2014年8月31日日曜日

縮合剤の値段(軽く)調べてみました

ここ四ヶ月間艦これをやり過ぎたせいか、視力が激しく減退してしまったオタッキーのコンキチです。


先日(8月上旬)、夏の風物詩"新子"を食べてきました。初めての"新子"だったんですが、なかなか良かったです。まあ、寿司屋で食べたんですが、その寿司屋は数年前まで何回か飲み会で使ったことがあったんですが、最近になってランチにジャブ程度に通いはじめています。ということで、"新子"かたがた最近食べたものをメモしてみます↓

-新子の握り(三枚付け, 二貫) (税別 600 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ほのかな甘い香りを伴った、乾いた小肌様の匂がやんわり漂う。ネタの新子はこの世のものとは思えないほどの柔らかさで、赤ちゃんを想起するほどの繊細さだ。口の中では仄かな甘味が広がっていく。酢の刺激や塩辛さは殆ど感じられず、食感も味もとても繊細で、かなりハイブローな味。
シャリは温かみがあり(nearly人肌)、柔らかめ。一貫食べた後くらいに硬さが安定してBestな状態になるような気がする。
ボク的には、新子より普通の小肌の方が分かり易い旨さで好きかな(っていうか、オレって世の中で小肌が一番好きだけど、小肌の匂いは好きじゃないんですよね。だから、酢で小肌の匂いがかきけされてる方が好みかも)。

-にぎり 並すし (税別 1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(多分)赤身、イカ、鰹、玉子、鉄火巻(3種)、タコ、海老、小肌。
赤身はかなり旨い。juicyで張りのあるしっとり感がたまらない。
イカは飾り包丁が入っていて美しく、透けて見えるほど薄い。そして、この薄さがいい。イカの淡白で弾力のある旨さを存分に味わえる。ネタのシャリの間には海苔と山葵が仕込んであって、イカの食感、淡白さ、海苔、山葵の相性の良さが爆発している
鰹は凄くfreshでcreamy。深みのある味わい。食感はとても柔らかく、もの凄くあっさりした淡白なローストビーフのよう。
玉子はデカ旨。
立てかけてある野蒜ライクな漬け物が箸休めにとっても良い。漬かり具合が抜群の塩梅で、しゃっきりとした食感。食べると口の中がすっきりする。とても美味しい。
鉄火巻がまた凄く旨い。鮪と一緒に胡瓜、芽ネギ、紫蘇が巻き込まれた三種類。まず鮪が美味しい。そして、胡瓜、芽ネギ、紫蘇それぞれとのハーモニーが楽しめる。
タコのお寿司には山葵がけっこう効かせてあって良い。多めの山葵の量が薄めに切り出された煮ダコにBest Match!!!山葵との相性が抜群な海苔が巻いてる仕事に細やかさに感動。
小肌の細工がとっても綺麗で見ていて楽しくなる。酢の加減がとても良く、舌触りは滑らか。とっても旨い。

-ばらちらし (税別 1,300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(多分)赤身、海老、蟹、蛸、椎茸を基調に具を誂えたばらちらし。はっきり言って、旨い!大根の新香、刻み葱、ブルーベリー、牛蒡の新香、とびっこ等がアクセントになってとても良い。基本的に具(ネタ)はどれもプリプリしていて美味しいんだけど、特筆すべきは椎茸と牛蒡と思いました。
煮しめされた椎茸の味付けが感動的に素晴らしくって、その柔らかい甘さは筆舌に尽くしがたい。あと、牛蒡の新香が破滅的に旨い!
それから、前述したようにブルーベリーが載ってるんですが、最初、「おいおい鮨にブルーベリーかよ?」って思ったんですが、果実味溢れるブルーベリーの酸味が良いアクセントになって、口直しに最適でした(違和感が全くなかった)。
あと、山葵に注目。ちらし用の山葵は粗くすりおろされているのかつぶつぶ感がある。充分な辛味に加えて、芳醇な甘味が感じられ、ちらし寿司が引き立っていると思う。

-並ちらし (税別 1,300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
具は(多分)赤貝ひも、牛蒡の新香、蛸、鯛、鱸、海老、干瓢、沢庵、鰹たたき、玉子、烏賊、赤身、椎茸など。
赤貝ひもはチュルンチュルンのプリュっとしていて旨い。牛蒡の新香は鉄板の旨さ。(多分)鯛は上品でしっかりした旨味の淡白さで、きめの細かい食感。(多分)鱸は鯛よりもより淡白で弾力と張りがある。やや筋張った感じがあるところがちょっと残念。干瓢はやや濃いめの味付けだけど、凄く旨い甘さで感動的。くすんだ山吹色の沢庵はボク好みの濃いめの味。(多分)鰹たたきは上品な香ばしさ、しっとりとした食感、落ち着いた酸味で超絶旨い。玉子のボリュームは重厚ながら控えめで上品な甘さがGood。赤身は(メバチマグロなのだろうか?)しっとりjuicyで、酸味と甘味が楽しめて美味しい。


