2020年2月11日火曜日

This is "C1 Synthon" (2)

増税前に大好きな神田で鮟鱇を食べたときのメモです↓

-いせ源 memo-

住所:千代田区神田須田町1丁目11番地1
https://isegen.com

-キリン<中瓶> (700 JPY)-
ラガーです。

-煮こごり (800 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
とっても上品な味で、滋味深い。絶妙の食感で、最後まで優しいプルプルした感触を楽しめる。あんこうの卵巣を特製の出汁で煮固めたもの。鮟鱇の卵巣は少しコリコリしていて、口の中が気持ち良くなる口当たりで、とても楽しい。究極の煮こごりかも。
薬味には生姜の千切りが添えられます。

-唐揚げ (1,100 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
勿論、鮟鱇の唐揚げで、骨付きと骨抜きを選べます。片栗粉で揚げてるけど、唐揚げって書いてあります。
まず、油の良い香りが食欲をそそります。鮟鱇の白身の淡白な味が怒涛の如く押し寄せてきて、迫力満点の食べ応えで、物凄くファンタスティック!裂けるチーズ並みにふわっふわで、もちもち。文句なく旨いです。

-あんこう鍋 (3,500 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
甘いお出汁で、鮟鱇は複数部位が入っている。お店のお姉さんから「色が染みてきたら食べ頃」と教えてもらいました。鮟鱇の身は鱈様の淡白でサクサクした部分と、ゼラチン質リッチな部分、ボディー強めの淡白でサクサク感少なめな部分が入っている、それから、あん肝がフワフワで美味しかった。
その他(鮟鱇以外)の具は、豆腐(木綿)、ウド、銀杏、椎茸、水菜、しらたき。お豆腐と椎茸がジューシーで美味。
あと、けっこう柚子のフレーバーが強いです。

-おじや (600 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
あんこう鍋のオプション商品で、鍋の具を全て平らげたら作ってもらえます。終始、全てお店のお姉さんが作ってくれて、お客が手を出そうものなら怒られます。
鍋に投入するご飯は硬めで、はじめは弱火でほぐします。次いで強火で煮立て、溶き卵を加えたらあまりムキになって掻き回さない。最後に刻み葱を加えてフィニッシュです。
卵の柔らかな絡み方が絶妙。
どうでもいいけど、お出汁リッチで滅茶苦茶旨いです。これこそメインディシュです。

-菊正宗 (650 JPY)-
定番です。


閑話休題


またC1シントンのお話で、カルボニルジカチオン等価体のお話です。

Sodium Methyl Carbonate as  an Effective C1 Synthon. Synthesis of Carboxylic Acids, Benzophenones, and Unsymmetrical Ketones
Org. Lett., 2019, 21, 3882-3885.

合成のお題は、非対称ケトンと対称ケトンの合成に加えて、カルボン酸の合成も含みます。

さて、"カルボニルジカチオン(CO++)C1シントン"に関する前フリですが、教科書的な等価体としては、ホスゲン、トリホスゲン、CDI、ジアルキルホルムアミドなどが挙げられ、何も有機金属化合物との反応による対称ケトンの合成に有用です。翻って、非対称ケトンのワンポット合成には向いていません。これをブレークスルーしたのがSarpong等の開発したCLAmP (N,O-dimethylhydroxylamine pyrrole, see http://researcher-station.blogspot.com/2020/02/this-is-c1-synthon.html)です。


CLAmPは基質一般性に優れ、けっこうイケてる性能を有しているのですが、その調製には二段階を要し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製(二段階目)が必要である点に改善の余地があると指摘しています。

Org. Lett., 2010, 12, 4572-4575.;
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 9839-9843.

ということで、著者等はCLAmPよりもカックイイ試薬を探求し、着目したのがmetal alkyl carbonateです。

metal alkyl carbonateは室温下で安定な固体であり安価です。対応する金属アルコキシドのアルコール溶液と二酸化炭素(pellets or gas)と反応させ、生じた固体をろ過るだけで簡単に調製することができます。
J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 20701.;
J. Org. Chem., 1990, 55, 2246.

適切なカウンターイオン(Li, Na, K, Mg)とアルコール溶媒(primary, secondary, tertiary)を選ぶことで、電子的、立体的性質をコントロールすることが可能で、利用例にはこんなものが報告されています↓
Anorg. Allg. Chem., 1985, 521, 1345.; Green Process. Synth., 2015, 4, 91.;
J. Org. Chem., 1993, 58, 3938.; J. Am. Chem. Soc., 1959, 81, 505,;
Synthesis, 2014, 46, 1881.

そして、metal alkyl carbonateを、より具体的にはSodium Methyl Carbonate (SMC)を利用して著者等が開発した反応がこちら↓

This work

SMCはHCO2+またはCO++シントンとして働きます。

Grignard試薬との反応で、SMCはCO2の代理として働いてカルボン酸を与えます(temp. = rt.)。満足いく収率を得るためには、Grignard試薬に対してSMCを2 eq.使用します。因みに、SMCを1.2 eq.に減らすと収率がかなえい低下します。

そして、ちょっと面白いのが有機リチウム試薬との反応↓


当たり前って言えば当たり前かもだけど、より反応性の高い有機リチウム試薬だと付加反応が一個では止まらず、二個入った対称ケトンが生成します。
因みに、PhLiとCO2との反応では安息香酸が唯一の生成物として得られるそうで、対称ケトンのみが生成するという今回の結果は予期せぬものだったと言います。

ハイ、ここでGrignard試薬と有機リチウム試薬のオルトゴナル性が見出せました。この性質を利用してワンポットでの非対称ケトン合成の可能性が出てきました。それを試した結果がこちら↓

収率は中程度以下といったところでしょうか。
ちなみに、ボクの脆弱な検索結果によると、SMC (Sodium Methyl Carbonate)はマニアックなメーカーからしか市販されていいないようです(需要がないのかな?)。

ところで、やっぱCLAmPとSMCとのC1シントン対決が気になります。でも、全く同じ基質で試してる例が一つもないんですよね。CLAmPを使った非対称ケトン合成は実施例も多く、収率は中〜高収率です。本論文はCLAmPの論文を引用してるんだから収率比較をしてるはずで、それが記載されてないってことは、穿った見方をすると、収率では敵わないんだろうと思います(多分)。それでも、試薬の組み合わせに特徴があって、

CLAmPは、1st nucleophileが有機リチウム試薬で、2nd nucleophileが有機リチウム試薬かGrignard試薬の組み合わせ。

SMCは、1st nucleophileがGrignard試薬で、2nd nucleophileが有機リチウム試薬の組み合わせ。

といった具合になります。試薬の入手(調製)容易性によって、相互補完的な使い分けができるんじゃないかと思います。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の"C1シントン"メモでした。


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