2014年7月21日月曜日

F(エフ)

最近(ふた月半あまり)、「ヤフオク」と「艦これ」にはまっていた真性オタッキーのコンキチです。

「艦これ」ってPC限定のオンライゲームとしては破格の200万人超えしてて、巷でけっこう流行ってるらしいですね(会社のPCで仕事中にプレイしてるっていう猛者(っていうか、明らかに就業規則に抵触してるから良い子はやめましょう)の話もネット上で目にします)。

ソーシャルゲームとしては珍しく課金要素が最小限に止められており(課金がクリティカルな要素にならない)、関連商品で儲ける(メディアミックス戦略)らしいです(実際、amazon.co.jpでサーチしてみると、ライトノベルやその他関連グッズが沢山ヒットしてきます)。

ところで、「艦これ」は戦時中に活躍した軍艦を擬人化した「艦娘」なる女型萌えキャラのカードを収集・強化・編成して敵を駆逐していくゲームなんだけど、擬人化っていうと、元素にしても、ホルモンにしても全部女の子の萌えキャラで、なんかこういったクラスタのマジョリティーはオタッキー層として認知されてるんですかね?

もうここまできたら、EROS (Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)に載ってる試薬を片っ端から萌えキャラに擬人化するプロジェクトを(他力本願だけど)誰かに立ち上げて欲しい気持でいっぱいです(個人的に、Dess-Martin Periodinaneとか擬人化したらカックイイと思うんだけど)。


閑話休題


こんな文献を読んでみました。Tobias Ritter教授のフッ素化の論文です↓

Palladium (III)-Catalyzed Fluorination of Arylboronic Acid Derivatives
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 14012-14015.


あまりみない(気がする)3価のパラジウムが触媒するという、site-specificなフッ素化のお話です。

触媒的フッ化アリールの一般的な合成法としては、

(1) Buchwald等のPd触媒を用いたaryl triflateのフッ素化(Science, 2009, 325, 1661.; Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 8900.; J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 18106.)

(2) Tobias Ritterのグループの銀が触媒するaryl stananeのフッ素化(J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 12150.)

があるといいます。で、Buchwaldの方法は"dry"なfluoride saltが必要で、異性体の混合物を与えることが問題のようです。他方、Ritter(著者)の方法は毒性のあるスズ化合物を調製しなければならないことが問題として挙げられます。

ところで、アレンの量論的フッ素化は沢山報告されていますが、Ritter教授曰く、最も実用的なのはPhenoFluorを用いたdeoxyfluorinationだといいます。

Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 11482-11484.

Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 2470-2473.

あと、PhenoFluorの解説がSigma-AldrichのWeb Siteにあります↓
http://www.sigmaaldrich.com/japan/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/phenofluor.html

PhenoFluorは既存フッ素化試薬よりも副反応が少なく、官能基許容性も高く、水酸基の環境に応じて選択的にフッ素化可能で、late-stageにおいてのフッ素化に適用可能だというのがウリだと思うんですが、高いです(40,000 JPY/250 mg)。何をもって"practical"って言ってるのかは分かりませんが、小スケールのサンプルワークには重宝しそうな気がします。

他のフッ素化法としては、
・Direct C-H fluorination (Science, 2012, 337, 1322.; J.Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7134.; Org. Lett., 2012, 14, 4094.; J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 7520,; Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 9081.)
・銅を用いたArIのフッ素化(Hartwig, J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 10795.)
・銀を用いたaryl stanane, aryl silane, arylboronic acidのフッ素化(Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 1662.; Org. Lett., 2009, 11, 2860.; Tetrahedron, 2011, 67, 4449.)
・アリールボロン酸(誘導体)のフッ素化
     Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 5993. (Ritter)
     J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 2552. (Hartwig)
     J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 4648.
などがあるそうですが、遷移金属の使用を触媒量に抑えるのは難しいらしいです(因に、アリールボロン酸誘導体を用いた場合、transmetalationが遅い)。

で、This Work(ボロン酸誘導体の触媒的フッ素化)です↓


15 examples, 63-99% Yield, ≧98% purity

試薬(Pd cat., Selectfluor, terpy, NaF)は全て空気と湿気に対して安定で、オープンフラスコで反応を行えます。マイルドな条件で、decagramスケールでの実施例もあり。
プロトデボロネーションも観察されないという優れものです(プロトデボロネーションはアリールボロン酸誘導体を用いたフッ素化反応にみられる共通の問題らしいです)。
そして、Pd触媒は、Pc(OAc)2, terpyridine, HBF4から調製できます。

electron-richな基質でもelectron-poorな基質でもオッケーで、electron-richでneutralな基質がDMF溶媒がoptimalなのに対して、electron-withdrawingな基質はCH3CN溶媒がおうおうにして良好。官能基許容性は、ケトン、1級アミド、カルボン酸、エステル、アルコール、ベーシックな複素環、臭化アリールでオッケー。ortho,ortho'-二置換といった立体障害の大きい基質でも適用化。

他のパラジウム錯体でも反応は進行しますが、Ritter教授は1が最もコンビニエントでおすすめのご様子です。


それから、出発物質が、ピナコールボロネートやボロン酸であっても、NaF, KHF2を作用させて。in situでトリフルオロボレートを発生させて反応を行うことで、高収率で目的物を得ることもできます↓

プロトデボロネーション対策に有効だと思われるMIDA boronateを使って反応を行うと、electron-richな基質では反応は進行するものの、収率は低く、過剰のSelectfluorが必要となるそうです。一方、electron-poorな基質では目的物を与えないそうです。


あと、著者等が提案する反応機構はこちら↓

この反応機構に従うと、アリールパラジウムを中間体として経由しないため、アリールボロン酸誘導体の"transmetalationが遅い"という問題が回避されて、反応が上手く進むことと整合性がとれると思います(まあ、いろいろと検証実験・考察をしている)。


ちなみに、この反応って"fiest metal-catalyzed fluorination of arylboronic acid derivatives"だそうです。それにつけても、アリールボロン酸誘導体のtransmetalationを回避するっていう発想が凄いと思った二流大出のなんちゃってテクニシャンでした。


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