2020年9月22日火曜日

アミノ酸(ペプチド)の化学 (1):N-Ac-N-Alkyl-Xaa Motif

寒い時期、おかみさんが元準ミス台東(当時19歳)という入谷に海鮮丼を食べに行ったときのメモです↓

-割烹さいとう memo-


住所:台東区下谷2-9-7

-海鮮丼 (具の大盛り) (1,150 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
もの凄いボリュームの海鮮度。「具の大盛り」をたのんだせいか、具材の量が半端にです。
大量に盛られた具材は、〆鯖、イクラ、鰤(or イナダ)、海老(生)、鰹のタタキ、ネギトロ(中落ち?)、数の子、帆立、つぶ貝、烏賊、サーモン、炙りサーモン、蒲鉾、玉子、身がぷりぷり(し過ぎ)の白身、ちっちゃい貝、赤身の握り、蒸し海老の握りとテンコ盛り。
コスパ的には、猛烈に腹いっぱいになるので文句無しの及第点だけど、味はそれなりで値段相応といったところ。
〆鯖と炙りサーモンは良かったけど、他は凡庸な味でした。特に炙りサーモンは、程よく脂が抜けていて、炙られて硬くなった外側と、トロトロに軟らかい内部の食感のコントラストが面白美味しいです。
以下、各具材の寸評です。
イクラ:甘みなし。
鰤:真っ白で脂ギッシュ(多分、養殖)。
海老:まずますフレッシュ。
鰹のタタキ:普通に美味しい。
ネギトロ:まずますの味。そこそこ脂リッチ。
数の子:硬めで、プチプチ感が貧弱。
帆立:気の抜けた感じの味。
つぶ貝:硬くて、味が貧相。
烏賊:普通に美味しい。
サーモン:悪くはないけど、脂が重すぎ。
身がぷりぷりの白身:キックが強すぎ(イキはいいと思う)。
赤身の握り、蒸し海老:握りにする意味が見出せない。
あと、ご飯(酢飯)は、平たい皿に盛られているためか、どんどん冷たくなっていき、それに伴って食感も悪くなっていきます。
でも、コスパはいいです、コスパは。


閑話休題


学生時代のボス(教授)は、戦後の貧しさに起因する食物への渇望から、アミノ酸関連の仕事(研究)もしていました。当時のボクの研究テーマはアミノ酸とは直接的に関係ないもので(一言で言えば皆無)、従って、アミノ酸の関してボクはスーパー初心者級なわけです(他にも色々スーパー初心者級だけど)。

ハイというわけで、アミノ酸の"脱スーパー初心者"を目指して、今日からその副反応の観点から造詣を深めていこうと思います。 

1回目のお題は、こちら↓

N-Ac-N-Alkyl-Xaa Motif

N-Ac-N-Alkyl-Xaaのシーケーンス(っても末端にある)は酸分解しやすく、アミド結合が容易に開裂してしまうようです。
Proposed mechanism of the acidolytic cleavage of N-Ac-N-Alkyl-Xaa Motif

アミノ酸と言えばペプチド。ペプチドと言えばの固相合成が連想されます。そして、固相合成において、酸を用いてペプチド鎖を樹脂から切り出しつつ、保護基を切断するっていう絶対必要な工程でこの副反応は起こり得ます。

ところで、この(副)反応の原因は、
(1) アセチル基の求核性と
(2) N-メチル(アルキル)基の存在による副反応に有利な二次構造
にあると推測されます(副反応の誘起には両者が必要となります)。

なので、
(1)に関しては、アセチル基がなかったり、より電子吸引性のカルバメート(メチルカルバメートとか)に変えてあげるか、N-Ac-N-Alkyl-Xaa→N-Ac-N-H-Xaaで副反応は抑制されます。

(2)については、N-Ac-N-Alkyl-Xaaだとcis-アミドのポピュレーションが増えるんですが、cis-アミド構造がアセチル基の求核攻撃を容易にする部分構造を形成するんだろうということです。

以上、二流大出のアミノ酸スーパー初心者級テクニシャン(研究補助員)の第一回アミノ酸メモでした。

2020年9月19日土曜日

孤独のグルメ聖地巡礼 in 奥渋:viva (ヴィヴァ)!お魚!!

