とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Thursday, May 31, 2007

GSC-oriented Indices

近年、GSC (Green Sustainable Chemistry)が注目を集め、Atom Economyであったり、ソルベント・フリー、有機分子触媒、イオン性液体、超臨界流体、フルオラスソルベント、相間移動触媒、Aqueous Reaction、マイクロリアクター、リサイクルといったGSCを志向した論文が日増しに増えてきているように感じるコンキチです。

一昔前までは、全合成を完遂するため、高い選択性や週率を出すためなら、どんな手段をも駆使するぞといった感じの論文が主流だったように思うのですが、いよいよアカデミックな世界でもパラダイムが回り始めたのかと感じる今日この頃です。 

とまあ、環境調和志向が台頭してきたことは良しとして、そのグリーン性はどの程度のものなのかということを表す指標が必要な訳で、著名なジャーナルでそのような環境指標を用いてプロセスの評価を定量化した論文というのはあまりないように思います。ということで、一応プロセス化学を生業とするコンキチが、巷で噂の環境指標を下記にまとめてみました。

(「医薬品のプロセス化学」を多分に参考にしました)


(1) Atom Economy (原子経済)、Atom Efficiency (原子効率)
Barry M. Trostによって提案された指標。トランスフォーメーション自体のグリーン性を評価する指標でる。

Atom Economy (%) = 目的物の分子量÷化学反応式左辺の全原子量×100

ref
. B. M. Trost, Science, 254, 1471 (1991).


(2) RME (Reaction Mass Efficiency)
Glaxo Smith Klineの研究者によって提案された指標。試薬の使用量や収率が加味され、実際の合成プロセスにより即した指標といえる。

REM (%) = 目的物の原子量÷実際の使用当量を乗じた原料の分子量の和×100

ref.. A. D. Curzon, D. J. C. Constable, D. N. Mortimer, V. L. Cunningham, Green Chemistry, 3, 1 (2001).


(3) E-factor (E-ファクター)

Sheldonによって提案された指標で、生成物1 kg当りの廃棄物の重量(kg)。E-ファクター100とは、1 kgの目的物を得るのに100 kgの廃棄物が発生するという意味。反応に直接関与する原料以外の溶媒、触媒、シリカゲル、中和に使う酸・塩基等も考慮される。より製造プロセスを意識した指標といえる。

E-ファクター (kg) = (原料の総重量-目的物の重量)÷目的物の重量

ref
. R. A. Sheldon, Chem. Ind., 7 Dec., 903 (1992).


(4) EQ (Environmental Quotient)
E-ファクターに環境に与えるインパクトの大きさを表す係数Qを乗じた指標。例えば、同じ廃棄物1 kgでも食塩と重金属では環境に対するインパクトが全く異なる。こうしたインパクトを加味した係数Qを各廃棄物量の乗じてE-ファクターを計算し直したもの。Sheldonが提唱。

ref
. R. A. Sheldon, Chem. Ind., 7 Dec., 903 (1992).


以上4つ程指標を挙げてみましたが、これ以外にもDowの「Eco-Efficiency」、Bayerの「Eco-Check」、BASFの「Eco-efficiency analysis」といった企業毎の環境マネジメントがあるようです。

上述した環境指標のリファレンスを見てみると、考案された年代は意外と古く、1993年4月から1999年3月まで大学に在学していたコンキチとしては、Ecologyという哲学に対して無頓着であったことに恥じ入るばかりです,,,,,

ISO14001といった環境マネジメントシステムを導入している企業も多いかと思うのですが、単に社会的な流れだからという理由で認証取得しているという企業も多々あるのではないかと思います(想像)。コンキチの勤務する会社でも認証取得していますが、化学プロセスの環境評価に費やされる時間は少なく、環境指標を用いた管理は皆無で多分に定性的な議論のみが行われています(っていうかISOのコンサルタントにしてもそれくらい指導して欲しい)。全ての化学会社は、最低でも上記環境指標による管理を行うべきと思います。それが、化学会社の最低限のCSRかと思います。

PS. RMEのリファレンスについては、RSCのWeb Siteからダウンロードできるので、そのうちじっくり読んでみたいと思います。

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Tuesday, May 29, 2007

経済財政諮問会議の戦い

経済財政諮問会議の戦い」を読了しました。

この本の著者は現経済財政担当相で。密かにコンキチが在学中にコンキチの母校で助教授をしていたらしく、ちょっぴり親近感がわきます(この本を読んでみた感じでは、その手腕も期待できそうです)。 

さて、本書の内容ですが、著者が事務方として役所にいたときのお話で、正直、所謂「よみもの」好きなコンキチにとって、読み易い文章ではなく、感想を一言で述べれば、「民主主義(もどき)の政策決定プロセスって鈍牛の歩みの如し」だなあというのを改めて感じたというくらいです。 