あと、ランチの握りやちらしはセットになっていて、茶碗蒸しとお椀とサラダが付きます。で、ここの店の茶碗蒸しがちょっと変わってて面白いんです。コーンとチーズが仕込んであるんです(だだボクの大好きな銀杏が入ってないのは残念)。


-生ビール 中(税別 600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アサヒの生ビール。泡もビールももの凄くクリーミーで、とっても柔らかい舌触り。全体的に淡い味ながらも、圧倒的なcreamy感が旨さを押し上げている。あと、醸造酒って生ものにあわせるのがけっこう難しいと思うんだけど、ここのビールでfishy aftertasetを感じることは全くなかったです。

ちなみに、この店の大将は横浜銀蝿のヴォーカルを彷彿させる容貌で、二代目は三瓶をスリムにして超絶かっこ良くした感じの坊主頭です。それにつけても千円ちょっとでこんなに旨くてセンスのいい盛りつけのメシが食えるなんて加山雄三ばりに幸せだなって思う今日このごろです(今月もカミさんと一緒にランチに行く予定です)。


閑話休題


全開の記事繋がりで、トリアゾール系縮合剤とOxyma系縮合剤の値段(試薬グレード)を軽くジャブ程度に調べてみました(間違ってるかもしれないけど)。




単位物質量当たりの値段と活性、安全性を考えると、ボク的にはOxymaにもの凄く魅力を感じます(OxymaはChem. Rev., 2011, 111, 6557.でけっこう絶賛されている see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/11/2.html)。

それから、比較的最近開発されたCOMU (Aldrich)の値段が思ったより安くて驚きました。サンプルワークレベルでは十分使える値段と供給量です(それだけ、安全性や活性等に魅力がある証左でもあるのかなと思います)。まあ、それでもけっこう高いわけですが、そのプライシングの高さを克服する処方箋として、「OxymaとCOMUをミックスして使う」っていうのに興味を覚えます(前回ブログでメモした論文に書いてあった http://researcher-station.blogspot.jp/2014/08/blog-post.html)。具体的な条件は調べてないから不明だけど、積極的に調査してみる価値「大」と思いました。(追記 2014.9.23 OxymaとCOMUの混合使用は固相合成の例で、両者ともけっこう過剰量を使用するというもので、ボクが夢想したプラクティカルなものでは全然ありませんでした Org. Lett., 2012, 14, 612-615.)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のSearch Resultでした。


2014年8月24日日曜日

究極の縮合剤を探せ

チバラキ在住のコンキチです。

以前、練馬にあるそば二十三(http://www.soba23.jp)っていう店で出してる"つけ蕎麦"がテレビでやっていて興味を持ったんですが、自分、練馬に行く用事が全くなかったので、チバラキ界隈で件の"つけ蕎麦"を疑似体験できる店はないかとサーチしたところ、ありました。"千葉のシブヤ"と恥ずかしい感じで形容される柏Cityに。で、増税前に行ってきました↓

-つけ蕎麦 六文銭 魚介つけ汁蕎麦(かつお風味) (740 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
麺は田舎蕎麦様の太い蕎麦で、褐色。黒い星も入っている。かなり硬く弾力が凄いが、芯まで粉っぽさは無く、表面はつるつる。
ツユはアツアツで提供され、かつお風味の強い醤油ベースの甘くてやや辛味のある味付けで、ラーメンのスープみたいだ。具は、油揚げ、ネギ、もやし、かつお節、そぼろ。
太く弾力に富む蕎麦をアツアツの汁につけると、蕎麦にやわからみが出てモチモチ感がアップ↑蕎麦とツユのマッチングも悪くない。太い麺に対して、ラーメンのスープライクなややジャンキーでしいこい感じツユが合っている。
ただ、食べ進んでいくうちに、ツユの温度がどんどん下がっていき、おいしさも減↓そいいった意味で完成度は低い。ツユの濃度がおちていく感じがしなかったことは評価できる。(麺は300 gか400 gのどちらかを選択できる)


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

COMU: scope and limitations of the latest innovation in peptide acyl transfer reagents
J. Pept. Sci., 2013, 19, 408-414.

COMUの紹介論文です。

今日までに様々な縮合剤が開発されてきましたが、その中でも最強との呼び声高いのはCOMUでしょう(多分)。


COMUは、優れた脱離能を有するOxymaユニットと、反応性の高いジメチルモルフォリノコアからデザインされたウロニウム型の縮合剤になります(X線や13C NMRからCOMUはウロニウム塩(O-form)であることが確認されている。Chem. Eur. J., 2009, 15, 9404-9416.; Angew. Chem. Int. Ed., 2002, 41, 441-445.)。

ちなみに、OxymaユニットをもつHOTUやTOTUはカップリングにおいてエピ化し難く(Chem. Rev., 2011, 111, 6557-6602.; Ger. Offer. DE 90-4016596, 1991)、高いアシル化能を有します。そして、ジメチルモルフォリノコアを有するHDMB, HDMA, HDMCはその優れたパフォーマンスが知られているようです(Chem. Rev.2011111, 6557-6602,; J. Org. Chem., 2008, 73, 2731-2737.)。


