とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Friday, February 13, 2009

Horner-Wadsworth-Emmons Reaction (1)

また古い文献を読んでいます↓

Z-選択的Horner-Wadsworth-Emmons反応
Z-Selective Horner-Wadsworth-Emmons Reaction
有機合成化学協会誌 Vol.58 No.9 (2000)

どうやったら、Z-体のα,β-不飽和エステルができるか?という話です。

Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応の反応機構は、

a) ホスホネート化合物のアニオンがカルボニル基に付加して、エリトロ、トレオ付加体を与える
b) 付加体の酸素アニオンがリンを攻撃してオキサホスフェタンを経由
c) リン酸エステル部分が脱離してオレフィンを与える

と考えられていたそうです(普通の教科書に書いてあることかな)。

で、初めの付加中間体は反応条件やホスホネート試薬によっては単離•観測が可能なのですが、オキサホスフェタンについては観測されたことはなく、それ以降の挙動は明らかにされてこなかったそうです。

ということで、著者等は計算で反応機構を明らかにしたのだとか。
ref. J. Org. Chem. 1999, 64, 6815.

具体的には、

a) リチウムエノレートのアルデヒドへの付加 (C-C bond formation)
b) オキサホスフェタン形成 (oxaphosphetane formation)
c) リンでのシュ-ドローテーション (pseudorotation)
d) P-C結合の開裂によるエノレートの生成 (P-C bond cleavage)
e) β-脱離によるオレフィンの生成 (C-O bond cleavage)

によって反応が進行することが分かったそうです。ちなみに、β-脱離はほとんど自動的に起こるようです。


で、

a) C-C bond formationステップでは、Z-体の方が有利
b) oxaphosphetane formationステップでは、E-体が有利
c) 律速段階はoxaphosphetane formationステップ
d) 気相だけでなく、溶媒としてジメチルエーテルを1および2分子リチウムに配位させた系での計算、および連続誘電体モデルによるバルクの溶媒効果を調べたことろ、oxaphosphetane formationの方がC-C bond formationよりも溶媒による安定化を受け易いことが分かったそうです(計算全然分からないコンキチには、「へえ~」というしかありません)ref. 有機合成化学協会誌 Vol. 57, 206 (1999).とか
e) 十分な溶媒による安定化を受けた場合、主にエントロピー項がE体生成に寄与している(脳ミソ溶けてきそうです)
f) よって、反応温度を下げることにより、Z体の比率を上げることができることが示唆された

そうです。

実際、温度の効果を例証する実験結果があります(著者等が学会発表)

ちなみに
a) THF中での反応では、-78℃での反応は0℃での反応よりもZ体比率が上昇する
b) トルエン中、0℃以上でLi塩基を使うと、E選択性が高い
そうです。


つづく.....

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