2014年9月28日日曜日

tert-ブチル基の化学 (3)

まだ寒い時期に浅草のまぐろ人に行った時のメモです↓

-まぐろ人雷門出張所memo-

-赤身 (160 JPY/KAN)×2-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
あっさりとしていて、適度に酸味があって普通に旨い。変な脂臭さも全くなし。

-生くじら (160 JPY/KAN)×2-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
とっても瑞々しくて、柔らかくて、しっとりしていて、くじら(ほ乳類)らしい濃い滋味深い味わい。

-コハダ (140 JPY/KAN)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
まあ、なかなか良かった。

-〆サバ (140 JPY/KAN)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
まあ、なかなか良かった。

-ホタルイカ-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
普通。

-生ガキ-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
軍艦ではなくて、もみじおろしとポン酢がかけられて握られている。とっても瑞々しくて、もみじおろしとポン酢が牡蠣の旨味を引き出している。

-生しらす-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
普通に美味しい。

-石ガレイ-
-RATING- ★★☆☆
-REVIEW-
ちょっと身が硬くて、スジがある。味自体は好ましい淡白な味で美味しい。

-づけまぐろ-
-RATING- ★★★☆
-REVIEW-
柔らかくて、しっとりしていて、とても美味しい。ロースト・ビーフを想起させつつ、しっかりと鮪の味を堅持している。

あと、ボク的には、シャリの硬さがちょっと気になるくらい硬かったです。


閑話休題


前回のブログの続きで、tert-ブチルエステルの合成法についてメモします↓(Recent Developments on the Synthesis and Cleavage of tert-Butyl Ethers and Esters for Synthetic Purposes and Fuel Additives Use (Current Organic Synthesis20129, 137-148.)のメモの続き)


tert-ブチルエステルの合成法の項のイントロ部分に酸クロ法とか縮合剤を使った情報が。Green's Protective Group in Organic Synthesisに記載されてるって書いてあったので、そいつをサーチしてみました。結果 (イソブテン使用は除く)↓

(1) Fischerのエステル合成(H2SO4, MgSO4)
(2) 酸クロ法 (カップリングパートナーがLiOtBuっていう反応や、(Boc)2O, t-BuOH or THF, DMAP, 99%yieldっていうのもあり)
(3) t-BuBrとの反応
(4) dehydrating reagent: (Me2N)(Cl)CˆN+Me2Cl-; CDI; Bu3PI2, HMPA; EDCl; EDC, HOBt; 2-Cl-3,5-(NO2)C5H2N; BOP; DCC;
(5) t-BuOH以外のt-BuOソース: i-PrNˆC(O-t-Bu)NH-i-Pr; Cl3C(t-BuO)CˆNH; (t-BuO)2CHNMe2; t-BuOCOF
(6) メチルエステルからのエステル交換反応(sulfated SiO2; MTBE, H2SO4, molecular sieves; t-Butyl acetoacetate, cat. H2SO4)

まあ、何れの方法もけっこういい収率で目的物を取得しているようですが、前に読んだ文献に「Oxymaベースの試薬のみが、tert-ブチルアルコールのような三級アルコールのアシル化が可能」(http://researcher-station.blogspot.jp/2014/08/blog-post.html)って書いてあったので、特に縮合剤の場合は基質を選ぶのかもしれません。


で、この文献にはGreenの本に書いてあるもの以外の合成法が紹介されています↓


acidic alumina, sulfur, Zinc dust
rt., 1.5-2 hr, 68-90%
Synth. Commun., 2001, 31, 535-537.


有機金属試薬と Boc2Oの反応
66-99% except for 3,5- and 2,6-dibromopyridine
3,5- and 2,6-dibromopyridineだとcomplex mixtureを与えるそうです。
Tetrahedron Lett., 2008, 49, 2034-2037.

Tetrahedron, 2009, 65, 134-138.


Mg塩を使った反応
Mg(ClO4)2
3 examples, 91-96%
この反応条件では、Boc2Oが不安定なため、過剰のBoc2Oが必要
Adv. Synth. Catal., 2003, 345, 943-947.

MgCl2
9 examples, 55-97%

Synthesis, 2007, 3489-3496.


あと、こんな反応も↓
50-96%
マイルドな反応条件で、官能基許容性が高い
Synthesis, 2009, 627-635.

今回のメモは以上。

tert-ブチルエステルの切断につづく.....

2014年9月27日土曜日

tert-ブチル基の化学 (2)

4月に行ったお寿司屋さん(ランチ)のメモです↓

-魚河岸寿司 松にぎり (1,080 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
多分、鮪、勘八、平目、海老、真鯛、雲丹・イクラ、鰯、鯖、青柳、帆立の10貫。あら汁、メロン付き。
は全体的に柔らかく、脂臭さの全くないjuicyな脂が広がる(★★)。
勘八はしっとりねっとりした舌触りの中に、プリッとした角の立った食感が良い(★★)。
平目は紫蘇の小片が挟んである。これがとても合っている。平目の食感と柔らかめのシャリが合っていないと思う(★★)。
真鯛にも紫蘇の小片が挟んである。こちらは紫蘇の香りがキツく感じられてイマイチ。鯛自体は淡白でしっとりとした食感でヨシ(★★★☆☆)。
雲丹・イクラのmix軍艦は小宇宙的ハーモニーgood(★★★☆☆)
の上には生姜と葱。口に含むと柑橘のフレーバーがはじけ、freshな鰯とのハーモニーが秀逸(★★)
も生姜と葱が載せられている。〆加減はまずまず。これにも柑橘のフレーバーが仕込まれているんだけど、この柑橘フレーバーが青魚にとてもマッチしてると思った(★★)
青柳は酢が良く効いていて、creamy & juicy。クリーミーさと酢のキツさがベストマッチ。
海老帆立は普通に美味しい(★★)
味噌仕立てのあら汁は炙った魚の芳ばしさと滋味深さが良く出ている。中に入っている魚には多少肉がついていて、塩味がきつめで深い旨さを醸し出している(★★)
ボク的にはシャリがちょっと気になるくらい柔らかいなと思いました。これで1,080円ならコスパは高いと思いました。