以下、COMUのアピールポイントです↓

(1) Oxyma系試薬の中で最も活性が高い
(2) HOTUより、DMFに対する溶解性が50%高い(ジメチルモルフォリノコアの導入)
(3) HBTU, HATUより、DMFにおよそ4倍とける。HDMCより高い溶解性(Oxymaユニットの導入)

(4) 副生成物(縮合剤のカス)が水に良く溶けて、workupで容易に除去できる
(5) 反応の終点を色の変化で判断できる(用いる塩基に依存する)
(6) 立体障害の大きいカップリング・ジャンクションで、高い反応性(Oxyma部位のフレキシビリティが効いている。これに対して、ベンゾトリアゾールユニットはリジッドである。)
(7) モルホリン環があるので、1 eq.の塩基の使用でオッケー (ラセミ化対策に有効)
(8) ペプチド合成において。HOBt類縁体やHATUよりラセミ化しにくい(Sigma-AldrichのWeb Siteにも紹介記事→http://www.sigmaaldrich.com/japan/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/comu.html)
(9) COMUとOxymaをミックスして使うのもあり
(10) 普通のアミドやエステルの合成においても、HATUやHBTUよりも優れていて、パワフル(Chem. Eur. J., 2012, 18, 9024-9031.)
(11) Oxymaベースの試薬のみが、tert-ブチルアルコールのような三級アルコールのアシル化が可能
(12) 酸のpreactivationが不要
(13) 危険な自己触媒的分解はみられない(Chem. Eur. J., 2009, 15, 9404-9416.)

なかなか使えそうな感じです。値段は58,500 JPY (100g, Sigma-Aldrich; Mw. 428.27)。サンプルワークレベルでは充分活躍できそうな試薬と思いました。

(オレも1回使ったことあるけど、反応速かったです。あと、色も変わりましたね)

F(エフ) II

艦これはじめてぼちぼち4ヶ月。昨日、雲竜GETしたオタッキーのコンキチです。


昨年の冬に行った焼肉屋のメモです(3年前にも行ったのでそのときのメモも一緒に)↓

-焼肉処 くらちゃん memo-

-和牛中トロにぎり (455 JPY/1貫)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
はっきりいって、熱がかかってない状態だと旨くないなよ思いました。

-特上あぶりにぎり鮨 (455 JPY/1貫)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
牛肉が炙られて活性化してましたが、シャリが全然ダメ。やっぱ、素人さんが握っても握りになってないと思いました。

-レバー刺し (849 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW (規制される前)-
ちょと肉厚にカットされているため、食感が悪い。もう少し薄切りにした方がいい。

-馬刺し (903 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
お馬さんは鉄板の旨さ。

-くらコロホルモン (860 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
名前は似てるけど、シロコロホルモンとは全くの別もの。シロじゃなくて、ギアラって感じ?

-国産牛ホホ焼 (725 JPY)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
硬かったり、筋張った部分があったりと、あまり楽しめなかった。ツラミ好きのボクとしては非常に残念

-野菜焼 (525 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
玉ネギ、ネギ、しいたけ、人参、ナス、サツマイモの盛り合わせ。とてもおいしい。サツマイモって大人にあってから、バフバフ感が嫌で、食べれなくなったんだけど、これは旨かった。あと、玉ネギ、ネギ、しいたけがexcellentに旨い。

-牛サガリ (840 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
柔らかくも、適度な噛みごたえがあって、噛むほどに旨味が染み出てくる感じで良い。

-鹿児島産地鶏刺し (945 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ちょっと食べにくいところもあったが(噛み切れないところとか)、小さく切り取って食べると鉄板の旨さ。デフォルトで塩・胡椒がやんわり振ってあり、胡麻油ベースのタレが付いてくる。胡麻油タレを付けずに食べると、あっさりとしたケモノっぽい味わいと弾力が楽しめる。で、胡麻油ベースのタレをつけて食べると、旨さがさらに引き出される感じ。そしてワサビ(多分西洋ワサビ)をつけるとより一層旨さが広がる(この料理にワサビは付いてこないんだけど、一緒に頼んだトントロについてきたワサビを付けてみた)。


閑話休題


この前読んだBenzylic Fluorination (see http://researcher-station.blogspot.jp/2014/07/fe.html)関連論文(っていうか、同じauthorの論文)を読んでみました↓

A Polycomponent Metal-Catalyzed Aliphatic Allylic, and Benzylic Fluorination
Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 10580-10583.


