2022年10月29日土曜日

スーパー初心者のためのオリゴ核酸合成入門 (不純物編) (5):脱アミノ化とかメチルアミン付加体とか固相担体由来の不純物とか

ども、東京駅のグランスタ大好き中年のコンキチです。
駅ナカのキング・オブ・キングス「グランスタ」にも入ってる「はせがわ酒店」を超絶久しぶりに訪問したときのメモです。

-はせがわ酒店 GranSta東京店 (visited Jun. 2022)-

住所:千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅構内B1 https://www.hasegawasaketen.com/shop.html#gransta 

-どぶろく DOBUROKU (550 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
併設する「東京駅酒造場」で三段仕込みで醸したどぶろく。Alc. 7%。
甘酸っぱい香りが仄かに漂う。 上品な甘味と酸味で、スレンダーな飲み口。 きめ細かい舌触り。しっかりしたbodyで、さらっとしている。 芳醇淡麗。 べたついていない。 綺麗な味わいのどぶろくだよ。

-ワインらっきょう (220 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
日光ろばたづけ製造本舗のワインらっきょう(化学調味料不使用)。
甘酸っぱくて、とっても美味しい。 フレッシュだし。
日本酒にもワインにも最高のアテ。


-タケダワイナリーブラン 2021 TAKEDA WINERY Blanc 2021 (550 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVEW- 
セパージュはデラウェアとマスカット・ベリーA(山形県産ぶどう100%使用)。
スッキリした酸味とストロベリーの甘い香味。 ホント可愛らしい香味。 酸味はしっかり。ストロベリーの余韻が楽しい。 マスカットベリー好きなんだよな。
 

閑話休題


時代は核酸医薬。ホスホロアミダイト法で副生する(微量)不純物のメモの続きです。

これまでのメモはこちら↓



それでは今回(一応、最終回)は下の「11」「12」「13」についてメモっていきます。

1.   chloral adducts (trichloroacetaldehyde modified oligonucleotides, トリクロロアルデヒド反応物)
2.   DMTr adducts (4,4'-dimethoxytrytyl-C-phosphonate, C-ホスホネート体)
3.   acrylonitrile adducts (シアノエチル付加体)
4.   isobutyryl adducts
5.   short deletion sequences (shortmer, ヌクレオチド欠損体)
6.   phosphodiester analogs (PS→PO変化体)
7.   3'-terminal phosphorothioate monoesters
8.   phosphorothioate oligonucleotides as impurities in oligonucleotide dithioates
9.   lomgmers (ダブルカップリング)
10.   depurinated oligonucleotides and formation of apurinic site (脱プリン体)
11.   deaminated oligonucleotides (deamination, 脱アミノ化)
12.   methylamine adducts (メチルアミン付加体)
13.   solid support由来の不純物


11.   deaminated oligonucleotides (deamination, 脱アミノ化)

脱アミノ化はシトシンで問題になって、樹脂からの切り出し&脱保護時に起こると言われています(高いpHと熱が加速)。
加水分解されてシトシン→ウラシルになるので、"+1 Da"大きい質量の不純物が副生します。
(核酸塩基の中で、シトシンは酸性、中性、塩基性条件下で最も加水分解されやすいです)

J. Org. Chem.200570, 7841-7845.


12.   methylamine adducts (メチルアミン付加体)

N-Bz基で保護されたシトシン塩基を含むオリゴ ヌクレオチドをメチルアミン水溶液を用いて固相担体からの切り出すと、シトシン塩基のアミノ基がメチル アミノ基に変換した不純物を生成(トランスアミノ化)することが知られています。
副生成物は"+14 Da"の質量数になります。


13.   solid support由来の不純物

longmerの項目で軽く触れましたが、full-lengthのオリゴヌクレオチドから枝分かれした不純物が副生することが分かっています。

full-length oligonucleotides containing branched impurity

この不純物はアデノシンがpre-loadされた固相担体特有の副反応らしいです。
下記スキームに示されるデオキシアデノシンがpre-loadされた担体を使用した場合、(多分、最初の脱トリチル化の際に)保護基(N-Bz基)の外れたアデニンのアミノ基が、続くカップリング工程でアミダイト試薬と反応し枝分かれした不純物が副生します。


で、このような副反応はnon-nucleotide linkerを使えば回避できます。例えば、こんな感じの↓(Bioorganic and Medicinal Chmistry Letters200616, 607-614.)