閑話休題


前回のブログの続きで、tert-ブチルエーテルの脱保護についてメモします↓(Recent Developments on the Synthesis and Cleavage of tert-Butyl Ethers and Esters for Synthetic Purposes and Fuel Additives Use (Current Organic Synthesis, 2012, 9, 137-148.)のメモの続き)
(エステル、炭酸エステル、カルバメートと反応する条件もあるので注意)

tert-ブチル基は、対応するカルボカチオンの安定性により、他のエーテルより容易に除去可能です。

acid-catalyzed deprotection


Amberlist-15, p-TsOH immobilized on SiO2 (Org. Lett., 2007, 9, 2637-2640.), 85% H3PO4 (5 eq.くらい必要 J. Org. Chem., 2006, 71, 9045-9050.), ZnBr2 (5 eq., シンプルなtert-ブチルエーテルをmild conditonsで脱保護, Tetrahedron Lett., 2000, 41, 2847-2849.), CeCl3/NaI (官能基許容性高い Adv. Synth. Catal., 2006, 348, 905-910.), MoCl5, WCl6, NbCl3, TaCl5 (very efficient catalysts, Tetrahedron, 2002, 58, 7327-7334.)。

Moが触媒する反応のメカニズムはこんなふうに考えられています↓
Tetrahedron, 2002, 58, 7327-7334.

あと、PhMe2SiH (1.2 eq.)とtrirurhenium cluster (3 mol%)により中性条件で開裂↓

70-95%
Eur. J. Org. Chem., 2010, 1021-1025.

光で開裂なんてのもあります↓


全てのケースでFries転位タイプの副生成物が副生します。
J. Org. Chem., 2000, 65, 4162-4168.

今回のメモは以上。

tert-ブチルエステルの合成につづく.....

2014年9月23日火曜日

tert-ブチル基の化学 (1)

2月にランチで行ったお寿司やさんのメモです↓

-神田いろは鮨 にぎり 大盛 (1,000 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-RAVIEW-
赤身3貫、(多分)いなだ、白身、中落ち(?)軍艦、玉子、烏賊、蛸、カッパ巻、鉄火巻。赤身、白身、いなだには煮切りが塗られており、烏賊、蛸には詰めが塗ってある。
赤身は3貫とも同じものではない。中ぐらいの厚さで少し筋張った赤身、少し薄めに切り出されしっとりとした食感でjuicyかつコク深くさっぱりすら赤身(これは旨い)、肉厚でかなり筋の入った赤身(煮切りだけでは足りない)。何れも優しい酸味が味わえる。
(多分)いなだはしっとりして脂っぽさもくどくなくてなかなか旨い。
白身も旨い。煮切りの優しい味が映える。
烏賊(細かく包丁が入っている)とは詰めとの相性がベストマッチでとても旨い。
(多分)中落ちはoily, creamy, fattyで口の中にjuicyさが広がるも、ちょっとくどくてボクの好みではな。
酢飯はちょっと硬めで、味は好みに味。ワサビは多分粉ワサビだと思う。セットでついてくる味噌汁はもしかしてだけど、なんか人工的な味のような気がした。
夜行けば値段も高くて旨いネタが出るのかもしれないけど、1,000円ならこんなもんかなと思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Recent Developments on the Synthesis and Cleavage of tert-Butyl Ethers and Esters for Synthetic Purposes and Fuel Additive Use 
Current Organic Synthesis, 2012, 9, 137-148.

tert-ブチルエーテルとtert-ブチルエステルの合成法(保護)と開裂法(脱保護)の総説です。

tert-ブチルエーテル合成のメモまとめ

tert-ブチル基は強塩基性条件下でも極めて安定なので、アルコールの保護基として用いられます(ボクはtert-ブチルエーテルを合成したことないけど)。tert-ブチルエーテルの古典的な合成法としては、イソブテンやtert-butyltrichloroacetimidateを用いた方法があるそうですが、前者は気体を取り扱わなければならず、後者は副生するtrichloroacetamideのクロマト精製が困難になるというデメリットがあります。また、フェノール類にWilliamson合成でtert-ブチル基を導入しようとすると、Friedel-Crsftsアルキル化が支配的に起こってしまいます。

ということで、以下、最近のハンドリングしやすく改善されたであろう合成法をメモしていきます。

Unusual decomposition of Boc2O in the presence of magnesium perchlorate (Mg(ClO4)2)

primary-, secondary, benzylic-, allylic-, homoallylic-アルコール・フェノール類で有効。tertiaryアルコールはダメ。

