2013年5月26日日曜日

組織のカルチャーという呪縛

つくば CRAFTBEER FESTに行って、腹一杯クラフトビールを吞んできたコンキチです。とっても満喫できましたよ。

メモ↓

-Awa Beer Dark Ale 安房麦酒 ダークエール-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
チョコレートとミソ様のパワフルな香味。とてもよくroastされている。sweet, creamy, bitter。濃密でとても旨い漆黒のビール。
http://beer.awa.or.jp

-LOCO BEER Steam ロコビア スチーム-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
みそ汁っぽい香りが少々。爽やかな甘さ。とってもfruity。しっかりいたボディで、くどすぎず、さっぱりした味わい。そして、ほどよい苦み。middleに重厚さがあって、finishはさっぱり。クリスタル麦芽を使用。温度上昇に伴って、みそ汁臭が強くなる→チョコレート、ミソ様、かつfruityな香りへと変容する。
http://www.shimor.com

-BrewPub PANGAEA Smoky Smoky-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
スッゴクfruityな香り。上品で濃厚で素敵な甘さがあってエキゾチックな果実香がする。その蠱惑的な香りはいつまでも嗅ぎ続けたいと思う。そして、味わいも凄く、とても玄妙。honey様で素敵なfruityさ、sourness、bitter。キレもある。濃蜜でいてはかない不思議な果実の味。まさに美しき毒と形容してもいいかもと思うビールに仕上がっている。温度上昇に伴い、香り高いfruity香、バナナ様の香りがup↑
http://pangaea-senzoku.seesaa.net

-Cateau Kamiya Rye Beer シャトーカミヤ ライ麦ビール-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
とっても香り高いバナナ様の香り。spicyでとっても香り高いfruityさ。それでいて締まった味わい。spicyでcreamyで気高いfruityな香味を発するこのスペクタクルな味わいのビールは、今まで吞んだビールの中で、トップ10に入ることは間違いない。ライ麦麦芽、小麦麦芽を使用し、ヴァイツェン酵母で醸したビール。
http://www.ch-kamiya.jp


やっぱビールの醍醐味っていったら、クラフトビールだよね。国産大手の淡色ラガーでは絶対に味わうことのできない恍惚の景色がそこにはありますよ。
(次回開催時は、COEDO一色を考えてる)


閑話休題


また原子力関連の不祥事が起こりましたね
東海村の日本原子力研究開発機構ですか。

今回の事故は大したことないようですが、2011年の福島第一原子力発電所炉心溶融・水素爆発事故(レベル7)以降、原子力関連事業に対する世間の目は厳しくなり、よりいっそうの慎重な取り扱いと対応が求められている中にあって、この体たらくはどうしたものかといささか暗澹たる気持にさせられます。率直に言って、こんな不誠実な人間が原子力産業に関わってるっていうことが恐ろしいです。

まあ、百歩譲って事故を起こしちゃったのは良しとしましょう。人間だもの、誰しも間違いはあります。しかしながら、報告の遅延(=問題発生後の対処、後処理のまずさ)だけはどうしてもいただけません。あの事故以来、東電のグダグダな対応が批判にさらされているのにも関わらす、学習能力がないのでしょうか?

でも、今回の施設って研究施設でしょ?賢き研究者の方々のオツムはそんなに悪いのでしょうか?

ところで、国内原子力関連施設における事故・不祥事は相当あるようですね。Wikipediaで「原子力事故」で調べるとにこれくらい出てきます(細かいトラブルはもっとあるのでしょう)↓

1973年3月 関西電力美浜発電所燃料棒破損(内部告発により発覚)
1974年9月1日 原子力船「むつ」の放射線漏れ事故(遮蔽リングの設計ミス)
1978年11月2日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故(日本初の臨界事故。事故発生から  29年後の2007年3月22日に発覚。この情報は発電所内でも共有されず、同発電所でもその後繰り返され、他の原発でも(合計少なくとも6件)繰り返される)
1989年1月1日 東京電力福島第二原子力発電所3号機事故(レベル2)
1990年9月9日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故(レベル2)
1991年2月9日 関西電力美浜発電所2号機事故(レベル2)
1991年4月4日 中部電力浜岡原子力発電所3号機事故(レベル2)
1995年12月8日 動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故(レベル1)
1997年3月11日 動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設アスファルト固化施設火災爆発事故(レベル3)
1998年2月22日 東京電力福島第一原子力発電所(第4号機の定期検査中、137本の制御棒のうちの34本が50分間、全体の25分の1(1ノッチ約15cm)抜けた。)
1999年6月18日 北陸電力志賀原子力発電所1号機事故(2007年3月公表, レベル1-3)
1999年9月30日 東海村JCO核燃料加工施設臨界事故(レベル4)
2004年8月9日 関西電力美浜発電所3号機2次系配管破損事故(レベル0+)
2007年7月16日 新潟県中越沖地震に伴う東京電力柏崎刈羽原子力発電所での一連の事故(レベル0-)
2010年6月17日 東京電力福島第一原子力発電所2号炉緊急自動停止
2011年3月11日 福島第一原子力発電所炉心溶融・水素爆発事故(レベル7)

