2020年2月11日火曜日

This is "C1 Synthon"

ずいぶん前(当然、増税前)に上野駅の駅ナカに入ってるお寿司屋さんに行ったときのメモです↓


-築地魚河岸まぐろ一代 上野店 memo-
住所:台東区上野7-1-1 エキュート上野 3F

-まぐろ赤身 (210 JPY+tax)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
全体的に白っぽい色。ネタは軟らかすぎるくらい軟らかくて、大分脂っぽい。脂くさいとまでは言わないけれど、ちょっと赤身とは言えないんじゃないかと思うくらい脂っぽい。
トータルでそう悪い味ではないと思うけど、これを赤身と言われるとがっかりする。

-小肌 (170 JPY+tax)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
見た目から身が硬そうに見えるんだけど、実際に少し身が硬く、お酢の酸味がちょっとキツい。それでいて、小肌特有の嫌な魚臭さが出ている。嫌な皮に硬さも感じるし、ちょっと生臭い。

-〆鯖 (170 JPY+tax)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
こちらも小肌同様見た目からして硬そうな身。実際、少し硬いし。皮の硬さが大分気になったのに加えて生臭い。それでいて酸味はちょっとキツめ。

シャリは軽く柔らかめで、ちょっと甘めか?(悪くはないと思う)

あと、他のお客さんの注文したのを観察してて気づいたんだけど、「セット握り」と較べて「1カンにぎり」はシャリの量がおよそ半分程度なのね。

値段と味を勘案すると、相当コスパの悪いお店と思いました。
結構渋めのこめんとしましたが、現在の食べログの評価は3.40なので、凄く改善されたんだと思います(see https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13120484/)。


閑話休題


少し古いんですが、こんな文献を読んでみました↓

One-pot Unsymmetrical Ketone Synthesis Employing a Pyrrole-Bearing Formal Carbonyl Dication Linchpin Reagent
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 9839-9843.

C1シントンのお話です。そして、非対称ケトン合成のお話です。
この文献は佐藤健太郎さんがブログで紹介されてますが、ボクもここにメモします、

さてこれまでのメモでも、CO等価体とか、CDIとヨードメタンのコンボなどの"C1シントン"のはなしをメモしてきました(他にもメモしたかもだけど、忘れました)。

参考までに、過去のC1シントンのメモはこちら↓

A) CO等価体
 (i) CO等価体がサンプルワークを変える (1)
     →https://researcher-station.blogspot.com/2015/05/co-1_10.html
 (ii) CO等価体がサンプルワークを変える (2)
     →https://researcher-station.blogspot.com/2015/05/co-2.html
 (iii) CO等価体がサンプルワークを変える (3)
     →https://researcher-station.blogspot.com/2015/05/co-3.html
 (iv) CO等価体がサンプルワークを変える (4)
     →https://researcher-station.blogspot.com/2015/06/co-4.html
 (v) CO等価体がサンプルワークを変える Extra Operation
     →https://researcher-station.blogspot.com/2015/08/co-extra-operation.html


B) Iodomethane Power Make-Up! (CDIとヨードメタンのコンボ)
https://researcher-station.blogspot.com/2018/02/iodomethane-power-make-up.html


C) 鈴木カップリングでベンジルアルコールつくってみました!(エーザイ)
→ https://researcher-station.blogspot.com/2019/08/blog-post.html


今回はこれらとは趣を異にする"C1シントン"で、非対称ケトンを合成するお話で、主役の化合物はこちら↓

carbonyl linchpin N,O-dimethylhydroxylamine pyrrole
N‐Methoxy‐N‐methyl‐1H‐pyrrole‐1‐carboxamide
Heller‐Sarpong Reagent

ケトンを合成する際、カルボニルジカチオン、カルボニルジアニオン、カルベンの三つのシントンが考えられます。そして、三種類のシントンのうち、カベンとカルボニルジアニオンについてはワンポット合成での非対称ケトン合成の成功例があります↓

ref. Chem. Sci. Rev., 2011, 40, 4986-5009.; Tetrahedron Lett., 1985, 26, 3595-3598.

ref. J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 14435-14445.; Tetrahedron, 2003, 59, 6147-6212.; 
Acc. Chem. Res., 1998, 31, 35-46.