あと、この手のnon-nucleotide linkerはnucleotide-loaded supportと比較して大スケール向きだといいます。

さらに固相担体由来の不純物をもう一つ↓

Tetrahedron, 2021, 92, 132261.

リンカーの種類や担体からの切り出し条件によっては、担体の除去が途中で止まってしまい、リンカー部分が結合した不純物が残存してしまうことがあるようです。


ハイ。5回に渡ってオリゴ核酸(主にオリゴDNA)合成における代表的な微量不純物の副生についてメモいてきましたが、他にも副生成物はあるわけで、今後もキャッチアップして行きたい次第です。

以上、核酸創薬はお金の匂いがすると思う、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のオリゴ核酸スーパー初心者級メモ「その5」でした。

 

2022年10月23日日曜日

スーパー初心者のためのオリゴ核酸合成入門 (不純物編) (4):ホスホロチオアートとかロングマーとか脱プリン体とか

先日、渋谷より苦手な新宿に行ってきました。
新宿と言えば、紀伊国屋書店(本店)。
学生時代、新宿紀伊国屋に専門書を漁りに出かけたものですが、その折は紀伊国屋書店新宿店地下1Fの洋食(だけじゃない)ショップの珈穂音で昼飯を食べたものです。
社会に出てからも何度か食べに行ったです。

現在は諸事情により紀伊国屋地下から居を移して営業しているんですが、今回、移転後初"珈穂音"したのでメモします。

-珈穂音 (visited Aug. 2022)-
住所:新宿区新宿3-22-12 新宿サンパーク本館5階(三平) 

-寒さば焼き定食 (1,000 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
鯖がとっても香ばしい! 
軟らかくしなやかな張りと弾力。味付けのお塩は控えめで、綺麗な旨味リッチな味わいが引き立つ。綺麗な脂がたっぷりのってるし。さらに、皮はパリッとしていてとても旨い。 
あと、レモンと良く合うんだよね。で、搾って直ぐ食べるのが正解(旨過ぎる)。 お醤油と大根で味変を楽しむのもヨシ。
これでたったの千円ポッキリでコスパ超絶高し。


閑話休題


時代はニューモダリティ。ホスホロアミダイト法で副生する(微量)不純物のメモの続きです。

これまでのメモはこちら↓


それでは今回は下の「8」「9」「10」についてメモっていきます。

1.   chloral adducts (trichloroacetaldehyde modified oligonucleotides, トリクロロアルデヒド反応物)
2.   DMTr adducts (4,4'-dimethoxytrytyl-C-phosphonate, C-ホスホネート体)
3.   acrylonitrile adducts (シアノエチル付加体)
4.   isobutyryl adducts
5.   short deletion sequences (shortmer, ヌクレオチド欠損体)
6.   phosphodiester analogs (PS→PO変化体)
7.   3'-terminal phosphorothioate monoesters
8.   phosphorothioate oligonucleotides as impurities in oligonucleotide dithioates
9.   lomgmers (ダブルカップリング)
10.   depurinated oligonucleotides and formation of apurinic site (脱プリン体)
11.   deaminated oligonucleotides (deamination, 脱アミノ化)
12.   methylamine adducts (メチルアミン付加体)
13.   solid support由来の不純物


8.   phosphorothioate oligonucleotides as impurities in oligonucleotide dithioates

ジチオホスフェート(PS2オリゴ)がターゲットの場合、ヌクレオシド間を連結するリン酸基がS化不足のPSオリゴ(ホスホロチオアート)が不純物となるという話です。PS2オリゴとPSオリゴの分離にはSAX(Strong Anion Exchange)-LCが有効なようです。


