acid)は、IBXの"S"アナローグで、IBXの高活性化研究より生まれた触媒で、その活性はもちろんIBXよりも高いです。で、触媒量の2-Iodobenznesulfonic Acid(もしくは、そのNa or  K塩)をOxone (2 KHSO5・KHSO4・K2SO4)で酸化することでIBSを系内で触媒的に発生させクルクル回すことで、潜在的に爆発性が懸念されるペルヨージナンの存在量を極微量(0.1 mol%〜1 mol%)に抑えることで安全性を担保しています(実機対応可能)。

反応溶媒は、CH3CN > CH3NO2 (使いたくない) >  EtOAc (ちょっと反応が遅い。けど、よりエコ・フレンドリー)が使えます。反応温度は70℃(加熱しないといけないのが欠点)。反応後のOxone残は濾過で簡単の除去できてとっても楽チン。aqueous workupで触媒由来成分も除去できます。

で、石原先生の論文では、IBXとIBSの反応の比較を行っているんですが、溶媒による影響が大きくて面白いです↓

CH3CN/H2O (2:1) → 12h, 24% conv. (IBS-catalyzed)    / 10 h, 88% conv. (IBX-catalyzed)
EtOAc/H2O (4:1)   → 12 h, <5% conv. (IBS catalyszed) / 12 h, 45% conv. (IBX-catalyzed)
CH3NO2                → 2 h, >99% conv. (IBS catalyzed)   / 6.3 h, >99% conv. (IBX catalyzed)
CH3CN                  → 1.6 h, >99% conv. (IBS catalyzed) / 24 h, <5% conv. (IBX catalyzed)
EtOAc                    → 10 h, >99% conv. (IBS catalyzed) / 24 h, <5% conv. (IBX catalyzed)

それから、粉砕Oxone (powdered Oxone)を使うと、単純に表面積がup↑するので反応(再酸化)が促進します(OxoneはCH3CN, CH3NO2 , EtOAcに溶けない。supporting informationでは、magnetic stirringで粉砕していた)。そして、1級アルコールの酸化で、Oxoneの使用量を制御することで、アルデヒド(powdered Oxone 0.6 eq.)とカルボン酸(powdered Oxone 1.2 eq.)を選択的に合成することができます。さらに、IBSはシクロヘキサノールの選択的酸化が適用可能です。

あと、DFT計算から、stoichiometricな反応では、IBSによる酸化反応の律速段階はIBX同様hypervalent twisting stepで、IBSの方がIBXよりtwisting barrierが小さく(I-OSO2結合 > I-OCO結合)、反応速度が速いという結果になるそうです。しかしながら、触媒サイクル全体でみると、律速段階はOxoneによるI (III)→I (V)の再酸化と考えるのがリーズナブルであろうということのようです(powdered Oxoneの使用で反応が促進される)。

references
J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 251-262.
Aldrichimica Acta, 2010, 43 (3), 83-91.
WO 2009/028676
日産化学のパンフレット

オペレーションがシンプルで、酸化反応としてはかなり安全性が高そう。そして、なかなかエコ・フレンドリーさ。はっきり言って、沢山の人に広めたい反応と思いました。

あと、pre-IBSの仲間たちは純正化学や東京化成から入手可能。そして、IBSよりもさらに高活性なMIBSのpre-cat.もアルドから入手可能です↓

2012年1月4日水曜日

Annual Income 2011

←最近呑んだ精米歩合75%というなかなか強者の日本酒です。

-七田 純米七割五分磨き無ろ過 平成21年度醸造 memo-
-COMENT-
地元産の良質の酒米と蛍が飛び交う名水で仕込んだ一品。21世紀に登場した全くろ過をしていない一回火入れ・生詰の純米酒。
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
酸味を想起させるしっとりとした香り。酸から始まり、猛烈さ怒濤の迫力で終わる味わいは、力強く芯のしっかりしたもの。濃厚bodyで味の起伏が変化に富み、その味を形容しがたいが旨い。強力辛口系。
-DATA-
分類(Grade)/ 純米酒(Junmai)
原料米(Rice variety used)/ 山田錦
精米歩合(Rice polishing ratio)/ 75%
アルコール分(Percentage of Alcohol)/ 17%
-COMPANY-
天山酒造(株)
http://www.tenzan.co.jp/
-Buy Now (amazon.co.jp)-
【逆転の発想が生んだ素晴らしい出来映え!】 佐賀県 天山酒造 七田【しちだ】 純米 七割五分 無濾過 1800ml 火入れ


