とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Saturday, February 8, 2014

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (3)

ここ一年で何回か行ったカレー屋のメモです↓

-raffles curry memo-
-チキンカリー (700 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
そこそこけっこう辛い。ザラザラしつつもサラサラ感のあるカレーは、香味のパンチは控えめだが、しっかりと旨い。そして、チキンがとても美味しい。カレーがチキンを上手に引き立てている。「チキン」を最適化するためのカレーと思いました。チキンの量も十分で普通に旨い!庶民派系ちょっぴり本格カレー。

-野菜たっぷりカレー (700 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
第一印象はCreamyな香り。食感はザラザラしていてボクの好み。硬派なSpicyさが適度に効いていてグビグビ飲み干したくなるカレーに仕上がっている。野菜は、大根(挑戦的だ)、ブロッコリー、人参、あと細長い円柱状の緑の野菜。とても良く煮込まれていて野菜独自の特徴は大根以外には見出せなかった(その分カレーの旨味に寄与しているのだろう)。で、意外にも大根がGood!
辛いんだけどマイルドな味に仕上がった美味しいカレーと思いました。

-マトンカリー (850 JPY)-
-RATING- ★★★★
-REVIEW-
この店最高辛さのカレーはボク的には好みの辛さ。好きなザラザラした食感で、安心して胃の中に注ぎ込めそうな野菜由来(?)の優しい味の上に、ちょっろ辛めのSpicyさが載っている感じ。マトンの臭みは全くないが、野趣的なニュアンスはおとなしくはあるが確かに存在している。硬さはないが噛み応えのあるマトンは、噛み締めるほどに隠れたいた野趣的な旨味が滲み出てくる。あと、ジャガイモも入ってます。

店内はカウンター席のみの7-8席。甘い紅茶がついてきます。普段使いに重宝しそうな、何度でも行きたいカレー屋さんと思いました。


閑話休題


[1,4-reduction]のメモの続きです。今回はL-Selectrideについてメモします↓

L-Selectride (NaBH(s-Bu)3)も1,4-還元に有効だと「たゆたえども沈まず」さんや「ほろ酔い化学者のブログ」さんで述べられていますが、基質汎用性に難があるようです(立体障害により選択性がでる)。

例えば、EROS (Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)に、こんな反応例が載ってます↓

J. Am. Chem. Soc.1978100, 7751.

J. Am. Chem. Soc.197294, 8616,; J. Org. Chem.197641, 2194.

そして、一般論として

(1) β-位に置換基のない環状エノンは1,4-還元が進行する(J. Am. Chem. Soc.1982104, 6434.; J. Org. Chem.198247, 5088.; Helv. Chim. Acta.198366, 192.)

(2) いくつかのケースでは、1,2-還元体と1,4-還元体の混合物になる(Tetrahedron Lett.199031, 6307.; J. Org. Chem.199257, 4444.)

(3) K-Selectrideはもっぱら1,2-還元選択的 (Tetrahedron Lett.199031, 6307.)

っていう記述があります。また、β-置換鎖状エノンやβ-置換-2-シクロヘキサノンは1,2-還元が進行するようです(J. Org. Chem.198651, 537-540.)

あと、タンデム反応でこんな例があります(これは1,4-還元が優先する例)↓

J. Org. Chem., 200671, 4837.


また、α,β-不飽和エステルとtert-BuOHのmixtureをL-SelectrideのTHF溶液に-70˚Cでゆっくり加えていくと飽和のエステルを与えるという記述や、鎖状のエノンとβ-置換環状エノンは1,2-還元が進行するとの記述があります(J. Chem. Soc. Chem. Commun.1987, 1226.; Tetrahedron Lett.198930, 4925.; Tetrahedron Lett.1978, 4487.; Synth. Commun.198717, 1279.)。(K-SelectrideだとClaisen縮合生成物が生成するみたい)。

それから、α,β-不飽和エステルにMethylaluminum Bis(2,6-di-tert-butyl-4-methylphenoxideを加えたところにL-Selectride (2 eq.)を作用(-78˚C, 30 min)させると1,4-還元体を定量的に与えるそうです(Tetrahedron Lett.198930, 5053.)。

そして、「有機合成の定番レシピ」記載の例↓
J. Org. Chem.200368, 355-359.

