2010年1月3日日曜日

綾辻行人の新境地

冬休みのテレビ番組は概して退屈だ。制作に明らかに脳ミソを使ってないと思われるマンネリで退屈な年末年始の番組には辟易させられます。「読書の秋」などと世間では言われているけれど、外は寒いし、混雑してるし、家の中で温まってゴロゴロしているのが一番と思うコンキチです。なので「年末年始=冬休み」こそ読書に最も適した時季とコンキチは思います。

ということで、ちょっと長めの小説を読んでいました。読了したのは、綾辻行人の「Another」(ハードカバー677頁)です。


コンキチはミステリ好きで、結構ミステリ小説を読んでいます。お気に入りの作家は、(多分)オーソドックスで、ドイル、ルブラン(これは冒険小説)、クリスティー、乱歩、正史。最近(存命)の作家では、有栖川有栖とこの本の著者である綾辻行人です。綾辻行人といえば、「館シリーズ」と「囁きシリーズ」が有名で(一応、コンキチは両シリーズはコンプリートした)、新本格のビッグネームです。で、そんな綾辻氏の久々の新作が本書「Another」なわけです。

で、感想です↓
本の帯には、「ホラーと本格ミステリの融合」なんていうことが書かれていますが、はっきり言って99%ホラーとコンキチは感じました。なので、本書の中に「本格」を期待しすぎると、軽くガッカリするかもしれません。が、だからといって本書が期待はずれの駄作であるはけではありません。ミステリの要素は限りなく薄いけれど、面白さはなかなかのものと思いました。また、ミステリもホラーも、ヒントを読者の盲点にちりばめ、小出しにして、作品への興味を掻き立てるという意味では酷似していて、綾辻行人の面目躍如という作品に仕上がっていると思います。
あと、血の滴垂る描写、甘い思春期の心の揺動、偶像との決別といったものが、「館シリーズ」と「囁きシリーズ」では見られなかった、軽快で爽やかな筆致で描かれているんですが、それが何とも言えないバランスを保持し、読書の好奇心を刺激し、物語の先へと急がせているように感じました(677頁というヴォリュームを感じさせません)。
それから、ちょっとネタバレになるかもしれないけど、本作品の系統は、綾辻氏のデビュー作「十角館の殺人」や筒井康隆の「ロートレック荘事件」系の、いわゆる映像化できない系の作品に分類されると思います。なので、読後にもう一度読み返してみると、作者のダマシのテクニックがどのうに発揮されているかチェックすることができて二度楽しめるかもしれません。
少なくともコンキチは、本書が1,997 JPYを投資し、かつ677頁を読破するために時間を費やすに足る作品と思います。(正月番組見るより1万倍は有益)

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