2008年7月14日月曜日

化学物質リテラシー


佐藤健太郎さんの2作目の著作「化学物質はなぜ嫌われるのか ~「化学物質」のニュースを読み解く」を読了しました。

前作(see http://researcher-station.blogspot.jp/2007/06/blog-post.html)同様、衆生の化学リテラシーを高める良書と思いました。また、化学の専門知識が皆無の人にも内容の理解が進むよう腐心されている後が窺えます。

はっきり言って、この書籍を教科書に使って中学校くらいで授業して欲しいです。そうすれば、世の中でなされている議論はもっとまっとうなものになると思うから。

では、以下にコンキチのとりとめのない感想を徒然なるままに記したいと思います。

この本で最もシンパシーを感じたのは、ゼロリスクという幻想です。ゼロリスク。なんて甘美な響きをもつ言葉なのでしょうか。ただ、甘美な言葉は実際には実現不可能であることが多いような気がします。本書ではゼロリスクが幻想であるとうことを幾つかの分かり易い例を挙げて説明しています。その中でコンキチが一番お気に入りなのは、塩(NaCl)の話です。すなわち、

食塩は体に必須の食品ですが、200グラム食べれば死に至るわけですから。


というくだりです(ちなみAldrichのMSDSによると、食塩はLD50(ラット経口) 3,000mg/kgね)。

それから、
食塩なんかは、調子こいて摂取すると胃ガンリスクが高まるっていう報告もあるからね。
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/11/igan_1.html
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=14710219&dopt=Abstract


結局、バランスというか、「定性分析+定量分析」と期待値が重要なんだよね、きっと。



あと、「サリドマイド復活の日」と題して一章設けられているのですが、コンキチは学生時代に光学活性化合物を扱っていたので、サリドマイドの話には懐かしさがこみ上げてきましたね(キラル化合物に携わったことのある人で知らない人はいあにでしょう。まあ、体内でラセミ化するけど。)。
で、この章では次のことが書かれています。

<引用開始>
ブラジルでは文字の読めない貧困層にハンセン氏病が蔓延しており、そのため政府がサリドマイドを製造して無料で患者に配布しています。このパッケージには「妊婦服用禁止」の絵文字が入れられているのですが、これがかえって仇となり、なんとサリドマイドは妊娠中絶薬と誤解されてしまったのです。こうして新たなサリドマイド症児は60年代から発生して、現在もまだ生まれ続けています。
<引用終了>


この話のお題は医薬ですが、医薬でも、化学物質でも、政治、経済、環境すべての事象に対して充分なリテラシーを持つことが重要と思いました。


本書全体の感想としては、繰り返しになりますが、論理志向、「定性分析+定量分析」、期待値とかをよくよく考えるこいうことが重要と感じました。なので、学校教育ではそういった能力を育むカリキュラムを増やして欲しいな。っていうか具体的には、大学入試で高校で習う数学を全て必修にして欲しい(ちなみに自分、数学苦手です。)。そもそもMathematicsって確か「基本的な学問」的な意味があったんじゃなかったかな(うろ覚え)?

以上、二流大出の窓際研究員の独り言でした。

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