ちなみに、保護基がBocだと、L-Selectride 90% (8 : 1), NaBH4-CeCl3 88% (1 : 1), DIBAL-H 90% (1 : 1), BH3•SMe2-oxazaborolidine 85% (1.4 : 1), LiAlH4-chirald 86% (2 : 1)になります。

とりあえず、普通の鎖状の基質だと1,2-還元が支配的で、環状エノンはざっくり基質によりけりなのかなと思った二流大出のテクニシャン(実験補助員)でした。


まだ[1,4-reduction]のメモはつづく.....

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Thursday, February 6, 2014

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (2)

以前行ったことのある「そばよし(京橋店)」に再訪した時のメモです。

前回行ったときのメモはこちら→ http://researcher-station.blogspot.jp/2012/09/eco-friendly-benzylic-oxidation.html


で、今回のメモです↓

-かきあげそば (390 JPY)- 
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
ツユは旨いんだけど、やや気の抜けた感じ。前回、本店で食べたときのかつお節の強烈なキックが(香り立ち)が殆どない。蕎麦のコシはまずまずだが、少し柔らかくなってないか?
そして、かき揚げは少し胃がもたれる感じ。

-ライス (140 JPY)- 
-RATING- ★☆☆☆ 
-REVIEW- 
 はっきり言って、長時間保温したあとのご飯。ぬるくて、少しぱさついている。かつお節のふりかけは粉が細かく、風味は気が抜けたような気がしてあまりバリューを感じられなかった。醤油の味はまずます。

前回訪問したのは昼時だったのに対して、今回行ったのは夕方(17:30)。従業員は東南アジア系の女性達で、オペレーションの質はバイトレベルと想像されます。ボクが言った時間帯はオペレーションが最適化できていない時間だったのかもしれせん。本店でも確認してみたいです。


閑話休題


[1,4-reduction]に関するメモです↓

古典的な例だと、Birch還元やClemmensen還元とかで1,4-還元できるっぽいですけど、率直に言ってそんな反応は可能な限り避けたいところです(官能基許容性の問題もあるし。因に、Birch条件ではケトンのピナコールカップリングが副反応としてよく起こり、Clemmensen条件では骨格の転位がしばしば起こるらしいです)。

DIBAL-H単独だと1,2-還元が選択的に進行しますが、ある種の試薬と合わせて用いることで1,4-選択的還元が進行します。

例えば、触媒量のCH3CuとHMPAの共存下DIBAL-Hを作用させると1,4-還元が進行します(津田-三枝法)。

大学院講義有機化学 II, 「たゆたえども沈まず」さんでも紹介
J. Org. Chem., 1986, 51, 537-540. 11 substrates

反応活性種は銅ヒドリドと考えられます。HMPA-THF(v/v, 1:5)、-50℃。MeCuは等モルのMeLiとCuIを反応させてin situで調製します。β,β-ジアルキル置換-α,β-エノンに対して有効です(CuIでも選択性でるが、MeCuには負ける)。クエンチ前にTMSClで処理するとシリルエノールエーテルが、MeLiを作用させアート錯体を形成させてRXで処理するとα-位にアルキルを導入できます(J. Org. Chem., 1987, 52, 439-443.)。でも、今のご時世、HMPAはちょっとね.....


それから、DIBAL-n-BuLiとATPH (Aluminum Tris(2,6-diphenylphenoxide)の組み合わせ。
他、α,β-unsaturated ketone: 11 examples, 94-99% Yield
α,β-unsaturated aldehyde: 3 examples, 80-90% Yield

J. Org. Chem., 1996, 61, 2928-2929.

procedureは、-78˚Cで原料のケトンにATPH(1.2 eq.)を作用させた後、DIBAL-n-BuLi錯体(1.2 eq.)を加えて反応を行う。「ATPH/DIBAL-n-BuLi錯体は不活性」なのが面白いです(ATPHを-78˚CでDIBAL-n-BuLiで処理した後に、ケトンを加えると>95%で原料回収)。ATPHは2,6-diphenylphenol (3.6 eq.)とMe3Al (1.2 eq., hexane sol.)から調製。タンデム反応も可↓



あとは、DIBAL-HとCo(acac)2の組合わせ。
15 examples, 60-99%

Synlett, 1999, 96-98.

基質一般性はけっこう良好で、ケトン、エステル、ニトリル、アミドの共役二重結合を選択的の還元できます。
活性種はコバルト-ヒドリドと考えられます。

ん〜、DIBAL-H。なかなかやりますね。でも、文献記載内容的には何れも極低温コンディションでの実施例ですが、もうちょっとマイルドな温度域で実行可能かが気になります。

(まだ[1,4-reduction]が)続く.....