それから、経済財政諮問会議の資料ってかなりオープンに公表されていることにちょっと驚きました(反省。これからはできるだけ積極的に資料でも読もうかとと思いました)。 

あと、コンキチがこの本で一番感銘を受けたのは、本書の本題とは全く関係ないのですが、諮問会議の民間議員の1人であったトヨタ自動車の奥田会長(当時)の発言の引用が印象的でした。氏曰く、 「・・・私たちも、効率化を図るときに、例えば、一割削減というと少々汗をかく程度で達成できるということがあるが、三割削減というと、仕事そのものの見直しをしないと達成できないことが多く、真の改革が必要になる。(後略)」 だそうです。ちなみに、「工程表」の導入を進言したのも奥田会長だったとか。 (トヨタの全てを素晴らしいというつもりはありませんが)トヨタウェイの哲学の強さ・深さを物語る発言だったと思いました。

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Sunday, May 13, 2007

Five Forces in Process Chemistry

先日3年ぶりくらいに仕事でPowerPointを使いました。久々だったので、資料作成が楽しくなって、止まらなくなってしまいました。

部署全員(20人位?)の昨年度の研究成果のプレゼンをやることになり、その資料作りというわけです。

持ち時間は10分/人ということなので、7枚(表紙込)を半日くらいかけて作成終了です(まあ、細かい修正とかする予定なので、98%完成というところでしょうか)。

合成化学の門外漢もけっこういるので、スライドの一つにこんな感じの↓をつくってみました。


プロセス化学における5つの要諦という感じで、ポーター教授ののファイブフォースモデルをヒント(というか真似して)に考えてみました。

1) Capability/ 既存設備で対応できるか
2) Safty/ 安全性ですね
3) Repeatability/ 実機でも再現性の高いプロセスデザインか?
4) Sustinability/ 近年注目のGreen Sustinable Chemistryを志向した環境調和型のプロセスか?
5) Economy/ 利潤を追求することが目的の企業では、経済性を無視することはできません。

コンキチはアウトソーシング引受部隊なので、ストーリー的には上記5つのポイントからユーザー提示のラフなプロセスを見直し、その全てを改善したという感じにする予定です。

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Tuesday, May 8, 2007

国士 武田國男

落ちこぼれタケダを変える」を読了しました。


本書は、武田薬品工業
の会長である武田國男氏の著作です。

コンキチが武田國男氏に興味を抱いたのは、「成果主義」ブームが巻き起こった数年前に、自分なりに企業の処遇制度に関する書籍を読み漁っていた折、「ここが違う!「勝ち組企業」の成果主義―対話と個の確立をめざして」と題した武田薬品の事例を記した書籍を手に取ったことが発端でした。その後、「わかりやすい人事が会社を変える―「成果主義」導入・成功の法則」も読んだのですが、これらの本では武田薬品の人事・賃金処遇制度の構造改革が元人事部長の手によって描かれています。

その構造改革たるや、巷に蔓延る人件費カットのみを目的としたなんちゃって成果主義とは全く異なる、飽くなきアカウンタビリティーの追求を志向するもので、はっきり言ってコンキチの心は強く揺さぶられました。

まあ、元人事部長の手によって著された本ですから、いくらか割り引いて読む必要があるとは思いますが、日本経済が失われた10年といわれた時にあって、粛々と改革を続け、現在も進化し続け、しかも結果(業績)も伴っているという現実を鑑みると、非常に希有なまれに見るあっぱれな構造改革と言わざるを得ません。

で、1993-2003の10年間、社長としてその構造改革を指揮したのが武田國男氏(現会長)というわけです。前置きが長くなりましたが、武田國男氏が自分のこれまでの生い立ちを綴ったのが本書なのです。話は武田國男氏の幼年期から始まり、会長職に就く(退く)までに至り、氏のざっくばらんな語り口で、お上品なエリートにはちょっと言い難い


本当のこと

が語られているように思います。
氏の経歴は決してエリートとは言い難いものですが、社長として振るった手腕は凄いと心から思いますね。改革初期にはマスゴミからけっこう叩かれたようですが、初志貫徹で有言実行してしまうところが凄い。本書の中でしきりに繰り返されている「行不由径(行くにこみちによらず)」の精神で、

「選択と集中」

「アカウンタビリティーの徹底」

企業風土改革

をやりとげましたからね。正に建設的なリストラクチャリングですよ!!!

特に「企業風土改革」が素晴らしいですね。はっきり言って風土改革はパラダイムシフトですから。で、パラダイムとは変え難いからこそパラダイムなわけだと思うのですが、それを転換するというエナジーは賞賛に値します。だって、パラダイムシフトは率直なところ自己批判な訳で、周囲の不特定多数は絶対反対に決まってる。だから、どこかの国の与党のように抵抗勢力がうじゃうじゃ湧いてくる。それを押して改革を進めるのは、不退転の精神と滅私なのかなとコンキチは思います。あと、創業家の出自というのが、滅私(先祖伝来の会社のために)にプラスに働いているのかなという印象を受けました。

しかも、業績が良いときにやったのが素晴らしい。

(確か、キヤノンも業績が順風の折に成果主義を導入したんですよね。業績が良いときにそういう改革を行うことで、後ろ向きになるがちなところを抑制できて、総原資をUP↑して処遇できるから受け入れられ安いというメリットがあると御手洗社長が言ってたような気がしました。)

結果、業績はさらに飛躍して、業界屈指の平均給与です。

武田薬品工業と武田國男をしばらくWatchingしてみようと思っています。

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