とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Wednesday, February 7, 2018

アルデヒドを取り除け!!!

ホントにたまにだけど、お昼のお弁当に食べている神田志乃多寿司のお稲荷さん(志乃多寿司)のメモです。

-太巻詰合せ (1,047 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
太巻×2、お稲荷×4、干瓢細巻×4の詰め合わせ。
控えめの酸味の酢はJuicyで、口の中での解け具合は良好。
稲荷は、油揚げが少しゴワゴワした食感で、穏やかに甘く、酢飯との調和具合が良い。
干瓢巻は、張りのある海苔の食感が楽しく、干瓢にコク深く甘い味が染み渡っている。
太巻の具が秀逸。胡瓜と蓮根のカリッコリッとした食感と玉子のフワッとした柔らかさと上品な味わい、それから干瓢と椎茸に深く染み込んだ滋味深い甘さにシナジーが素晴らしい。


神田志乃多寿司の営業時間は朝7:30から午後6時。朝の通勤途上で買うのに便利です。但し、火曜は定休日なので気をつけろ。それから、茶巾は9:30からです。


閑話休題


有機合成系ブログの各所(「ケムステ」さんや「たゆたえども沈まず」さん)で既に(とっくの昔に)取り上げられているけど、ボクも読んでみました、この文献を↓

Liquid-Liquid Extraction Protocol for the Removal of Aldehydes and Highly Reactive Ketones from Mixtures
Org. Process Res. Dev., 2017, 21, 1394-1403.

モデル化合物(エステル、アルコールとかいろいろ)とアルデヒドの等モル混合物からアルデヒドを効率的に取り除くっていうお話です。アルデヒドのbisulfite adductが概して水溶性であることを利用して、液-液抽出によりモデル化合物が溶解している有機相とアルデヒドのbisulfite adductが溶解している水相とを分離するという原理です。

アルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムとの付加体 (α-ヒドロキシスルホン酸ナトリウム)は、概して結晶性であり、アルデヒドの精製に利用できることが古くから知られています(bisulfite addutを結晶として取り出し、塩基などで処理して再生する)。もう20年近く前の話だけど、ボクは大学(院)を卒業して香料会社に就職したんだけど、香料化合物にアルデヒドはけっこう多いので、上司に速攻教えてもらいました。
あと、アルコールを酸化してアルデヒドにして、重亜硫酸ソーダ水溶液で酸化剤をクエンチして液-液抽出したら、アルデヒドがなくなっちゃったなんていう笑い話も聞いたこともあります(bisulfite adductとして水相におちてただけ)。
なので、こういった知見は多くのケミストに周知されていて、企業でもノウハウとして独自に蓄積されているんだろうと推察します。ただ、系統だったまとめは見たことがなかったので、細かいprocedureを提示してくれた本報はけっこう価値が高いと思います(本報でも、ラボでは主にアルデヒドの精製に使われ、ラボ以外ではアルデヒドの除去に多様されると書いてあります)。
それから、浅学で知らなかったんですが、反応性が高ければケトンも付加体を形成するんですね。勉強になります。

さて、標準的な手順はこちら↓

Step 1   精製したい化合物 (1.4 mmol)とアルデヒド (1.4 mmol)をMeOH (5 ml)に溶解する
Step 2   satu. NaHSO3 aq. (25 ml)を加え、30 secシェイク
Step 3   水 (25 ml)で希釈し、10% AcOEt in Hexane (25 ml)で抽出

対象となるアルデヒドや基質(アルデヒドと分離したい化合物)によっては、

a) 極性の低いアルデヒドや脂肪族アルデヒド→Step 1のMeOH (5 ml)をDMF (10 ml)にチェンジ。Step 3の中抽出回数を2回に増やすし、DMFを除くため水洗3回(25 ml, 10 ml, 5 ml)。
b) 電子リッチなオレフィン(cirtonellal, α-terpineol, α-pinene)を回収する場合は、電子リッチなオレフィンと反応するSO2の溶解度が小さいヘキサンを抽出溶媒に用いる

といったモディファイが必要となります。


このアルデヒド除去法が適用可能な基質(非アルデヒド=アルデヒドと分離したい化合物)として、エステル、カルボン酸、アミド、臭化アリール、tert-アルコール、ベンジルアルコール、フェノール、ニトリル、塩化ベンジル、エポキシド、アニリン、アセタールが適用可能です。逆に禁忌なのは、塩基性の高いアミンです(bisulfite ion (pKa 7.2)との酸塩基反応によるため)。

この手法でアルデヒドならおしなべて高効率で除去できます。
ケトンの場合は、除去率に大きな差がでて、そのSubstrate Scopeはこんな感じです↓



それでは、最後に二流大出の一テクニシャン(研究補助員)の生意気な感想で締めたいと思います。この論文は、広範な基質一般性を示している点については評価に値すると思うけど、少し素人臭さを感じるんですよね。こんなところが↓

A) プロセスの雑誌(Org. Process Res. Dev.)なのに、飽和の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を使っている。プロセスケミストは飽和溶液なんか絶対使わない。そもそも、基本的に飽和溶液を作るのはけっこう難しい。さらに、亜硫酸水素ナトリウムの飽和溶液の濃度は43-44%程度になると思うんだけど、猛烈に濃いよね。しかも、高濃度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液って凄く臭い(健康に悪そうな匂い)です。で、たった1.4 mmolのアルデヒドを取り除くのに飽和溶液を25 mlも使用しています。正直、魅力半減です。

B) 「分液操作だけでアルデヒドを取り除く」っていうと、いかにも簡便な感じがするけど、30秒間ずっと分液ロートを振ってるのはけっこうキツイから(この前、時計見ながらやってみた)。当然、処理量が増えればよりキツくなります。この論文の手法って、ラージスケールでより真価を発揮する感が高いので、"stirring (撹拌)"という操作に方が(プロセス的にも)好ましいと思います。はっきり言って、もっと低濃度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を使って数時間撹拌でもいいとボクは思います。

C) 実際の反応の後処理にこの除去法を使った例が欲しかった。


それから、最後の最後に一言↓

粉物の亜硫酸水素ナトリウムは、ピロ亜硫酸ナトリウムと(Na2S2O5)の混合物だから、気をつけろ!

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