とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, February 8, 2015

オキサゾリジノンが愛しくて


艦これの冬イベントやってるんですが、香取をGETしたところで資材(燃料)が尽きて休憩中のオタッキー•コンキチです。

これ、E-4乙作戦の最終形態ね↓



閑話休題


学生時代(もう十数年前になるけど)、光学活性化合物を扱っていたので、Evansの不斉補助剤の論文などもジャブ程度に読んでいたりもしました。

で、このEvansの方法は、補助基を導入してジアステレオ選択的に反応を行った後、補助基を切断するわけですが、その条件っていうのは"LiOH/H2O2"っていうのが一般的なんだろうと思います(いろんな論文のschemeによく書いてあったような気がする)。

どうして、普通に加水分解じゃなくて、過酸化水素を加えて酸化的に切断するんだろうと疑問に思って十数年。久方ぶりに気になったので、ちょっとだけ調べてみました。

答えはやはりEvansの論文の中に有り。1987年の古い論文ですが(当たり前か)、こういうことらしいです(Tetrahedron Lett., 1987, 28, 6141-6144.)↓


要は、補助基を外す際に、exocyclicendocyclicに結合が切断させる可能性があって、"LiOH/H2O2"の条件だと"exocyclic"選択性がとても高いということです。

例えば、補助基を切断してカルボン酸を得る場合、LiOHで加水分解(Tetrahedron Lett. ,1987, 28, 1123-1126.)するのに対して、"LiOH/H2O2"でLiOOHを発生させて酸化的に切断する(workupでNa2SO3で処理して、過酸をカルボン酸に還元する)方が圧倒的にexocyclic選択的に反応が進行します(LiOHによる加水分解だと、けっこうendocyclicな切断が起こる場合がある)。

"LiOH/H2O2"以外の切断方法だと、環外のカルボニル基周りが立体的に混みいっていいない場合はecocyclicに結合が切断され望みの生成物と補助基が回収され、R基が嵩高いとendocyclicの補助基のカルボニル基での反応が競合してくるそうでが、"LiOH/H2O2"だと、そういった嵩高い基質でも圧倒的にecocyclic選択的に切断できるというのが素敵なところです。

それから、LiOHによる加水分解で問題となるオレフィンの共役化(異性化)対策にも"LiOH/H2O2"条件は効果的です↓

Tetrahedron Lett., 1986, 27, 4957-4960.

オキサゾリジノンの切断方法には、LiOBn, Ti(OBn)4, BrMgOMe (J. Am. Chem. Soc., 1982, 104, 1737-1739.; Tetrahedron Lett., 1987, 28, 1123-1126.; J. Am. Chem. Soc., 1985, 107, 4346-4348.)、LiBH4 (Tetrahedron Lett., 1986, 27, 4957-4960.)などが有りますが、これらと比較しても"LiOH/H2O2"が最もexoxyclic選択的だと言います。

で、このLiOOHの特異な選択性は、

a) "HOO-"はその塩基性の低さ (pKa (HOOH) = 11.6 vs pKa (HOH) =15.8)のために、"OH-"による加水分解よりも反応が可逆的であろうこと
b) "OH-"による加水分解の選択性は四面体中間体形成の相対速度に支配され、"HOO-"による開裂の選択性は結合開裂の相対速度によって決まるであろうこと
c) 水中で、"HOO-"は溶媒和エネルギーが小さく、"OH-"より大分小さいサイズの求核剤であること

といったことから発現していると著者(Evans)等は考えているようです。


うーん、そうだったのか。(恥ずかしくも今更ながら)疑問氷解です。

Evansのchiral auxiliary(ボクは使ったことないけど)って最早古典的と言っていいほど貫禄があると思います。で、古典的=教科書的な反応って、なんか根拠無く勝手に分かった気になってるところがありますが、それじゃあいけないですね。"古典"こそ、その"理"を知って使わなければダメだなと改めて思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。

あと、one more thingで、非環式の基質の結合切断にも選択性が出ます↓


(allylic 1,3-strainによってpivaloylのカルボニルが電子的に活性化されているのだろうと考えているようです)


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