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Wednesday, February 5, 2014

"1,2-" or "1,4-", That is the Question (1)

先日、カミさんが生牡蠣食べたいっていうので、生牡蠣食べてきました。

-Baby's Breath memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
通された席は窓際でちょっと寒かった。接客は可もなく不可もなくといったところ。給仕のお姉さんがけっこう可愛かったです。
生牡蠣の味付けは、「レモン、バージンオイル」と「もみじおろし、ポン酢」がある。生牡蠣外の他に蒸牡蠣、焼牡蠣がある。

-マルゲリータ (1,380 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
控えめな味付けで、普通に旨い。

-あさりとフレッシュトマトのボンゴレビアンコ (1.5人前、1,780 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
パスタは中くらいの太さ。あっさりとした味付け。あさりは旨いが、パスタにエッジがなく、ぼやっとした感じの食感。

-ギネス ドラフト (550 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
期待を裏切らない味。

-風よ水よ人よ (650 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
淡麗辛口系。控えめな甘さがある。悪くはないが特筆すべきところもなし。
-DATA-
分類 (Grade)/ 純米 (Junmai)
精米歩合 (Rice polishing ratio)/ 70%
アルコール分 (Percentage of Alcohol)/ 12%
-COMPANY-
(株) 福光屋

-生牡蠣 (レモン、バージンオイル) (300 JPY/piece)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
瑞々しく、生牡蠣の醍醐味を堪能できて満足。日本酒とのマリアージュではfishy aftertasteが現れた(牡蠣単独では出ない)。生牡蠣と日本酒の組み合わせは必ずしもBset Matchではないことを確認。もみじおろし-ポンズは350 JPY/piece。


閑話休題


α,β-不飽和カルボニル化合物の選択的還元について調べてみました。この種の1,2-還元 vs. 1,4-還元の話は幾つかの有機合成系サイト(ブログ)で既に解説されていますが、それらの情報も込みでまとめてみたいと思います↓


[1,2-reduction]

まずは1,2-還元。多分、最も有名なのはLeuch還元と思います。

大学院講義有機化学 II, Chem-Station

SBH (NaBH4)単独では反応の制御が難しく、1,4-還元が起こったあと1,2-還元が進行し、飽和のアルコールが生成するようですが(LAHも同様)、CeCl3共存下では、メタノールとSBHとの反応を促進し、よりハードな還元剤である[NaBH4-nOCH3)n, n=1,2,3]を生成させ、HSAB的にヒドリドの1,2-付加が起こります。基質一般性が高く、反応は3-5 min程度で完結するらしいです。それから、アルデヒドとケトンが共存する場合、Ce(III)の触媒作用によってアルデヒドがアセタール化(or ヘミアセタール化 or gem-ジオール化)され、ケトンのみが選択的に還元されます。

Luche還元をもう一例↓
Org. Lett., 2001, 3, 401-404. (「有機合成の定番レシピ」に記載)

あと、NaBH4-CaCl2の組み合わせでも1,2-選択的に還元が起こります↓

Chem. Lett., 1991, 1847. (Chem-Stationで紹介)


その次に思い浮かぶのは、DIBAL-Hでしょうか?アルミニウムのLewis酸性により、カルボニル酸素と配位した状態からヒドリド移動が起こって1,2-還元が選択的に進行すると考えられています(Chem-Station)。

Wilkinson錯体-Ph2SiH2の組合わせの例。

大学院講義有機化学 II, Chem-Station

Wilkinson錯体を使った例って、ボクのサーチが甘いからだと思いますが、他の例って紹介されてないような気がします。基質一般性に乏しいのでしょうか?

あとCBS還元
Org. Lett., 2003, 5, 3995-3998. (「有機合成の定番レシピ」に記載)

とまあ、1,2-還元についてはこんなところでしょうか?


[1,4-reduction]に続く.....