Boc-アルコールとtert-ブチルエーテルが生成する可能性がありますが、これはperchlorateやtriflateといった負電荷が高度に非局在化したアニオン部を持つLewis酸を用いることで、エーテル形成が支配的になります。即ち、むき出しになった金属イオンがAの酸素アニオンを強くバインドしpath b経由で反応が進行します。
因に、イソプロポキシド(undelocalized)やアセテート(low-delocalized)だとBoc-アルコールの生成が優先するそうです。
Org. Lett., 2005, 7, 427-430.; J. Org. Chem., 2006, 71, 9580-9588.


tert-Butylbromideと鉛を使った反応


Synth. Commun., 2007, 37, 2891-2896.; J. Chem. Sect. B: Org. Chem. Incl. Med. Chem., 2008, 812-816.


過塩素酸が触媒するtert-Butyl acetateとの反応

primary, secondary, cyclic alkyl alcohol → good result
tertiary alcohol → eliminatiomがメイン
Synlett, 2010, 212-816.


Cross-Coupling

(1) Watanabe et al.
Conditions:   PtBu3 / Pd(OAc)2 (3 mol%), xylene, 120˚C
Yield:   60-94%
p-methoxyや3,4-dimethoxyのような強い電子供与性置換基を有する基質では、脱ハロゲン化が起こり低収率。
Tetrahedron Lett., 1999, 40, 8837-8840.

(2) Hartwig et al.
・PtBu3 / Pd(dba)2 (2-5 mol%), toluene, 85-110˚C → 62-84% yield (J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 3224-3225.)
・dbpf / Pd(dba)2 (2-5 mol%), toluene, rt. → 77-98% yield。強い電子供与性置換基があると低収率。(J. Am. Chem. Soc.2000122, 10718-10719.)

(3) Parrish et al.
dialkylphosphinobipheny ligand / Pd(OAc)2 (1-2.5 mol%), 65-90% yield
4-methoxy-, chloro-, bromobenzeneが ca. 85%で対応するエーテルに変換


tert-ブチルエーテルの脱保護につづく.....

人口と国債は不都合な真実

GWに行った浅草のお寿司屋さんのメモです↓


-紀文寿司 寿司 並 (2,380 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
多分、赤身、青柳(?)、鰹、烏賊、〆鯖、蝦蛄、穴子、玉子の8貫。
赤身はねっとりとしていて、反発感がある食感。歯切れがよく、味も濃いて旨い。表面に塗られた煮切りは上品。もしかしてだけど、やんわりづけにしているかも?
青柳(?貝類は輪をかけてよくわからない)は煮切りが塗られていて普通に美味しい感じ。
はとっても柔らかくて、juicy。生姜の上にも煮切りが塗ってある。
烏賊は歯切れの良さが楽しめて、淡白さを存分に味わえる。上品に甘しょっぱい煮切りがイカを凄く引き立てている。これは凄い。
〆鯖はひたすらdeliciousな味。滋味がspill-overしてくる。煮切りが塗ってある。
蝦蛄自体特別好きじゃないんだけど、塗られたツメが絶品。凄く濃厚なツメは甘いんだけど、けっこう硬派な辛さも感じる。
穴子はとってもふっくら柔らかい。提供前に軽く炙ってくれるのがうれしい(だた、やっぱりオレって白焼きしか愛せないんだなと思った)。
玉子は芳ばしいroast noteがほんのり漂うい、食感も楽しめる(ボク的にはしっとりした方が好き)。
あと、シャリは硬めなんだけど、食べるときに硬さは気にならず、ハラハラと口の中で小気味良くお米がほどけていく感じがして好き。この"シャリ"が「寿司」をトータルに引き立てていて、頬張るのが楽しいお寿司と思いました。それから、山葵は握る直前に都度すりおろしてくれます。で、おろしたてなのに、寿司を頬張っていて山葵が単独では殆ど主張していない。あと、生姜はかなり辛くて硬派な味。お寿司は1-2個づつ握って出してくれて、基本的に醤油が不要で完成度が高いです。個人的には、鰹、烏賊、鯖が特にexcellentと思いました。これで2,380円とか、かなりコスパが良いと思いました。


閑話休題


最近、日本国債残高が1,000兆円を超えたらしいですね
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18H5G_Y4A910C1000000/

あと、日銀の国債保有残高が215兆円らしいじゃないですか(6月末で215/1023=21%, 前年比43.8%増)。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18H5G_Y4A910C1000000/


さらに、プライマリー・バランスはずーっと大赤字です
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h25pb.pdf


これって、財政ファイナンスなんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょうか?