しかしながら、カルボニルジカチオン等価体を用いたワンポット合成は基質一般性が非常に狭い方法しかありませんでした。そこで、カルボニルジカチオン等価体をつかった汎用性の高い非対称ケトンをワンポットで合成する方法を開発したったぜというのが本報です。

CLAmPが非対称ケトン合成に有効である理由は次の通りです。

(1) CLAmPと最初の求核剤(有機金属試薬)が反応して四面体中間体を形成する(N-アシルピロールは有機リチウム試薬やGrignard試薬との反応で、安定な四面体中間体を形成することがEvansらによって示されている)。
(2) この四面体中間体は-78˚Cでそれなりに安定で二分子目の求核攻撃を受けない。
(3) 室温まで昇温すると四面体中間体が壊れ(ピロールが脱離)、Weinrebアミドが生成する。
(4) Weinrebアミドが二つ目の求核剤と反応して非対称ケトンを与える。

既に、Reich、Hlasta、Leeがこのようなコンセプトの試薬を開発していますが、著者らの開発したCLAmPはそれらを大幅に上回る有用性があります。


例えば、

対称ウレア1は、比較的高温でないとGrignard試薬や有機リチウム試薬と反応せず、条件をきつくしても脱離が進行しない(四面体中間体が崩壊しない)ため、ワンポットでの非対称ケトン合成はできません。

非対称ウレア2は、有機リチウム試薬としか反応しないことに加えて、N,N-ジメチルアミドとWeinrebアミドの1:1混合物を与えます。N,N-ジメチルアミドの求電子性が低いので、n-BuLiのような最も強力なリチウム試薬としか反応しません。

カルバメート3は、有機リチウム試薬との反応では選択性がでないようです。


それでは、今回のメモの主役であるCLAmPの特性をフィーチャーしていきましょう。
著者らはいきなり非対称ケトン合成ではなく、Weinrebアミド合成から検討をはじめています。

非対称ウレア2やカルバメート3とは違って、そこそこいい感じでWeinrebアミドを取得できます。

そして、いよいよ非対称ケトンの合成です。


有機金属試薬に種類(有機リチウム試薬かGrignard試薬か)と、加える順番を検討した結果、

a) 最初の求核剤(R1M)にはArLiを使うのが良い (entries 1 vs. 2, 3 vs. 4)。
b) 二番目の求核剤(R2M)はあまり収率に影響しないが、リチウム試薬の方が幾分好感触(entries 1 vs. 4, 2 vs. 3)。
c) R1M, R2Mの両方ともGrignard試薬を使ってもけっこうイケイケ (entry 6)。
d) sp2混成のGrignard試薬を最初の求核剤に使うと、選択性が乏しい(Grignard試薬を用いたときの反応温度域(0˚C to rt.)で、四面体中間体が十分に安定でないのかも)。
e) R1MにGrignard試薬を使った後、R2Mにリチウム試薬を使うと、収率がダメダメ (entry 5)。アート錯体形成とか塩効果とかの影響かも。

という感じでなんとなく反応の特性が分かってきたところで、非対称ケトン合成に係る基質一般性はこちら↓

さらに4成分カップリングの例↓

続きまして、テレスコープ合成を利用した天然物合成の例↓

なかなか使えそうな反応じゃね?
カルボン酸誘導体からじゃなくて、ハライドからWeinrebアミドを誘導できるのも良いと思います。

因みにCLAmPはアルドから市販されています。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の"C1シントン"メモでした。


2 件のコメント:

  1. Reich、Hlasta、Leeが開発した試薬の構造式に窒素が抜けていますよ

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  2. あずさん、どうもです。
    修正しました。
    気持ちいいほど抜け落ちていて、我ながらヤヴァイと思いました。

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