とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Saturday, August 31, 2013

New Trifluoromethylation Reagent

あの有機合成化学者作家の喜多喜久氏の最新作「化学探偵Mr.キュリー」を読了しました。

で、率直な乾燥なんですが、

ガッカリです

本作は、探偵役の理学部化学化の准教授と、ワトソン役の大学庶務課の新人事務員が、学内を中心にして起こる不可思議な事件を解決していくミステリ短編集ですが、一ミステリファンとしてこの作品にミステリとしての重さが全く感じられないんですよね。っていうか、まずタイトルがあか抜けない。

そして、内容は「ガリレオ」と「ビブリオ古書堂の事件手帳」を足して二で割った出来の悪いイミテーションかと思いました。はっきり言って、化学(ケミストリー)ネタを無理矢理絡めようとしているとうふうにみえて極めて陳腐な内容と思いました。それから、第三話の「人体発火の秘密」は化学者のモラルを疑われかねない作品に仕上がっていると思います。

著者は、「今後の作家人生で、このシリーズだけを書くことになったとしても、何ら後悔しない(see http://www.chem-station.com/blog/2013/07/-mr725.html)」と述べていますが、悔い改めて欲しいと思いました。ボク的には、ケミストリー三部作(「ラブ・ケミストリー(http://researcher-station.blogspot.jp/2011/03/blog-post.html)」、「猫色ケミストリー(http://researcher-station.blogspot.jp/2012/05/2.html)」、「ラブ・リプレイ(http://researcher-station.blogspot.jp/2012/10/70.html)」)や、「美少女教授・桐島統子の事件研究録(http://researcher-station.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html)」のようなモラトリアム系サイエンスオタッキーをターゲットにしたサイエンス•ファンタジー•ミステリ(オレの上司曰く、少女マンガみたい)に作風を戻して欲しいと思いました。喜多氏の次回作に期待したいと思います。


閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Amidirate Salt of Hexafluoroacetone Hydrate for the Preparation of Fluorinated Compounds by the Release of Trifluoroacetate
Org. Lett., 2013, 15, 208-211.

カルボニル化合物への求核的トリフルオロメチル基付加反応につかう新しい試薬を開発したというお話です。

Fragmentation of Hexafluoroaceton Hydrate
J. Org. Chem., 1968, 33, 2100-2102.

著者らは上記Schemeで示されるトリフルオロアセテートの放出を伴う反応にインスパイアされて、次のような反応を開発してきました↓

J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 5802-5805.


trifluoroacetate-release olefination
J. Org. Chem., 2011, 76, 3676-3683.


J. Org. Chem., 2011, 76, 9163-9168.

でThis workですが、著者らは無水条件でCF3アニオンを出せれば、Hexafluoroacetone Hydrateのフラグメンテーションのプロセスが使えるんじゃないかと考え検討を進めていき、その目的に適した新たな試薬と、それを用いた反応を開発しました(水の存在下、CF3アニオンはCF3Hになるらしいです)↓

A New Trifluoromethylation Reagent : Hexafluoroacetone Hydrate Amidinate Salt



モデル化合物を使って決定した最適条件は、amidinate salt (1.2 eq.), tert-BuOK (4.4 eq.), n-Bu4NCl (4.4 eq.), DMF, -30˚C。反応例は、カルボニル化合物(アルデヒド、ケトン)で11 examples, 78-96% Yield。ジスルフィドでは、フェニルジスルフィドで73% Yieldです。

tert-BuOKにn-Bu4NClを作用させることで、カウンターイオンの交換が起こり、tert-BuOBu4とKClが生成すると考えられます(なんか固体が発生する)。

それから、この新amidinate salt の他の適用例としてこんな反応にも使えるぜとアピールしています↓


このトランスフォーメーションは、フルオロホルムのC-F活性化を経たリチウムエノレートのジフルオロメチル化がオリジナル(Mikami et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 9535-9538. 33-82 %)ですが、著者らが開発したamidinate saltを適用することで、系内で発生させたフルオロホルムをバブリングさせることで反応を進行させることができます(ハンドリングは大幅に向上ですね)。

ボク的にはトリフルオロメチル化って、人生でまだ一度も経験したことないんですが、このamidinate salt 試薬は使い勝手がかなり良さげと思いました。機会があったら是非使ってみたいと思った二流大出のテクニシャン(研究補助員)でした。


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