アルカンのフッ素化のお話です。

主なアルカンのフッ素化は、取り扱いが難しかったり、選択性の無い試薬を量論量使用しなければならないそうです。例えば、

i) F2 (JACS, 1956, 78, 2793-2797.; JACS, 1956, 78, 4992-4995.; JACS, 1957, 79, 3084-3089.; JACS, 1976, 98, 3034-3035.; Acc. Chem. Res., 1988, 21, 307-312.)、

ii) cobalt trifluoride (CoF3) (J. Fluorine Chem., 1986, 33, 337-346.; J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1991, 445-447.; polyfluorinationが起こる)

iii) cesium fluoroxysulfate (CsFO4S) (Tetrahedron, 1989, 45, 2737-2742.; 潜在的に爆発性がある)

なんていうのがあります(はっきり言って、使いたくない)。

で、This workで著者等は、Selectfluor、N-hydroxypyhalimide (NHPI)、相間移動触媒 (KB(C6F5))、Copper (I) bisimine錯体からなる触媒システムを構築し、これをaliphatic、benzylic、allylicな基質に対するフッ素化に適用しました。

72% yield
MeCN, reflux, 2 h

他16 examples

置換基がついていないシンプルなシクロアルカン(5 examples)では33-72% yieldでモノフルオリドが得られます。また、アダマンタンを基質に用いた場合、反応温度によって選択性が変化します。

非環式の基質では、位置異性体のmixtureが得られます。

あと、benzylicとallylicの例↓

基質一般性や選択性、収率はどうかと思うけど、テゥルンテゥルン炭化水素をモノフルオロ化できるのは凄いと思いました。

2014年7月27日日曜日

ハイパーインフレの悪夢

昨年食べたラーメンのメモです↓

-味噌ラーメン (750 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
まず生姜の香りが一閃。麺は黄色(少しオレンジがかっている)のちぢれ中細麺(卵麺か?)で、普通に旨い。食感は中庸的。スープは甘く、マイルドな味噌。生姜とニンニクのフレーバーがGood!フィニッシュに僅かに苦みがあるんだけど、これがまた良し。スープの表面は油(ラードらしい)で覆われていて凄くアツアツ。スープには上層と下層で濃度勾配があり、はじめはあっさり度が高いが、徐々に濃くなってくる(少し薄めた方がいいかも。薄めるスープがある)。具は、メンマ、焼豚(薄切りと刻み)、ネギ、もやし、玉ねぎ。そして、薄切り焼豚の上に生姜が載っている。薄切り焼豚はイマイチと思ったけど、他の具は全体的に旨くて良いです。特にメンマが個人的に好きな味。完成度の高いラーメンと思いました。
あと、S&B特製エスビーコショー(業務用)が置いてあったのでちょっと振りかけてみたんだけど、ジャンキー感とスナック感がup↑してこれもまた良し。
店内はモダンでオシャレ。接客のお姉さんは白鶴の前掛けを着用。のれんには「すみれ」と「森住製麺」の名前が入っている。水が凄く汗をかいた金色の薬缶に入っていて、なかなかs


閑話休題


昨年「ハイパーインフレの悪夢」という本を読了しました。第一次大戦後のドイツのインフレを描いた本です。

所謂ドイツのハイパーインフレは凄く有名で、ボクが小さい頃の学研の「学習」にも書いてあったような気がします。コーヒーを飲んでいる間にもインフレが進行し、トランク一杯のお札が支払いに必要になった的な寓話が描かれていたことを記憶しています。

学研の「学習」の「コーヒーの話」は、笑い話的で悲惨さがあまり伝わってきませんが、本書の中で描かれるハーパーインフレによって誘起される人々の困窮する様にはマジ背筋が寒くなります。以下メモです。

第一次世界大戦後、敗戦国のドイツはヴェルサイユ条約により莫大な賠償金を抱えることとなり財政難に陥ります。ここで政府が弄した策は、国債を発行してライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)に買い取らせるという財政ファイナンスです。

市場には通貨(マルク)が溢れ、マルク安となり、輸出商品の値段が下がって経済が活性化します。企業の倒産件数も減り、失業率も低下し(戦勝国のフランスよりも失業率が低下する)、インフレの昂進により貨幣の価値があるうちに使ってしまおうというインセンティブが働き、一見華やかな繁栄が訪れたかに見えました。また、企業も為替相場の下落によって輸出産業の利益を獲得できるのでインフレを歓迎しました(貨幣価値が下がれば実質的納税額も減り、銀行からの融資も実質的返済額が少なくて済む)。

(1) 旺盛な購買衝動(高価な買い物や豪華な食事)
(2) (貨幣を)何でも商品に換え、しばらく所有してから売ることで難なく大金が手に入った
(3) ローンで土地購入。貨幣価値の下落によって、借金はすぐ返済でき、広大な土地を獲得

などが巷では繰り広げられ、初期段階においてはウハウハ感もあったようですが、それも長くは続きません。そのうちに、労働者の生活は苦しくなっていきます。そして、困窮した労働者は(インフレへの対症療法として)賃上げを要求するようになり、インフレ誘起のフィードバックが繰り返されていきます。また、農家は農産物を売り惜しみ、都会の人達が持っていたピアノや骨董品などと小麦を交換出します。やがて、深刻な物価高騰が庶民の生活を襲い、高級住宅街では子供を思う母親達が私邸内に勝手に入り込み、残飯目当てにゴミ箱をあさったりと、人々のモラルが失われていきます。郊外で家畜なんかを飼っているリッチな家は、徒党を組んだ飢えた民衆に襲撃されたりなんかもしました。