ついでに中国は日本国債を売り越してるらしいじゃないですか。
http://www.nikkei.com/markets/features/26.aspx?g=DGXLASFL19H8Y_19092014000000


とりあえず、超ウケます。


そして、今後の大きなトレンドとして、我が国の人口(特に就労人口)が下降するのは必定。


日本の人口動態(人口)予測はこんな感じ↓
2010年から減少
2030年   1億1500万人 (65歳以上老年人口比率 31.8%)
2050年   9500万人 (65歳以上老年人口比率 39.6%)

で、日本の借金(国と地方の債務合計)↓
1994年   450兆円
2000年   700兆円
現在   1000兆円超


要は、日本は税収の源泉である就労人口が激減していて、社会保障費を使いまくる老人が増加しているのに、借金は増えまくっていて(年間50兆円のペースで増加)、減る気配が全然ない。我が国の財政規律は弛緩しきっているように思えます。

まともな人間なら"日本の借金は増えることはあっても減ることはない"(借金を返す気がない)と考えるはず。

それにも関わらず、我が国の財政破綻に対する世間の危機感は殆ど感じられないように思います。

さらに、4月の消費増税後、実質賃金はDownして、GDPはマイナス成長。消費支出の落込みも相当なものらしいじゃないですか。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GX03I20140902
http://biz-journal.jp/2014/09/post_6099.html
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/mplus/news/post_73792


昨年は、GDPデフレーターの増加率がマイナスなのに増税し、今年はというと日銀総裁(権限ないよね)までもが増税(消費税率10%)する気満々のようです。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NBDBHX6JIJUS01.html


はっきり言って、「日本ってオワコンなんじゃね?」って思うんですけど、どうなんでしょうか?


ところで、最近、橘玲の「臆病者のための億万長者入門」を読了しました。

この本ではいろいろ興味深いことが書いてあるんだけど(上述した国家財政や人口動態の件もこの本に書いてある)、人は

「不都合な真実から目をそむけたい」

っていうのがあります。まあ、不都合なことを正視することは、はっきり言って愉快なことではないですからね。不都合なことに正攻法で立ち向かえば損する可能性大だし、放置プレイ(問題先送り)すれば、自分が手を汚さなくても他に誰かが解決したり、社会情勢の変化によって勝手に解決されることもありますから、目を背けることはある意味合理的な選択かもしれません。

で、我が国において、財政問題は最も大きな"不都合な真実"の一つだと思うんでうよね。でも、不都合なるがゆえに、なんだかんだ理由をつけて、のらりくらりと借金をして(増やして)、その場しのぎしている(問題を先送りしている)とボクには感じられます(いまのところ先送りしている間に問題がもっと大きくなって、借金が1,000兆円超えちゃった)。

でも、結局、借金って便益の先食いじゃないですか。いつかはブレーク・イーブンしないといけないものと思います。国家はゴーイング・コンサーンの最たるものだと思うので、借金に対するキャパシティーは相当デカイとは思いますが(おまけに徴税権がある)、ものには限度があると思うんですよね。 

といことで、日本の財政破綻に備えて、JGBS (PowerShares DB Invrs Jpn GovtBd Futs ETN)を地味に購入している二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

今からじゃ信じられないかもしれないけど、消費税も国の赤字国債も無かった時代があったんだよね。




2014年8月31日日曜日

縮合剤の値段(軽く)調べてみました

ここ四ヶ月間艦これをやり過ぎたせいか、視力が激しく減退してしまったオタッキーのコンキチです。


先日(8月上旬)、夏の風物詩"新子"を食べてきました。初めての"新子"だったんですが、なかなか良かったです。まあ、寿司屋で食べたんですが、その寿司屋は数年前まで何回か飲み会で使ったことがあったんですが、最近になってランチにジャブ程度に通いはじめています。ということで、"新子"かたがた最近食べたものをメモしてみます↓

-新子の握り(三枚付け, 二貫) (税別 600 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ほのかな甘い香りを伴った、乾いた小肌様の匂がやんわり漂う。ネタの新子はこの世のものとは思えないほどの柔らかさで、赤ちゃんを想起するほどの繊細さだ。口の中では仄かな甘味が広がっていく。酢の刺激や塩辛さは殆ど感じられず、食感も味もとても繊細で、かなりハイブローな味。
シャリは温かみがあり(nearly人肌)、柔らかめ。一貫食べた後くらいに硬さが安定してBestな状態になるような気がする。
ボク的には、新子より普通の小肌の方が分かり易い旨さで好きかな(っていうか、オレって世の中で小肌が一番好きだけど、小肌の匂いは好きじゃないんですよね。だから、酢で小肌の匂いがかきけされてる方が好みかも)。

-にぎり 並すし (税別 1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(多分)赤身、イカ、鰹、玉子、鉄火巻(3種)、タコ、海老、小肌。
赤身はかなり旨い。juicyで張りのあるしっとり感がたまらない。
イカは飾り包丁が入っていて美しく、透けて見えるほど薄い。そして、この薄さがいい。イカの淡白で弾力のある旨さを存分に味わえる。ネタのシャリの間には海苔と山葵が仕込んであって、イカの食感、淡白さ、海苔、山葵の相性の良さが爆発している
鰹は凄くfreshでcreamy。深みのある味わい。食感はとても柔らかく、もの凄くあっさりした淡白なローストビーフのよう。
玉子はデカ旨。
立てかけてある野蒜ライクな漬け物が箸休めにとっても良い。漬かり具合が抜群の塩梅で、しゃっきりとした食感。食べると口の中がすっきりする。とても美味しい。
鉄火巻がまた凄く旨い。鮪と一緒に胡瓜、芽ネギ、紫蘇が巻き込まれた三種類。まず鮪が美味しい。そして、胡瓜、芽ネギ、紫蘇それぞれとのハーモニーが楽しめる。
タコのお寿司には山葵がけっこう効かせてあって良い。多めの山葵の量が薄めに切り出された煮ダコにBest Match!!!山葵との相性が抜群な海苔が巻いてる仕事に細やかさに感動。
小肌の細工がとっても綺麗で見ていて楽しくなる。酢の加減がとても良く、舌触りは滑らか。とっても旨い。

