とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, March 29, 2015

その光延、Perfect Retention

北千住にあるラーメン屋のメモです↓

-みそ味専門マタドール 濃厚味噌ラーメン (増税前 850 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
麺は平打ち。平打ちにしては比較的細い。そこそこ弾力があり、トゥルントゥルンな食感。スープは濃厚な白味噌ベース。かなり甘く、粘度感じるも、上品さがある(牛骨×白味噌らしい)。
具は、もやし、刻みネギ、トマト、レンコン、油かす。レンコンは斬新な気がするが、特にシナジーは感じられなかった。スープを啜ったときに感じるトマトとのハーモニーは独特で、とろみのある濃いスープに対する清涼感あるアクセントになっていて良い。

-まぜそば専門 闘牛脂 まぜそば塩 (850 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
麺を隠すように具が盛りつけられて提供される。麺は平打ちウェービー。これに塩ダレ(?)を器の中で絡めて食べる。具は、牛バラ肉、塩昆布、天かす、筍、白ネギ、万能ネギ、タマネギ(みじん切り)。麺の表面は油でコーティングされており、コシの強い麺とヌルヌル感のコントラストが楽しい。噛めばモチモチ。平打ち麺だからなのか、噛み疲れることなく、麺の弾力を楽しめる。スープオフだけあって麺自体は旨い。
タレの味はしょっぱ甘く、少しジャンキーなtaste。
具は種類が多くて面白い。牛バラが薄味なのは評価できるが、ちょっと臭みがある。塩昆布と天かすは良いアクセント。
筍は上品かつあっさりした穏やかな甘さで、柔らかい食感。(細めに)線切りされていて、ラーメンの具として絶妙な大きさで秀逸。
二種類のネギが面白く、玉ネギが旨い。
店員がタレと麺を良くかき混ぜて提供してくれているようだったが、それでも上下の濃度勾配が顕著だ。ボク的には、良い塩梅と思ったのは上層部だけ。具とのミキシングを楽しむ分にも上層部程度の濃さで十分。中〜下層部にかけてはかなり塩辛い。全体的には相当濃い、かなり濃くて塩辛い。
あと、付属のスープは、多分、コンソメだと思うんだけど、カツオ節の香味が超強烈。それから、かなり塩辛い。
ラーメン、付属スープ共にかなり塩辛い。軽く味覚障害かと思うレベル。

-牛骨らぁ麺マタドール本店 醤油らぁ麺 (800 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
スープはしょっぱ甘く、あっさりしつつも滋味深い。
麺は細麺ストレート。柔らかく弾力があり旨い。
スープと麺が良くマッチしていて、麺にスープが良く絡み、麺を啜るのが気持ち良い。
具は、大和煮ライクな牛肉、ネギ、万能ネギ、筍。牛肉は大和煮チックで甘く、そのフレークチックな形状•食感は面白い。二種類のネギはラーメン全体の味を引き締めgood!筍は細切りで歯触り、食感、味の三拍子揃って良い。
凄く洗練されているんだけど、牛独特の臭みがラーメンにはマッチしていて、totalに旨い。非の打ち所が無い。芸術的と言ってもいい一杯。


閑話休題


しつこく、光延反応のはなしです。

先日、Toy's Organocatalytic Mitsunobu Reaction Second Gemerationの論文 (Organocatalytic Mitsunobu Reactions with 3,5-Dinitrobenzoic Acid Synlett, 2010, 1115-1117.)を読んでいたら、イントロに単離•精製のインプルーブメント用の試薬としてこんな化合物のことが書いてありました↓


4,4'-Azopyridine (CAS# 2632-99-7)
Mw. 184.20
mp. 96-101˚C
40,700 JPY / 5 g (Aldrich)

シンプルな構造ながらも、けっこうなお値段です。で、副生するヒドラジン誘導体は反応液中で析出し、容易に除去することが可能らしいです。てっきり、acidic workupで水層に落とすのかと思ってましたが、どうやら違うようです。

とことで、随分前ですが、たゆたえども沈まずさんの「光延"反転"の話」という記事で、光延反応が完全立体保持で進行するという記事がありました(2012年)。DEAD-TPP系では、レアケースながら、pronuclephileのpKaや基質の立体障害などの影響によってホスホニウムカルボキシラートに平衡が偏る場合があるというこということで、ヒドロキシル基周りの立体障害が大きい分子内光延での報告が多いようです。

ところが、4,4'-Azopyridine-TPP系で分子間光延を行うと、驚くべきことに、DEAD-TPP系ではinversionする反応が、"Perfect Retention"で進行します。

This work (J. Org. Chem., 2008, 4882-4887.)

