とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, July 5, 2015

メタルフリーで、2˚, 3˚アミドのカルボニルをテゥルンテゥルンにします

去年の夏に穴子を喰いにいったときのメモです↓

-あな太郎 memo-

-お通し-
-REVIEW-
赤身と冷奴。
赤身は3枚の小片で、口の中でほろほろとほろけていく。
冷奴は梅和えで旨い。刺身の薬味には、山葵と万能ねぎがつく。

-あなご刺身 (1,000 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
淡白で、噛むほどにやんわりと脂が染出てくる。鰻(刺身)や河豚に似た弾力がある。少し野趣的なところのある香味が口の中に広がる。薬味に、山葵と万能ねぎがつく。

-あなご白焼き (1,180 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ロースターで焼いた後、表面をバーナーで炙ってから提供される。淡白で締まった身に焼いた香ばしさが映えて旨い。温もりのあるうちに食べるのがgood!薬味の山葵と良く合う。レモンも添えられていたが、レモン汁は強すぎると思う。

-西の関 花 (550 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
冷蔵庫で冷やされていたものを饗される。鼻につき過ぎない程度にいかにも日本酒といった感じのアルコールの立ち上がりがある。強い甘みが印象的。甘ったるい甘さではなく、嫌みの無い甘さ(ひこ孫の甘みを強烈にした感じ?)。それでいて、middleまで穏やかな味で、finishにいかにも日本酒的なキックを感じる。はっきり言って、面白い味。

それにつけても、やっぱり穴子は白焼きが最高に旨いなと思いました。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Metal-Free Reduction of Secondary and Tertiary N-Phenyl Amides by Tris(pentafluorophenyl)boron-Catalyzed Hydrosilylation
J. Org. Chem., 2014, 79, 7728-7733.

アミドをメタルフリーで触媒的にヒドロシリル化-加水分解して、アミンを合成する話です。で、気になる触媒はこちら↓


Tris(pentafluorophenyl)boron

です(オレも15年くらい前に使ったことある)。

「アミド→アミン」というトランスフォーメーションですぐ思いつく古典的な合成法は金属ヒドリド還元ですが、最早お約束の領域ですが、化学両論量の試薬が必要なことに加えて、概して選択性に乏しく、副生成物を与えたりして精製が難しくなったりします。

それから、接触還元は極めて稀で、制限が多いようです。最近の例としては↓

(a) ruthenium-triphos catalyst (Magro et al.)
高温(164˚C)、比較的高圧(40 bar) (Chem. Commun., 2007, 3154-3156.)
or
10 bar, 高温(200˚C) (Chem. Eur. J., 2013, 19, 11039-11050.)
が必要

(b) bimetallic Pt-Re触媒 (Burch et al.)
120˚C, 20 barが必要。基質一般性についてあまり探索されていない。
(J. Catal., 2011, 283, 89-97.)

(c) Pd/Re/graphite触媒 (Stein and Breit)
一般性があり、高収率(34 examples, >90% Yield)。幾分高い圧力が必要(160˚C, 30 bar)。
(Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 2231-2234.)

これらの反応は官能基許容性に乏しいです。そういった問題点があるためか、最近、触媒的ヒドロシリル化によるアミドの還元が注目されているそうです。

最近の報告例としては↓

i) 遷移金属の例
Rh, Mn, Ru, Os, Ir, Pt, Pd, Re, Fe, Inといった金属触媒を用いた報告があるようですが、それらの多くは高価で、反応条件は高温を要するので熱に弱い基質には適用しがたいものがあります。

ii) Zn(OAc)2, Zn(OTf)2 (Beller et al. Chem.- Eur. J.201117, 12186-12192.) 

20 examples中、18 substratesで50-93% Yield。アミド結合の窒素の置換基が嵩高い基質2例は<1% Yield。窒素周りの立体障害に弱い感じ。アニリドはno reactionで、メチルチオ基とケトンは適用不可です(ケトンは還元される)。ハロゲンはオッケーで、アルコール性水酸基もオッケー(これは注目に値するらしいです)。