9.   lomgmers (ダブルカップリング)

schematic image

n+1, n+2といったロングマーは1回のカップリング工程でダブルカップリングなどが起こって副生します。ちょっと酸性なので、少量ジメトキシトリチル基が外れるんですね。で、外れたところがアミダイトともう一回反応してしまいロングマーが生成するのです。ホスホロアミダイトと固相担体の接触時間が増えるほど、用いる活性化剤の酸性度が増すほどロングマーの副生が増加します。また、T < dC < dA < dGの順でロングマーが出来やすいそうです(Tetrahedron Lett., 1997, 38, 3875-3878.)
一般論として、カップリング効率が100%にならないので、(n-1)-mer > (n+1)-merとなるようです。
あと、ロングマーにはfull-lengthオリゴの塩基から枝分かれしたものや(Biooraganic and Medicinal Chmistry Letters200616, 607-614.)、3'-位の水酸基で分岐したものもあるそうですね。
full-length oligonucleotides containing branched impurities


10.   depurinated oligonucleotides and formation of apurinic site (脱プリン体)

DNAオリゴヌクレオチドのプリン塩基は酸性条件下で加水分解を受けやすく、ブリン塩基が脱離した脱プリン体が副生することがあります。アデニンが脱離すると117Da小さい質量の化合物が、グアニンが脱離すると133Da小さい質量の化合物が副生します(脱ピリミジン化は脱プリンよりも起こりにくい)。
あと、二本鎖よりも一本鎖の方が脱プリンしやすく、内部よりも末端で起こりやすいようです。
それから質量分析の注意点なんですが、例えばデオキシアデノシンが組み込まれたオリゴ核酸を分析した場合、135.13Da小さいスペクトルが観測される場合がありますが、これはイオン化の際のフラグメンテーション由来ということのようなので覚えておきましょう。

それから、脱プリンした後に続くapurinic siteで起こる反応には次のようなものがあります。

(1) Modified cytosine oligonucleotide (シトシン変換体)
J. Org. Chem.200570, 7841-7845.

熱ストレスによってfull-lengthオリゴより"+80 Da"大きい不純物が生成します。推定反応機構は上のスキームの通りで、脱プリン化からさらに分解することで生じる4-oxo-2-pentanalがシトシンと反応することで副生すると考えられます。

(2) Cross-linked oligonucleotide
Bioorganic and Medicinal Chmistry Letters200616, 607-614.

脱プリンして生成するデオキシリボースが開環し、アルデヒド部分がシトシンと反応してシッフ塩基を形成いてcross-linkedオリゴが副生します。


以上、核酸医薬はN-of-1の医療に対応できる社会的意義の高い数少ない創薬モダリティなんだなと殊勝な気持ちを醸し出しつつ、合成にしがみついていきたい二流大出のテクニシャン(研究補助員)のオリゴ核酸スーパー初心者級メモ「その4」でした。

 

2022年10月10日月曜日

スーパー初心者のためのオリゴ核酸合成入門 (不純物編) (3):ショートマーとかPO変化体とか3'-terminal phosphorothioate monoesterとか

ども、コロナも収束傾向で、(コロナ弱者には運が悪かったと諦めてもらうことで)社会的には収束した空気に今日この頃、大好物の麻婆豆腐を食べたときのメモです。
(ボクもコロナ弱者になりつつあって、人ごとじゃないんですけどね)

-四川雅園 (visited Aug. 2022)-

住所:港区赤坂4-3-11 1F 

-麻婆豆腐定食 (850 JPY)- 
-RATING- ★★★★★
-REVIEW- 
中華のスパイスの濃厚な香りと重厚感のあるコク深い味わいが素晴らし!。葱と山椒っぽいのがトップに振り掛けてあって、麻婆本体内部の痺れはほぼほぼ無い。
油はちょい控えめで、旨味が強くて旨すぎる! 


