蒐集癖のあるなんちゃって研究員のコンキチです。(一応)研究に携わるようになってから蒐集(っていうか
チェックね)しはじめた(有機化学)の未読論文が手つかずのまま(メモしたまま)放置プレイの今日この頃、少しはそいつに目を通してみるかということで、こんな文献を読んでみました↓
Ratiobal Design of CH/π Interaction Sites in a Basic Resolving Agent
J. Org. Chem., 2004, 69, 7436-7441.
東大院の西郷先生のグループです。
著者らは、かつて研究対象としていた塩基性光学分割剤であるcis-1-aminoindan-2ol (AI)よりももっと効果的なCH/π相互作用が期待できるcis-1-aminobenz[f]indan-2-ol (ABI)をデザインして、そのキラル認識能と認識機構を報告しています。
ちなみにこの着想の基になったのは、同グループの以前の研究です。(J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2 2000, 1339.; Tetrahedron Asymmetry 1998, 9, 2219.)
(CH/π相互作用は、他の非共有結合性の相互作用(例えば、水素結合や配位結合)に比べてとても弱い相互作用と考えられていますが、結晶中の分子配列に際立った影響を与えることから注目を集めているそうです。)
ということで、光学活性ABIの調製法はこちら↓
ラセミ体を合成して、それを光学分割するというアプローチです。rac-ABIの合成は、benz[f]indenのエポキシ化、その後Ritter反応という2ステップ。シンプルですが、はっきり言って収率低いです(全収率44%ね)。
光学分割は、(R)-2-naphthylglycolic acid (NGA)を使って分割します。MeOH中で造塩し、MeOHから3回再結晶することで、39%(ラセミ体の半量を100%として計算ね)で難溶性のジアステレオマー塩がGETできます。後は、塩を(NaOHで)外して、クロロホルム(実験項はクロロホルムって書いてあったけど、結果と考察のschemeはジクロロメタンになってる)から3回再結晶して(1R,2S)-ABIが定量的に得られます(2 mmolスケール, 再結してロスゼロかよというツッコミをちょっろだけ入れたくなります)。
ABIの光学活性体もGETできたところで、そのキラル認識能の評価をアリールアルカン酸に対して行っています↓
(溶媒はEtOH-H2O混合溶媒系で、溶媒量と混合比は50-80%の塩が析出するように調節した。晶折温度は30℃。再結晶は行わず。)
著者等の狙い通り、おしなべてABIの方がAIよりも分割能が高いという結果になりました(赤ね)。
ということで、今日はここまで、続く.....
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