慎重な対応が求められる事業で、絶対安全とか謳ってる割に事故起こしまくりじゃない?しかも、隠蔽できそうなのは隠蔽しようとしてね?もうこれって、所謂「原子力村」のカルチャーの問題だよね。

若い頃に企業風土変革に関する本を何冊か読んだけど、それで悟ったのは、はっきり言って企業風土(組織のカルチャー)を変えるのは並大抵の努力ではままならないっていうこと。トップダウンとボトムアップのシナジーを高いレベルで実現させなければ、カルチャーの変革は無理と思ったことを記憶しています(see http://researcher-station.blogspot.jp/2006/11/2.html)。

もう、そこまでいくと、ある意味宗教がかってないと無理ですよ(例えば、トヨタとか)。しかも、トップのコミットメントがまず第一に必要で、それがなければ原理的に絶対組織の風土なんて変わりっこないです。

ところで、不祥事の隠蔽は「原子力村」に限ったことではありません。おそらく上場企業、官公庁でも日常茶飯事のところは有りそうだし、地方零細企業レベルではサービス残業当たり前の労働法を無視した会社はたくさんありそうです(ちなみに、オレの母親はサービス残業当たり前派)。要は、人ごとではないと思うんですよね。そんな中で、個人としていかに自分の身を守っていくかということは重要な課題だと改めて思う今日この頃の二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。

とりあえず、必要最低限の労働法の知識を身につけておくべきでしょう。

2013年5月19日日曜日

"Practical"なのか?

先日、東武動物公園に行ったときに撮影した大王ペンギンの遊泳シーンです↓


ホント、気持良さそうに泳ぐよね、ヤツらは。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Practical and Efficient Large-Scale Preparation of Dimethyldioxirane
Org. Process Res. Dev., 2013, 17, 313-316.


ボクは使ったことないけど、Dimethyldioxirane (DMDO)っていう試薬があります。


DMDOは酸や塩基に不安定な基質や加水分解を受け易い基質の酸化に有効な試薬のようです。炭酸水素ナトリウム存在下、アセトンにオキソンを作用させることで調製できますが、その精製・保存は面倒です。やんわり減圧で蒸留し、ドライアイスでトラップして-25℃で保存します(Org. Synth., 1998, Coll. Vol. 9, 288.)。

で、本報は生成したDMDOを、400 mbar、-40℃のコンデンサー二基でトラップするというインプルーブメントです。

また、著者らはDMDO (60-80 mM)を-20℃で保存している間の活性の経時変化を明らかにしています→http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/op300338q
(72 mMの初期濃度が徐々の失活して行き、12ヶ月後にはおよそ40 mM程度になり、そこから濃度は安定し、23ヶ月後でも38 mM)。

DMDOの安定性をより具体的に明らかにした仕事は地味で泥臭いながらもGoog Job!と思うけど、はっきり言ってそれほど"Practical"とは思えませんでした。

著者らは"commercially viable preparation"を謳っており、その意味では"Practical"なのかもしれないけど、ボク的には「超絶面倒くさい」のが「超面倒くさい」方法に改善されたっていう印象です。少なくとも、ボクはラボベースではやる気にならないし、cryogenic conditionが幾分緩和されていますが、はっきり言って-40℃の冷媒流せるコンデンサーって相当ハードル高いと思うんですけど.....orz(今は安くて簡単に導入できるの?)