閑話休題


さて、今年の冬のボーナス、国家公務員は4.1%もUP↑したのに、3.7%しかアップしなかった民間企業の研究員コンキチです。

年も明けたので、コンキチが社会に出てからGETした給与収入を久しぶりにREVIEWしてみようと思います↓

どうですか、大学入学前の高校生や予備校生の皆さん、理系の学部に進んで、研究員を目指してみませんか?理系離れがさかんに叫ばれている昨今、以前に比べて合格が容易かもしれませんよ。しかも、地味だけど、生活には困らない安定した給料がみこめる(かも)。

人生は諸行無常。グローバリゼーションが叫ばれるようになって久しい現代社会において、一寸先は闇かもしれません。それでも、駅弁大の理系院(修士)出て研究員になれば、これくらいの給料はゲットできるというサンプルが存在することを知って欲しいなと思います。

あと(多分)、文系の平均給与よりは高い収入を獲得することが出来るかもしれませんよ(興味ある文献も読み放題だし)。ついでに、理系の文系就職は可能だけど、その逆はまずあり得ない。

2012年1月2日月曜日

教師の矜持

2012年新春(冬)。


←広瀬香美の「hirose kohmi THE BEST Love Winters」をiPodに仕込んで気分を高揚させているコンキチです。

さて、先日軽くジャブ程度にウェブ・ブラウジングしていた折、6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性というブログを発見しました。この記事は、筆者の小学2年生の娘の算数のテストの話なんですが、

「8人にペンをあげます。1人に6本ずつあげるには、ぜんぶで何本いるでしょうか。」という出題に対して、「8×6 = 48」だとバッテンで、「6×8 = 48」だと正解なのだそうです。

っていうか、小学校教諭って狂ってんのか?

なんでも、かけ算をには「掛けられる数」と「掛ける数」があって、「掛けられる数」×「掛ける数」の順番に記述することが重要のようです。

初耳なんですけど、オレは

ところで、お正月休みに小2の義理の姪っ子が我が家に遊びにきているんですが、この姪っ子にも上述の問題を出してみたところ、上と全く同様のことを言っていました。

あと、その記事をさらに読み進めていくと、「単位が違うと、式の順番が違う」らしいです。

ハァ?

8(人)×6(本/人) = 6(本/人)×8(人) = 48(本)だろがボケがあぁぁぁぁぁ

っていうか、この解答

6+6+6+6+6+6+6+6 = 48

って書いたら、この問題はかけ算の問題だからバッテンとかいうのか?

それにつけても、現代日本の初等教育のエキセントリックさ加減が垣間見えて恐くなりましたよ。っていうか、小学校低学年に嘘も方便の意味を体感させる意図があるのか?それとも、算数は数学の部分集合ではないっていう理解でいいのか?

所詮、教育学なんてこんなものです。小学校の先生に教育者としての矜持なんかこれっぽっちも見えない。二流大出のなんちゃって研究員はそう思います。

2011年12月31日土曜日

トリフルオロメチレ〜ション!

大晦日。今年も蕎麦を喰いにいってきました。
今回は東京の名店ではなく、半年くらい前からジャブ程度に通っている近所のお店で今年最後の蕎麦を食してきました。

←食べたのは、大晦日限定メニューの天ぷらセットです。

-天ぷらセット (1,500 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
蕎麦の触感・歯ごたえは十分(かけそばでこのクオリティは評価に値する)。ツユはしょっぱさ控えめで、かつ少し酸が立つ印象。かけそばとしはかなりのクオリティと思います。天ぷらは、海老、椎茸、茄子に塩を振っていただく。で、この塩がなかなか美味しい。
あと余談だけど、富の宝山 (500 JPY)をはじめてお湯割りでオーダーしてみたんだけど、(温度、混合比率にもよるけど)お湯割り向きの焼酎じゃないですね。芋焼酎独特のオイリーな香味は立つんだけど、豊でニューウェーブ系の香りが消し飛んでしまって苦みが目立つ。ただ、お新香をつまんだ直後にお湯割りを口にふくむと、甘みの広がりを感じました。やっぱり、富の宝山はneatが一番と思いました。


閑話休題


さて、今年上半期に読んだ文献のメモです↓

Copper-Catalyzed Trifluoromethylation of Aryl and Vinyl Boronic Acids with An Electrophilic Trifluoromethylating Reagent
Org. Lett., 2011, 13, 2342-2345.