-ばらちらし (税別 1,300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
(多分)赤身、海老、蟹、蛸、椎茸を基調に具を誂えたばらちらし。はっきり言って、旨い!大根の新香、刻み葱、ブルーベリー、牛蒡の新香、とびっこ等がアクセントになってとても良い。基本的に具(ネタ)はどれもプリプリしていて美味しいんだけど、特筆すべきは椎茸と牛蒡と思いました。
煮しめされた椎茸の味付けが感動的に素晴らしくって、その柔らかい甘さは筆舌に尽くしがたい。あと、牛蒡の新香が破滅的に旨い!
それから、前述したようにブルーベリーが載ってるんですが、最初、「おいおい鮨にブルーベリーかよ?」って思ったんですが、果実味溢れるブルーベリーの酸味が良いアクセントになって、口直しに最適でした(違和感が全くなかった)。
あと、山葵に注目。ちらし用の山葵は粗くすりおろされているのかつぶつぶ感がある。充分な辛味に加えて、芳醇な甘味が感じられ、ちらし寿司が引き立っていると思う。

-並ちらし (税別 1,300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
具は(多分)赤貝ひも、牛蒡の新香、蛸、鯛、鱸、海老、干瓢、沢庵、鰹たたき、玉子、烏賊、赤身、椎茸など。
赤貝ひもはチュルンチュルンのプリュっとしていて旨い。牛蒡の新香は鉄板の旨さ。(多分)鯛は上品でしっかりした旨味の淡白さで、きめの細かい食感。(多分)鱸は鯛よりもより淡白で弾力と張りがある。やや筋張った感じがあるところがちょっと残念。干瓢はやや濃いめの味付けだけど、凄く旨い甘さで感動的。くすんだ山吹色の沢庵はボク好みの濃いめの味。(多分)鰹たたきは上品な香ばしさ、しっとりとした食感、落ち着いた酸味で超絶旨い。玉子のボリュームは重厚ながら控えめで上品な甘さがGood。赤身は(メバチマグロなのだろうか?)しっとりjuicyで、酸味と甘味が楽しめて美味しい。


あと、ランチの握りやちらしはセットになっていて、茶碗蒸しとお椀とサラダが付きます。で、ここの店の茶碗蒸しがちょっと変わってて面白いんです。コーンとチーズが仕込んであるんです(だだボクの大好きな銀杏が入ってないのは残念)。


-生ビール 中(税別 600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アサヒの生ビール。泡もビールももの凄くクリーミーで、とっても柔らかい舌触り。全体的に淡い味ながらも、圧倒的なcreamy感が旨さを押し上げている。あと、醸造酒って生ものにあわせるのがけっこう難しいと思うんだけど、ここのビールでfishy aftertasetを感じることは全くなかったです。

ちなみに、この店の大将は横浜銀蝿のヴォーカルを彷彿させる容貌で、二代目は三瓶をスリムにして超絶かっこ良くした感じの坊主頭です。それにつけても千円ちょっとでこんなに旨くてセンスのいい盛りつけのメシが食えるなんて加山雄三ばりに幸せだなって思う今日このごろです(今月もカミさんと一緒にランチに行く予定です)。


閑話休題


全開の記事繋がりで、トリアゾール系縮合剤とOxyma系縮合剤の値段(試薬グレード)を軽くジャブ程度に調べてみました(間違ってるかもしれないけど)。




単位物質量当たりの値段と活性、安全性を考えると、ボク的にはOxymaにもの凄く魅力を感じます(OxymaはChem. Rev., 2011, 111, 6557.でけっこう絶賛されている see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/11/2.html)。

それから、比較的最近開発されたCOMU (Aldrich)の値段が思ったより安くて驚きました。サンプルワークレベルでは十分使える値段と供給量です(それだけ、安全性や活性等に魅力がある証左でもあるのかなと思います)。まあ、それでもけっこう高いわけですが、そのプライシングの高さを克服する処方箋として、「OxymaとCOMUをミックスして使う」っていうのに興味を覚えます(前回ブログでメモした論文に書いてあった http://researcher-station.blogspot.jp/2014/08/blog-post.html)。具体的な条件は調べてないから不明だけど、積極的に調査してみる価値「大」と思いました。(追記 2014.9.23 OxymaとCOMUの混合使用は固相合成の例で、両者ともけっこう過剰量を使用するというもので、ボクが夢想したプラクティカルなものでは全然ありませんでした Org. Lett., 2012, 14, 612-615.)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のSearch Resultでした。


2014年8月24日日曜日

究極の縮合剤を探せ

チバラキ在住のコンキチです。

以前、練馬にあるそば二十三(http://www.soba23.jp)っていう店で出してる"つけ蕎麦"がテレビでやっていて興味を持ったんですが、自分、練馬に行く用事が全くなかったので、チバラキ界隈で件の"つけ蕎麦"を疑似体験できる店はないかとサーチしたところ、ありました。"千葉のシブヤ"と恥ずかしい感じで形容される柏Cityに。で、増税前に行ってきました↓