ども、魚食いの日本人、お魚大好きコンキチです。

プレ・コロナの時代(増税前)、仕事でちょっと苦手な渋谷に行ったんですが、その際、奥渋に足を伸ばしてランチしたときのメモです。最寄駅は代々木公園。

行ったお店は、奥渋にある魚力です。

住所:渋谷区神山町40-4
http://www.uoriki6709.com

原作(漫画)の「孤独のグルメ 2」の第10話「東京都渋谷区松濤のブリ照り焼き定食」で「魚九」という店名で登場します。

このお店は独特の注文システムを構築していて、入店するとすぐの右側の壁にメニューが記載された札が沢山掛かっていて、客は目当てお札を取って奥へと進み、カウンターの中で給仕しているお店の人に札を手渡します。その際、札を裏返すように言われます。すると、裏側には番号が書いてあって、掲示されている"当たり番号"と合致すれば、サイドメニューから一品サービスというおまけ付きオーダーシステムに仕上がっています(因みにオイラは外れました...シクシク涙)。

さて、劇中で五郎さんが食したものはブリ照焼定食と、"当たり"の明太子でしたが、ボクはそれをガン無視したオーダーで攻めてみました↓


-生ビール (ジョッキ) (増税前で500 JPY)-
-REVIEW-

生。ジョッキです。


-さば味噌煮(シモ)定食 (増税前で1,030 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ご飯(おかわり自由)、味噌汁(おかわり自由)付き。
濃厚な甘さの白味噌仕立て。鯖の身の絶妙な噛み応えが最高に気持ちいい。そして、骨まで違和感なく食べられます(12時間以上煮込んでいる)。しっかりした絹っぽいお豆腐と葱(よく煮えてる)も入っていて嬉しい。
あと、蜆の味噌汁は蜆リッチで、お出汁もふんだんに出ていて、思わずおかわり(無料)してしまいました(そして蜆も貪るように食べてしまいました)。
加えて、テーブルに置いてあるヒジキも食べ放題。最高に満足の定食でした。

因みに、さば味噌煮定食は今回注文したシモ(尻尾の方半分)に加えてカミ(頭の方半分)があります。で、ぞれぞれの特徴としては、

カミ:脂がのっている(豆腐なし)
シモ:身が締まって噛みごたえがある(豆腐つき)

んだそうです。

さば味噌煮定食が一番の名物だと思うんですが(アド街でもやってた)、他にも魅力的なお魚メニューがいっぱいなので、再訪は必至です。ということで、引き続き再訪したときのメモです↓

-ビンビール (増税前で550 JPY)-
-REVIEW-

黒ラベルの中瓶です。

-あじなめろう定食 (増税前で1,050 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ご飯(おかわり自由)、味噌汁(おかわり自由)付き。
白味噌(メイン)と赤味噌のミックス仕立てのあじなめろう。赤味噌が隠し味っぽく効いていて、味に深みを感じる。そして、鯵には程よい弾力を残っていて、食感も楽しめる。混ぜ込まれている葱と大葉がよいアクセント。
総じて、白いご飯が進む進む。


最後に注意事項なんだけど、ご飯と味噌汁のおかわりは何度でも無料なんだけど、お残し厳禁なので気をつけましょう。


以上、四十路食いしん坊将軍の孤独のグルメ聖地巡礼メモでした。




2020年9月13日日曜日

孤独のグルメ聖地巡礼 in 恵比寿:小肌とかホヤとか凍結酒とか

ども、食いしん坊将軍にして孤独のグルメ大好き中年のコンキチです。プレ・コロナの増税前の時代、恵比寿で孤独のグルメの聖地巡礼してきたときのメモです。

お店の名前は"さいき"です。孤独のグルメ Season 4の第12話(最終話)「渋谷区恵比寿の海老しんじょうと焼きおにぎり」に登場した、ちょっと女子大生(推定)をウリにしたお店です。

ドラマで五郎さん(松重豊さん)が食べた【五郎'sセレクション】は、

【お通し三品(日替わり)】
     [野菜と鶏の煮物] じっくり煮込んだ鶏と野菜 これだけだって 一杯いける
     [カツオの刺身] 板長お奨め 日替り刺身 明日は真鯛かノドクロか
     [トマトとうふ] 店にそぐわぬ そのイタリア感 しかし この豆腐 クセ物! 
【アジフライ】揚げたてアジの その食感 ウスターかければ 旨さ倍増
【海老しんじょう】サクッ・トロッ・旨っ!の三拍子 丁寧仕事に成せる技
【カブの白湯スープ】優しく そして繊細に・・・ さいき自慢に おかずスープ
【焼きおにぎり(2人前)】じゃこ飯醤油の最強おにぎり 出会えりゃ嬉しい ラッキーアイテム