ボロン酸ユニットをトリフルオロメチル基で置換するお話です。

CF3置換アレーンの古典的な合成法は、SbF3やSF4を用いたC-F結合形成反応や、量論量の[CuCF3]を使ったC-C結合形成反応らしいですが、過酷な反応条件が必要で基質一般性に難があるらしいです。

で、近年、遷移金属を使った(相対的に)穏和な条件下での反応が開発されています↓


で、著者らの仕事はこんな感じです↓
18 exampls, 50-90% isolated yieldです。

この反応、R=p-Ph, Togni's reagent (1 eq.)で90%なんですが、リガンド無しだと36%だそうです。銅触媒の活性は、CuI > CuBr > CuCl > Cu(OAc)2 > Cu(OTf)2。CuI / 1,10-Phen = 1 / 1だと33%で、1 / 2がベスト。

塩基にK2CO3を用いた場合の溶媒効果は↓

diglyme (90) > DME (79) > DME aq. (63) > THF (52) > dioxane (37) > CH3CM (34) > DMSO (28) > DMF (23) > NMP (19) > CH2Cl2 (16) > PhMe (9) > Et2O (0)。

また、この反応は塩基にセンシティブだそうです↓

K2CO3 (90) >> Na2CO3 = K3PO4 (21) > CsOH・H2O (17) >> CsCO3 (3) > KOH (trace)


以前、Chem-Stationさんの化学者のつぶやきで「Late-Stage Fluorination」に関する記事がありましたが、この論文のCF3化はかなりマイルドな条件だし、Late-Stage Trifluoromethylationなんてどんなのかなと素人的には思うのですが、どうでしょうか?(ちなみに、ボクはTogni's reagentって使ったことないです。ちなみに、TCIで29,800 JPY/gですか。けっこう高いですね)

2011年12月17日土曜日

病院サロン化促進法案の崩壊

民主党は、医療機関の外来受診時の患者負担に100円を上乗せする受診時定額負担制度の導入を断念したらしいですね

とても残念です。なぜなら、これは国家レベルの壮大な社会実験だからです。

コンキチが以前読んだ「ヤバい経済学」にはこんな事例が紹介されています(see http://researcher-station.blogspot.com/2007/06/freakonomics.html)↓

親が午後4時に子供を迎えにこなければならないという決まりの保育園があり、親達はよく遅れてくると言う。そこで、10分以上遅れた場合は、その親には毎回3ドル(子供1人あたり)の罰金をとることにしたところ、週に8件の遅刻が20件に増えた。

この保育園の例は、罰金3ドルという安すぎプライシングにより、道徳的インセンティブ(ルール違反を侵しているという罪悪感)から経済的インセンティブ(ルール通り罰金というサービス料を支払っている)へとインセンティブの転移が起こったことが原因と思われます。

で、これと同じ現象が受診時定額負担制度(100円上乗せ)なのだとコンキチは考えます。近年、老人による病院のサロン化が社会問題として指摘されたりもしていますいが、100円上乗せでこの現象が助長されることをコンキチは予測していました。同法案が施行されれば、この推測が例証されるチャンスと思って、(民主党政権下で唯一)期待していたのですが、非常に残念です。

2011年12月11日日曜日

65歳まで働くということ

改正高年齢者雇用安定法が施行されて以来(年齢者雇用安定法がないのには笑えるけど)、(まともな企業では雇用形態は変われど)65歳まで働くことができます(ちなみに、オレの母校の教授の定年は十数年以上前から65歳だったけどね)。大抵は、60歳まであった「ザ・正社員」という資格(身分)を失い、契約社員とか派遣社員といったこれまでの給料が激減する身分に身を窶すとは思いますが、混迷を極める経済情勢と長生きするリスクが極大化の一途をたどる我が国においては、団塊の世代にとってなかなか魅力的な制度のような気がします。

でも思うんですよね。やってる仕事は変わらないのに給料激減する60-65歳の改正高年齢者雇用安定法対象者の人たちってどういう気持ちで仕事してるんだろうって

日本の伝統的な給与システムの欠陥とか定年制度の是非とか、いろいろと議論の余地はあるとは思いますが、やってる仕事が変わらないのに報酬激減するって、やっぱり人として心情的に受け入れ難いとボクは思います。すると、どうなるんだろうか?ココロの弱いボクだったら、モチベーション低下して、自分の働きを給与に合わせようとするな。端的に言えば「ダラダラ働く」ってこと。もしこの状況が看過されるなら、(まだ定年まで十分な時間のある現役正社員の)皆さんはどう思いますか?

