2013年4月13日土曜日

不安定なアルデヒドのためのReductive Amination

←昨年の秋口に草津に行ってきたんだけど、その時撮った写真(湯畑)です。

やっぱ、草津温泉の泉質はいいね
ホント惚れ惚れしてしまいます。

あと、温泉街で有名と言われる蕎麦屋で蕎麦喰ってきたので、そのメモね↓

-三國屋 memo-
〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町大字草津386
TEL: 0279-88-2134
http://aitra.jp/id/mikuniya/

-三国そば (950 JPY) & つけ汁 (各 400 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
2.5人前の蕎麦(12束くらい)が大きなトレイに載って提供される。少し細めの中細麺。風味に特筆すべき点は無いが、蕎麦の太さはしっかり揃っており、啜った時の食感はなかなか良い。
ツユは別料金になり、温かいつけ汁2種類(都汁と田舎汁)から選ぶのが基本。都汁は鴨汁、田舎汁は赤味噌けんちん汁風でどちらも濃厚かつアツアツで汁自体の味はとても美味しい。個人的に「田舎汁」は蕎麦よりも饂飩系(特にきしめん)に合うと思った。
両汁ともこの店の蕎麦との相性(汁との絡み具合)はとても良い。この店の蕎麦は、汁を味わうことに重点がおかれているように思われる。特に、鴨汁との相性はBest Much!両汁ともに、食べ進んでも濃度の低下は気にならない。また、温度の低下は、食べるペースにもよると思うが、個人的にが許容範囲。

-舞茸天盛り合わせ (900 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
舞茸と野菜(茄子、プチトマト、緑の葉っぱ、etc.)の天ぷら。どノーマルで感動はなし。

-秘幻 特別本醸造 (650 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
精米歩合: 55%, アルコール分: 15-16%。浅間酒造が醸す関東信越国税局酒類鑑評会「燗審査の部」三年連続優秀賞のお酒。燗でいただいたんだけど、香りはあまり立たず、少し熟れた果実のfruityな味が感じられる。ほどよいbodyで普通に旨い。淡麗系の酒。


-柏香亭 memo-
〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町大字草津376
TEL: 0278-88-2208

-もり (600 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
蕎麦はかなり細め。少し柔らかめだが、弾力は十分。噛み進めると甘みが染み出す。ツユは少し甘めコクは十分。蕎麦との相性も良い。
ただ、蕎麦の切りムラが少し気になることに加えて、ツユは徳利無しで提供されて、食べ進むにつれて薄くなってくるのがかなり気になる。そこそこ美味しい普通の蕎麦屋といった印象。蕎麦自体は三國屋よりも上と思うが、トータル・バランスでは三國屋に軍配というのがボクの評価。


閑話休題


こんな論文を読んでみました↓

Direct Reductive Amination of Aldehyde Bisulfite Adducts Induced by 2-Picoline Borane: Application to the Synthesis of a DPP-IV Inhibitor
J. Org. Chem., 2013, 78, 1655-1659.


アルデヒドの亜硫酸水素ナトリウムの付加体を直接還元アミノ化するというお話です。

16年くらい有機合成やってて、個人的には不安定なアルデヒドにぶち当たったことはないけど、不安定なアルデヒドって結構あります。なので、アルデヒドの状態で一旦単離して次の反応に処すっていう場合、そいつが不安定だった暁には気を揉むことになります。

一方、アルデヒドの亜硫酸水素ナトリウムの付加体は、一般的に安定で、結晶性も良く、そのモノのハンドリング自体は容易です(アルデヒドの精製とかにも使われます)。なので、アルデヒドの亜硫酸水素ナトリウムの付加体をそのままアルデヒドと同種の反応に適用できればなかなか便利です。もし、アルデヒドが不安定な場合には、かなりの効率アップになることは間違いありません。

ちなみに、これまでに報告されているアルデヒドの亜硫酸水素ナトリウムの付加体を使った反応にはこんなのがあります↓

MMP/cyclohexane混合溶媒または2-MeTHF中で水の共沸脱水が必要
Org. Process Res. Dev., 2003, 7, 155-160.

アルデヒド使用時の収率50%から71%に改善。他、11 examples, 79-94% yield。亜硫酸水素ナトリウムの付加体をブレークするのに1 eq.のアミンが必要。2級アミンの実施例しかなし。他の例は安定なアルデヒドを使用。
Synthesis, 2009, 23, 4032-4036.

エナンチオ選択的へテロDiels-Alder
Org. Lett., 2008, 10, 3817-3820.

ジアステレオ選択的Strecker反応
Tetrahedron Lett., 2004, 45, 6579-6581.