ふらっとQUSUMIのコーナーで原作者の久住さんが食べたのは、
【凍結酒 (一ノ蔵) 600円】 
【お通し三品(日替わり)】肉じゃが、合鴨ロース(ペッパー添え)、白イカの刺身
【新子 850円】 
 でした。 

そして、孤独のグルメ大好き中年のボクがいただいたのはこちらです↓

-さいき-
住所:渋谷区恵比寿西1-7-12



-お通し三品 (1,300 JPYらしい)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
内容は日替わりで、今回は合鴨スモーク、メジマグロの刺身、煮物の三品。
合鴨スモークのは、スモーキーフレーバーが複雑かつパワフル。食欲そそる素晴らしい香り。とっても軟らかくて、幾分レア感もあって美味しい。
メジマグロは軟らかくプリッとしていてキメ細かい身質。鰹を上品にしたような繊細な味わい。
煮物の具材は大根、人参、お豆腐、青菜、つみれ。優しくマイルドながらしっかりとした美味しい味つけ。大根がとても軟らかく、お出汁がよく染みていて美味しい。それから、上品で綺麗なフィッシーテイストのつみれは、粗めで、口の中でほぐれていく感触が超気持ちいい。
ワサビは粉ワサビかな(少なくとも本山葵100%ではない)。

-一ノ蔵 (一合)-
-REVIEW-
辛口(とのこと)。熱燗でお願いしたんだけど、どうみてもぬる燗で提供される。多分、無鑑査辛口なんじゃないかと思う。

-〆小肌 (830 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
厚めで大きめに切り出されていて、ちょっとそのデカさはないんじゃない?と心配になったんだけど、そんなの杞憂で美味でした。
身はちゃんと軟らかいし、お酢の加減もいい塩梅で、その重さを殆ど感じない軽やかさで、小肌の旨味が映える。
添えられているレモンをかけると、酸味に奥行きがでて、これもまた旨い。

-賀茂泉 (一合)-
-REVIEW-
甘口(とのこと)。これも熱燗でたのんだんだけど、やっぱりぬるい。
あと、先の一ノ蔵と比較すれば甘いけど、甘口っていうほど甘くないね。

-ホヤ塩辛 (750 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
今まで食べたホヤの中で三本の指に入る旨さ!ベストかも。
確かに塩辛なんだけど、かなりの薄塩味で、ホヤの香味がダイレクトに伝わってくる。
ホヤの身はとっても軟らかく、吸い付くような食感で、ウェット感たっぷり。究極の食感なんじゃないかと思う。
味は新鮮そのもの(フレッシュ)で、甘みと酸味、独特のホヤの風味のバランスが抜群。そこに控えめながら適度な塩味が加わって、美味しさがバースト。そして、酒が進む、進む。

-凍結酒 (一ノ蔵) (600 JPYらしい)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
シャーベット状の氷酒。一の蔵の無鑑査辛口の一升瓶から振り出してグラスに注いでもらう。個人的に2ランクくらい旨さのグレードが上がってる感じがする。


店内のカウンターは趣を凝らした造り。接客は雑談好きの大学生っぽい女子四人(中国人3, 日本人1)が担当し、入店時は「おかえりなさい」、退店時は「いってらっしゃい」というメイドカフェ張りのご挨拶。料理は文句なしに旨いけど、庶民には高めのプライシング。

あと、おしん香 (450 JPY)は19:00からの提供開始とのこと。

因みに、オイラの座った席は、ドラマで五郎さんが鞄を置いた席でした(ちょっぴり嬉しい)。

以上、孤独のグルメ大好きオジサンの聖地巡礼メモでした。




2020年8月29日土曜日

もっとNitration (N-ニトロサッカリンの成長)

