とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, July 8, 2018

流行ってるぜ〜、パラダサイクル (3):そしてG3へ

北千住の路地裏の洋食屋さんでランチしたときのメモです。

-わかば堂 memo-

-国産牛肉赤ワイン煮 (1,150 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
サラダ、スープ、ライス、セットドリンク付き。スープは濃いめのコンソメベースか?ソーセージ輪切り、ニンジンみじん切りなどが入っている(ニンジンのみじん切りの軟らかい食感が良い)。 メインの赤ワイン煮の肉は僅かに獣臭がして食欲をそそる。肉質は軟らかく、繊維がハラハラと解けていく。弾力も楽しい。味付けは薄めで、僅かに渋みも感じる(ソース由来か)。肉の旨味を存分に味わえる。 ドリンクはエスプレッソをチョイス。苦味走った深い味が良い。


-ランチスパークリングワイン (350 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
やんわり甘く、締まった感じで、梅酒likeなtaste。悪くない。 サッポロの樽詰スパークリングワイン ポールスターか?


ホントに隠れ家的な立地と佇まいのお店。落ち着いたシックな雰囲気を醸し出している。スタッフは全員女性で、お客も女性客が圧倒的。フェミニン感がいっぱいで入りにくいけど、また行きたいお店。


閑話休題


今回はPd G3に関するお話で、Buchwald教授のPd触媒デザインの総論的な論文である

Design and preparation of new palladium precatalysts for C-C and C-N cross-coupling reactions
Chem. Sci., 2013, 4, 916-920.

を中心にメモしていきます。

パラジウムが触媒するカップリング反応には、ホスフィンが配位した0価のパラジウムを効率的に発生させることが重要となります。一番直線的な考えとしては、売ってる"Pd(0)ソースを使う"ですが、容易に入手可能な市販のPd(0)ソースの問題点には次のようなものがあります↓

a) Pd2(dba)3やPd(PPh3)4のような市販のPd(0)ソースは、望みの反応を阻害する配位子を含んでいる(J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 5176-5185.)。

b) 市販のPd2(dba)3は純度が一定でない (Organometallics, 2012, 31, 2302-2309.; http://chemistry4410.seesaa.net/article/261041452.html)

こういった問題を回避するために、Pd(OAc)2やPdCl2といったPd(II)ソースを使用することが考えられます。その場合、系内でPd(II)→Pd(0)へと還元しなければなりませんが、このパラジウムの還元が不十分であることがしばしばです。

近年、上述したようなパラジウム触媒の活性化に起因する問題を解決するために、簡単に活性化可能なprecatalystが開発されていて、pyridinestabilized precatalyst (PEPPSI)、ligated allylpalladiumchloride precatalyst、mine-derived precatalyst、palladacycle-based precatalystが報告されています。そして、本報のお題は(当然)パラダサイクルprecatalystです。

Buchwald教授はパラダサイクルprecatalystとして、これまでにPd G1 precatalystとPd G2 precatalystを開発してきました。そして、MITの化学者やMerckのプロセスチームが数多くの成功を獲得してきたそうですが、次にような欠点に苦しめられてもいたとのことです。

Drawbacks of Pd G1
Pd G1 precatalysは、そのオリジナルの合成には3段階を要しSchlenkを使用しなければならず、不安定な中間体を経由しなければなりません。
J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 6686-6687.

なんでSchlenk使わなきゃいけないかはよく分かんないけど、MeLiを使うのは憂鬱になるよね。
Vicente等がPd(OAc)2から出発する別法を報告していますが、トリフルオロメタンスルホン酸を使用し、イオン交換のステップが入ることが問題の(面倒な?)ようです(Organometallics, 2011, 30, 4624-4631.; Comments Inorg. Chem., 2007, 28, 39-72.; Organometallics, 2003, 22, 5513-5517.)。

Drawbacks of Pd G2
Pd G2の欠点は分かりやすくって、
(1) tBuXPhos, BrettPhosといった嵩高い配位子の錯体は調製できない。
(2) 溶液状態ではあまり安定ではない
です。

そして、これらのPd G1とPd G2に係る欠点を克服すべくBuchwald教授が開発したのがPd G3 Precatalystです。

Pd G2の"Cl"を非配位性かつより電子吸引性の"OMs"に置き換えることで、Pd(II)中心周りの立体障害を軽減し、より電子不足にしてPd G2よりも広範囲の配位子との錯体を調製することが可能になりました。勿論、tBuXPhosやBrettPhosも適用できます。


しかも、μ-OMsダイマーは400 gスケールでの合成実績があります(この論文が出た時点で)。さらに、μ-OMsダイマーと配位子からin situでprecatalystを調製して反応に用いることもできます(15-45 min位でprecatalystが調製できる。これはスクリーニングに便利)。

1H NMRの測定結果からPd G2と比較してPd G3のPd中心が電子不足であることが示唆され、単結晶X線結晶構造解析の結果からPd G2のクロリドアニオンが解離していないのに対してPd G3のメシラートアニオンは解離していることが分かり、Buchwald教授の目論見が見事例証されています。

それでは、Pd G3の触媒活性の凄さをみていきましょう↓

まずは、鈴木-宮浦カップリングです。

極めてプロトデボロネーションしやすいと言われるボロン酸を使って高収率です。

次、tert-butyl acetateのα-arylationです。

そして、C-Nカップリング (Buchwald-Hartwigクロスカップリング)やC-Oカップリング。




それから、ニトリルもつっこめます。



Pd G3、かなりパワフル

です。基本、前の世代と少なくとも同等以上の触媒活性を堅持していると言います。それでいて、欠点を克服しているのですから大したものです。

ここで、Buchwald教授の第一世代から第三世代までのパラダサイクルprecatalystの特性をまとめると、こうなります↓

G3、ハンパないって!!

そんな気持ちでいっぱいになりますが、次回、G3からさらなる高みを目指したPd G4メモに続きます.....

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のパラダサイクルメモ「Pd G3編」でした。

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