コンキチ(わたし)は理系出身(一応理工学研究科応用化学専攻修了)です。(大方の)理系の学生が志向する職業の最終形態は、ズバリ「研究員」だと思います。だって、それ以外の職種では理系の研究室で学んだ専門的スキルを十分に発揮できないですから。
しかしながら、理系の大学をでた人間がすべて研究というJOBを獲得できるかというと、全くそんなことはありません(余談ですが、工学部の大学院修士課程を修了して、未だにフリーターをやってる同期もいます)。
まず、4年(最終学歴=大卒)で大学生活を終え企業に就職するケースでは、研究員になることは、今のご時世ほぼ皆無といってよいでしょう(多分)。MR、(普通の)営業、工場勤務、etc.なんていうケースが関の山なのではないかと思います。ちなみにコンキチの勤務する会社では、大卒の研究員は皆無。殆どいません(大昔に入社した人はその限りではないですが)。
学卒(Bachelor)では、実際に研究活動に従事する期間は大学4年生の1年間のみなので、知識、研究の進め方に係る方法論が決定的に不足しています(但し、旧帝大級の超頭の良い大学はこの限りではないかもしれません)。ついでに、大学で身につける専門分野は4年生になって研究室に配属されてからのみ身につけることができます。それに対して企業の採用活動は、早ければ研究室配属前(将来取得するであろう専門分野が未定のとき)に終わってしまいます。ということは必然的に、企業は自社の特性に合った専門的スキルのある人材を現役学卒者の中から採用することは不可能であるという結論が導きだせます。まあ、学卒で研究者になれるというケースはレアケースであり、なれたとしてもそれに見合った能力がないと辛い人生になりそうですが.....
香料会社にはパヒューマー(parfumeur)やフレーバリスト(flavorist)といった研究職(?)もありますが、こちらは院卒が必須要件ではありません。そもそも、調香師を育成するような大学の研究室なんて(国内には多分)ないだろうし(嗅覚のメカニズムを研究しているところはあるようですが)、研究(R&D)というよりも職人的(mister)といった方が適格でしょう。ただ、こちらは普通の研究員になるよりも狭き門というのが現実でしょう。
あと、味○素に短大卒で入社して、(多分会社の金で)学位を次々に取得し、最終的には論文Doctorになった人を知っていますが、これはお父さんが超エラい教授だったという裏技なので普通の人は真似できません(ちなみに博士論文の内容は修士以下=学士並みでした)。
次に修士(Mater)までいった場合ですが、「修士をとって企業に就職して研究員になるケース」というのが企業で働く研究員の王道です。コンキチもこのパターンで研究員になりました。
修士は実質的研究従事期間は3年(学卒の3倍)。その間、学会発表や論文執筆をこなさなければなりません。ちなみにコンキチの配属された研究室では、学会発表+論文投稿が2件以上でないと単位をもらえないといった暗黙の了解がありました。卒業するのに超えなければならないハードルは学士よりもかなり高いと言えるでしょう。
そして、専門分野が確定して、何となく実力もついてきた修士1年が終わるころに就職・採用活動が行われる(と思う)ので、採用側である企業が求める専門的スキルと就職活動者の持つ専門スキルのマッチングが容易になります。
また、研究室の指導教官(教授)が(共同研究している)企業との強力なコネクションを持っていれば、就職口を斡旋してもらえます(ちなみにコンキチは山○内製薬(現アス○ラス製薬)とク○レだったら紹介できるよと言われました。先生の紹介で日本ゼ○ン、日○ケミファ、山○薬品工業、日○化学工業、ミ○シ油脂に就職した先輩もいます)。
最後に博士(Doctor)までいった場合ですが、これはちょっと話が複雑になります。
0) ドクターコース(博士課程)に進むことが難しい。
語学に堪能で、かつ教授の強力なプッシュがなければドクターコース(博士課程)に進むことさえできません。
(企業にいったん就職し、社会人ドクターコースで学位を取得したり、論文の審査でドクターになれる論文ドクターなんかもあります)
1) 象牙の塔で研究を続ける(大学の残る)場合。
