巷で噂のいくら丼を食べてきました。
なか卯の"天然いくら丼"です。
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
上品な出汁醤油で味付けされたいくらは、プチッとした食感で甘味もあって普通に美味しい。
刻み海苔といくらの相性が抜群で、互いに香味を引き立てあってる。
たっぷりのいくらに大満足でした。
かなりコスパの高い一一品と思いました。
有機合成化学者の皆さん、毎日HPLC分析してますか?
ボクはしてます。
ところで「ODS(C18)カラムで水系移動相100%はダメ」っていう話を聞いたことありませんか?
曰く、水100%で流すとオクタデシル基が寝るから再現性が悪くなる。
曰く、水100%で流すとカラムが劣化する。
といったmyth (神話)です。
今までこの神話を裏取りすることなく盲信していたのですが、どうしてそのようなことが言われているのかを一念発起してジャブ程度に調べてみました。具体的には、液クロ虎の巻シリーズを読んで学習しつつ、Google先生に教えを乞うてみました。
以下、学習結果メモです↓
水100%移動相で流すことによってアルキル基(オクタデシル基)が寝込む状態(ligand collapse, phase collapse, matt down, folding)となって保持が減少し、再現性が得られなくなるという話は、1980年に報告された論文(Journal of Chromatography, 1980, 197, 11-20.)とかが根拠とになっているようですが、この考察は2000年以前の時代遅れに解釈のようで、いまでは保持の減少は細孔からの移動相の抜け出しであると考えられています。
具体的には以下の実験事実が"細孔からの移動相の抜け出し"を支持しています。
(1) 送液ポンプを停止し、カラム圧力がかかっていないと保持が急激に減少した。
(2) 保持の減少する前と後ではカラムの重量が変化し、この重量変化が保持しない試料の溶出時間の変化と一致した。
(3) 送液ポンプを停止し、カラム圧力が0になると同時にカラムのイン側をの密栓を締め、その後カラムから移動相が溶出することが確認され、その移動相の溶出量を計算するとカラムの重量の変化と一致した。
(4) 細孔の大きな固定相は保持に変化はなかった(10 nmの細孔径のODSは保持が大きく減少したが、22 nm以上の細孔では保持の変化はなかった)。
(5) 物理的に寝込むことが不可能であるTMSでも保持の変化が観察された(6 nmの細孔径では保持が大きく減少したが、9 nm以上の細孔では保持の変化はなかった)。
ref. 液クロ龍の巻
すなわち、カラムのポンプを止めて圧力が解放されると、水100移動相を流している場合、水が充填剤の細孔内から水が抜け出してしまい、抜けた水の分だけ保持が減少するわけです。
なので、再び細孔内に移動相(水)を戻せば保持の減少はなくなるわけです。
具体的には、 カラム出口側のバックプレッシャー(背圧)が20 MPaで充填剤内に水が入り込みます。そして、一度水が細孔内に入り込んだ後は5 MPaまでは細孔内に水は溜まります(背圧が5 MPaを下回ると細孔内から水は抜け出し始めます)。
。。。。って簡単に言うけど、カラム出口側の背圧をかけるって普通の装置では相当厳しくないですか?
上述したようにカラム出口に5 MPaの背圧をかけるためには、内径 0.1 mmの配管を500 mm接続しなければならないようです。
ハイ、大丈夫です。
特殊装置を必要としない簡単なソリューションが、それなりの制約条件とかあったりなかったりとかで幾つか存在します。こんな感じです↓
その1 水系移動相でも保持の再現性の高いODSカラムを使用する
(1) エンドキャッピング処理を施していない残存シラノル基の多く存在する細孔径10 nmのODSカラム。但し、エンドキャッピングを施していないと、水100%移動相での劣化が激しいというので実用的ではないですね。
(2) ODSの結合密度を半減し、エンドキャッピングとしてのTMSの結合量の多い場合(ODSの密度が2 μmol/m2以下の場合)。固定相に性質をTMSに近づける。
(3) 充填剤表面が極性修飾(親水基で修飾)されたC18カラムを使う。
極性の高い試薬を用いてエンドキャッピング処理したり、極性基埋め込み型のアルキル基を結合させたカラム。通常のC18固定相より疎水性が下がる。
(4) 細孔径の大きなカラムを使う。ただ、細孔径が大きくなるほど充填剤の比表面積が小さくなり、保持が小さくなる。
ref.
液クロ龍の巻
その2 C30固定相カラムを使う
C30固定相は水100%移動相を用いても保持の変化が非常に少なく安定した分析が可能です。そして、C18と保持がほぼ同じ(移動相がそのまま利用できる)で、立体選択性が高く、大きな化合物や脂溶性化合物が得意という特性があります。
何故、C30が100%水移動相での保持が安定しているかというと、充塡剤細孔内から水移動相を抜け出させる圧力が大気圧より低いからです(大気圧下で水移動相は C30充塡剤細孔内に押し込まれている)。
ref.
液クロ龍の巻
その3 有機溶媒リッチ移動相から100%水移動相に置換
70%以上の有機溶媒を含む移動相を流して細孔内を移動相で満たした後、カラム出口に5 MPa以上の背圧をかけながら水移動相を送液する(分析中はポンプを停止しない=圧力を5 MPa未満にしない)。
この方法は普通のHPLCでは相当厳しいと思いますが(カラムを付けてない配管だけの状態で5 MPaの圧力掛けなきゃいけないんでしょ)、細い配管を使用しているUPLCなら余裕なんじゃないでしょうか。
その4 有機溶媒チョイ足しメソッド
100%水移動相ではないんですが、有機溶媒が5-10%以上含まれている場合には逆相カラムの保持は安定していると言われています(諸説あると思います)。で、すべての有機溶媒について一律5%以上である必要はないんですね。溶媒によって変わります。一般論として、
メタノール:5%以上
アセトニトリル:2%以上
エタノール:2%以上
DMF:1%以上
イソプロピルアルコール:1%以上
で保持が安定するようです(極性の低い溶媒ほど濃度は低くなる)。
ref. 液クロ龍の巻
どうですか、みなさん。明日から100%水移動相でHPLC分析したくなりませんか?
ボクはなりました。
明日も液クロだ。
以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の、スキスキ高速液体クロマトグラフィーメモでした。
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