Tetrahedron Lett., 1991, 32, 3017.

4,4'-Azopyridineを使って、キラルな基質に対して光延反応を行った例は上記2例だけです。なので、"Perfect Retention"の発現の確度がどの程度なのかは分かりません。だけど、興味津々なので、暇があったら、SciFinderかReaxysでサーチしてみたいと思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。

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Saturday, March 28, 2015

どんな試薬を使って光延反応しましょうか?

グランスタに入っている、かんだやぶそば五代目堀田康太郎監修のお店に行ったときのメモです↓

-江戸せいろう蕎麦 memo-
-せいろうそば (600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
grassyで野趣的な香りのする緑がかった蕎麦は、太すぎず、細すぎずの中庸の太さで、角の立った食感でありながら、柔らかさもある。ツユは力強いbody。しっかりとした甘さと辛さでコク深い。蕎麦をつけて啜ると、蕎麦の甘さが花開く(これは凄い)。蕎麦のフレーバは仄かに立つ感じ。

-かけそば (600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
"かけ"のツユはかつお節の上品で良い香りが柔らかく立つ。蕎麦はせいろそばと同一か。少し柔らかいが、食感はなかなか良い。ツユには上品な辛さがあって、とても旨い。

蕎麦は外一。ツユは木樽で1週間以上寝かせたかえしと2種類の鰹節と利尻昆布を煮詰めた出汁を合わせてさらに1昼夜寝かせた蕎麦汁。


店内はモダンかつシックで、こじゃれた造りです。

そういえば、かんだやぶそばが復活したので、そろそろそっちの方にも足を運びたいです。


閑話休題


しつこく光延反応の話を書きます(光延反応のインプルーブメントについて徒然なるままに書いていきます)。

主に、

The Mitsunobu Reaction : Origin, Mechanism, Improvements, and Applications
Chem. Asian J., 2007, 2, 1340-1355.

新光延試薬 (TCI寄稿論文)

Development of New Synthetic Reagents in Mitsunobu Type Reaction
YAKUGAKU ZASSHI 2001, 121, 567-583.

Alcohols Inversion : Beyond the Mitsunobu (American Chemical Society Division of Organic Chemistry)

などを中心に読んでみたので、そのメモです。

•DCAD (Di-p-chlorobenzyl azodicarboxylate)


CAS# 916320-82-6
Mw. 367.18
50,100 JPY / 10 g (Aldrich)
m.p. 108-110˚C
室温で保管できる安定なオレンジの結晶性の固体

DEAD, DIADと同等の反応性。
DCAD-H2は難容性で、CH2Cl2で薄めて濾過することで、66-82%回収可能
DCAD-H2は高極性で、シリカゲルカラムによる分離が容易

Org. Lett., 2006, 8, 5069-5072.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2008/11/new-mitsunobu-reagent.html


•DMEAD (Bis(2-methoxyethyl) azodicarboxylate)

CAS# 940868-64-4
Mw. 234.21
75,000 JPY / 100 g (WAKO)
m.p. 40-41˚C

DEADと同等の反応性
DMEAD-H2は水溶性で、aqueous workupで除去可能
DMEAD-H2は高極性で、シリカゲルカラムによる分離が容易

Chem. Lett., 2007, 36, 566-567.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/02/dmead-alternative-to-dead.html


•DBAD (di-tert-Butyl azodicarboxylate)

CAS# 870-50-8
Mw. 230.26
32,300 JPY / 25 g (Aldrich)
m.p. 89-92˚C

6 examples, 30-69%
Tetrahedron Lett., 1999, 40, 4497-4500.

