過去(1982-1995)に英語で発表された10本の論文と5本のコラムから構成される全11章の訳本です(8本の論文は今回初の邦訳)。
ちなみに、本書の第1章「競争は戦略の目的ではない (Getting Back to Strategy)」は、1988年にHarvard Business Reviewに発表された論文で、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2007年2月号にその邦訳が初めて掲載されました。この論文はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2007年2月号で1度目を通していた論文で、今回は再読ということになりました。この間、M. E. ポーター教授の著作をはじめとする幾冊かの経営学&戦略論チックな書籍に目を通してきたのですが、そのためか(どうかは分からないけど)新たな気付きがあったように思います。なので、とりあえず気になったことをメモしてみようと思います。
1) 競争のない市場の創造
「同業他社との競争」を演じるよりも、「競争のない市場の創造」の方がより優れた戦略だということを述べています。まさにブルー・オーシャン!「ブルー・オーシャン戦略」のように具体的な方法論は書いてなかったけど、1988年の時点で、腕自慢の経営者が競争に打ち勝とうとする傾向諌め、競争のない市場で先行者利益の恩恵に預かる戦略を提案しているという慧眼ぶりには敬意を表さずにはいられません。
2) 事例研究 <ヤマハ>
(当時)ピアノの販売市場は縮小の一途を辿っていたそうです。ジリ貧ってやつです。ここで、ヤマハの経営陣は顧客と製品(ピアノ)の置かれている現状を観察・熟慮するし次のことに気が付いたそうです。
a) 自動演奏ユニット (かつてのそれは音質が悪かったが、デジタル技術と光学技術で高音質を実現。イノベーション・エコシステムに似てるなあと思った。)
b) 気付かれずに埋もれていた調律市場(さらにピアノ職人に調律師というチャンスを提供できる)
で、大前氏はこんなことを宣っています。
「音楽鑑賞は以前より人気がある。多くの人々が通学中も通勤中もイヤホンをつけて、四六時中音楽を楽しんでいる。けっして音楽への関心が低下したのではなく、何年もかけて演奏の練習をすることに興味がないだけだ。」
と。
3) 帰納的アプローチ
大前氏は、
ポーター流のポジショニング論は演繹的アプローチ(コンキチは必ずしもそうとは思わないが、どちらかといったら力強く演繹的かな)で、顧客ニーズありきの戦略を帰納的なアプローチ(確かにそうだね)であるといっています。戦略とは競合企業を打つまかすことにあるのではなく、顧客を満足させることにその本質があると言います。全くの正論ですが、このことを理解していない人がけっこういると思う。顧客ニーズへの対応なんていうことは、口では簡単に言えます。誰にでも言える。でも、重要なのはそれを実際のオペレーションにブレーク・ダウンしていくことだと思う。顧客ニースと声高に叫んで、他社製品の分析におあけくれていては論外ということでしょう。例えば(バブがメガヒットした当時の)花王は、肌や毛髪のケア、血行促進に関するR&Dに多大な投資を傾ける一方、他社のトイレタリー製品にはあまり注意を払っていなかったのだっそうです。
4) 付加機能をつけることが有効な場合
同業他社の製品を模倣してあれもこれもと必ずしも必要ではない機能を付与する戦略の誤謬は氏も指摘するところですが、機能の詰め込みが有効な例が示されています。例えば、日本の家庭のように狭い住環境においては、機能を集約したコンパクトな家電製品が受け入れられ易いかもしれない。
(でも当然、模倣容易なものだったら長期的な競争優位は確立できないよね。あと、アメリカとかのリッチマンの大邸宅にはそぐわない。)
とまあ、今回(第1章)の感想はこんなところです。
今、半分くらいこの本を読み進めましたが、かなり凄いことが書いてあると思います(発表されたのがかなり昔であるにもかかわらず)。全ての社会人が一読すべき本といっても過言ではないと思う。っていうか、高校とか大学で訳分かんない授業されるより、この本を与えて生徒にディスカッションさせた方が全然いいと思う二流大しか入れなかったなんちゃって研究員なのでした。
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