水天宮近くの1887年創業のお寿司屋さんでランチに丼モノを食べたときのメモです。

-都寿司 memo-
住所:中央区日本橋蛎殻町1-6-5

-にもの丼 (1,200 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
穴子、帆立、蛸、海老の煮物の丼。加えて、干瓢と生姜、漬物がご飯の上に載っている。魚介の味付けは"ツメ"。ご飯は酢飯。
ツメは甘さ控えめで、シックで硬めな味に仕上がっている。
ご飯(酢飯)は微甘でマイルドな味付け。弾むような食感で美味しい。
煮穴子はかなり旨い!フワッとふっくらしていて香味豊か。煮穴子を心の底から旨いと思ったのは初めて。風味絶佳の領域(白焼き、天ぷら派なので)。
煮帆立は地味深く、咀嚼するたびにその滋味が口腔内に広がっていく。
蛸も美味い。表面はキメ細かく、吸い付くようなねっとりした食感。その風味豊かな淡白な味にツメがとてもよく合います(これは素晴らしい)。
干瓢はマイルドな味に仕上がって、好みの味。漬物はキリッとしょっぱい。生姜の薄切りは甘辛のバランスとれたマイルド系で秀逸。
兎に角旨い!そして、ツメが絶品。この丼のファンになりました。


-限定入荷 冷酒一合 180 cc (900 JPY+tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
何本か陳列してあってそこから選ぶように言われたんだけど、考えあぐねてお店の人に尋ねた結果、「純米吟醸 本まぐろ」をセレクト。「にもの丼ならこれです」と力強く勧めてもらいました。
トップに華やいだ吟醸香がほどほどに(少し鼻につくか)。乾いた辛口で食中酒向きか?勧めてくれた店員さん曰く「味を邪魔しないでしょ」。確かに、綺麗な辛さだし、食中酒として悪くないと思いました。あと、名前がインパクト大。


閑話休題


前に、N-ニトロサッカリンの芳香族求電子置換反応に基づくニトロ化のメモを書きました。
see http://researcher-station.blogspot.com/2020/03/n.html

今回のメモは同じオーサーの論文で、また、N-ニトロサッカリンのニトロ化のメモです。

読んだ文献はこちら↓

N-Nitorheterocycles: Bench-Stable Organic Reagents for Catalytic Ipso-Nitration of Aryl- and Heteroarylboronic Acids
Org. Lett., 2020, 22, 2714-2719.

お題はアリールボロン酸のipso-ニトロ化です。

やっぱニトロ化って言ったら、真っ先に思いつくのは、授業で絶対習う芳香族求電子置換反応ですが、過酷な反応条件に起因する副反応や異性体の副成、官能基許容性の低さといった問題点は最早枕詞です。
そして、このような問題を回避する合成法として、ipso-ニトロ化は魅力的な方法です。

イントロにipso-ニトロ化のパイオニア的仕事が年表としてまとめてあったので、まずそれを紹介しましよう↓

Prakash, Olah 2000
   NH4NO3/TFAA, CH3CN, -35˚C, up to 6 hr, 8 examples, 23-78%
   ref. Synlett, 2000, 1485.

Parkash, Olah 2004
   MNO2/TMSCl (M=NH4, Ag), CH2Cl2, rt. up to 72 hr, 9 examples, 20-98%
   refOL20046, 2205.

Wu, Beller 2011
   tBuONO (10 eq.), air, dioxane, rt., 16 hr, 10 examples, 45-87%
   ref. Chem. Commun., 2011, 47, 12462.

Fu 2011
   NaNO2/Cu2O/NH3・H2O, H2O, rt., 36-48 hr, 12 examples, 44-70%
   ref. Chem.-Eur. J., 2011, 17, 5652.

Maiti 2012
   Bi(NO3)3・5H2O/K2S2O8
   toluene, 80˚C uo to 14 hr, 26 examples, 35-96%
   ref. OL201214, 1736.


Fu 2013
   Fe(NO3)3・9H2O, 80℃, toluene, 18 hr
   refRSC Adv., 2013, 3, 25602.

Goswami 2015
   NaNO2/NBS/PIFA, CH3CN, rt., 3 hr, 18 examples, 82-93%
   ref. Org. Biomol. Chem., 2015, 13, 4828.

Shen 2017
   68% HNO3 aq./TFA, air, 80˚C, 18 hr, 14 examples, 41-91%
   ref. Synth. Commun., 2017, 47, 10.

Zolfigol 2018
   [DSim]NO3, neat, rt., up to 3 min., 13 examples, 75-92%
   ref. JOC., 2018, 83, 3645.