人の心は誰にも分からず、上述したことはボクの想像に過ぎない。でも、もし上記の事象が存在したら、周囲の人(定年前の正社員。特に若年層)はどう感じるだろうか?はっきり言って、愉快じゃないんじゃないかな?って言うか不愉快!だって、法に守られた高年齢雇用者は既得権益者にして勝ち逃げ世代のくせに、ダラ夫と化すわけじゃないですか。

60-65歳労働する人って、よっぽどそれまでの仕事が好きだった人か、先行き不安な政治・経済情勢の中、老後の生活資金をキープするのに躍起な人でしょ。「仕事が好きな人」で仕事継続してる人は凄いと思うけど、「生活資金キープ」目的の人は、そのやる気の無さや卑しさが周囲に伝わってくると思うんですよね。これって、明らかに悪影響と思います。人間としての矜持を疑いますね。

かく言うボクも定年後の身の振り方を考えなければならなくなるときがやってきます(定年システムが維持されていることを前提)。その時に恥ずかしくない振る舞いができるように準備をしておきたいものです。

2011年12月10日土曜日

Hydrogenolysisの真実

けっこう前に、岐阜薬科大の佐治木先生の論文を読んだんですが、それに関連したメモです。

オレフィンのパラ炭使った接触還元って、極性の高い溶媒ほど反応速度が速かった(alcohol > EtOAc > hydrocarbon)と記憶してるんですが( 確か、新実験化学講座か実験化学講座に書いてあったと思う)、水素化分解ではその様相が異なります。

例えば、ベンジルエーテルの水素化分解では、トルエン中での反応速度を「1 」としたときの相対反応速度は次のようになります↓

ref. Greene's Protective Group in Organic Synthesis


一方、シンナミルアルコールのTBSエーテルを還元すると、その溶媒効果は次のようになります↓

ref. Tetrahedron, 2004, 60, 6901-6911.


ベンジルエーテルとTBSエーテルの切断では、溶媒の反応促進作用が逆転するみたいです。

2011年12月4日日曜日

漁業の未来

三重大の勝川先生の著作「日本の魚は大丈夫か」を読了しました。漁業に関するお話が書かれています。


我が国の漁業は、1970年初頭まで増加期、1980年末期まで高水準期で、以降減少期が続き、現在はピーク時の半分にも満たないといいます。そして、日本の漁業を次のように概観しています。

遠洋漁業(海外漁場)は焼き畑漁業の様を呈していたところに、EEZ (Exclusive Economic Zone)導入に伴う漁獲規制によって、公海は資源枯渇の危機にあると言います。沖合漁業(EEZの範囲)は、マイワシバブルの後、漁獲高が減少し、さらに未成魚の乱獲を経て、サバ資源を潰してしまったそうです(日本近海のイワシ、サバ、アジなどの大衆魚の資源量は低水準だそうです)。そして、沿岸漁業は参入障壁が低く、常に乱獲・飽和状態。ウニ、アワビなどの根付き資源以外は管理されていないらしいです。最後に、マダイやブリなどの養殖は、餌となる天然魚が大量に必要な贅沢産業で、一部の例外を除き経営は非常に厳しく、減少率大。要は、日本の漁業は非常に厳しい状態にあるということが述べられています。

一方、漁業の世界の潮流は、生産量が高めで安定で、魚価が上がっており、生産金額は増加しているそうです(ニュース番組で報道される漁業従事者の悲哀とは逆だ)。そして、ノルウェー、アイスランド、ニュージーランド、オーストラリア、チリといった国が漁業先進国だそうです(そういえば、近所のスーパーで売ってるサーモンはチリ産だな)。


