2015年5月31日日曜日

CO等価体がサンプルワークを変える (3)

去年の夏に行った沖縄料理屋のメモです。

-がちまい食堂 memo-

-オリオンビール(生ビール) (550 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
期待通りの薄さのビールがヒエヒエで提供される。エクストラコールドライクでまあまずます。薄いビールと低温提供の相性の良さを再認識。


-半タコ半そば定食 (650 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
タコライスと沖縄そばのセット。タコライスも沖縄そばも初めて食べました。
•タコライス:ライスの上にレタス、挽肉、チーズ、サルサが盛りつけられている。子供でも分かる分かり易い旨さ。悪くはないが、凡庸な味。
•沖縄そば:平打ちの軽くウェーブがかった麺は饂飩様。麺の厚さに濃淡があるような食感で、噛むとちぎれるように切れる食感が面白い。味はスナックライクな饂飩といった呈。カップヌードル系の麺を饂飩並みにボアアップさえました的感じ。っていうか、どん兵衛の麺に酷似している。
スープはインスタントのお吸いもののスープをジャンキーにしたような味。あっさり系だけど、人工的な味。
具は、麩みたいなものと万能ネギ、紅ショウガ。紅ショウガは薬味としては強すぎて、味を殺してしまっていると思った。
あと、島とうがらしをかけて食べるのが"通"的な貼り紙があったのでやってみた→島とうがらし調味料は、INFERNO PEPPER FLAVORED VOFKA様の乾いた辛さで、これを沖縄そばにかけると、辛さがup↑し、味が殺される。
それから、もずく酢がヒエヒエで付いてくるんですが、これはとても良かったです。

定食は内税で、それ以外は外税。因に、「がちまい」は沖縄方言で「食いしん坊」の意味らしいです。


閑話休題


CO等価体のメモの続きです。今回メモするCO Alternativeは、N-formysacchalinです。


【特徴】
•アミンの安価なホルミル化剤としてCosey等により開発(Synlett, 2011, 1920.)
•結晶性が高い
•サッカリンから簡単に合成できる

で、読んだ文献はこちら↓

Palladium-Catalyzed Reductive Carbonylation of Aryl Halides with N-formylsaccharin as a CO Source
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 8611-8615.

CO alternativeを使ったカップリングで、ハロゲン化アリールからベンズアルデヒド誘導体を合成しようというお話です。

まず、芳香族アルデヒドの合成法として真っ先に思い浮かぶのは、ベンゾエートの金属ヒドリドによる還元ですが、毎度のお約束で官能基許容性に乏しく、極低温が必要です(そういった問題点を解決した金属ヒドリド還元→http://researcher-station.blogspot.jp/2013/09/partial-reduction.html)。カルボン酸から誘導した場合は、一旦エステルに誘導してから還元した方が無難なのでステップ数が増えといった問題があります

Direct formylationも古典的で、金属-ハロゲン交換によりメタル化した後、DMFと反応させるという方法がありますが、これもお約束で官能基許容性が乏しいので、比較的簡単な基質にしか適用できません(化学両論量の金属試薬の使用もdrawbackの一つに挙げられているけど、ボクは問題とは考えません)。

化学選択性が高い方法として、COガスをreactantに用いたハロゲン化アリールとのカップリング(Palladium-catalyzed reductive carbonylation)がありますが、一般的なプロトコールが僅かしかなかったり、5 barの合成ガス(CO/H2=1:1)が必要だったりします(工業化されてるらしいが、サンプルワークには圧倒的に不向き)。
ref. J. Am. Chem. Soc., 1974, 96, 7761.; Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 154.; Chem. Asian J., 2012, 7, 2213.; J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 15549.

そして、お約束のCO Alternativeを使ったカップリングの話になります。過去30年に渡るCO Alternativeの研究の中で、ヒドロキシ-、アルコキシ-、アミノカルボニレーションに関しては幾つかの成功例が報告されているそうですが、還元的カルボニル化はハードルが高く、外部CO源に熱的に不安定なacetic formic anhydrideをCO源を用いた例が一例報告されているに過ぎないらしいです、しかもカップリングパートナーはヨウ化アリール限定(Cacchi et al., J. Comb. Chem., 2004, 6, 692.)。

ということで、還元的カルボニル化における有用なCO Alternativeの開発がThsi workになります。著者等の戦略は、生成したσ-アシルパラジウムをヒドリドドナー(Et3SiH)で補足してやればアルデヒドがGETできるだろというものです。

で、幾つかのCO Alternativeを試してみます↓


•ギ酸ブチル→主に脱ハロゲン化してアニソールを与える(CO Alternativeの反応性が低い)
•ギ酸フェニル, TCPF→メインはアルコキシカルボニル化が進行。シランと較べてフェニールのPd中心への求核性が高い
•N-formylsaccharin→Excellent!サッカリン(pKa=1.6)はフェノール類(pKa=6-10)より求核性が低い

こんな感じで、N-formylsaccharinのみExcellentな結果が得られました。そこで、COスースにN-formylsaccharinを使って、最適条件を鋭意検討して設定した反応条件はこちら↓
24 examples, 36-87% isolated yield

官能基許容性は、エーテル、エステル、アミド、アルデヒド、アミン、ニトリル、ジオキソランがあってもオッケーです。
それから、α-一置換の基質はまずまずの収率ですが、2,6-二置換した基質は全然ダメ(trace)です。

あと、反応機構についてですが、当初、著者等はアシルパラジウム種とシランの反応により触媒サイクルが回って行くのだろうと考えていましたが、


といった事実や、


といった事実から、アシルサッカリンが中間体として生成していそうであることが示唆されました(当初の仮説=「アシルパラジウム種とシランの反応により触媒サイクルが回る」が排除されたわけではない)。


さて、N-formylsaccharinのまとめ(ウリ)です↓

a) Palladium-catalyzed reductive carbonylationにおいて、唯一実用的なCO Alternative
b) CO源のN-formylsaccharinの使用は少過剰(1.5 eq.)でよい
c) ボチボチな反応温度
d) 多様な臭化アリールに適用できる
e) 取り扱い易い

やっぱ官能基許容性の高さと、取り扱いの容易さが魅力的と思いました。サンプルワークの幅が広がると思います。

まだ続く.....

沖縄といえば、ガッキー大好きな二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

4 件のコメント:

  1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  2. 最初のN-ホルミルサッカリンの構造式について、Nが抜けております。
    (1)と(4)も同様です。

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  3. Windstille Asさん、どうもです。そのうち直そうと思います。

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