博士の学位取得後、助手→助教授→教授とステップアップしていく場合は必須要件です。但し、ポストに空きがなければ、どんなに優秀でも助手にさえなれないので「運」が必要です。
2) 博士が企業の研究員になる場合。
こちらも悩ましいものがあるようです(推測)。ここからはコンキチの推測がかなり入りますが、運良く博士になれたとして、企業は博士を積極的に採用するか(博士に対するニーズがあるか?)という問題。
そもそも、「博士で入社」というケースは、新入社員でいながら、非常に高い能力を持っている(ある意味生意気、おそらくプライドが高い)という、古典的な日本の企業にはあまりみられないイレギュラーな存在です。その処遇の仕方に十分対応できる企業(新薬を開発し続けなければならない製薬会社とか、研究内容がcreativeな企業)でなければ、就社は困難でしょう。
それから、「学生時代の専門分野」と「就社してからの専門分野」は必ずしも同じではない(っていうか同じケースは稀でしょう)。つまり、あまりにも専門分野に特化してしまった博士は、年齢も高いし(とび級は考慮せず、ストレートだと27歳)、企業内ではつぶしがきかない(企業ニーズに十分対応しきれない)のではないかという疑義が採用担当者の脳裏に浮かぶのではないでしょうか?
それから、ドクターコースまでいく人間は、今やっている研究が大好きだ(というかのめりこんでいる)と思われます。簡単に、自分より能力の低い(と思われる)上司の管理下に入って、新分野で丁稚奉公からリスタートすることができるでしょうか?
以上のことから(博士については殆ど推測ですが)、(企業の)研究員になりたけれは、
1) 修士の学位を取得すること。
2) 自分の専門スキルとマッチングしそうな会社を選択すること(面接の際、いい理由付けになります)。
3) その業界で超有名な先生の研究室に入ること(ズバリ!コネ狙いです。コネがなくてもネームバリューのある先生の研究室だと、研究所の部長等は興味を示すはずです)。
4) 出来るだけネームバリューのある大学(偏差値の高い学校)に入ること(コンキチの実感ですが、なんだかんだいったって東大生は頭がいいですし、帝大のブランド力は高いと思います。それに一流大学には優秀な教授も多いですから)。
この辺りが、普通の人が(努力すれば)できる、研究員になるためのマニュアルかなと思います。
飽食の時代となり、少子化が進み、社会は高学歴化が加速しています。理系離れが叫ばれて久しく、理系の需要を喚起するという思惑が全面に押し出されているからかもしれませんが、マスゴミの報道をみていると、工業高校卒でも、高専卒でも、専門学校卒でも、ネームバリューの無い(ブランド力の無い)大学卒でも理系に進みさえすれば、安直に研究者への道が開けるという印象を(コンキチだけかもしれませんが)受けざるを得ないのですが、それは真っ赤なウソです。ある程度(二流)以上の大学で修士課程まで進んでからはじめて研究員という仕事の選択肢が示されるとうことを、理系を目指される人は努々忘れてはいけません(勿論例外はありますが)。
あと、理系離れが進んでいると言われますが、世間が騒ぐほど研究員の需要は多くはないのではないかと思います(根拠無しですが)。そして、マスゴミは「理系=研究員(or 科学者)」という図式を必要以上に強調している節がああるように思えてなりません。労働市場における研究者の需要は、二流以上の学校を出た修士課程の学生が十分労働市場に供給されてれば十分まかなわれると思います。「理系人口=研究人口」ではないのです。「理系人口=研究人口+研究活動を社会に還元するためにルーティン化された仕事に従事する人口」だと思います。また研究活動を社会に還元するためにルーティン化された仕事に従事する仕事は理系の学校をでなければ絶対できない仕事では無いとも思います。
「理系不足→需要が逼迫しているから簡単に理系にいけそう→理系=研究員(科学者)ジャン→明日から俺も研究者。知的な響きがいい感じ」といった黄金スキームは存在しません。地道なお勉強が必要です。
(二流校にしかはいれなかったモノの戯言ではありますが.....)
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2006年5月13日土曜日
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