で、漁業先進国の雄、ノルウェーも、1970年代中頃まで、過当競争→乱獲→資源枯渇→経営の破綻→補助金漬けという道を辿っており、現在の衰退しきった日本の漁業と酷似した状況だったそうです。しかしながら、漁獲抑制やQC (Quality Control)といった改革が功を奏し、彼の国の漁業はV字回復したそうです。
また、ノルウェーでは、「それ以下の値段では鮮魚は売れない」=「薄利多売は許されない」という独自の最低価格制度を設定して品質を保証しているそうです。(EUでは品質に関係なく最低金額を設定=公的資金で乱獲報奨金を与えているので、ポルトガル、スペイン、フランス、イタリアでは漁業が衰退している)。さらに、養殖業は企業化してスケールメリットを享受しているとか。

漁獲枠制度にも大きな違いがあります。世界では、アイスランド、ノルウェー、韓国、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、日本で、TAC (Total Allowable Catch: 総漁獲可能量)を設定しているそうですが、日本におけるその運用はお粗末極まりないそうです。ノルウェー、韓国は、IQ (Individual Quota: 個別漁獲枠制度)で、アイスランド、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカではITQ (Individual Transferable Quota: 譲渡可能個別漁獲枠制度)で管理しているのに対して、日本ではオリンピック方式(早い者勝ち=乱獲を助長)で管理されています。

さらに日本のTAC設定は、サンマ、スケトウダラ、マアジ、マサバ(+ゴマサバ)、ズワイガニ、スルメイカの7種のみで、乱獲を続けてもクリアできる非常に大きな数字が割り当てられているという杜撰なシステムなんだそうです。例えば、スケトウダラ日本海北部系群では、科学的に現状が維持できる漁獲可能量(4,000 t)を遥かに超えるTAC設定(16,000 t)がなされていたり、マイワシ太平洋系群では、海にいる魚よりも多い漁獲枠を設定していたことさえあったそうです(狂ってるね)。

ちなみに、日本とノルウェーの漁業の現状を比較するとこんな感じだそうです↓
漁業従事者/ 日本 21万人, ノルウェー 1.9万人
漁獲量/ 日本 550万t, ノルウェー 280万t
漁獲者1人当り漁獲量/ 日本 26t, ノルウェー 147t
資源状態/ 日本 低位減少, ノルウェー 高位横ばい
補助金/ 日本 1,800億円以上, ノルウェー ほぼゼロ
貿易(重量)/ 日本 輸入1位, ノルウェー 輸出1位

しかも、ノルウェーでは漁獲枠が船に張り付いていて、SQS (Structural Quota System)という漁船をスクラップする場合に限り、他の漁船に漁獲枠を移動でき、漁船のシェアも可能というシステムを導入して、過剰な漁業者の退出を促進しています。さらに、ノルウェー漁業の秀逸な点は透明性の高い流通システムです。洋上の漁船は、漁業組合が運営するオークションサイトに獲った魚の量やサイズ、漁場などを携帯電話で報告します。ノルウェー国内および周辺諸国から入札があって、水揚げは落札者の指定した漁港で行われます。さらに、漁業が行われている魚の種類、魚種の漁獲枠の消化割合、過去一週間の平均落札額などが閲覧でき、リアルタイムでノルウェー近海の漁獲状況が分かる地図があるそうです(http://www.sildelaget.no/default.aspx)。

水揚げされた魚の大きさ体重などの情報が全て外部に公表されていて、獲った魚の測定方法は、1tにつき何尾測定するなど細かいことまで決められていて、測定がいいかげんな船は、入札者の信用を失って値がつかなくなるという形で制裁を受け、漁業者の申告を水揚げ内容が違うというクレームが入札者からあれば、組合の職員が必ずチェックを行うそうです。


こうして、ノルウェーでは漁業者のインセンティブを適切に設定することによって、QCを促進し、スケールメリットを享受できるようにし、優れたマーケティングを導入することで漁業を持続可能で魅力的な産業へと転換したのだと思います。

勝川先生の本は、漁業の問題を全般的によくまとめていると思いますが、このような日本漁業の問題は、何十年も前から指摘されていて、全く目新しいものではありません。例えば、大前研一は、その著作「企業参謀」の中で同様の問題に言及しているし、ニュース番組でも同様の問題が度々報道されています。また、漁場における乱獲問題は、経済学の教科書では「共有地の悲劇」「市場の失敗」として取り上げられていて、その解決策も提示されています(それをやったのがノルウェー)。それにも関わらず、我が国の漁業の体たらくっぷりを鑑みると、いま現在日本の行業を仕切っている奴らはダメダメのグズグズな奴らで、その環境に甘んじている零細漁業従事者はナマケモノだってことは明らかと思います。

