先日、一年振りに節度と敬意を持って訪れたい押上の小料理屋に行ってきました。
-小料理かずよ memo (押上, visited Aug. 2025)-
住所:墨田区横川3-12
-REVIEW-
まずは、うすはりのタンブラーで頂く生ビール。
喉が潤います。
うすはりのグラスって、こんなにも薄くて、こんなにも軽かったんだと久々に実感しました。
このユーザー・エクスペリエンスの価値は高い。
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
茄子の煮浸しでしょうか。
油感は皆無で、麺つゆの味と、カイワレ、葱、茗荷の薬味のコンボが素敵です。
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
本まぐろ、タコ、アジ、ホタテの盛合せ。
本マグロはしっとりした軟らさで、甘い綺麗な脂が程よく乗ってて美味しい。
アジから放たれるしっとりした青魚の旨味がサイコーです。
ホタテは肉厚で、食感楽しめますね。
身の厚いタコも普通に美味しい。
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
あっさり甘酢の胡瓜の瑞々しさ。
大根の糠漬けの酸味を伴った糠フレーバーが沁みる。
人参は糠の香味に加えて、コリコリ食感にケミカル・フレーバー。
いいですね。
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
香ばしい魚の焼けた香りがホントいい匂い。
ホントにフレッシュな酒のいい匂いが立ち昇る(こんなの初めて)。
そして、いかにも赤魚といった味が濃い。
味付けは心地よい甘さに加えて、酒なしでほろ酔い気分になるほどに酒の香味が素晴らしい。
終戦年生まれのおねえさんが一人で切り盛りするお店です。
いっとき店が閉まってましたが、お元気そうでなによりでした。
忙しい世を生きる現代人は、味のあるコの字カウンターでゆっくりと流れる時間の潤いを噛み締めながら喉の渇きを癒しましょう。
閑話休題
少し古いんですが、こんな文献を読んでみました↓
Solid-Phase Synthesis of Boranophosphate/Phosphorothioate/ Phosphate Chimeric Oligonucleotides and Their Potential as Antisense Oligonucleotides
J. Org. Chem., 2022, 87, 3895-3909.
東京理科大学の和田先生のグループからの報告で、オリゴ核酸のバックボーン修飾(インターヌクレオチド結合の修飾)をキメラ化するお話です。
アンチセンス核酸(ASO)の化学修飾で、インターヌクレオチド結合の非架橋酸素原子の一つが硫黄原子で置換されたホスホロチオエート(PS)修飾は、その高いヌクレアーゼ耐性と合成の容易さから最も広く用いられている化学修飾ですが、標的RNAとASOの二本鎖安定性を低下させることや、一部のPSオリゴヌクレオチドが望ましくない免疫応答を引き起こすことが報告されています。
ギャップマータイプのASOでは、糖修飾核酸を末端のwing領域に配置することで二本鎖安定性の改善を図っており、糖修飾とPS修飾のコンビネーションで低毒性化を達成したという報告もありますが、さらなる毒性の抑制が求められています。
このような状況の下で、PS核酸と比較して高いヌクレアーゼ耐性と低毒性ボラノホスフェート (PB, ヌクレオチドの架橋に関与していないPOの酸素原子をホウ素で置き換えたもの)が注目を集めています。
しかしならが、フルにPB修飾してしまうとRNAとの二本鎖安定性とRNase H活性が低下してしまいます。
そこで、PB/PS/PO的なキメラオリゴです。
因みに、PB/POキメラオリゴが二本鎖安定性を改善し、幾つかがフルPB修飾体よりも優れたRNase H活性を示すことが報告されています。
とまぁPBを含むキメラオリゴは期待がもてるんですが、その合成法に難があります。
ボラノホスフェート (PB)を導入する際、ホスホロアミダイト法で通常用いられる核酸塩基のアシル系保護基は、ホウ素化試薬によって容易に還元され脱保護不可能なN-アルキル化されてしまうからです。
この対策としてN-di-tert-ブチルイソブチルシリル(N-BIBS)基を保護基に用いたホスホロアミダイト法による合成が報告されていますが(J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 8138-8139.)、著者らが選んだのはH-ボラノホスホネートモノマーを用いたH-ボラノホスホネート法です。
H-ボラノホスホネート法では、H-ボラノホスホネートモノマーを5'-末端の水酸基と縮合させることでボラノホスホネートジエステル結合を形成させた後、脱トリチル化を行うというサイクルを繰り返すことで鎖長を伸長させて行き、望みの鎖長に達したら全てのインターヌクレオチド結合を一括で酸化し、最後に核酸塩基の保護基の除去と固相担体からの切り出しを行うことでPB/PS/POキメラオリゴが合成されます。
ますモノマーの用意ですが、H-ホスホネートモノマー(H-ホスホネート、H-ホスホノチオエート、H-ボラノホスホネート)は次のようにして調製します。
ところで、PSを導入したキメラオリゴを合成するにあたってH-ホスホノチオエートモノエステルを用いるわけですが、H-ホスホノチオエートモノエステルには硫黄と酸素の二つの求核中心が存在するため、化学選択性に懸念が持たれます。望みのPS誘導体を得るためには、選択的に酸素原子を活性化しなければなりません。