これらの先行研究では、使用される試薬は不安定であり、過酷な条件、酸化的条件、長い反応時間、低い官能基許容性、酸性廃棄物や金属廃棄物が大量に排出されるといった問題があります。さらに、ニトロヘテロアレーンの合成例は僅かだといいます。

ところで、最近(2019)著者らのグループは、bench-stableかつ容易にアクセス可能なニトロ基転移試薬を用いたニトロ化反応を報告しています↓

Chem. -Eur. J., 2019, 25, 12929-12939.

Nature Commun., 2019, 10, 3410.

(ほぼ)中性のマイルドな反応条件と基質一般性の高さから、著者らはこれらの試薬のipso-ニトロ化への応用を試みます。ということで、ボロン酸のipso-ニトロ化の反応開発に取り組んだ著者らが見出した新規ipso-nitrationがこちら↓


N-ニトロコハク酸イミドは光触媒反応仕様(Nitryl radical)、N-ニトロサッカリンはメタルフリー仕様(Nitronium)に仕上がっています。

都合40基質について検討していて、ボチボチいい感じの基質一般性なのではないでしょうか。やっぱり、穏和な反応条件はみんな大好きだと思うし、ipso-置換反応は選択性に安心感があります。そして本報をもって、N-ニトロサッカリンは芳香族求電子置換反応(see http://researcher-station.blogspot.com/2020/03/n.html)だけでなく、ipso-置換反応でもイケイケであることが例証されました。いいヤツです。
(N-ニトロコハク酸イミドだって、フォトキャタリティックにアルケンのニトロ化とipso-ニトロ化の両刀使いなんだからネッ)

N-ニトロコハク酸イミドを用いた光触媒反応は溶媒効果が大きく、アセトニトリルがピカイチです(SIに書いてあった)。他方、N-ニトロサッカリンを使った"非"光触媒反応では、反応溶媒にHFIPを使用することが成功のキモになっています。また、芳香族求電子置換反応のときと同様に、アセトニトリル溶媒中、ルイス酸(Mg(ClO4)2とかZn(NTf2)2)の添加も有効です。

N-ニトロサッカリンを使ったメタルフリーバージョンでは2 gスケールでの実施例もあり、そこそこ確度の高い反応に仕上がっているのではないでしょうか。



ハイ、それでは推定反応機構です↓

Plausible catalytic cycle for the ipso-nitration

Proposed electrophilic mechanism in HFIP


ボク的にはoptimal以外の条件も気になるところなので、参考のため最適条件の検討結果をメモってフィニッシュしたいと思います。

Reaction Design and Optimized Studies

Supporting Informationにはより詳細な検討結果(溶媒、光触媒、ルイス酸、etc.)が記載されているので、興味を持たれた方はそちらをご覧になればためになるでしょう。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のN-ニトロサッカリンだーい好きメモでした。



2020年8月27日木曜日

カルバメートを還元せよ

お鍋大好きコンキチです。リアルに夏でも鍋をよく食べます。ということで、平井にある豊田屋で飲食したときのメモです。

-豊田屋 memo-
住所:江戸川区平井6-15-23

通称「痛風鍋」で有名な同店は冬場の予約は困難を極めると言いますが、予約は三名から(https://travel-noted.jp/posts/22888)のようなので、カウンター席なら予約なしでいけます(多分)。


人気の鍋メニューは(間違ってなければ)全12種。
アンキモ、ネギマ、カモ、牛、とん鍋(と、とんちり鍋)は一年中、
穴子鍋、ニラ玉鍋、どじょう鍋も(多分)一年中、
白子鍋、アンコウ鍋、カキ鍋は季節限定です。

黄色の短冊メニューの書かれた鍋は、目の前の卓上のコンロで作ってもらえるタイプ(とんちり、とん鍋、牛鍋、ねぎま鍋、カモ鍋、アンキモ鍋、白子鍋、アンコウ鍋、カキ鍋)、
黒の短冊メニューに書かれた鍋は、出来上がったものを持ってきてもらうタイプの鍋です(穴子鍋、ニラ玉鍋、どじょう鍋)。

あと、卓上で作ってもらうタイプの鍋はお、触り厳禁なので気をつけましょう。


-にごり酒- (340 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
普通に美味しいです。甘めで強いボディー。にごり酒ってハズレがまずないので安心して注文できます。コスパ高し。