デザートの杏仁豆腐も清涼感のある甘い香りで 美味しかったです。



閑話休題


時代はニューモダリティ。ホスホロアミダイト法で副生する(微量)不純物のメモの続きです。

これまでのメモはこちら↓


それでは今回は下の「5」「6」「7」についてメモっていきます。

1.   chloral adducts (trichloroacetaldehyde modified oligonucleotides, トリクロロアルデヒド反応物)
2.   DMTr adducts (4,4'-dimethoxytrytyl-C-phosphonate, C-ホスホネート体)
3.   acrylonitrile adducts (シアノエチル付加体)
4.   isobutyryl adducts
5.   short deletion sequences (shortmer, ヌクレオチド欠損体)
6.   phosphodiester analogs (PS→PO変化体)
7.   3'-terminal phosphorothioate monoesters
8.   phosphorothioate oligonucleotides as impurities in oligonucleotide dithioates
9.   lomgmers (ダブルカップリング)
10.   depurinated oligonucleotides and formation of apurinic site (脱プリン体)
11.   deaminated oligonucleotides (deamination, 脱アミノ化)
12.   methylamine adducts (メチルアミン付加体)
13.   solid support由来の不純物

5.   short deletion sequences (shortmer, ヌクレオチド欠損体)

schematic image

ヌクレオチド欠損体(塩基欠け; n-1, n-2, ...)は、カップリング、キャッピング、脱トリチル化の失敗で生じます。一般的に(n-2)-merやもっと短いshortmersの分離は容易ですが、(n-1)-merはfull-lengthのオリゴヌクレオチドと物性が似ているので分離が難しくります。
対策は、反応時間延ばしたり、試薬を変えたり、濃度高くしたりして各サイクルで反応をしっかり進行させることですかね?


6.   phosphodiester analogs (PS→PO変化体)

ホスホジエステル(PO)アナログは、S化オリゴ合成におけるチオ化の失敗によって副生します。また、S化オリゴを過酸化水素とかの酸化剤に曝すとPO変化体が生成するようです。あと、ヨウ素/N-メチルイミダゾール/水/THF, 37℃でPS→POの変化が進行するんですね(Bioorg. Med. Chem. Lett., 2005, 15, 4118-4124.)。
それから、上述したような積極的な酸化条件下でなとも、S化オリゴのホスホロチオアート結合がホスホジエステル結合に戻ってしまったりしますね。
この不純物は"PS→PO"変化体一個につき16Da小さい質量で検出されるので、その点を注意してマス・データを解析しましょう。
POとPSの分離は、逆相HPLCよりも陰イオン交換クロマトグラフィーで良いそうです。


7.   3'-terminal phosphorothioate monoesters

Org. Proc. Res. Dev., 2003, 7, 259-266.
Bioorg. Med. Chem., 2003, 11, 4673-4679.

固相担体(Pharmacia HL 30 dA Primer Support)に結合したdA (デオキシアデノシン)が最初の脱トリチル化中に脱プリンし、アンモニアを使った脱樹脂・脱保護過程でβ-脱離からのフラグメンテーションが起こってfull-lengthのn-1の3'-terminal phosphorothioate (3'-TPT) monoesterが副生します。
最初の脱トリチル工程の処理時間を長くすると、3'-TPTが増えるのが確認されています。
因みに、アデニンからリンカーを生やして合成すれば3'-TPTの副生を抑制することができます↓

でも、スキーム上段の実験項がスゲー怪しいんですよね。1 mmolの原料から目的物(中間体)を3.5 mmol取得して収率42%とか、ボクの計算が間違ってなければ質量分析の質量数が合わないんですけど。
っていうか、他の固相担体を使えばいいんじゃないでしょうか?(知らけど)。
Nucleos. Nucleot. Nucleic Acids, 2011, 30, 475-489.
Org. Proc. Res. Dev., 2008, 12, 399-410.
Tetrahedron, 2021, 92, 132261-132266.

ところで、固相単体にはCPG (Controlled Pore Glass)ベースのものとPS (ポリスチレン)ベースのものがあります。
CPGは細孔が大きく長鎖合成向きで200mer程度の合成も可能です。膨潤はぜず、loadingは20-50 μmol/g程度 (多くても90 μmol/g)。
PSは30mer程度までの合成に向いていて、膨潤するのが特徴です(反応サイクルは膨潤-収縮を繰り返す)。因みに、NittoPhase®️ HLの場合、アセトニトリル中で4.0 ml/g、トルエン中で6.1 ml/g程度まで膨潤するそうです。


以上、オリゴ核酸合成覚えて合成稼業にしがみついていきたい、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のオリゴ核酸スーパー初心者級メモでした。