紙幣の大量に刷ってはインフレが激化というサイクルが繰り返され、紙幣の購買力がとめどなく下がり続け、最終的に(土地を担保にした)デノミ(1兆分の1)でハイパーインフレがやっと収束します。

はっきり言って、ボクはこの本で描かれているドイツの姿に既視感を覚えました。まるで、日本そっくりじゃね?っていう。


国と地方の債務の合計は、1994年に450兆円だったのが、2000年には700兆円になり、いまでは1,000兆円超まで膨れ上がっています。それに加えて、プライマリーバランスは万年赤字で、年間50兆円のペースで債務残高が増加しています。まともな脳みそを持ってたら、債務の返済なんて夢のまた夢と思うはずです。国内の国債引き受け余力ももう限界に近いと言われているいるし、けっこうキテると思います。

この本(ハイパーインフレの悪夢)には、「インフレーションは、いろいろな意味でドラッグのようなものだ。最後には命取りになるとわかっていても、多くの困難に襲われたとき、人はその信奉者になってしまう」という文章がありますが、まさしくその通りで、現在の政治家は安易な方法で問題を先送りしているに過ぎないと思わざるをえません。


社会が日本円(貨幣)という共同幻想から醒めたとき、どんな世界が目の前に広がるのかに興味津々の二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


2014年7月21日月曜日

Fe (テツ) : 鉄とフッ素の素敵な関係

北千住駅のエキナカにある東京カレー屋名店会に行った時(増税前)のメモです↓

-トプカ インド風ポークカリー ミディアム (680 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-RVIEW-
辛さの表示は「3」で、この店最大だけど、ボク的には「2」っていう感じ。サラサラ系のカレーで、sharpな辛さに好感が持てるも、アツアツ感が全くないことに加えて、ライスに対してカレーが少なすぎる。当然、具も少ない。肉とジャガイモは内部が冷めた感じ。このカレーは、「中途半端に普通においしい」けど「ポスピタリティーが最悪」と思いました。あと、水のグラスがちょっと汚い。総じて、残念な店と思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Iron(II)-Catalyzed Benzylic Fluorination
Org. Lett., 2013, 15, 1722-1724.

(また)流行ってるフッ素化(Benzylic Fluorination)のお話です。


著者等は以前、Cu(I)-bisimine錯体とSelectfluorを用いたaliphatic C-H bondのフッ素化を報告しました。
Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 10580-10583.

このCu(I)-bisimine complex/Selectfluor systemはBenzylic Fluorinationも可能ですが、その適応範囲は狭いため、汎用性の高いBenzylic Fluorinationを実現すべく、著者等は鉄触媒に注目します(ノンヘム鉄触媒によるC-H官能基化の成功をうけて、鉄に注目したようです Curr. Inorg. Chem., 2012, 2, 64-85.; Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 3317-3321.)。

で、This Workです↓
13 examples, 35-76% yield

二価の鉄塩をスクリーニングしたところ、Fe(acac)2にみに活性があったそうです(ハライド、硫酸塩、硝酸塩はダメ)。

以下、この反応の特徴↓

(1) electron-poor, more neutral alkyl benzeneが基質として最良。electron-richな芳香環をもつ基質ではポリフルオロ化が起こる

(2) 基質にシメンを用いると、立体障害の小さい方だけがフッ素化される

(3) カルボニル基を含む基質の場合、バックグラウンド反応に対してBenzylic Fluoronationが優先する
この基質のBenzylic Fluorinationは、α,β-不飽和ケトンに対するフッ素アニオンの1,4-付加に相当します。

(4) アミンのような窒素原子を含む化合物は、多くのケースでN-fluorinationが起こり、Benzylic Fluorinationの進行を阻害する。

←アミドの例(窒素原子含有化合物の本文記載の唯一に実施例)






マイルドかつシンプルな反応条件ですね。サンプルワークレベルで機会があったら使ってみたい反応と思いました。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のフッ素化メモでした。

F(エフ)

最近(ふた月半あまり)、「ヤフオク」と「艦これ」にはまっていた真性オタッキーのコンキチです。

「艦これ」ってPC限定のオンライゲームとしては破格の200万人超えしてて、巷でけっこう流行ってるらしいですね(会社のPCで仕事中にプレイしてるっていう猛者(っていうか、明らかに就業規則に抵触してるから良い子はやめましょう)の話もネット上で目にします)。

ソーシャルゲームとしては珍しく課金要素が最小限に止められており(課金がクリティカルな要素にならない)、関連商品で儲ける(メディアミックス戦略)らしいです(実際、amazon.co.jpでサーチしてみると、ライトノベルやその他関連グッズが沢山ヒットしてきます)。

ところで、「艦これ」は戦時中に活躍した軍艦を擬人化した「艦娘」なる女型萌えキャラのカードを収集・強化・編成して敵を駆逐していくゲームなんだけど、擬人化っていうと、元素にしても、ホルモンにしても全部女の子の萌えキャラで、なんかこういったクラスタのマジョリティーはオタッキー層として認知されてるんですかね?