DBADとDBAD-H2は塩酸で処理すると分解し容易に除去できます。あと、ホスフィンにdiphenyl-2-pyridylphosphineを使うと、ホスフィンも対応するホスフィンオキシドも水層に落とせます。


因に、diphenyl-2-pyridylphosphine (CAS # 37943-90-1)の価格は
18,800 JPY / 5 g (Aldrich)
17,100 JPY 5 g (TCI)

DBADとフェロセニルタグをつけたホスフィンを使った例もあります↓

9 examples, 89-94% yield
Adv. Synth. Catal., 2006, 348, 1058-1062.

フェロセニル基はredox-switchable phase tagとして働きます。反応終了後。FeCl3でフェロセニルタグのついたホスフィンオキシドを酸化して生成するカチオンは非極性溶媒に溶解せず水層に抽出されます。ホスフィンオキシドを水層におとした後、塩酸処理してDBAD-H2を分解して除去します。


•Azo reagents tagged with cyclodextrin-binding groups

Tetrahedron Lett., 2004, 45, 6653-6656.

アダマンチルユニットのついたDAD試薬はcyclodextrin-bounded silica gel上で保持時間がメチャクチャ長くなるので生成物との分離が容易になる(アダマンタンはシクロデキストリンに強く取り込まれるゲスト分子らしい)。


•Fluorous azo reagents

J. Org. Chem., 2004, 69, 8751-8757.

fluorous azo reagentはmedium-pressure fluorous chromatographyで、fluorous phosphineはfluorous solide-phase extractionで除去するようです。


•Phosphonium ion tagged reagents

Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 1415-1420.

tetraarylphosphonium perchlorateがジエチルエーテルに溶けないことを利用し、反応終了後、エーテルを加えてホスホニウム塩を析出させ、濾別します。
(エーテルを使うのがお上品じゃないですね)


•Polymer-supported reagents

J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 52-53.

上記試薬はROMP (ring opening methathesis polymerization)によって合成されます。これらの試薬は両方ともTHFに溶解しベタイン形成できるので反応が進行します。で、これらの試薬がAcOEtに溶けないことを利用して除去します。

不溶性のポーマー担持試薬(ホスフィン、アゾ)は沢山報告されているようですが、その不均一性故、両者(ホスフィン、アゾ)の同時使用は避けられていたそうです(どちらか一方が溶けないといけない)。

それらか、もう1例↓
Mol. Diversity, 2005, 9, 305-316.

グリシドールのアニオン重合により合成されるこれらのポリマー担持試薬は、樹枝構造を持ち、全てのポリマーはpreciptation/filtrationで除去できる。


•Toy's Organocatalytic Mitsunobu Reaction

J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 9636-9637.

 化学両論量のDEADを使った場合(普通の光延反応)よりも収率が低下。2 eq. の酢酸が生成するので、pronucleophileが十分にacidicでないと副生成物(acetate)が生成する。
 この方法の2nd genaration (improvement)として、4-ニトロ安息香酸を3,5-ジニトロ安息香酸に換えて反応を行うとacetate副生を抑制できる(Synlett 2010, 7, 115.)。


•Catalytic Mitsunobu Reaction with an Iron Catalyst and Atmospheric Oxygen

Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 4613-4617.
see http://researcher-station.blogspot.jp/2015/03/catalyticmitsunobu-catalytic-mitsunobu.html


•Tsunoda reagents


DAD系光延試薬には所謂pKaの壁があります(pronucleophleのpKaが9以上になると収率が低下し、13以上になると全く反応が進行しなくなる)。ホスホラン系の角田試薬はこのpKaの壁を打ち破るために開発された試薬です。


反応後に生じるco-productはアセトニトリルとトリアルキルホスフィンオキシド。R'=Me (CMMP)の場合、副生するトリメチルホスフィンオキシドは水溶性が高く、分液操作で除去できる。R'=Bu (CMBP)のときに副生するトリブチルホスフィンオキシドは高極性でカラムで簡単に取り除けます。


あとホスホラン試薬の特筆すべき点は、(裸の)トシルアミドをpronucleophleに使えることと思います。(裸の)トシルアミドをオリジナルの光延条件に処すとホスフィントシルイミドが生成します。