そこで著者らが考えたのがHSAB則に基付いたアプローチです。即ち、ハードな性質を有するホスホニウムタイプの縮合剤を使うことで、よりハードな酸素原子を選択的に活性化することができるんじゃないかっていう作戦です。
結果です↓
まず、固相合成でTPSTダイマーの合成を検討し、PyNTP (baseなし)が最適条件であることを見出します。
ベンゾトリアゾールに比して1,2,4-トリアゾールが脱離基であることがクリティカルだということが分かります。
同じ脱離基を有しながら、MNTPよりもPyNTPの方が化学選択性とコンバージョンが高いです。
嵩高さやホスホニウム中心の歪みといった観点からリン酸化やホスホニル化の縮合剤としてMNTPの方がPyNTPよりも高活性なんですが、逆の結果となりました。このことについて著者らは、MNTPによる過剰活性化がその要因であると考察しています。
TPSTダイマー合成の最適条件を基にデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシンに対応するH-ホスホネートモノマーを使った反応の検討も行っているんですが、dAPSTダイマーの合成ではキノリン(塩基)の存在がクリティカルになります。
dAPST
base : quinolien → PO:PS = 2:98, HPLC yield : 95%
base : none → PO:PS = 3:97, HPLC yield : 70%
dCPST
base : quinolien → PO:PS = 2:98, HPLC yield : 96%
base : none → PO:PS = 2:98, HPLC yield : 94%
dGPST
base : quinolien → PO:PS = 1: >99, HPLC yield : 88% (0.1 M monomer, 0.25 M PyNTP)
base : none → PO:PS = 1: >99, HPLC yield : 91% (0.1 M monomer, 0.25 M PyNTP)
base : none → PO:PS = 1: >99, HPLC yield : 93% (0.2 M monomer, 0.5 M PyNTP)
著者らは、PSダイマーの合成に加えてPBダイマーについても検討を行っています。
entry 1 PB/PS/POキメラオリゴ
d(CPSAPSGPSTPSCPBAPBGPBTPBCPOAPOGPOT) : 6% isolated yield
entry 2 PB/PS/POキメラオリゴ
d(GPBCPSAPBTPOTPOGPOGPOTPSAPBTPSTPBC) : 19% isolated yield
entry 3 PB/PSキメラオリゴ
d(GPBCPSAPBTPSTPSGPBGPBTPSAPBTPSTPBC) : 5% isolated yield
entry 4 PB/POキメラオリゴ
d(GPBCPBAPBTPOTPOGPOGPOTPBAPBTPBTPBC) : 19% isolated yield
entry 5 PB/PS/PO-(2'-OMe)ギャップマー
GPBCPSAPBd(TPSTPOGPOGPOTPSAPB)UPBUPBC : 13% isolated yield
上記entry 1はほぼ全てのインターヌクレオチド結合と核酸塩基の組み合わせを含んだオリゴ。entries 2-4はapoBタンパクのmRNAのアンチセンス配列のキメラ修飾位置を変えたオリゴで、entry 2はエキソヌクレアーゼ耐性の獲得を狙って3’および5’末端をPBもしくはPS置換し、二本鎖形成とRNase H活性の改善を目的に中心部に連続し4つたPOリンケージを配したオリゴです。entry 3はPOをPBまたはPS修飾に替えたオリゴ。entry 4は中心の四連PO以外を全てPB修飾したオリゴになります。そして、最後のentry 5は2'-OMeギャップマーです。
ボクはオリゴ核酸合成の素人さんなのでアレなんですが、収率に難があるのは否めないと思うけど、PBを導入したキメラオリゴをちゃんと合成できるテクは素晴らしいなと思いました。
目出たくPB導入キメラオリゴが合成できたところで、当然、著者らは物性の評価をしています。
その結果、
a) 熱変性解析から、PS/PO、PB/PO、PB/PS/PO-キメラオリゴにPO結合を導入することで二重鎖安定性が向上する(PB修飾が二重鎖安定性を低下させる)。
b) SVPDE (snake venom phosphodiesterase)アッセイから、3つまたは4つの連続したPO結合の導入によりヌクレアーゼ耐性が著しく低下する。
c) RNase H活性アッセイから、PB結合比率が高いオリゴほどRNase H活性がある程度低下し、RNase Hの切断部位選好性が変化することが示唆。
ということが分かり、ASOの適切な部位に適切なP修飾を導入することで、二本鎖安定性、ヌクレアーゼ耐性、RNase H活性、および一塩基ミスマッチ識別能を調節できると予想されると締め括られています。
核酸医薬はかなりホットなモダリティで、CDMOの台頭も著しいと思うんですが、どうでしょか?
素人なりに核酸医薬にキャッチアップして行きたいなと思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のPB/PS/PO-キメラオリゴ合成メモでした。
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