ところで、"Practical"なオペレーションといえば、"in situ" methodが思い浮かびます。で、軽くサーチしてみると、DMDOをin situ preparationして反応に処すっていう方法がやっぱり報告されてますが、当然、基質や生成物が酸にセンシティブな場合は適応できないです(e-EROS, 但し、酸に安定なものならin situ法が推奨されている)。

ところで、共酸化剤にオキソンを使って、系内でIBXの"S"アナローグを触媒的に発生させる酸化法があります(http://researcher-station.blogspot.jp/2012/01/i.html)。
この反応は、反応の進行とともに水が生成するので、スタンダードな条件では酸に不安定な基質に対しては適応できないと思われますが、Na2SO4を共存させることで酸に不安定な基質にも適応可能となります。

素人考えだけど、DMDOによる酸化も、同様なストラテジー(例えば、加熱が必要になるかもしれないけど水を使わないとか)でインプルーブメントできないのかなと思う二流大出の研究補助員(テクニシャン)でした。


2013年5月14日火曜日

MPV還元を極めろ

ヨドバシアキバの光麺に行ってきたので、そのメモをします↓

-熟成光麺 (730 JPY) memo-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
麺は中くらいの太さで軽くウェーブしている。弾力に富み、プッツリと切れる。芯が中心に僅かに残っている感触で、歯切れが心地よい。スープはしっかりした粘度を感じる濃厚クリーミーな豚骨醤油。臭みは殆どなく、上品な仕上がり。麺とスープの相性も良い。具は、焼豚、メンマ、ネギ、味付玉子。味付玉子以外は具が貧弱な感じ。
食べ進むうちに単調な感じになる。ファーストインプレッションは。トータルの完成度は★★★☆☆。ボクは同じフロアにあるCHABUTONの方が好きだな。


閑話休題


こんな論文を読んでみました↓

Al(OtBu)3 as an Effective Catalyst for the Enhancement of Meerwein–Ponndorf–Verley (MPV) Reductions
Org. Process Res. Dev., 2012, 16, 1301-1306.

Meerwein-Ponndorf-Verley (MPV)還元の話です。

MPV還元において、最も一般的に使用される試薬はAl(OiPr)3ですが、通常、配位子交換は遅くAl(OiPr)3をたくさん使う必要があるそうです。

ということで、そういった問題点を改善する試みがなされていて、これまでに、二座配位アルミニウム試薬 (Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 2347-2349.)やアルキルボラン試薬(Bull. Korean Chem., 2002, 23, 1051.; J. Org. Chem., 1985, 50, 5446.)、ランタノイド試薬 (Eur. J. Org, Chem., 2004, 2863.; Tetrahedron Lett., 1991, 32, 2355.; J. Org. Chem., 1984, 49, 2045.)といったインプルーブメントが報告されています(あと、総説→Org. Process Res. Dev., 2006, 10, 1032-1053.)。

著者らは、HIVプロテアーゼインヒビターの重要中間体である(S)-CMK (N-(tert-butyloxycarbonyl)-(3S)-3-amino-1-chloro-4-phenyl-2-butanone)のMPV還元のインプルーブメントを図っていて、Al(OiPr)3の代替試薬としてAl(OtBu)3に着目しました。((S)-CMKのMPV還元はAl(OiPr)3を用いて企業化されている。U.S. Patent 6,867,311 B2, 2005.)

TFA-Al(OtBu)3という系で反応速度をUP↑させるという報告がありますが(TFAが配位子交換を触媒すると推測される)、この方法ではアルドール縮合を抑制できないそうです(J. Org. Chem., 1977, 42, 826.)。

で、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、(S)-CMKに対してMPV還元を試してみたところ、Al(OiPr)3に較べてAl(OtBu)3で劇的な反応速度の向上が確認されました。ちなみに、(S)-CMKはジアステレオ選択的の還元され、どっちを使っても(SS)/(S, R)=99.4/0.6。
(反応条件→Al(OR)3: 50 mol%, Solvent: 2-PrOH, Starting material concentrations: 0.166 M, Temp.: 40 or 50˚C)

さらに(S)-CMKの還元においては、Al(OtBu)3の添加量を5 mol%まで減らしても高効率で還元が進行することが分かりました。

そこで、なぜAl(OiPr)3とAl(OtBu)3で効率に劇的な差が出るのかについて、著者らはその会合状態の違いにより説明しています。

Fig.   Structure of the dimeric Al(OtBu)3 and tetrameric Al(OiPr)3 
(Exchangeable ligands are shown in blue)

ベンゼン中、Al(OiPr)3は四量体、Al(OtBu)3は二量体として存在することが知られていて(J. Am Chem. Soc., 1963, 85, 2318.)、2-PrOH中でも会合状態が同様であれば、Al(OiPr)3の六価のAl中心は配位に関与できず、架橋イソプロポキシユニットの立体障害により、tBuOの方がリガンド交換し易いと思われます(架橋アルコキシ基はリガンド交換し難い)。