-にこごり (400 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
透明度の高いゼラチン質で、とても上品な味付けで、食感が素晴らしく繊細で口溶けが綺麗です。具材は多分穴子なんじゃないかなと思うんだけど、弾力に富み、ゼラチン部の舌触りとのコントラストが面白い。

-カモ鍋 (1,800 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
具材はメインの鴨肉に加えて、葱、お豆腐、しらたき、エノキ、白菜。
ブクブクと激しく煮立たせたところに、オヤジさんが箸を入れて具材をひっくり返し、さらに煮込んで出来上がりです。
けっこう激しく煮た割に、割り下は軽やかに澄んだ甘めのすっきりした綺麗な味に仕上がっています。鴨の脂が鍋に染み出していて、旨味もリッチ。
煮え上がった鴨肉は厚みがあってゴロッとしていて、弾力に富んで硬めの歯応え。その野趣的で少しクセのある味はまさにジビエ(Gibier)ライクで、荒々しくワイルドめの味わいです。


-焼酎ハイボール (270 JPY)-
-REVIEW-
謎のエキスの入った何とも形容しがたい味の焼酎とレモンがグラスに入って提供され、これを炭酸(アズマ炭酸)で割って飲む、所謂、下町ハイボール。最早これはファッションですね。






-酒 浅草無双 (260 JPY)-
-REVIEW-
-RATING- ★☆☆☆☆
燗をつけてもらう。正直、あんまり美味くなかったです。
燗に物凄く向かない酒質だったのかもしれません。


-こはだ (500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
酢がけっこう効いているけど、そんなにキツい味ではなくって、フレッシュ感リッチ。身はあまり軟らかくないけど、硬いわけではなくって、歯応えを楽しむのにはいい感じ。お酢に負けない小肌感を保持しつつ余分な臭み(fishy note)はなく悪くない。
薬味には粉ワサビ。


-ホワイトホース ウイスキーハイボール (320 JPY)-
-REVIEW-
-RATING- ★★★☆☆
ホワイトホースのハイボールは普通においしいよね。炭酸はアズマ炭酸です。


-新子 (900 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
初夏の風物詩です(初夏にいただきました)。
シャープな味のお酢がけっこう効いているんだけど、刺々しさは全くなくって、新子の繊細で可愛らしい味がしっかりと感じられて、いい感じです。
足立区の某有名居酒屋では、"新子"と称してけっこう大っきくなった小肌を出すという不誠実なことをやってますが、これは正真正銘本物の"新子"でした。

-アンキモ鍋 (2,600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アンキモたっぷりのお鍋。アンキモ以外の具材は、お豆腐(絹)、葱、白菜、エノキ、しらたき(かな)。
割下はマイルドテイストで、アンキモエキスが染み出しているのかコク深い甘みがある。
メインのアンキモはプリュプリュで、まるで綺麗な滋味たっぷりのプリンのよう。はっきり言って、こんな旨いもの食べたことないっていうくらいのウマさ。
野菜のクオリティも抜群。特に葱が激ウマ。自然な甘みふんだんで、食感もいい感じにシャキッとしている(グツグツ煮ているのに食感が崩れていない)。
至高かつ至福の一鍋に仕上がっていると思いま


-本マグロさしみ (700 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
筋なく、吸い付くような感じのあるしっとりした食感の身質。
少し血の匂いがあるけど、ワサビを付けると生臭さは消えて、いい感じの甘みが現れます。




-穴子鍋 (950 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
まず、お鍋のツユが旨いです。綺麗な甘さで滋味深い醤油ベースのスープで、いつまでも飲んでいたくなるほどの出来映え。
具材はメインの穴子に加えて、葱、牛蒡、玉子。
穴子は信じられないほど美味しい!適度の脂、張りのある身から繰り出されるダイナミズムに富んだ弾力、淡白系の滋味深い濃厚な味は申し分なく、旨さが迸る。
脇を固める具材にも手を抜いたところはないです。葱はフレッシュ。玉子のフワッとした食感も素晴らしい。また、厚く切り出された牛蒡は歯応えが良く、風味豊か。
一鍋入魂の至高の鍋と思いました。


-レバニライタメ (380 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
レバが激しくソリッド。ボクが思い描く理想のレバとは対極の食感なんだけど、美味しい。気持ち良いほどカラッとした硬さが、ちょっぴりスナックライクで、口腔内にそこはかとなく広がるレバに野趣的な香味も悪くないです。
それから野菜が美味しい。もやしはシャキシャキでとってもフレッシュ。ニラも新鮮。両者とも輝いています。
味付けも絶妙の塩梅。クセになるニラレバに仕上がっていると思います。


