とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Monday, December 24, 2012

マリアージュを科学する

←JR本八幡駅のすぐ近くにある市川一茶庵に行ってきました。お店は和風木造一軒家で、駅そばの繁華街の立地に「和」の雰囲気丸出しな建物があるのにまず驚きです。

はっきり言って、ちょっと入りづらい雰囲気を醸し出していますが、接客は庶民派でとくにお高くとまった様子もなく普通でした。

座席は全て座敷で、畳と襖、それから部屋からみえる庭の眺めが風情があって良いです。

-おせいろ (840 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
極細麺は弾力の富み、モチモチしている。噛み込むほどに、僅かに胡桃様の香味がする。ツは鰹節の香りが「プーン」と漂い、口に含むとまず鰹節の香味が広がる。バランスのとれた甘さと辛さの濃厚なツユい仕上がっている。薬味は山葵と葱。山葵は鼻に「ツン」と抜け、さらの味付けしているのではと思わせるような独特の香味が広がります。葱は万能ネギっぽいネギで、辛味はわずか。新蕎麦だからだろうか、今回は薬味がない方が旨いかもしれない。
あと、ビール(ヱビス)も注文したんだけど、そばかりんとうと漬け物(2種)がついてきます。で、その漬け物のしょっぱ辛さのキックが凄くて旨かったです。
お酒類は、ビール、日本酒、焼酎と一通りある程度の銘柄が揃っています。そこで特筆すべきは、ワイン。特にシャトーメルシャンのワインのラインナップが充実していて、ワインを大分全面の推しています。今度行ったら、ワインと蕎麦のマリアージュを楽しんでみたいと思いました。

ちなみにこのお店、立ち食い部門も備えています→


閑話休題


ちょっと古いんですが、久しぶりに農芸化学の論文を読んでみました↓

Iron Is Essential Cause of Fishy Aftertaste Formation  in Wine and Seafood Paring
J. Agric. Food Chem., 2009, 57, 8550-8556.

メルシャンの研究グループの報告で、ワインと魚介類のマリアージュがなぜ魚臭くなるのかということに関する論文です。

ワインはワールドワイドなアルコール飲料なので、そのマリアージュに関するお話もいろいろなシチュエーションで話題になっていると思います。例えば、「赤ワインと肉」、「辛口白ワインと魚」といった組み合わせはその代表例でしょう。

また、赤ワインと魚介類の組み合わせは、鉄臭さ、生臭さ(fishy aftertaste)、金属臭、苦みを感じさせることからお勧めできない組み合わせと言われています。一方、辛口白ワインやシェリーは薫製やサバとのマリアージュが推奨されています(Wine with Food; Crescent Books: New York, 1980; pp 87-97.; Wine with Food; Octopus Publishing: London, U.K., 1996; pp 10-19.; The Ultimate Encyclopedia of Wine, Beer, Spirits & Liqueurs; London, U.K., 1998; p21.)。

しかしながら、これらの推奨される組み合わせは科学的な根拠に基づいたものではなく、個人的、経験的意見に過ぎないそうです。つまり、ワインに含まれるどの成分が魚介類とケンカするのかということは未だ解明されてないのです。

で、著者らは、「魚介類とケンカするワイン中の成分」と「生臭さ(fishy aftertaste)の形成機構」について本報で報告しています。

著者らは、各国(フランス、イタリア、オーストラリア、チリ、日本、スペイン、アメリカ、アルゼンチン、ハンガリー、ニュージーランド、南アフリカ)69種類の市販ワイン(スティルワイン、フォーティファイドワイン)と干しホタテとのペアリング実験や、モデルワイン(疑似ワイン)を使用した実験を通して、「生臭さ(fishy aftertaste)」の原因に迫っていきます。

で、分かったこと↓

(1) Fe2+イオンが「生臭さ(fishy aftertaste)」の原因となる

(2) Fe2+イオンをキレーションすると「生臭さ(fishy aftertaste)」が抑制される。

(3) フェノール含有量(タンニン)と「生臭さ(fishy aftertaste)」の強度には相関が無い

そして、「生臭さ(fishy aftertaste)」の発生機構を次のように提案しています。

(4) 魚介類に含まれる不飽和脂肪酸の酸化により発生する過酸化脂質がFe2+イオンの作用で分解して、不快なhexanal, heptanal, 1-octen-3-one, (E,Z)-2,4-heptadienal, nonanal, decanalを生成し、これらの成分が「生臭さ(fishy aftertaste)」を引き起こす。


そして、これまで経験的に言われてきたオピニオンを以下のようにバッサリ切ったり、サポートしたりしています↓

(i) 赤ワインに含まれるタンニンが「生臭さ(fishy aftertaste)」の原因になるという主張は何の証拠もないし、今回の実験結果にもそぐわない。

(ii) 酸度の高い白ワインは鰯と合う。→酸(酒石酸とか?)のFe2+イオンのキレーション能力によって説明される。

(iii) シェリー(fino, manzanilla)は燻製と理想的に合う。→これはFe2+の含有量が低いから。

(iv) 昔の赤ワインは魚介類との組み合わせに注意が必要。→最近はステンレススチールの装置で醸造してるから、鉄の含有量が大幅に減っている。

(v) 赤ワインは鉄の味がする。→1-octen-3-oneの金属的香味に由来する。


ちなみにこの研究は、"the first trial intended to evaluate the fishy aftertaste that is sometimes generated in wine and seafood pairing"だそうです。

メルシャン、いい仕事してますね

(あっ、それから干しホタテってワインと合わせると、他の魚介類よりも「生臭さ(fishy aftertaste)」が出やすいらしいです。)

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