古典的な反応でも、突き詰めれば改善(イノベーション)の余地はあると言うことを教えてくれた論文と思いました。


2013年5月12日日曜日

Organocatalystの名はピリジン

昨年、コンキチの愛読書「ラーメン発見伝」に原作協力している石神秀幸とラーメン花月嵐がコラボレーションしてできたラーメンを食べたので、メモします(http://www.k2-museum.jp/limited/103_yakuzen_03.html)↓

-薬膳火鍋ラーメン天地  (750 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
ほぼストレートの細麺は、ぷっつり歯切れが良い。スープはスパイシーでクミン様の香りにするスッキリ系のカレー風あっさりスープ。麺のスープはあまり絡まないが、そのため麺を啜ったときに薄味ヘルシー感が演出されているような気もするが、少し物足りない。具は白菜、豚バラ、ネギ、ニラ、クコの実、袋ダケ、キクラゲ、ゴマなど。ニューウェーブ系の洗練された味のラーメンと思いました。スープの素材は龍眼、朝鮮人参、クミン、クローブ、大棗、田七人参、カルダモン、花山椒だとか。


-薬膳火鍋ラーメン天紅  (750 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
「天地」に辣油や唐辛子系スパイスを加えてピリ辛風味にしたラーメン。カレー系にスパイシーさと、唐辛子系のスパイしーさのダブル•スパイシー感は秀逸。天地の物足りなさを上手くカバーしていると思う。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Pyridine Is an Organocatalyst for the Reductive Ozonolysis of Alkenes
Org. Lett., 2012, 14, 2242-2245.


(ボクはまだ一度もやったことないけど)還元的オゾン分解の話です。オゾニドが発熱して自己加速分解する傾向があることに加えて、ジメチルスルフィドにようなマイルドな還元剤との反応は遅くて、深刻な事故が発生する可能性があるようです(イントロに書いてあったけど、そうなんだ)。

(ところで、教科書的な還元的処理は、接触還元、NaI, Mg, Znなどの金属と酸、亜リン酸エステル、Ph3P、ジメチルスルフィド、BH3、LAH、SO2、NaHSO3、SnCl4、FeSO4があり、最もよく使われるのは亜鉛末/酢酸と実験化学講座とかに書いてあったような気がします。)

で、オゾン分解-還元とステップワイズな手法に代わって、in situでカルボニル・オキシドを捕捉して分解しちゃうプロセスって魅力的らしいです(まあ、安全だよね)。

っていうことで、最近報告された著者らのin situメソッドには、カルボニル・オキシドをアミンのN-オキシドや水でトラップするという方法がありますが、塩基性条件であったり、過酸化水素が副生するといったちょっと面倒な問題が生じたりしたそうです。

Org. Lett., 2006, 8, 3199-3201.; Tetrahedron, 2006, 62, 10747-10752.
N-methylmorpholine N-oxide (3 eq.くらい)が良さげ。
CH2Cl2中0℃というマイルドな反応条件。


J.Org. Chem., 2008, 73, 4688-4690.; J. Org. Chem., 2007, 72, 3558-3560.
安定なオゾニドを形成する基質には効かない。
重合生成物が副生する場合がある。

で、This Workですが↓

10 examples, 70-93% yield

ピリジンの添加は1-3 eq.必要で、CH2Cl2中、-78℃で効率的にピリジンがカルボニルオキシドを捕捉します。3-nitropyridine、DMAP、2,6-lutidine、2,6-di-tert-butylpyridine、thiophene、imidazole、1-methylimidazoleも試していますが、ピリジンがベスト。また、実験事実を検証することで上記推定反応機構を提案しています。

また、6つの基質に対して一般的な2 steps procedure (O3, CH2Cl2, -78˚C; Ph3P, 24 h)とピリジン法 (O3, 2-3 eq. of pyridine)の比較を行っていて、おしなべてピリジン法の方が高収率です。

著者らは、このオゾン分解の新手法を

First, General, High-yielding

と謳っていますが、実際、ピリジンを加えて反応するだけで、オゾン分解の安全性と効率がグッと改善されるなんてとっても素敵な反応と思いました。

著者らの一連のオゾン分解に関する研究結果は、こころに留めておいて損は無いと思った二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。