とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, July 5, 2009

Scale-UP↑

先日、ニュース番組をみて知ったんですが、これ凄いですね↓


New Zealand Airlinesの機内安全CMだそうです。

あと、メイキングですかね↓




それにつけてもかなり驚きました。軽くイノベーションですね。


閑話休題


以前蒐集した文献を読み返しています↓

ラボでできるスケールアップ検討
化学工業, 2004年, 5月号, (343) 15.

日産化学の方(当時、後、純正化学の顧問)の寄稿です。

所謂ケミカル•カンパニーは、最終的ににm3スケールでの実製造を目指して、実験室から検討を開始します。コンキチも経験がありますが、ラボで(とっても)うまくいっても、パイロットでは全然ダメ。で、苦労してパイロットでもうまくいく条件を見つけたんだけど、こんどは実機でダメみたいなことがよくあります。

まあ、本人たちはラボ→パイロット→実機と同じ事をやっているつもりなんだけれど、実際には同じ事が再現できていないんだよね。そもそも、フラスコの形状と釜の形状からして違うし(寸胴型のジャケット付セパラブルフラスコもあるけどね)、何より撹拌の再現を得ることは(多分)不可能だろう。とまあ、ラボと実機との相違は、数え上げればきりがないんだけど、この論文の著者がいうことには、次の点においてラボと実機は異なると言います↓

1) ラボと比較して実機のユーティリティーは能力が極端に低い
2) ラボデータが曖昧 (論外でしょ)
3) 原料の変化

以下、事例をメモします↓


1st example: Synthesis of DMP

Scale
Hr
Yield / %
lab.
1
>90
200 L
4
65
1 m3
8
50

プロセスは、PPCLをMeOHに滴下し、減圧下塩化水素を除き、蒸留。そして、スケールアップすればするほど収率Down↓
理由はユーティリティーの能力不足。実は、DMPは塩化水素の存在下、分解してモノエステルとなる。実機のユーティリティー能力の不足-具体的にはPPCL滴下時の冷却能力(単位容量当たりの電熱面積の減少)、脱塩化水素工程におlけるポンプの排気量、蒸留工程におけるポンプの排気量と加熱能力(昇温速度)-により塩化水素存在下でのオペレーションの所要時間が増大し、望ましくない反応の進行が増す。


2nd example: Synthesis of PPTC



Season
Yield / %
Winter
85
Summer
70

ズバリ、理由は還流量。夏期のコンデンサーの冷却能力の低下が原因。そのため、夏場は発生する塩化水素の約10%が残存し、ベンゼンがAlCl3、HClと錯体を形成し、系内に残存。系内に残存したベンゼンがPPTCと反応してしまう(80℃で起こる)。
ラボの還流量は実機の100倍くらいと認識しておくとよいと著者は言います。


3rd example: TARGA
タルガ(農薬)の製造でみられたスケールアップトラブルで、ラボだと定量的に進行する反応が、スケールアップすると反応が約2%進行したところで反応が停止してしまったというものです。副生するKClでK2CO3が皮膜されるのが原因。
より具体的には、室温で30 min~ 1hr撹拌することが、反応停止のミソで、原料の塩化物に含まれる約1 mol%のアミン塩酸塩がゆっくりとK2CO3と反応して薄く皮膜し、110℃でフェノールを滴下すると一反応して厚いKClの膜ができて完全に反応しなくなるそうです。直感的には受け入れづらいですが、K2CO3表面のSEM-EDX (表面および断面の形状観察とその観察部分の元素分析ができる装置)分析から立証されたそうです。

4th example: SIRIUS

Scale
Yield / %
Lab.
70
Pilot
50-65

シリウス (水田用除草剤)の中間体製造時のトラブル事例です。
パイロットにおける収率低下の原因は、

a) NaNO2滴下の際、局部的にNaNO2濃度が高くなり、残存する硫酸で亜硝酸がNOxが発生し、NaNO2が不足してしまったこと。6 mmφの太い滴下管の使用が原因。

b) 亜硝酸がジアゾニウム塩を分解する。

対策: NaNO2 aq. 1.05eq.を1 mmφの滴下管から滴下し、過剰の亜硝酸の残存を防ぐため90% Conv.で尿素を添加することで過剰の亜硝酸を分解する(尿素添加は汎用性なし)。
ref. 特開平02-215731

この改善法により、ラボ、実機ともに86% yield。


5th example: Synthesis of DAR

塩酸塩でのジアゾカップリングは、1%以下の濃度でca. 65% yield。Practicalな濃度にすると2,4-体とtri-体が副生して< 50%。 で、著者らは2,4-体の副生は分子内転位によるものという仮説をたてて、塩酸塩をジアゾニウムヒドロキシド(比較的安定だった)でジアゾカップリングすることで容積効率10%で>90% yieldを達成。
ref. 特開平09-124575, 特開平09-157239
また、塩酸塩もヒドロキシドも反応熱が大きいことが問題(分解性だからね)で、バッチだとキツイので連続的にジアゾニウムヒドロキシドを生成させてブレークスルーしたそうです(90% yield, 特開平11-255727)。

最後にこの論文でコンキチが最も感銘を受けた言葉↓



製造研究を行うことは、反応を理解する行為である。


プロセスケミストだけでなく、全てのケミストにとって含蓄にある論文と思いました。

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