-つけ蕎麦 六文銭 魚介つけ汁蕎麦(かつお風味) (740 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
麺は田舎蕎麦様の太い蕎麦で、褐色。黒い星も入っている。かなり硬く弾力が凄いが、芯まで粉っぽさは無く、表面はつるつる。
ツユはアツアツで提供され、かつお風味の強い醤油ベースの甘くてやや辛味のある味付けで、ラーメンのスープみたいだ。具は、油揚げ、ネギ、もやし、かつお節、そぼろ。
太く弾力に富む蕎麦をアツアツの汁につけると、蕎麦にやわからみが出てモチモチ感がアップ↑蕎麦とツユのマッチングも悪くない。太い麺に対して、ラーメンのスープライクなややジャンキーでしいこい感じツユが合っている。
ただ、食べ進んでいくうちに、ツユの温度がどんどん下がっていき、おいしさも減↓そいいった意味で完成度は低い。ツユの濃度がおちていく感じがしなかったことは評価できる。(麺は300 gか400 gのどちらかを選択できる)


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

COMU: scope and limitations of the latest innovation in peptide acyl transfer reagents
J. Pept. Sci., 2013, 19, 408-414.

COMUの紹介論文です。

今日までに様々な縮合剤が開発されてきましたが、その中でも最強との呼び声高いのはCOMUでしょう(多分)。


COMUは、優れた脱離能を有するOxymaユニットと、反応性の高いジメチルモルフォリノコアからデザインされたウロニウム型の縮合剤になります(X線や13C NMRからCOMUはウロニウム塩(O-form)であることが確認されている。Chem. Eur. J., 2009, 15, 9404-9416.; Angew. Chem. Int. Ed., 2002, 41, 441-445.)。

ちなみに、OxymaユニットをもつHOTUやTOTUはカップリングにおいてエピ化し難く(Chem. Rev., 2011, 111, 6557-6602.; Ger. Offer. DE 90-4016596, 1991)、高いアシル化能を有します。そして、ジメチルモルフォリノコアを有するHDMB, HDMA, HDMCはその優れたパフォーマンスが知られているようです(Chem. Rev.2011111, 6557-6602,; J. Org. Chem., 2008, 73, 2731-2737.)。


以下、COMUのアピールポイントです↓

(1) Oxyma系試薬の中で最も活性が高い
(2) HOTUより、DMFに対する溶解性が50%高い(ジメチルモルフォリノコアの導入)
(3) HBTU, HATUより、DMFにおよそ4倍とける。HDMCより高い溶解性(Oxymaユニットの導入)

(4) 副生成物(縮合剤のカス)が水に良く溶けて、workupで容易に除去できる
(5) 反応の終点を色の変化で判断できる(用いる塩基に依存する)
(6) 立体障害の大きいカップリング・ジャンクションで、高い反応性(Oxyma部位のフレキシビリティが効いている。これに対して、ベンゾトリアゾールユニットはリジッドである。)
(7) モルホリン環があるので、1 eq.の塩基の使用でオッケー (ラセミ化対策に有効)
(8) ペプチド合成において。HOBt類縁体やHATUよりラセミ化しにくい(Sigma-AldrichのWeb Siteにも紹介記事→http://www.sigmaaldrich.com/japan/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/comu.html)
(9) COMUとOxymaをミックスして使うのもあり
(10) 普通のアミドやエステルの合成においても、HATUやHBTUよりも優れていて、パワフル(Chem. Eur. J., 2012, 18, 9024-9031.)
(11) Oxymaベースの試薬のみが、tert-ブチルアルコールのような三級アルコールのアシル化が可能
(12) 酸のpreactivationが不要
(13) 危険な自己触媒的分解はみられない(Chem. Eur. J., 2009, 15, 9404-9416.)

なかなか使えそうな感じです。値段は58,500 JPY (100g, Sigma-Aldrich; Mw. 428.27)。サンプルワークレベルでは充分活躍できそうな試薬と思いました。

(オレも1回使ったことあるけど、反応速かったです。あと、色も変わりましたね)

F(エフ) II

艦これはじめてぼちぼち4ヶ月。昨日、雲竜GETしたオタッキーのコンキチです。


昨年の冬に行った焼肉屋のメモです(3年前にも行ったのでそのときのメモも一緒に)↓

-焼肉処 くらちゃん memo-

-和牛中トロにぎり (455 JPY/1貫)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
はっきりいって、熱がかかってない状態だと旨くないなよ思いました。

-特上あぶりにぎり鮨 (455 JPY/1貫)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
牛肉が炙られて活性化してましたが、シャリが全然ダメ。やっぱ、素人さんが握っても握りになってないと思いました。

-レバー刺し (849 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW (規制される前)-
ちょと肉厚にカットされているため、食感が悪い。もう少し薄切りにした方がいい。

-馬刺し (903 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
お馬さんは鉄板の旨さ。

-くらコロホルモン (860 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
名前は似てるけど、シロコロホルモンとは全くの別もの。シロじゃなくて、ギアラって感じ?