もうここまできたら、EROS (Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)に載ってる試薬を片っ端から萌えキャラに擬人化するプロジェクトを(他力本願だけど)誰かに立ち上げて欲しい気持でいっぱいです(個人的に、Dess-Martin Periodinaneとか擬人化したらカックイイと思うんだけど)。


閑話休題


こんな文献を読んでみました。Tobias Ritter教授のフッ素化の論文です↓

Palladium (III)-Catalyzed Fluorination of Arylboronic Acid Derivatives
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 14012-14015.


あまりみない(気がする)3価のパラジウムが触媒するという、site-specificなフッ素化のお話です。

触媒的フッ化アリールの一般的な合成法としては、

(1) Buchwald等のPd触媒を用いたaryl triflateのフッ素化(Science, 2009, 325, 1661.; Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 8900.; J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 18106.)

(2) Tobias Ritterのグループの銀が触媒するaryl stananeのフッ素化(J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 12150.)

があるといいます。で、Buchwaldの方法は"dry"なfluoride saltが必要で、異性体の混合物を与えることが問題のようです。他方、Ritter(著者)の方法は毒性のあるスズ化合物を調製しなければならないことが問題として挙げられます。

ところで、アレンの量論的フッ素化は沢山報告されていますが、Ritter教授曰く、最も実用的なのはPhenoFluorを用いたdeoxyfluorinationだといいます。

Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 11482-11484.

Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 2470-2473.

あと、PhenoFluorの解説がSigma-AldrichのWeb Siteにあります↓
http://www.sigmaaldrich.com/japan/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/phenofluor.html

PhenoFluorは既存フッ素化試薬よりも副反応が少なく、官能基許容性も高く、水酸基の環境に応じて選択的にフッ素化可能で、late-stageにおいてのフッ素化に適用可能だというのがウリだと思うんですが、高いです(40,000 JPY/250 mg)。何をもって"practical"って言ってるのかは分かりませんが、小スケールのサンプルワークには重宝しそうな気がします。

他のフッ素化法としては、
・Direct C-H fluorination (Science, 2012, 337, 1322.; J.Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7134.; Org. Lett., 2012, 14, 4094.; J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 7520,; Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 9081.)
・銅を用いたArIのフッ素化(Hartwig, J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 10795.)
・銀を用いたaryl stanane, aryl silane, arylboronic acidのフッ素化(Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 1662.; Org. Lett., 2009, 11, 2860.; Tetrahedron, 2011, 67, 4449.)
・アリールボロン酸(誘導体)のフッ素化
     Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 5993. (Ritter)
     J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 2552. (Hartwig)
     J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 4648.
などがあるそうですが、遷移金属の使用を触媒量に抑えるのは難しいらしいです(因に、アリールボロン酸誘導体を用いた場合、transmetalationが遅い)。

で、This Work(ボロン酸誘導体の触媒的フッ素化)です↓


15 examples, 63-99% Yield, ≧98% purity

試薬(Pd cat., Selectfluor, terpy, NaF)は全て空気と湿気に対して安定で、オープンフラスコで反応を行えます。マイルドな条件で、decagramスケールでの実施例もあり。
プロトデボロネーションも観察されないという優れものです(プロトデボロネーションはアリールボロン酸誘導体を用いたフッ素化反応にみられる共通の問題らしいです)。
そして、Pd触媒は、Pc(OAc)2, terpyridine, HBF4から調製できます。

electron-richな基質でもelectron-poorな基質でもオッケーで、electron-richでneutralな基質がDMF溶媒がoptimalなのに対して、electron-withdrawingな基質はCH3CN溶媒がおうおうにして良好。官能基許容性は、ケトン、1級アミド、カルボン酸、エステル、アルコール、ベーシックな複素環、臭化アリールでオッケー。ortho,ortho'-二置換といった立体障害の大きい基質でも適用化。

他のパラジウム錯体でも反応は進行しますが、Ritter教授は1が最もコンビニエントでおすすめのご様子です。


それから、出発物質が、ピナコールボロネートやボロン酸であっても、NaF, KHF2を作用させて。in situでトリフルオロボレートを発生させて反応を行うことで、高収率で目的物を得ることもできます↓

プロトデボロネーション対策に有効だと思われるMIDA boronateを使って反応を行うと、electron-richな基質では反応は進行するものの、収率は低く、過剰のSelectfluorが必要となるそうです。一方、electron-poorな基質では目的物を与えないそうです。


あと、著者等が提案する反応機構はこちら↓

この反応機構に従うと、アリールパラジウムを中間体として経由しないため、アリールボロン酸誘導体の"transmetalationが遅い"という問題が回避されて、反応が上手く進むことと整合性がとれると思います(まあ、いろいろと検証実験・考察をしている)。


ちなみに、この反応って"fiest metal-catalyzed fluorination of arylboronic acid derivatives"だそうです。それにつけても、アリールボロン酸誘導体のtransmetalationを回避するっていう発想が凄いと思った二流大出のなんちゃってテクニシャンでした。


2014年5月10日土曜日

メシマズ実験は必然か

昨年、自炊する機会があったんですが、そのときにとあるレシピ本をみながら作った"男料理"のメモです↓

-冷やし豚しゃぶカレーおろしうどん-
-REVIEW-
小学生の子供達にもバカウケメニュー。赤缶カレー、ポン酢しょうゆ、砂糖、ごま油で味付けした大根おろしが鍵。うどんに豚しゃぶを載せて、大根おろしをかけて、最後にカイワレダイコンを載せてフィニッシュ。大根おろしとカレーとカイワレダイコンのシナジーが凄い!



