行動経済学に関する本を読んでみました。「セイラー教授の行動経済学入門」という本で、原題は
The Winner’s Curse
Paradoxes and Anomalies of Economic Life
です。
「勝者の呪い」ということですが、これは本書の第5章で解説されているテーマで、オークションの勝者は敗者になる呪いをかけられているというパラドックスです(競売の勝者は、常に平均的な入札額から最も乖離した、どの入札者が推定した市場価格よりも高値で落札することになる)。
例えば、小銭が詰まった広口瓶をセリにかけると、
(1) セリ値の平均値は、硬貨の総計額をかなり下回る
(2) セリに勝った者の言い値は、広口瓶の中身の価値を上回る
こと請け合いなのだそうです。
鍵を握るのは、認知上の錯覚だとか。
ちなみにこの本は13の経済理論のパラドックスを扱っており、経済学スーパー初心者級のコンキチの脳ミソには難しい内容で、帯に書かれている軽そうな文言とは裏腹にけっこう硬派な内容と思いました(コンキチには難しかった)。
まあ、その中でも、
a) 産業間賃金格差(第4章)→均等性に引きずられる
b) 損失回避(第6章)→現状維持バイアス、保有効果(機会費用の軽視)、損失回避性(損失が利益より強く評価される)の解説
c) 選好の逆転現象(第7章) →選好順位は、選択や判断を下すプロセスのなかで構築されていく
d) 期間選択(第8章)→割引率は時間の経過とともに低下する。人々は常に以前立てた計画以上に現在の消費をしてしまうという現在志向バイアスとかの解説。また、人びとの割引率は、損失よりも利得の方がはるかに大きいという。
は比較的容易に理解でき、かつ興味深いトピックスであると重いました。コンキチ的には「選好の逆転現象」が一押しですね。全く同じ内容の質問でも、文脈の違いで、その問いに対する回答(選好)が逆転するという奇異的事実が例証されています。とても興味深いです。
例えば、
H: 4ドル当たる確率が9分の8 (期待値 3.6ドル)
L: 40ドル当たる確率が9分の1 (期待値 4.4ドル)
という二つの賭けの一方を選ばせた場合、
実験参加者の多く(71%)がHの賭けを選ぶ
のだそうです。
一方、それぞれの賭け札を自分が持っているとして、いくらなら売っても良いかという最低価格の値段を求めると、
大部分の実験参加者(67%)がLの賭けに高い値をつける
という結果だったそうです。
正しく、人は必ずしも合理的ではないということの証左です。はっきり言って、なんて人間は不完全で、情緒的なのだろうという事実が窺えて楽しいです。
ついでに、期待値マイナスの宝くじに大勢の人々が群がるのは、「Lに高い値をつける」と同義なのかななんて思っちゃいました。
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