とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, March 3, 2013

脱水縮合をマイルドに触媒化せよ

あの喜多喜久氏の4作目の単行本「美少女教授・桐島統子の事件研究録」を読了しました。ケミストリー三部作(「ラブ・ケミストリー」、「猫色ケミストリー」、「ラブ・リプレイ」)に続く本作のテーマはズバリ生物学(舞台も東大から移動)。

主人公は完全免疫を持つ男にして、ワトソン役の芝村拓也(東京科学大学1年)。探偵役は日本人女性初のノーベル賞受賞者にして、若返り病によって若返り美少女教授となった桐島統子教授(88歳)。この二人が学内でつくられた有害ウィルス退治に挑みます。ライトなタッチのミステリで、お題は「犯人当て」です。それにつけてもキャンパス(大学)モノは、大人の階段昇ってるかんじの甘酸っぱいニュアンスが一杯で、胸が切なくなるね。
18歳くらいの肉体に若返った桐島先生って、体臭が桃とミルクのいい匂いがするっていう設定んんだけど、これオタクチックで相当ヤバいね(っていって、この小説を嬉々として読んでるオレも相当オタッキー入ってると思いました)。あと、本作に登場する美人院生の斉藤さんがビッチ過ぎで哀しくなりました。


閑話休題


昨年、こんな文献を読んでみました↓

Direct Amidation of Carboxylic Acids Catalyzed by ortho-Iodo Arylboronic Acids: Catalyst Optimization, Scope, and Preliminary Mechanistic Study Supporting a Peculiar Halogen Acceleration Effect
J. Org. Chem. 2012, 77, 8386-8400.



カルボン酸とアミンを触媒的に脱水縮合させるというお話です。しかも、室温で(これは凄い!)。

通常、カルボン酸とアミンのダイレクトカップリングは、化学両論量の縮合剤を使用するのが常と思いますが、試薬はそこそこ高いし、バイプロ(縮合剤のカスなど)が邪魔で、プロセスの完成度は高いとは言い難いと思います。なので、触媒的かつマイルド・コンディションの反応っていうのはかなり価値が高いです。

しかも、この反応で使っているボロン酸触媒はリサイクル可能と好感触。あと、当然だけど副生成物は水だけです。ただ、基質1 mmolあたり2 gのMS 4Aを使わないといけないところが少し残念です。

ちなみに、アリールボロン酸を使った触媒的アミド化の過去の報告例はこちら↓

・>80℃ (Dean-Stark, reflux)


・rt.〜50℃, (4A molecular sieves)



で、著者らはさらなる高活性な触媒システムの構築を試みます。その結果↓


はじめは既報の触媒のハイブリッド触媒を試しますが、鳴かず飛ばずの結果だったので、電子供与性置換基を導入して様子をみて最適触媒に辿り着きました。

次に著者らは最適溶媒を検討します。で、良さげな溶媒はトルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼンで、それらの溶媒効果は同等っぽいのですが、その後の反応最適化はジクロロメタンで行われていきます。

(まあ、ラボ的にはジクロロメタンが使いやすいからなんでしょうが、"Green"や"プロセス"を謳って反応開発するならトルエンをチョイスして検討すべきと思います。)


あと、この触媒反応って乾燥剤がないと全然進行しないです。そしてモレキュラーシーブ以外の乾燥剤(CaCl2, MgSO4, Na2SO4, CaSO4, LiCl, CaH2, silica)だと収率は全て< 5%。モレキュラーシーブの中で一番良かったのが4Aという結果です。

で、面白いのは、モレキュラーシーブは脱水剤と貯水剤の二つの役割を果たすと(著者らが推測している)いうことです。
ボロン酸は脱水するとボロキシン(とかオリゴマー)になるので、ボロン酸とボロキシンのどっちが効いてるのかという話になります。そこで、著者らはその検証作業を行います。モレキュラーシーブ存在下で10 mol%のボロキシンを用いて行った反応は、ボロン酸を用いた場合と大差なく円滑に反応が進行する一方で、モレキュラーシーブなしで100 mol%のボロキシンを用いて反応を行うとno reactionという結果を得ます。
さらに輪をかけて面白いのが、CDCl3中、ボロシキンとモレキュラーシーブを室温で10分間反応さえると全てボロン酸になるという事実です。

この辺りの話は、たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-さんの記事が詳しいです 。
see → http://orgchemical.seesaa.net/article/302012879.html (それにつけても、ホント造詣が深いよね、このブログの筆者さんは)。

さらにこの反応で興味深いのは基質の使用量(モル比)と、加える順番が重要となることです。過剰のアミンは反応を劇的のスローダウンさせるので、カルボン酸をちょっぴり多めに使うのがよいです。また、アミンを加える前に、モレキュラーシーブ存在下、カルボン酸とボロン酸触媒をあらかじめ数分間混ぜておくことがとても重要です。このことから、真の触媒活性種はアシルボレートであることが示唆されます↓



少なくともラボユースでは重宝するかもしれない反応と思いました(触媒が売ってれば)。ただ、芳香族アミンは不活性で、鎖状の二級アミンもダメっぽいのが残念です。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

 

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