-国産牛ホホ焼 (725 JPY)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
硬かったり、筋張った部分があったりと、あまり楽しめなかった。ツラミ好きのボクとしては非常に残念

-野菜焼 (525 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
玉ネギ、ネギ、しいたけ、人参、ナス、サツマイモの盛り合わせ。とてもおいしい。サツマイモって大人にあってから、バフバフ感が嫌で、食べれなくなったんだけど、これは旨かった。あと、玉ネギ、ネギ、しいたけがexcellentに旨い。

-牛サガリ (840 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
柔らかくも、適度な噛みごたえがあって、噛むほどに旨味が染み出てくる感じで良い。

-鹿児島産地鶏刺し (945 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ちょっと食べにくいところもあったが(噛み切れないところとか)、小さく切り取って食べると鉄板の旨さ。デフォルトで塩・胡椒がやんわり振ってあり、胡麻油ベースのタレが付いてくる。胡麻油タレを付けずに食べると、あっさりとしたケモノっぽい味わいと弾力が楽しめる。で、胡麻油ベースのタレをつけて食べると、旨さがさらに引き出される感じ。そしてワサビ(多分西洋ワサビ)をつけるとより一層旨さが広がる(この料理にワサビは付いてこないんだけど、一緒に頼んだトントロについてきたワサビを付けてみた)。


閑話休題


この前読んだBenzylic Fluorination (see http://researcher-station.blogspot.jp/2014/07/fe.html)関連論文(っていうか、同じauthorの論文)を読んでみました↓

A Polycomponent Metal-Catalyzed Aliphatic Allylic, and Benzylic Fluorination
Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 10580-10583.


アルカンのフッ素化のお話です。

主なアルカンのフッ素化は、取り扱いが難しかったり、選択性の無い試薬を量論量使用しなければならないそうです。例えば、

i) F2 (JACS, 1956, 78, 2793-2797.; JACS, 1956, 78, 4992-4995.; JACS, 1957, 79, 3084-3089.; JACS, 1976, 98, 3034-3035.; Acc. Chem. Res., 1988, 21, 307-312.)、

ii) cobalt trifluoride (CoF3) (J. Fluorine Chem., 1986, 33, 337-346.; J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1991, 445-447.; polyfluorinationが起こる)

iii) cesium fluoroxysulfate (CsFO4S) (Tetrahedron, 1989, 45, 2737-2742.; 潜在的に爆発性がある)

なんていうのがあります(はっきり言って、使いたくない)。

で、This workで著者等は、Selectfluor、N-hydroxypyhalimide (NHPI)、相間移動触媒 (KB(C6F5))、Copper (I) bisimine錯体からなる触媒システムを構築し、これをaliphatic、benzylic、allylicな基質に対するフッ素化に適用しました。

72% yield
MeCN, reflux, 2 h

他16 examples

置換基がついていないシンプルなシクロアルカン(5 examples)では33-72% yieldでモノフルオリドが得られます。また、アダマンタンを基質に用いた場合、反応温度によって選択性が変化します。

非環式の基質では、位置異性体のmixtureが得られます。

あと、benzylicとallylicの例↓

基質一般性や選択性、収率はどうかと思うけど、テゥルンテゥルン炭化水素をモノフルオロ化できるのは凄いと思いました。

2014年7月27日日曜日

ハイパーインフレの悪夢

昨年食べたラーメンのメモです↓

-味噌ラーメン (750 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
まず生姜の香りが一閃。麺は黄色(少しオレンジがかっている)のちぢれ中細麺(卵麺か?)で、普通に旨い。食感は中庸的。スープは甘く、マイルドな味噌。生姜とニンニクのフレーバーがGood!フィニッシュに僅かに苦みがあるんだけど、これがまた良し。スープの表面は油(ラードらしい)で覆われていて凄くアツアツ。スープには上層と下層で濃度勾配があり、はじめはあっさり度が高いが、徐々に濃くなってくる(少し薄めた方がいいかも。薄めるスープがある)。具は、メンマ、焼豚(薄切りと刻み)、ネギ、もやし、玉ねぎ。そして、薄切り焼豚の上に生姜が載っている。薄切り焼豚はイマイチと思ったけど、他の具は全体的に旨くて良いです。特にメンマが個人的に好きな味。完成度の高いラーメンと思いました。
あと、S&B特製エスビーコショー(業務用)が置いてあったのでちょっと振りかけてみたんだけど、ジャンキー感とスナック感がup↑してこれもまた良し。
店内はモダンでオシャレ。接客のお姉さんは白鶴の前掛けを着用。のれんには「すみれ」と「森住製麺」の名前が入っている。水が凄く汗をかいた金色の薬缶に入っていて、なかなかs


閑話休題


昨年「ハイパーインフレの悪夢」という本を読了しました。第一次大戦後のドイツのインフレを描いた本です。

所謂ドイツのハイパーインフレは凄く有名で、ボクが小さい頃の学研の「学習」にも書いてあったような気がします。コーヒーを飲んでいる間にもインフレが進行し、トランク一杯のお札が支払いに必要になった的な寓話が描かれていたことを記憶しています。

学研の「学習」の「コーヒーの話」は、笑い話的で悲惨さがあまり伝わってきませんが、本書の中で描かれるハーパーインフレによって誘起される人々の困窮する様にはマジ背筋が寒くなります。以下メモです。

第一次世界大戦後、敗戦国のドイツはヴェルサイユ条約により莫大な賠償金を抱えることとなり財政難に陥ります。ここで政府が弄した策は、国債を発行してライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)に買い取らせるという財政ファイナンスです。