で、This Workはこちら↓


(PICB : 2-Picoline Borane)

ぱっとみの収率は煮え切らないものが有りますが、使用しているparent aldehydeが全て(湿気や光や酸素に)不安定(重合したり分解したりする)なものだということに加えて、反応条件が非常にマイルドであるとことを考えると、かなり価値が高いのかもしれないと思います(比較実験がないので分かりにくい)。

著者らがこのような試みを行う発端となったのはこんな基質を使った反応↓


この反応で用いられているヘミアセタールは-20℃以上で不安定で、溶液状態で保存しなければならないので、取り扱いに難があります。一方、対応する亜硫酸水素ナトリウム付加体は安定な固体で、著者らの開発した手法で収率も88%まで改善します。

不安定なアルデヒドで還元アミノ化するときは、是非試してみたい手法と思いました。

2013年4月5日金曜日

Aromatic Cation Activation (6): Alternative to the Mitsunobu Reaction

ラーメン食べてきたので、そのメモ書きます。

-らーめん 木尾田 らーめん (680 JPY) memo-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
中細のストレートの麺がとても旨い。味、食感、ぷっつりと切れる歯切れが素晴らしい。スープはある程度の粘度を感じる豚骨和風(醤油?)スープで、臭みは殆どなく穏やかで上品な味ながらコクが深い。で、麺とスープが驚くほど絡み合わないんだけど、それがあまり不満ではない不思議なラーメンと思いました。具は、チャーシュー(大したこと無い味)、メンマ、ノリ。「穏やかな旨さ」を感じさせるラーメンと思います。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Cyclopropenone Catalyzed Substitution of Alcohols with Mesylate Ion
Org. Lett.,  2013, 15, 38-41.


Cyclopropenium Cation Activationを利用して、触媒的にアルコールから立体反転させたメシラートをつくるっていうお話です。

(Cyclopropenium Cation Activation→
http://researcher-station.blogspot.jp/2012/03/aromatic-cation-activation-5-catalytic.htmlhttp://researcher-station.blogspot.jp/2011/11/aromatic-cation-activation-4.html,
http://researcher-station.blogspot.jp/2011/08/aromatic-cation-activation-3.html,
http://researcher-station.blogspot.jp/2010/08/aromatic-cation-activation-2.html,
http://researcher-station.blogspot.jp/2010/07/aromatic-cation-activation-1.html)

まず著者らは、化学両論量のジフェニルシクロプロペノン (8)を使って検討を行います↓


キラルアルコール(7)に8を作用させると9が定量的の生成することが確認され、base(この場合はEt3N)を作用させることで立体反転したメシラート(10)が得られます。このとき、Et3Nを添加しないままだとメシラートへの転化率は<10%です。また、8がないと100%リテンションのメシラートが得られます。

次に著者らは7を使ったモデル反応で触媒反応の最適化を行います。触媒反応の最適条件は、7 (1 eq.)とi-Bu3N (0.95 eq.)のCHCl3溶液をシリンジポンプを使い、反応温度55℃で、8 (15 mol%)とMs2O (1.5 eq.)のCHCl3溶液に18時間かけて滴下した後、1時間反応させるというもので、99%eeの7から対応する立体反転したメシラート (10)が94%eeで得られます。ハッキリ言って、この滴下時間の長さはサンプルワーク程度のラボ・ユースには向かないですね(一気に加えると、殆ど選択性が出ない)。あと、プロセス・ユースなら、18時間かけて滴下しても価値があると思いますが、もっとエコな溶媒を検討してみたいと思いました。

他、14の基質に対して触媒反応と化学両論反応で基質一般性を検討しています(より高活性な、シクロプロロペノンの置換基がPMPの触媒も試している)。官能基許容性は、エーテル、エステル、アルキルハライド、チオエーテル、フタルイミドでオッケーだけど、ホモアリルアルコールはダメみたい。15基質中、反応がうまくいかなかったホモアリルアルコールを除いて、立体反転率は85-98%(概ね94%は越してる)。

あと著者らは、副生するジフェニルシクロプロペノン (8)と生成物とが分離し辛いときのために、簡便なジフェニルシクロプロペノン除去法を考案しています↓


ところで、立体反転っていうと光延反応が超有名ですけど、光延反応で立体反転させたメシラートやトシラートの合成例はこんなのがあります↓

nucleophileにp-TsOHを使うと反応が進行しない。
Tetrahedron Lett., 1982, 23, 4461-4464.

J. Org. Chem., 1996, 61, 7955-7956.

Tetrahedron Lett., 1997, 38, 4305-4308.

まあ、どれくらいの転化率と選択性で反応が進むのかが重要と思いますが、実際、光延反応の選択性ってどれくらいなんでしょうか?選択性について網羅された総説とかがあったら教えてください。

とりあえず、Cyclopropenium Cation Activationが光延オルタナティブに成れるかどうか見守っていきたいと思います。