最後にインフォーメーションです。
豊田屋さんは店舗建替のため

(令和三年)三月十八日まで営業 
(令和三年)三月十九日より(令和三年)十月三十一日まで休業
(令和三年)十一月一日開店

の予定です。なので、ご予約は計画的にね。

さらに今年は、

白子鍋:九月四日より
アンコウ鍋:九月十五日より

っていうお知らせが店内に貼ってありました。

それから、ボクの愛読しているDr.コトー診療所の作者であらせられます山田貴敏先生の色紙(コトー先生と星野彩佳看護師の画が描いてある)が飾ってあったので、余裕があったら鑑賞してみましょう。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

N-Methylation and Trideuteromethylation of Amines via Magnesium-Catalyzed Reduction of Cyclic and Linear Carbamates
Org. Lett., 2020, 22, 3209-3214.

カルバメートを還元してメチルアミン誘導体を合成するお話です。

30 examples, up to 98% yield
(HBpin : 24 examples, 50-98% yield
DBPin : 6 examples, 81-88% yield)
Low-cost and commercially available catalyst
Excellent functional group tolerance

CH3基(やCD3基)の導入は未だにチャレンジングなテーマであり、N-メチル化(トリデューテリウム化)はあまり反応開発されていないと言います。

C1-アルキ化剤として真っ先に思いつくのはヨウ化メチルや硫酸ジメチルですが、一般論として一級アミンのN-メチル化はオーバーアルキレーションの問題がつきまとって困難です。メタノールを用いた方法も開発されていますが、もっぱらカルボニル化合物のα-メチル化やアレーンに限定されていて、N-メチル化への応用は殆どないようです。

他の代替法としてCO2-surrogatesの還元が挙げられるようですが、遷移金属触媒が必要なことに加えて、過酷な条件が必要です(Chem. Commun., 2014, 50, 14229.; Chem. -Eur. J., 2015, 21, 16759.; Catal. Sci. Technol., 2016, 6, 7956.; Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 12820.)。

そこで著者らが着目したのは、直接的メチル化ではなく、カルバメートの還元です。しかしながら、窒素原子の保護基として使用されているだけあって、カルバメートはカルボニル誘導体の中で圧倒的な還元耐性を示します(Chem. Soc. Rev,, 2015, 44, 3808.; J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 159.)。

で、著者らが過去の研究成果を踏まえて鋭意検討した結果辿り着いたのが、hydroboration-hydrodeoxygenationによるカルバメートの還元法です。

最適条件は
・MgBu2:10 mol%
・HBpin:3.5 eq.
・solvent:neat (solvent-free)
・temp.:65˚C
です。

solvent-freeが最適ということですが、溶媒効果が気になるので、著者らの最適化への道程をおさらいしてみましょう↓

Optimization of MgBu2-Catalyzed Hydroboration of Carbamate

反応の効率が基質濃度に強く依存してますね。ただ、それなりの濃度であれば溶媒が反応を強く阻害するわけでもないようです。
ボクって"solvent-free"って好きじゃないので、個人的には朗報です。プロセス全体を俯瞰すると必ずしもエコ・フレンドリーでもないし。仕込みにくいし。仕込みにくいし。仕込みにくいし。

さてこの反応、"Excellent functional group tolerance"を謳っていますが、苦手な基質もあります。立体障害に弱いらしく、オルト置換アニリンでは収率が低めです。

また、カルバメートのエステルのアルキル鎖ですが、嵩高いtert-ブチル基(Boc group)でも高収率です。

ところで、著者らはN-Bocの還元をもって、

"To the best our knowledge this is the first time that one of the most applied N-protecting groups, the N-Boc group, could be used as a N-methyl precursor."

とかアピールしてるんだけど、ちょと検索するとLAHでN-Bocの還元が普通に沢山ヒットするんですけど、LAHは実用的じゃないからですか?Red-Alでもいけそうな気がするんですけど、どうなんですかね?

それでは最後に推定反応機構です↓

カルバメートを還元してN-メチルをつくるんだったら、メチルとかエチルカルバメートをRed-Alを使って還元する方が好きかなと思う二流大出のテクニシャンのメモでした。でも、選択肢が増えるのはいいよね。