市場には通貨(マルク)が溢れ、マルク安となり、輸出商品の値段が下がって経済が活性化します。企業の倒産件数も減り、失業率も低下し(戦勝国のフランスよりも失業率が低下する)、インフレの昂進により貨幣の価値があるうちに使ってしまおうというインセンティブが働き、一見華やかな繁栄が訪れたかに見えました。また、企業も為替相場の下落によって輸出産業の利益を獲得できるのでインフレを歓迎しました(貨幣価値が下がれば実質的納税額も減り、銀行からの融資も実質的返済額が少なくて済む)。

(1) 旺盛な購買衝動(高価な買い物や豪華な食事)
(2) (貨幣を)何でも商品に換え、しばらく所有してから売ることで難なく大金が手に入った
(3) ローンで土地購入。貨幣価値の下落によって、借金はすぐ返済でき、広大な土地を獲得

などが巷では繰り広げられ、初期段階においてはウハウハ感もあったようですが、それも長くは続きません。そのうちに、労働者の生活は苦しくなっていきます。そして、困窮した労働者は(インフレへの対症療法として)賃上げを要求するようになり、インフレ誘起のフィードバックが繰り返されていきます。また、農家は農産物を売り惜しみ、都会の人達が持っていたピアノや骨董品などと小麦を交換出します。やがて、深刻な物価高騰が庶民の生活を襲い、高級住宅街では子供を思う母親達が私邸内に勝手に入り込み、残飯目当てにゴミ箱をあさったりと、人々のモラルが失われていきます。郊外で家畜なんかを飼っているリッチな家は、徒党を組んだ飢えた民衆に襲撃されたりなんかもしました。

紙幣の大量に刷ってはインフレが激化というサイクルが繰り返され、紙幣の購買力がとめどなく下がり続け、最終的に(土地を担保にした)デノミ(1兆分の1)でハイパーインフレがやっと収束します。

はっきり言って、ボクはこの本で描かれているドイツの姿に既視感を覚えました。まるで、日本そっくりじゃね?っていう。


国と地方の債務の合計は、1994年に450兆円だったのが、2000年には700兆円になり、いまでは1,000兆円超まで膨れ上がっています。それに加えて、プライマリーバランスは万年赤字で、年間50兆円のペースで債務残高が増加しています。まともな脳みそを持ってたら、債務の返済なんて夢のまた夢と思うはずです。国内の国債引き受け余力ももう限界に近いと言われているいるし、けっこうキテると思います。

この本(ハイパーインフレの悪夢)には、「インフレーションは、いろいろな意味でドラッグのようなものだ。最後には命取りになるとわかっていても、多くの困難に襲われたとき、人はその信奉者になってしまう」という文章がありますが、まさしくその通りで、現在の政治家は安易な方法で問題を先送りしているに過ぎないと思わざるをえません。


社会が日本円(貨幣)という共同幻想から醒めたとき、どんな世界が目の前に広がるのかに興味津々の二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


2014年7月21日月曜日

Fe (テツ) : 鉄とフッ素の素敵な関係

北千住駅のエキナカにある東京カレー屋名店会に行った時(増税前)のメモです↓

-トプカ インド風ポークカリー ミディアム (680 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-RVIEW-
辛さの表示は「3」で、この店最大だけど、ボク的には「2」っていう感じ。サラサラ系のカレーで、sharpな辛さに好感が持てるも、アツアツ感が全くないことに加えて、ライスに対してカレーが少なすぎる。当然、具も少ない。肉とジャガイモは内部が冷めた感じ。このカレーは、「中途半端に普通においしい」けど「ポスピタリティーが最悪」と思いました。あと、水のグラスがちょっと汚い。総じて、残念な店と思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Iron(II)-Catalyzed Benzylic Fluorination
Org. Lett., 2013, 15, 1722-1724.

(また)流行ってるフッ素化(Benzylic Fluorination)のお話です。


著者等は以前、Cu(I)-bisimine錯体とSelectfluorを用いたaliphatic C-H bondのフッ素化を報告しました。
Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 10580-10583.

このCu(I)-bisimine complex/Selectfluor systemはBenzylic Fluorinationも可能ですが、その適応範囲は狭いため、汎用性の高いBenzylic Fluorinationを実現すべく、著者等は鉄触媒に注目します(ノンヘム鉄触媒によるC-H官能基化の成功をうけて、鉄に注目したようです Curr. Inorg. Chem., 2012, 2, 64-85.; Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 3317-3321.)。

で、This Workです↓
13 examples, 35-76% yield

二価の鉄塩をスクリーニングしたところ、Fe(acac)2にみに活性があったそうです(ハライド、硫酸塩、硝酸塩はダメ)。

以下、この反応の特徴↓

(1) electron-poor, more neutral alkyl benzeneが基質として最良。electron-richな芳香環をもつ基質ではポリフルオロ化が起こる

(2) 基質にシメンを用いると、立体障害の小さい方だけがフッ素化される

(3) カルボニル基を含む基質の場合、バックグラウンド反応に対してBenzylic Fluoronationが優先する
この基質のBenzylic Fluorinationは、α,β-不飽和ケトンに対するフッ素アニオンの1,4-付加に相当します。

(4) アミンのような窒素原子を含む化合物は、多くのケースでN-fluorinationが起こり、Benzylic Fluorinationの進行を阻害する。

←アミドの例(窒素原子含有化合物の本文記載の唯一に実施例)






マイルドかつシンプルな反応条件ですね。サンプルワークレベルで機会があったら使ってみたい反応と思いました。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のフッ素化メモでした。