-赤缶カレーライス(画像無)-
-REVIEW-
「赤缶」に書いてあるレシピ。恥ずかしながら、初めてカレーつくったんだけど、レトルトよりは圧倒的に旨い!(カミさんが作ったカレーよりも旨いかも)


-キャベツのカレー炒め-
-REVIEW-
久しぶりに野菜炒め作ったんだけど、キャベツを炒め過ぎたせいか、しんなりし過ぎて全体的にちょっと水っぽくなってしまった(反省)。








-ゆで野菜のカレー風味サラダ-

-REVIEW-
ブロッコリーをラップに包んでレンジでチン。これに赤缶カレー、マヨネーズ、粒マスタード、醤油のソースをよく混ぜ、塩で味を整えておわりの超速レシピ。酒のつまみにも良く、くせになりそう。
レンジでチンしたブロッコーリーにクレイジーソルトを振りかけてたべるのもイケてる。


-ツナと大根のカレー煮-
-REVIEW-
大根とツナだけで出来る簡単レシピ。味付けはめんつゆ、みりん、塩、赤缶カレー。味なかなか良し。







-もやしのカレーナムル-
-REVIEW-
さっと茹でたもやしに赤缶カレー、塩、ごま油で味付けすればオッケーのスピードレシピ。茹ですぎたせいか、シャッキリ感に乏しくなってしまった。以後、気をつけたい。






-豆腐ステーキのカレーあんかけ-
-REVIEW-
子供達にもバカウケメニュー。「カレーと豆腐って合うのかよ?」と疑心暗鬼で作ってみたけど、かなり良かったです。
もともとのレシピでは青じその細切りを載せてるけど、S&Bのパセリで代用。





-バジル入りチキンドライカレー-
-REVIEW-
写真写りはイマイチだけど、子供達に一番受けたメニュー。鶏挽肉、玉ねぎ、カットトマトで超簡単かつスピーデーに出来る。トマトの酸味がフレッシュ感を演出していて良し。







これらの料理は「S&B社員のとっておき赤缶カレー粉レシピ-想像を超える辛いだけじゃない魔法の調味料」に載ってるレシピをもとに作ってみたんだけど、なかなか楽しかったです。個人的にはおすすめレシピ集よ思いました(特簡単なレシピもけっこうあるので、ボクみたいな初心者にもおすすめ)。






閑話休題


こんなまとめサイトを見つけました↓


レシピがあるのに、何故メシマズ?
(http://blog.livedoor.jp/news23vip/archives/4670036.html;
http://ikumamasokuhou.com/archives/37972952.html)


内容はレシピ通りに調理しても、出来上がった料理がマズいという人に対する考察です。

で、レシピ通りに料理してメシマズな人には

(1) レシピを守らない
(2) センスの悪いアレンジしはじめる
(2) アレンジを加えているのに「レシピ通りに作った」と言い張る
(4) やるべきことをきちんとやらない(面倒という理由で手抜きをする)
(5) 調味料を目分量で入れる(計量カップや大中小の匙を使わない)
etc.

具体例↓
<引用開始>
スレ主、彼氏に飯がまずいと怒られる。
彼氏「ニンニク入ってない餃子は認めない!」
→メシマズならレシピ見ろよ
→スレ主「レシピ見てます。レシピ通りに作りました」
→レシピ見せろよ
→スレ主「クックパッドです」
 →レシピにニンニク入ってるじゃん!レシピ通りに作ったんじゃないのかよ!
 →スレ主「ニンニクの代わりに鶏ガラスープ入れました」
→ふぁっ!? 

レシピ通りに作る、それすら守れない。 アレンジ加えても自覚がない。 ニンニク代わりが鶏ガラスープという致命的センスのなさ。 こうやってメシマズが生まれるんだとわかった。 お前ら説明書読まない女に注意しろよ。 メシマズの可能性が高いぞ。
<引用終了>


といった特徴があると言います。率直に言って信じ難いけど、ボクにも同種の心当たりがあります(ウチのカミさんはメシマズではありません)。といっても、それは料理の話ではなくて、有機合成の話です。

仕事(=テクニシャン)がらトレース実験をすることが多いのですが、よく

(実験ノートに)書いてある通りに実験したけど、上手くいかなくて再現性がなかった

という人がいます。

でも、よくよくそういう人の実験ノートをみてみると、全然書いてある(レシピ)通りに実験してなかったりするんですよね。まさに、

(1) レシピを守らない
(2) センスの悪いアレンジしはじめる
(2) アレンジを加えているのに「レシピ通りに作った」と言い張る
(4) やるべきことをきちんとやらない(面倒という理由で手抜きをする)