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Sunday, February 2, 2014

再考Hydrogenation

昨年、大井町の居酒屋に行ったときのメモです↓

-お魚sun memo-
http://osakanasun.blog101.fc2.com

-純米古蔵のしずく (650 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
淡麗辛口。初めの独特のヌルッとした香味がたまらない。

-パッテラ (650 JPY)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
鯖部分はさっぱりしおた味わいで旨いんだけれども、シャリ部分はねっちょりしていて食感が極めて悪い。やっぱり、寿司はシャリが旨くないとね。鯖だけはがして食べたい衝動にかられた。

-ホタルイカの沖漬け (430 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
文句無く旨い。とってもfresh。瑞々しくて、余分な塩気、臭みが殆どない。

-日本酒燗 (380 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
レンジでチンすることで燗をつけている。まあ、興ざめだよね。

-おまかせ刺身盛合わせ (1,100 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
多分、〆鯖、鯵と白身(多分、イサキ、カワハギ、メダイ、イナダか?)
〆鯖はmildかつmellowな味わいでGood!鯵もなかなかのテゥルンテゥルン感が出ていて弾力があって旨い。白身魚は全般的に、口の中に吸い付くようなモチモチ感を感じるも、少し乾いた(少しパサパサした感じで、瑞々しさに欠ける)ニュアンス。
あと、ワサビが粉っぽい(っていうか粉ワサビ)。醤油は「濃口」と「刺身用」の2種類が用意されていて「刺身用」をチョイスしたんだけど、甘さが気になって刺身の味にイマイチ集中できなかった。

-芳泉 (470 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
おとなしくて、自己主張しな酒。落ち着く。


閑話休題


ことろで、こんな文献を読んでみました↓

Synthesis of Donepezil Hydrochloride via Chemoselective Hydrogenation
Org. Process Res. Dev., 2013, ASAP. →撤回(11/25)

インドの製薬会社の報告で、アリセプト合成のプロセス改善のお話なんですが、 スケールアップ実験の裏付けが不十分なことと、著者の誤帰属を理由に昨年11月25日に撤回されています。こういうのをみると、ランバクシーといいインドの仕事って精緻さに欠けるよねっていう気持になります。ちなみに、学生時代、助手の先生が査読を依頼されたインドの研究グループの材料化学の論文を見せてもらったら、彼等が合成したエキセントリックな化合物の合成法は別の雑誌に投稿中とか書いてあって、インドって信用ならないなと思ったことを記憶しています。

さて、本題に戻ります。


アリセプトの合成プロセスには共役二重結合を還元するステップがあるんですが、水添でプロセス構築しているようです。でも構造中にN-ベンジルがあるので、当然、脱ベンジル体が副生してしまいます。

ちなみに、CoCl2•6H2OとNaBH4を使ったプロセス改善のパテントがありますが(WO 2008/010235)、無機塩の除去がプロセスレベルで問題になるそうです(ちなみにこれもインドの別の製薬会社のパテント)。

あと、プロセスの論文で、MeOH:CH2Cl2=2:1中、10% Pd/Cで接触還元するっていうのがありますが、脱ベンジル体が10-20%副生してくるようです(Org. Process Res. Dev.2008, 12, 731-735.これもインドの製薬会社の報告)。

This workですが、本報ではPd/Cに"S"系の触媒毒を作用させて触媒活性を抑えることで選択的に共役二重結合のみを還元しようというお話です。要は、岐阜薬科大の佐治木先生の手法をアリセプト合成に使ってみたって感じです(Org. Lett., 2006, 8, 3279-3281.; Tetrahedron, 2006, 62, 11925-11932. Pd/C[Ph2S]は和光純薬から販売されている)。

チョイスした溶媒は、触媒毒無しで接触還元してみて、良さげな溶媒だったTHF(MeCN, AOEtは脱ベンジルが全部進行。ピリジンはTHFよりも高い選択性をたたき出すも使い勝手が悪い)。

触媒毒として試したのは、CYTA (1-(Mercaptomethyl)cyclopropane acetic acid), thioanisole, thiophenol, thiourea, phenyl sulfide, sodium sulfide, barium sulfate, calcium sulfate, magnesium sulfate, sodium sulfateです(あと、triphenylphosphineも)。

いずれの添加物も選択性の向上に寄与していますが、ベストな結果はCYTA, thioanisole, triphenylphosphineでした。この中で、CYTAは値段が高いのと毒性データがよく分かってないでドロップ。thioanisoleはPPh3に較べて安くて安全性が高いということで、ファイナルアンサーはthioanisoleという結論に達しています。

接触還元って古くから用いられていて、有機合成においても有用でパワフルな手法なので研究し尽くされてると勝手に思い込んでたけど、佐治木先生のグループをはじめとして、まだ改善の余地っていうのは残ってるんだろうと思いました。

あと、ボク的にはCoCl2•6H2OとNaBH4を使った1,4-還元(DIBAL-Co(acac)2みたいにコバルトヒドリドが発生するのかな?)の方が興味深かったりする二流大出のテクニシャン(実験補助員)のメモでした。

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