しかしながら、CMBP条件では適用可能です。例えばこんな感じ(CMMPではダメ)↓


ということで、ホスホラン系の角田試薬は"pKaの壁"を軽く超越するパワーが備わっているように感じますが、懸念すべき点もあると感じます。まあ、ボク的には角田試薬は使ったこともなくて、基質一般性的な部分も網羅しるわけではないので、自信はあまりないんですが、立体障害にいささか弱いんじゃないかと思います。角田試薬は熱に対して安定なので加熱すれば収率は改善するんですが、proelectrophileに二級アルコールを使って室温で反応させた場合、意外と低収率だったりします。


最後にホスホラン系試薬の性質ですが、CMBPは液体、CMMPは固体。どちらも酸素と湿気に非常に弱く、かなり気難しい試薬と思います(使ったことないけど)。CMBPはシリンジで秤量して使い、CMMPは小分けして瓶全てを使い切るか、THF or ベンゼン溶液にして秤量する。基本、Wittig試薬なのでケトンとも反応するんだけど、エステルと反応することもあると言います。

CMBP (CAS # 157141-27-0)
110,900 JPY / 25 g (TCI)

CMMP (CAS# 176325-83-0)
74, 900 JPY / 10 ml (0.5 M in THF) (Aldrich)


•Tunoda's Azo Reagents



こちらも"pKaの壁"を克服するために開発された試薬。コンセプトは酸性度の小さいHAからプロトンを引き抜けるように、光延試薬の塩基性を高める目的で電子供与性の大きいアミノ基本を導入したというものです。

アゾジカルボキサミド類はDEADよりマイケル受容体としての反応性が低下するため、光延ベタイン形成のためにはTPPより求核性が高いTBP(tributylphosphine)を使用しなければなりません。
TMP(trimethylphosphine)を使った方が、上の置換基が小さいので収率が向上することに加えて、水溶性の高いトリメチルホスフィンオキシドが副生するので、便利な気がしますが、TMPは発火性なので、使わない方が無難でしょう。

これらのアゾ試薬の特徴ですが、全て粉もので再結晶により精製可能で、デシケーター内で長期間保存できます。水やアルコールなどの求核性のある溶媒中では、徐々に分解してアミンが遊離してきます。

また、対応するジヒドロ体は全て結晶性が高く、光延反応後、ヘキサン、エーテルを加えて析出させ、ろ別することにより大半を取り除くことができます。極性も高いため、カラム精製での容易に除去できそうです。さらに、TMAD-H2とDHTD-H2は水溶性なので、aqueous workupによる除去も有効です。

一般的に、光延反応は立体障害に弱いと言われていますが、立体障害の大きい基質に対して光延反応を敢行する場合は、TMAD存在下にp-メトキシ安息香酸を作用させるのが良いそうです。

ただ、これらのアゾ試薬には欠点があって、こんな副反応が起きる場合があります↓

(この副反応対策のために、閉環しにくい中員環のDHTDが開発された)

ついでに、DEADに較べて反転率が低いようです。

(「DEADだと収率が低いときでも、立体化学は完全に反転する」って書いてあった)

TMAD (CAS# 10465-78-8)
28,800 JPY / 5 g (TCI)


•Mukaiyama's Protocol
J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 10538-10539.
J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 7359-7367.

DEADよりも適用可能な基質が広がります。pronucleophileとして酸、フェノール、アルコールが適用可能。通常の光延反応よりも立体障害に強く、tertiaryアルコールも適用可能です。


•Sulfonate Inversion (Shi et al.)
Tetrahedron Asymmetry, 2010, 21, 277.