現状維持では、日本の漁業の未来は推して知るべしでしょう。

see
http://ja.wikipedia.org/wiki/コモンズの悲劇
http://researcher-station.blogspot.com/2009/02/blog-post.html
http://researcher-station.blogspot.com/2010/08/2.html
http://researcher-station.blogspot.com/2008/07/blog-post.html

2011年11月30日水曜日

素敵なフリーデル

1ヶ月くらい前に喰った蕎麦の写真です↓

無名庵っていう蕎麦屋で食べたんですが、なかなかGood!でした。

-無名庵 もりそば (700 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
つゆは甘過ぎず、辛過ぎずで、深みもあり美味しい。蕎麦は、歯ごたえ、喉ごともによく、噛むと味がしみ出る感じ。(味は落ちるが)九段一茶庵や蕎上人に酷似したお蕎麦。


閑話休題


さて、今年上半期に読んだ文献のメモです↓

“Greener” Friedel−Crafts Acylations: A Metal- and Halogen-Free Methodology
Org. Lett., 2011, 13, 2232-2235.

GlaxoSmithKlineの論文で、メタルフリー、ハロゲンフリーでFriedel-Crafts Acylationを行うという内容です。さらに、極めて小さいE-factor (高いmass productivity)を実現しています。さすが、REM (Reaction Mass Efficiency)という環境指標を考案した企業だけのことはあります。

で、反応条件はこんな感じの反応です↓

9 examples, 53-87%。個人的にこの反応で一番凄いと思ったことは、クロロベンゼンでも反応が進行するってことです(収率はイマイチだけど)。これは凄い。

で、代表例はこれ↓
エクセレントなプロシージャーです。

あと、共溶媒の添加でメリットが出る場合があります。

上段は、さらなるアシル化と分解を抑制するのに役立ち、中段は、高沸点溶媒の添加で反応温度アップ。下段は、希釈効果でover reactionを抑えます。

最後に、著者等は自社化合物の合成にこの反応を応用しています↓

昔、Friedel-Crafts使ったプロセス•ディベロップメントでかなり苦労したことがあるコンキチ的には、この反応、機会があれば、是非使ってみたいと思いました。

2011年11月27日日曜日

エコ・フレンドリーにオレフィンを開裂せよ

先日、久しぶりに秋葉原のヨドバシカメラのレストラン街に行って、<CHABUTON>のラーメン喰ってきました。


-鶏旨らぁ麺 コラーゲンボール添え (750 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
麺はスナック系の極細ストレート(かなり好み)。スープは鶏の濃厚かつ上品な味がgood!とても美味しい。バジル風味のコラーゲンボールが添えられていて、これを加えると、oilyなベジタブル感が広がる(個人的の、これはいらない)。スープの表面には油が浮かべていて、最後までアツアツ感が楽しめる。具はズッキーニなど、細小サイコロカットされた食材がちりばめられていて、見た目にも楽しい。
(ただし、この店舗における店員の質は良質とは言えない)


閑話休題


さて、今年上半期に読んだ文献のメモです↓

Oxidative cleavage of alkenes using an in situ generated iodonium ion with oxone as a terminal oxidant
Org. Lett., 2010, 12, 5640-5643.

4-ヨード安息香酸もしくはヨードベンゼンをオキソンで酸化してヨードニウム塩をin situで発生させ、こいつを使ってオレフィンを開裂させるというお話です。


オレフィンの開裂というと、オゾン酸化やオスミウム酸化が真っ先に頭に浮かびますが、その安全性とか装置の制約とか毒性とかが問題になり、愉快な反応とは言い難いと思います。この反応ではアルデヒドの調製は難しいですが、軽く凄いなって思います。(逆説的に、オゾニドって凄いなとも思う)

4-iodobenzoic acidとOxoneの使用量と成果物の生成比との関係はこんな感じ↓

14 examples, 33-90% yield。ちなみにこの反応、ヨウ素源としてはヨードベンゼンでもO.K.です。

あと、著者等が提案する推定反応機構はこちら↓

それから、反応速度は、結合が開裂する二重結合にフェニル基が置換している基質や、リジッドなcis-ジオールで速いようです。

基質一般性は、構造に結構依存しそうですが、この条件で二重結合が開裂するのは魅力的と思いました。