とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Monday, July 27, 2015

カップリングでニトリルつっこんでみました (Buchwald Group)

昨夏、泥鰌を喰いに行ったときのメモです↓

-両国どぜう 桔梗家 memo-

-丸鍋 (1,200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
淡白な身。一口で全てをたいらげられる醍醐味。味付けは甘いんだけど、くどい甘さではない。濃いめの味付けと思うが、淡白な泥鰌にマッチしている(白い御飯にも良く合う)。葱を大量に鍋に入れるんだけど、この葱がBest Match!
白い御飯の上に、泥鰌と葱を載せて食べ進める醍醐味の凄さ。感動が迸る。泥鰌は既に柔らかくなっていて、葱がしんなりしてきたら食べごろ。どういて泥鰌はこんなにも可愛らしいんだろうかと思いました。

-御飯 (200 JPY)-

-どぜう汁(丸) (200 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
上品な味噌仕立てで旨い。泥鰌が顔が見えると、思わず笑みが溢れてしまう。

-ビール 大 (黒ラベル) (600 JPY)-

-鯉のあらい (800 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
酢みそとワサビ醤油のどちらかを選ぶ(ワサビ醤油をセレクトした。ちなみに、ワサビは粉ワサビ)。鯉は初めて食べたんだけど、少し乾いたような感じでちょっと硬めのしっかりした身。少しだけ"肉"を想起させる食感(といっても"魚"感が圧倒的だけど)。歯応えは十分で、口の中でハラハラとばらけていく。淡白ながらも、力強さを感じる味。finishのearthyな味わいが特徴的。
総じて、面白い味。ワサビ醤油より酢みその方が合うような気がした。人魚の肉ってこんな感じなのかな?と言う気持ちが心をよぎる一品。


閑話休題


ちょっと古いけど、こんな文献を読んでみました↓

A General, Practical Palladium-Catalyzed Cyanation of (Hetero)Aryl Chlorides and Bromides
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 10035-10039.

Buchwaldのグループの報告で、彼らの開発した第3世代パラダサイクルを使ってクロスカップリングでニトリルを導入してベンゾニトリルを合成する話です。

ベンゾニトリルの古典的な合成法としは、Sandmyer反応やRosenmund-von Braun反応がありますが、大過剰のCuCNが必要であったりと、まあ問題があります。

Rosenmund-von Braun Reaction

(Sandmyer反応は多分に注意を要するジアゾ化を介し、Rosenmund-von Braun反応は(多分)適用基質は主にヨウ化物で高温を要する)

あと、比較的最近、Buchwald等はRosenmund-von Braun反応のimprovementを報告しています↓
Ar-Br: 9 examples, 70-98% Yield
Het-Br: 6 examples, 74-95% Yield
J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 2890-2891.

このimprovementは、ハロゲン交換-シアノ化のドミノ反応で、反応条件は銅の使用を触媒量に抑えており、従来のRosenmund-von Braun反応と比較して非常にマイルドなもので、官能基許容性が高いです(フリーのO-H, N-Hがあってもオッケー)。NaCNは使用しなければならないものの、サンプルワークレベルではかなりイケてる方法と思います。それでも、Buchwald曰く"still have limitations"だそうです(具体的には言及してなかった気がする)。

ところで、パラジウムが触媒するシアノ化の最初の例は1973年(Takagi et al., Chem. Lett., 1973, 471-474.)で、画期的な進歩ではあったが再現性に問題があったようです(要はメチャメチャ堅牢でない=脆弱)。そもそも、シアニドが触媒毒であることが問題で、シアニドの触媒毒としての作用を低減するための手法が開発されてきました。例えば、

a) 還元剤の添加 (Tetrahedron Lett., 2000, 41, 3271-3273.; シアニドソースにはZn(CN)2を使用)
b) NaCN, KCN, Zn(CN)2の有機溶媒に対する溶解度の低さを利用する

といったものが。

しかしながら、NaCN法は厳格な禁水条件が必要で、さらにMCN (M=Na or K)を使用する場合は、溶解性と再現性を担保するために磨り潰してからの使用が求められたりします。Zn(CN)2はこの種の反応で官能基化された基質に対して最も広く用いられているシアニドソースで、その毒性はNaCNやKCNのおよそ10%程度の毒性だといいます。それでも毒性はあるわけで、より毒性の低いシアニドソースを用いたアプリケーションが求められていると言います。

で、登場した無害シアニドソースがK4[Fe(CN)6](無毒の食品添加物)です。K4[Fe(CN)6]をシアニドソースに使ったアプリケーションには次のようなものがあります。

(1) Beller and Weissman
aqueous二相系。PTC存在下、140˚C以上の反応温度が必要(Eur. J. Org. Chem., 2008, 3524-3528.; Tetrahedron Lett., 2008, 49, 4693-4694.)

(2) Huang and Kwong
1:1 organic/aqueous 混合溶媒を使用し、マイルドな条件でシアニドトランスファーを実現する。適用基質に制限があり、5員環のヘテロサイクルを基質に用いた例は殆ど無し(Catal. Lett., 2010, 139, 56-50.; Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 8918-8922.; Org. Lett., 2011, 13, 648-651.; Tetrahedron Lett., 2011, 52, 7038-7041.)。

(3) 田辺三菱製薬 (Org. Proces Res. Dev., 2014, 18, 693-698.)
Pd(OAc)2, P(o-tol)3, Na2CO3, DMAc-toluene, 135˚C。医薬品のプロセス開発。基質一般性は不明。最近の報告なので、本報に記載なし。
see http://researcher-station.blogspot.jp/2014/11/blog-post_25.html

無毒なK4[Fe(CN)6]をシアニドソースに使用した反応は魅力的ですが、それでも、そこそこの高温が必要だったり、汎用性に乏しかったりといった問題が解決されていないようです。

そこで、This Workですが、Buchwaldらは次に挙げるさらなるimprovementの実現に注力します。

1) 中程度から低い触媒添加量でAr-Clへの適用
2) 広範囲なHet-Xへの適用。NH基を有する5員環ヘテロサイクルへの適用。
3) 反応温度100˚C以下で、1 hr以内に反応完結。

これらの課題を解決するために鋭意検討(スクリーニング)した結果、次のschemeで示されるソリューションが見出されました。


第三世代パラダサイクルと幾つかの嵩高い配位子との組み合わせで、優れた基質一般性を実現いています。



あと、Buchwaldらは触媒サイクルにおけるtransmetalationステップについてこんな検討しています↓

この結果から、K4[Fe(CN)6]の鉄中心からのシアニドの解離には熱が必要なことが示唆されます(つまり、K4[Fe(CN)6]はKCNなどより活性が低い)。

Ar-Clとも余裕で反応する活性の高さ、無毒のK4[Fe(CN)6]を使用しつつ反応温度をそこそこリーズナブルに抑えているあたり、短い反応時間、基質一般性の高さと、本報で提示された手法は非常に魅力的と思います。著者等が、"General"、"Practical"と銘打つ気持ちは分かりますが、まあ、後はPrecatalystの値段が問題かなと思う二流大出のなんちゃってテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


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