2007年1月23日火曜日

顧客サービスのプロフェッショナル

昨年暮に、「顧客サービスのプロフェッショナル」という本を読みました。


で、コンキチがちょっと面白いなあと興味を持った部分について軽くジャブ程度にREVIEWしてみたいと思います。

1) リーン生産方式
リーン(lean)とは「(企業経営などにおいて)むだのない、スリム化された」という意味で、リーン生産方式(ぜい肉のない生産方式)とは、トヨタ自動車が開発した生産方式を説明するために用いた考え方らしいです。つまるところ、JIT(Just In Time)とそれに伴うサプライチェーンの最適化とKAIZENなのだとコンキチは理解しています。

で、本報はリーン生産方式をサービス業(保険業)に応用するという事例が紹介されていました。保険の申請から保険証券発行までの一連のプロセスには、複数の工程と複数の人員(ワーキング・グループ)が関与しており、それら工程間、人員(ワーキング・グループ)間を書類(仕掛かり品)が往来するわけです。そういった一連の業務プロセスの合理化を行ったという話で、具体的な導入オペレーションは、

a) モデル・セルで実験
b) フローの連続処理(バッチの小ロット化)
c) 関連性の高い業務の隣接配置
d) 作業手順の標準化(ルーティーン業務では必須要件と思います)
e) ループバックを排除した業務フローの設計(業務フローの最適化)
f) タクトタイムの導入→人員構成の最適化
g) 負荷のバランスをとる→人材資源の有効利用
h) 難易度別に作業を分解
i) 業績を掲示(評価の透明性の確保と問題点の見える化)

という感じで、コンキチの所感としては、ほぼトヨタ生産方式(というかトヨタという企業の思想)に倣ったステップを踏んでいるなあと思い生ました。
コンキチはトヨタで働いたことは全くありませんが、トヨタの強さというのは、カンバン方式に象徴される単なる生産方式ではなく、効率的な生産方式を生み出す、つまりたゆまぬ改善活動を促す企業風土なのだと思っています。
話が横道に逸れた感がありますが、企業の根底にそういった思想がなければ、いかに優れた合理化策を実行しようとしたところで、従業員の真の協力は得られないんじゃないかなと思います。そのためには、日々、公明正大、透明公正を志向した経営が必要と思います。

2) リーン消費
効率の高い消費活動(合理的な消費)。顧客の消費活動(サービスの利用)に焦点を当てたコンセプトで、リーン生産方式(企業側の活動)を補完するものという位置づけです。顧客とプロバイダーの双方でトータルコストと無駄に浪費される時間を最小化し、互いにWin-Winの関係を構築するというものです。で、リーン消費の六原則なるものが示されています↓

i) すべての商品やサービスを十全に機能させ、しかも相互補完的に機能させることを保証することで、顧客が直面する問題を完全に解決できる。
ii) 顧客の時間を無駄にしない。
iii) 顧客が必要としているものを適切に提供する。
iv) 必要なものを必要な場所へ正しく提供する。
v) 必要なものを必要な場所へ必要な時間に正しく提供する。
vi) 顧客の時間の手間暇を軽減する解決策を蓄積していく。

これら原則を遵守することで、(顧客が煩わしさを感じている)従来のサービスと比較して、よりリーンな消費プロセスを顧客に提供することが可能となり、煩わしさが解消され、顧客のロイヤルティーが高まるというのです。

そして非リーンな活動を炙りだし、よりリーンな消費プロセスの設計に役立つツールが紹介されています。

それは、


リーン消費マップ


です。

消費プロセスに係る顧客とプロバイダーの活動を、時系列を合わせてそれぞれビジュアライズ(可視化)したフローチャートで、価値創造時間と浪費時間を定量することで、顧客とプロバイダー双方の価値創造時間と浪費時間を炙りだすことのできるツールです。浪費時間を最小化(サービズ完了までのリードタイムを最小化)する消費プロセス設計にかなり有効だと思いますね。
まあ、言葉で言ってしまえば至極当たり前のことのように聞こえますが、ビジュアライズ(可視化)って凄く重要だと思います。ビジュアライズ(可視化)の威力っていうのは、直感的に訴えてくるものがあるので、かなりのインパクトがあると思います。無駄な機会コストの存在を強く印象づけられるのではないかと思います。

3) リレーションシップ・マーケティングの誤解
リレーションシップ・マーケティングに注力している企業は、顧客情報を収集し、顧客ニーズを満たすために、考えられる限りのサービスを提供しようと懸命に努力しているにも関わらず、CSは低く、逆に顧客の不快指数がうなぎ上りだという導入部からはじまるこの論文では、企業の提供するサービスと顧客ニーズのミスマッチを延々と指摘しています。で、顧客との良好なリレーションシップを築くためには(CSを向上させるためには)、顧客行動を理解しなければならず、哲学、コミュニケーション、カウンセリング、心理学、宗教の勉強が不可欠であると説いています。

ここで、コンキチが尊敬する鈴木敏文会長が自然に思い出されました。「顧客のために」ではなく「顧客の立場で」考えることの違いと重要性をを説き(「顧客のため」というのは売り手のエゴの押しつけに過ぎない)、「もの不足の売り手市場の時代には経済学で考えればよかったが、今は心理学でとらえなければならない」「今の時代は顧客の心理を読まなくてはいけない」と宣う氏の思想をHarvard Business Review(っていうか、この論文のauthor)が代弁しているような感覚を覚えました。

それにつけても、Harvard Business Review(HBR)は本当に面白です。会社の図書室の書棚の並んでいる誰も読まない埃のかぶった本とか雑誌の代わりにHBRを置いた方がよっぽど会社の業績が上がるんじゃないかと真剣に思う二流大出のなんちゃって研究員のコンキチです。

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