スルホナートのSN2で、求核剤にカルボン酸のアルカリ金属塩を使うと、脱離反応と競合するそうです。それに対して、ソフトなアンモニウム塩やCs塩を使用することで、脱離を緩和できますが、Shi等の開発したソリューションはもっとコンビニエントで、in situで調製したアミン-カルボン酸錯体がSN2選択的な求核剤として働きます。
官能基許容性は、エステル、アセタール、アリルスルホナートがあってもオッケー。
反応温度が割と高めだけど、これで反転が約束されるなら、one step増えるけど、凄く便利と思いました。


最後に光延反応の反応機構をメモしてフィニッシュです↓



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Sunday, March 8, 2015

CatalyticにMitsunobu: Catalytic Mitsunobu Reaction II

去年の夏にいったおでん屋さんのメモです↓

-こなから 新丸ビル店 memo-
-お好みおでん4品 そぼろご飯セット (1,150 JPY)-
おでんは、大根(単品価格330 JPY)、玉子(330 JPY)、京厚揚げ(235 JPY)、椎茸しんじょう(380 JPY)をチョイス。自動的にきくらげが付く。
おでんツユは濃厚上品スープ。カツオ節と昆布の澄んだ"濃さ"を感じる(椎茸、鰹節、鯖節、昆布のだし)。大多福や尾張家に較べてsharpな印象。
-大根-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
 歯応えが楽しめ、上品な出汁がふんだんに詰まっている。

-玉子-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
ぷるっぷるの玉子。旨い。

-椎茸しんじょう-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
椎茸の裏側に魚のすり身(しんじょう)が詰められている。椎茸の力強い香味と淡白なしんじょうと上品な出汁がbest match!椎茸と白身魚のすり身との相性の良さに驚いた。

-京厚揚げ-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
中がプルンプルンの食感で良い。

-そぼろご飯-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
ご飯はちょっと硬め。粒長は短めか?弾力が強く、きゅっきゅっっていう食感。ボク的にはもう少し軟らかい方が好み。茶漬けとかには合うんだろうなという感じの炊き加減。

あとランチビール(ブラウマイスター 340 JPY)もいただきました。


閑話休題

(2013年とちょっと古いけど)こんな文献を読んでみました↓

Recyclable Mitsunobu Reactions: Catalytic Mitunobu Reactions with an Iron Catalyst and Atmospheric Oxygen
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 4613-4617.

触媒的光延反応のお話です。

光延反応は、その確度の高い立体特異性のため、数多の応用例がありますが、co-productの分離精製が枕詞のように挙げられます。特に、DAD-H2の分離が問題となことが多く、DAD-H2の分離を容易にするための研究が精力的に行われてきたように思います。それら多くは化学両論量のDADを使用して、DAD-H2の水溶性を上げてaqueous workupで分離できるようにしたり、有機溶媒への溶解性を下げて濾別したり、極性を上げてカラム精製での除去を容易にしたりといったものが多く、これまでにDADを触媒量に抑えたインプルーブメントはToy等の報告1例(J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 9636-9637. see http://researcher-station.blogspot.jp/2008/11/catalytic-mitsunobu-reaction.html, Synlett, 2010, 1115-1117.)しかありませんでした。

で、本報は触媒的にDADを回す2番目の報告です。

著者らはFeII(Pc)が触媒するcarbazates (RCO2NHNH2)の空気酸化を開発していて(Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 10154-10157.)、この手法を光延反応(DAD-H2の再酸化)に応用したのがThis Workです(Pc=phthalocyanine)。

コンセプトはこちら↓


ます、DAD-H2の酸化が進行するか確認します↓


DEAD (R=CO2Et)だと0% Yieldで全然ダメ。著者らは、電子吸引基であエチルカーボネートが窒素原子をマスクし、反応性を低下させていると考え、2-phenylhydrazinecarboxylate (R=Ph)を試すと89% Yieldで酸化が進行しました。

で、新DAD試薬を使って光延反応を試みたところ、反応の進行が確認されます。

↑こんなふうに。

ところが、これを触媒サイクルにのせようとすると、全然うまく行きません↓


で、いろいろとスクリーニングして設定した最適条件はこちら↓


他、14 examples, 28-92% Yieldです。この中で、7例ははキラルな基質を使っていて、反転率はそこそこ良好(1例は完全反転)。

あと、この方法はDEADを使ったオリジナルの方法と同様に立体障害に弱いようで、(-)-mentholを基質に用いると、収率も反転率も低いです。

触媒的光延反応、そのコンセプトは素敵なんだけど、やっぱ実用性を鑑みると"道険し"といった感じでしょうか。


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