21 examples, 50-86% Yield
sec-アミドの還元はtert-アミドの還元よりも難しいことが良く知られているそうで(ヘェー、やっぱ活性水素あるからですか?)、Beller等はZn(OTf)2とTMDS(tetramethyldisiloxane)の組み合わせでsec-アミドの還元を成功さえました(Zn(OAc)2とTMDSのコンビネーションではダメ)。Zn(OTf)2-TMDS systemの特徴としては、
a) 電子的効果は小さい
b) アミド結合周りの両サイドの立体の混み具合が収率に大きな影響を与える
c) 置換ベンジルアミンもオッケー。ハロゲンの還元も起こらない。
d) ケトンとフリーのアミンにはダメ(ケトンが還元される)
といった感じです。この手法は、過去の研究における制約の殆どを克服しているらしいです。

Zn(OAc)2-(EtO)2SiMeH system、Zn(OTf)2-TMDS systemともに官能基許容性が高く、


あと、既にメタルフリーの報告もあります↓

iii) Tf2O-Hantzsch ester system (Charette et al.)


J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 18-19.

この反応もアミドの置換基(どっち側でも)が嵩高くなると収率が低下しますが、ケトンがあっても大丈夫です(他官能基許容性は、エステル、α,β-不飽和エステル、ニトリル、エポキシド、アルキン、エーテルがオッケー)。

このTf2O-HEH systemをsec-アミドの還元に適用するとsluggishな感じになるので、sec-アミド向けにimprovementしたのがこちら(tandem Et3SiH/HEH reduction)↓

14 examples, 71-90% Yield
J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 12817-12819.

窒素原子周りが嵩高くてもけっこうイケイケな感じです。官能基許容性が高く、ニトリル、ニトロ、アジド、エステル、tert-アミド、α,β-不飽和エステル、アルキンがあってもオッケー。

また、HEHによる二段階目の還元を行わずにworkupすることで、イミンやアルデヒドを合成することもできます。
17 examples
•quenched in basic conditions → imine: 65-99%
•crude mixture is hydrolyzed in the presence of aqueous buffer of citric acid and THF → aldehyde: 64-96%

Tf2O-HEH systemのデメリットとしては、高価なcofactor、極めて反応性の高いTf2O使用、極低温条件が挙げられています。


さて、Previous Worksの話はこのくらいにして、本題のThis Workです↓


発端は合成スキーム記載の化合物の合成で、はじめはコンベンショナルな金属ヒドリド還元等を試みましたが、
a) LAH→脱ハロゲン化が速やかに進行
b) DIBAL-H→X=Brで50% Yield。X=Iだと脱ハロゲン化が起こる
c) AlH3 (in situ generated)→二重結合が還元される
d) Zn(OAc)2-TMDS→高温が必要だけど有効。ca. 80% Yieldも副生する脱ハロゲン体の分離精製が困難

Zn(OAc)2-TMDS systemでけっこう収率が良かったからか、著者等はより強力なLewis酸であるB(C6F6)3に着目します。因に、B(C6F6)3が触媒するアミドのhydrosilylative reductionが1報だけ報告されていますが、アミドの還元(成功)例は3例だけだったり、ベンズアミドには不活性だったりと、十分に探索•最適化されていませんでした(エナミン、エノン、イソシアネート、エノールエーテルの還元にも適用している)。


Tetrahedron Lett., 2009, 50, 4912-4915.

で、著者等はB(C6F6)3-TMDS systemでアミドの還元の最適条件をなんやかんやと探索•設定し、基質一般性を検討します。


反応速度の違いは(生成する)amine-B(C6F6)3錯体の結合の強さに依存すると考えられます。こんな感じに↓
aN-フェニルアミンは塩基性は脂肪族アミンに較べてが極めて弱いので、弱い結合の錯体の形成が期待される=反応が速い
b) tert-アミンはより塩基性が強いが、水素結合を形成するためのNHが無い=だから反応が進行する
c) secondary N-allylアミンは、B(C6F6)3のフッ素原子と二股に分かれた水素結合を形成する=強い結合の錯体を形成=反応が止まる

最後に著者等は主張するウリは↓
1) マイルドな還元
2) 定量的に近い収率(反応が進行する基質はおおむね)
3) 精製が容易(普通のクトマトで過剰のTMDS、反応したTMDSのカス、ボロン触媒で除去できる)
4) 反応温度が低温
5) 短い反応時間
6) 官能基許容性の高さ(アルケン、ニトロ基、アリールハライドが許容)
です。

基質に大分制限があるけど、はまれば面白そうな反応と思いました。
でも、特に問題となる官能基がないんだったら、"BH3-THF錯体でよくね?"って思うボクは悪い人間でしょうか?
以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

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