2017年7月30日日曜日

不安定なアルデヒドのためのReductive Amination (2)

神田末広町でランチしたときメモです↓

-鳥つね自然洞 特上親子丼 (1,600 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
鶏肉は比内地鶏と名古屋コーチン。名古屋コーチンの卵三つを使った1日20食限定ランチ。
出汁のとっても良い匂いが立ちのぼる(けっこう強い香りが立っていてる)。
卵の黄身は濃いオレンジ色。黄身も白身もトロトロで大部分が不均一。これを飯や鶏に絡めて食べるのが良い。
出汁の香りは強いが、味自体は穏やかで、控え目。上品な味。
鶏はしなやかな食感で、とっても淡白。味付けは極めて軽微ながらも、噛むほどに鶏肉のコクがじわじわと広がってくる。三つ葉の香りがアクセント(けっこう鮮烈)。
鶏、卵、出汁、飯を一緒にほおばることの旨さがかなり凄い!
鶏肉はrichな気持ちになるほど旨いけけど、卵がそれに負けないほどに旨く、濃厚・豊潤で素晴らしい(こんなに旨い卵を食べたことがない)。
この親子丼、香りは濃厚だけど、味的に無駄に自己主張しない出汁が"丼"全体の味わいを引き立てている。
あと、お新香とお椀つきです↓
 
参考: 平日の月曜日に行って来ました。開店4分前の11:26に到着したら、先に1人が並んでいるだけでした。11:47に食事を終えてお店を後にしたんだけど、その間入店して来たお客は5人程度。なので、平日だったらあまり並ばずに食べれると思います。あと、ポットの中のお茶は焙じ茶。風格のあるマスター(大将)と女性従業員3名で回していました。特上親子丼は「トクイチ」、(普通の)親子丼は「トリイチ」と略されてオーダーが入ります。


閑話休題


以前、不安定なアルデヒドのためのReductive Amination (see http://researcher-station.blogspot.jp/2013/04/reductive-amination.html)と題して、アルデヒドの亜硫酸水素ナトリウムの付加体を直接還元的アミノ化するという文献をメモしました。

で、今回は他の保護基ではどうなの?(直接的に還元的アミノ化できないの?)っていうことについてメモしてみます。

まず、アルデヒドの保護基として"いの一番"に思い浮かぶアセタールですが、こんな文献がありました↓

Direct, One-Pot Reductive Alkylation of Aniline with Functionalized Acetals Mediated by Triethylsilane and TFA. Straightforward Route for Unsymmetrically Substituted Ethylenediamine
J. Org. Chem., 2011, 76, 704-707.

21 examples, 51-97% Yield

反応性の低いアリールアミンの還元的アミノ化はチャレンジングですが、マイルドな条件で中程度から高収率で反応が目的物が得られます。電子吸引基 (ニトロ基、エステル、シアノ基)を有するアニリン誘導体、電子供与基を有するアニリン誘導体の何れもスムーズにアルキル化が進行し、NO2, CF3, CO2Me, Cl, CN, OCH3, HNCOCH3, 二重結合は影響を受けません。

ちなみに、3-methoxy-N-phenlanilineとN-Boc glycinalとの通常条件での還元的アミノ化はイミニウム塩の形成が十分に進行せず、アルデヒドの還元と競合してしましまいます(酢酸を加えてもpoor yield)。それに対して、TES/TFAを用いたジメチルアセタールからの直接的還元的アミノ化は円滑に進行します。



また、10,11-dihydro-5H-dibenzo[b,f]azepineはアルデヒド (ヘキサナール)を用いた普通の還元的アミノ化条件ではno reactionですが、アセタールとのTES/TFA条件だと高収率で反応が進行します。



ところで、アルデヒドの代わりにアセタールを用いた還元的アミノ化には、デカボラン(Synth. Commun., 2003, 33, 3387-3396.)やPMHS/TFA (Tetrahedron Lett., 2009, 50, 5975-5977.)を用いる方法がありますが、本報の手法の方が有効なようです↓




さて、アセタールの次はエノールエーテルです↓

Reductive Alkylation of Aromatic Amines with Enol Ethers
Synlett, 2005, 583-586.

18 examples, 50-98%

アルデヒドの代替としてメチルエノールエーテルとトリメチルシリルエノールエーテルが適用可能で、その反応条件は、意外にも、還元アミノ化の"Standard Conditions"です。

著者らがエノールエーテルを使用するという着想に至ったのは、エノールエーテルとマイルドなプロトンソースによって系内で高活性のオキソニウム種が生成するだろうというアイデアからです。


アセタールとエノールエーテルを用いた還元的アミノ化は、けっこうパワフルな印象を受けました。これらの手法は、不安定なアルデヒド対策ではなく、求核性の低いアミン対策として語られていますが、不安定なアルデヒド対策にも使えるのではないかと思います。
まあ、アルデヒドが不安定なのに、アセタールやエノールエーテルをどうやってつくるんだっていうツッコミはあるかと思いますが(中性条件下でのアセタールの合成法はある。それから、1炭素増炭するけどメチルエノールエーテルはメトキシメチルのWittig試薬で合成できる。それから、保存時の安定性は高い。)、不安定なアルデヒドに対する還元的アミノ化に対するalternativeなアプローチに成り得る反応じゃないかと思いました。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。