といったことが励行(?)されているのです。ボクはこういった実験をメシマズ実験と呼びたいと思います。
(ボクはトレース実験するときは、基本的に過去に実施された同種の実験ノートは全部目を通すのでメシマズ実験があるとすぐ分かる)


そもそも、レシピ(実験ノート、実験項、マニュアル)通りに追試実験をするっていうのは極めて難しくて、厳密には全く同じ実験を実施するとこはまず不可能にだとボクは考えています。有機合成実験に限って言えば、原料・副原料品質、反応温度、昇温速度、熱履歴、滴下時間、スケーリング、濃度、撹拌効率、滴下速度、etc. etc. etc......と制御すべきパラメーターは多岐に渡り、その全てをコントロールするのが至難であることに加えて、それらの情報を適切にコミュニケートすることも同様に難しいです。そして、多少アバウトに実験をやってもそこそこ再現性を担保できるのは、有機合成化学がサイエンスであり、先達の知恵によってそこそこ堅牢なプロシージャーが構築されてきたという過去の遺産にあぐらをかいているに過ぎないと思います。

最近科学界を騒がせている小保方晴子さんのようなメシマズ実験ノートしか書けなくてドヤ顔してる人や、上述したような科学に対して真摯に向き合っていないメシマズ実験科学者は悔い改めて欲しいと思います。

2014年5月5日月曜日

Friedel-Crafts Alkylationは実用的足り得るか?

2-3年前に浅草の尾張屋本店に行ったときのメモです。

-尾張屋本店 もり(600 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
蕎麦はスナックライクな感覚と個人的に感じる面白い食感の蕎麦と歯切れで、「信州戸隠おびなた蕎麦通のそば」に似ていると思いました。
ツユは甘めだけど、bodyもあって良い。
支店(http://researcher-station.blogspot.jp/2010/07/blog-post_18.html)が神谷バーの近くにあるんだけど、気のせいかもしれないけど本店の方が蕎麦がしっとりしている気がした。あと、支店は食堂って感じだけど、本体はシックで上品な造りで、接客も本店の方がよりホスピタリティに優れている。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Trifluoromethanesulfonic Acid Catalyzed Friedel-Crafts Alkylation of 1,2,4-Trimethoxybenzne with Aldehydes or Benzylic Alcohols
Org. Lett., 2013, 15, 2494-2497.


Friedel-Craftsタイプのアルキル化のお話です(Symmetrically substituted di- and tri-arylmethaneの合成)。
18 examples, up to 97% yield

Friedel-Craftsと言えば、実務面では"アシル化"が重宝される一方で、"アルキル化"はその特性からイマイチ使えないヤツと考えられていると思います。要は、芳香環上への求電子剤のポリアルキル化がネックになるからなんですが、本報ではその発想を転換させています。すなわち、同一炭素上にカルボカチオンを連続的に発生させ、逐次Friedel-Crsftsを起こすことで複数のアリール基(求核剤)を導入し、対称性の高い化合物を合成しています(多分)。

このstrategyを見出す発端となったのがこちら(rubromycin類の合成研究の一環)↓


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で、これまでのSymmetrically substituted di- and tri-arylmethaneの合成法は量論量のLewis酸やBrønsted酸が必要だったり、キツイ反応条件が必要なようです。

最近、ヨウ素が触媒する反応が報告されていますが、反応に長時間を要するのがネックのようです(だいたい72時間)↓
Tetrahedron Lett., 2009, 50, 6012-6015.

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ところで、TfOHを使ったFriedel-Craftsアルキル化なんて過去に山の様に報告されてるんじゃないのと思うわけですが、実際TfOHを使用した報告例は1972-2013年にかけて沢山あるそうですが、求電子剤にアルデヒドを使って"Symmetrically substituted methane"を構築するというコンセプトが新しいんだろうと思います(多分) 。

さて、この反応の適用範囲ですが、

electron-poorなアルデヒドは(当然)、high yield。エノール化するアルデヒドは僅かに収率が低減。立体障害の大きい基質の場合は、まあそれなりの収率(R = tert-Buで58% yield)。

あと、アルデヒドじゃなくてジメチルアセタールでもオッケーで、ケトンとは反応しません。これ↓

あと、光学活性な天然物合成の例((-)-Tatarinoid C)↓

反応中にシリル基が切れるのは不可避です(それによってアルデヒドのオリゴマー化 が進行し、収率が低減しているのかもしれない)。収率はイマイチですが、ラセミ化は起こりません。

求核剤が1,2-dimethoxybenzeneだとかなり活性が下がり、アニソールではもっと下がります(かなり電子リッチでないと厳しい)。

上述したアルデヒドのdouble arylationは対応するベンジルアルコール中間体を経由して進行するものと考えられるので、ベンジルアルコールのアルキル化、アリール化も進行します↓

ターゲットや基質は限定・制限されると思うけど、ハマればパワフルで実用性に足る反応と思いました。

その辺にある試薬の組み合わせでも案外やられてない反応ってあるんだなと改めて感じた二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。