今年のGWは5月初旬とは思わない陽気ですね。こんなときはそうめんみたいなちゅるんとしたものが食べたくなります。
ということで、今年の初めに惜しまれつつも閉店した小山駅きそばのそうめんを懐かしみつつメモします(一回しか行ったことないけど)。
-小山駅きそば-
-トッピング岩下の新生姜 (2018年7月当時100 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
「生そうめん」は夏期限定。
ちゅるっとした表面の食感に加えて弾力に富む麺に、ちょっと心がウキウキする(これは秀逸)。
穏やかな甘みのあるツユの濃さは丁度いい。
辛さがキツめの岩下の生姜は、良いアクセントになるとともに、スッキリした清涼感を付与している。
うだるような暑い夏に食すために生まれてきたコンボ。
同店は人気店だったようですが、JR東日本のグループ再編に伴い、駅そばの業務委託契約を終了するとの通達により閉店したそうです。
現在は店舗はなく、地域イベントでのキッチンカー営業をしているそうです(キッチンカーの出店を担当するのはオリジナルの中沢製麺ではなくOfficeYoshida Group)。
閑話休題
今回は、システイン(ペプチド)について考えてみたいと思います。
システインっていったらアミノ酸、それもタンパク質を構成するアミノ酸です。で、システインのスルフヒドリル基(-SH)は酸化してジスルフィド結合(-S-S-)を形成しやすいです。これが、フリー(無保護)のシステインの取り扱いをチョイ難しくしたり、タンパク質のフォールディングプロセスで重要な役割を果たしたりします。
なので、システイン(ペプチド)を取り扱う際は、不活性ガス雰囲気下での保管や溶媒の脱気の必要性が言及されていたりします(基質によって酸化されやすさは大きく違うと思いますが、まぁ無難な管理法です)。あと、以前のメモに書いたN末端システインペプチドのネイティブケミカルラーゲーション(see http://researcher-station.blogspot.com/2022/02/blog-post.html)の反応条件ってバリバリに還元剤(TCEPとか)を添加してるんですよね。何故かっていうと、システインの酸化(=ジスルフィド結合形成)の防止のためです。
ではこの辺でチオールの酸化メカニズムをおさらいしておきましょう↓
Mechanism of Thiol Oxidation by Molecular Oxygen
ジスルフィドは二分子のthiyl raicalが結合するか(eq. 3)、thiyl radicalとチオラートアニオンとの反応(eq. 4)によって生じたジスルフィドラジカルアニオンが酸素と反応(eq. 5)することで生成します。
ジスルフィドラジカルアニオンは反応性が高く、溶存酸素と相まってジスルフィド形成を強力に促進します。すなわち、チオラートアニオンの形成がジスルフィド形成を促進するのです。
なので、システインの酸化を考える上で、スルフヒドリル基のイオン化が重要になわけで、pKaとバルク溶媒のpHを考えることが非常に重要になってきます。
ということで、まずpKaとpHの関係をおさらいしましょう(教科書に書いてある基本だけど)。
Henderson-Hasselbalch equation
この式が何を意味するかというと、pHが当該化合物のpKaに等しい時、その化合物の半分がイオン化していて、pH > pKaになるほどイオン化が促されるということです。
短鎖のN末端CysチオールのpKaは6.0-7.0程度なので、中性領域で十分イオン化され易く、酸化してジスルフィドを形成し易いことが分かります。
前述したネイティブケミカルラーゲーション(NCL)は中性に近い領域でわれるので、"酸化"に対するケアが必要になってくるのです。
ちなみに、短鎖のペプチドの内部CysチオールのpKaは8.5-9程度。N末端Cysチオールは内部Cysチオールと比較して、ざっくり30-100倍酸性度が強いと考えられているようです。加えて、短鎖ペプチドのα-アミノ基のpKaは平均して8.0程度なので、NCL条件下ではN末端Cysでのライゲーションが選択的になるわけですね。
実際、NCLの中性条件下ではシステインのチオラートの反応性がダントツであるわけなんですが、もうちょっと細かいことを言うと、ペプチドを構成するアミノ酸の側鎖の官能基がNCLで問題とならない理由は次の通りです。
(a) セリンたスレオニンの水酸基、チロシンのフェノール性水酸基、アスパラギン酸やグルタミン酸のカルボキシル基は求核性に乏しいので、NCLを阻害しない。
(b) ヒスチジンのイミダゾールはチオエステルと反応するかもしれないが、N-アシルイミダゾールの形成は熱力学的に不利であることに加えて、反応が可逆的なので、まぁ、NCLを邪魔しない(だろう)。
(c) アミノ基(α-, ω-)はチオエステルと不可逆的に反応してアミド結合を形成するが、通常の反応条件は高濃度(>0.1 M)、塩基存在下、プロトン化していない状態で実施する。これに対してNCL条件は、低濃度(〜mM)、アミノ基がプロトン化するpHなので、アミノ基は求核性を失っており、まぁ問題ないと考えてオッケー。
参考までに、他のシステインチックにpKaはこんな感じです↓
・システインのスルフヒドリル基のpKaは8.37 (https://www.nacalai.co.jp/information/trivia2/11.html)
・フォールドしてないタンパク質の内部Cysのスルフヒドリル基のpKaは8.5±0.03。
・フォールドしたタンパク質だと、コンフォーメーションと電子的環境に左右されて6.8±2.7といったところ。
最後に、どうすればシステイン(ペプチド)のスルフヒドリル基を保持できるかなんですが、酸素を排除する以外の選択肢としては、"強酸性条件下で安定"です。
というのも、上述したようにスルフヒドリル基の酸化はチオラートアニオンの形成がクリティカルであり、チオラートアニオンの形成は低pHで抑制できるからです。
ケミストがペプチドなんかを合成すると逆相HPLCで精製すると思うんですが、移動相ってだいたいアセニトとTFA水溶液とかじゃないですか。TFA水溶液は十分低pHなのでシステインペプチドの酸化を抑制できますが、濃縮過程ではたとえ凍結乾燥であってもTFAが抜けていきpHが高くなっていくので注意が必要です。
以上、ペプチド合成スーパー初心者級の二流大出のテクニシャン(研究補助員)のシステイン(ペプチド)メモでした。
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