2018年2月12日月曜日

遷移金属を捕獲せよ!

神田の"よなよなBEER KITCHEN"に行ったときのメモです。


-ハレの日仙人  Hare no Hi Sennin (730 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
バーレーワインタイプ。Alc. 8.5%。苦味度:68 IBU。色度:80 EBC (ブラウン)。
strawberry-like, ripe apple like, 杏様、sweet, etc.な複雑玄妙で魅惑的な香り。
fruityでrich, mellowなtaste。濃厚かつ良質なfortified wineのようなsweetなコク深い味わいに心を揺さぶられる。finishの心地よい渋みが心憎い。fruitが数年かけて熟成するとこういう味になるのかなっていう感じの香味と思いました。究極のビールの一つと思います。

-よなよなリアルエール Yona Yona Real Ale (830 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
アメリカンペールエール。Alc. 5.5%。苦味度:36.5 IBU。色度:24.5 EBC (カッパー)。
リアルエールなので常温に近い温度で提供される。提供時は泡が大分下がっていて、泡が上がるめで待ってから飲むように言われる。
泡がとってもcreamy。バナナを基調とした少しspicyな香り。tasteは紅茶を想起させる上品な味わいで、締まったスレンダーな甘さを感じる。温度上昇に伴って、香味の拡散性が劇的に高まる。ちょっとおいて、温度が少し上がるのを待ってから飲むのが良いと思う。

-元祖かぶらぎ豚 Pork Plain (650 JPY+tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
外はパリッと張りがあって、中はfreshな肉々しさ。普通に美味しい一品。



閑話休題



こんな文献を読んでみました↓

Dithiocarbamates: Reagents for the Removal of Transition Metals from Organic Reaction Media
Org. Process Res. Dev., 2015, 19, 1369-1373.

クロスカップリング反応に威力を発揮する遷移金属は、反応の触媒としてはとってもいいヤツですが、残留物としてはなんとも嫌なヤツです。特に、医薬品合成のレイト・ステージでパラジウムが触媒するクロスカップリングがあった暁には、残留パラジウムに神経を尖らせることになるのでしょう。

で、本報のお題は、ある種のジチオカルバメートが遷移金属除去にとっても効果的だというお話です。

さて、著者等がジチオカルバメートが遷移金属の除去に有効だということを見出した経緯を書きましょう。
発端は、(Bristol-Myers Squibbの)著者等のグループがHIV attachment inhibitorの中間体である3の合成研究です。反応終了後、オープンエアでEDTA洗浄することでCuの除去を試みました。EDTAで銅を除去するためには銅の酸化状態がCu2+でなければならず、スケールアップすると、Cuを望みの酸化状態にすることが難しくなりました。さらに、KOH, O2, Cuのコンビネーションによって4が副生するといいます。

要は、EDTA洗浄で効果的に銅を除去するためにはエアレーションして酸化状態をCu2+に揃えてやればいいと思うんだけど、そうするとKOH, O2, Cuの影響で副反応(4の副生)が促進するというわけです。なので、このシステムでは、低酸素濃度下でのCu除去が必須となります。

文献調査の結果、ジチオカルバメートが、30年以上もの間、工業的な水処理において、ppbレベルの重金属の除去に使われていることが分かりました(Plat. Surf. Finish., 1982, 69, 67-71.)。ジチオカルバメートは、酸化状態に関係なく、殆どの遷移金属と安定な錯体を形成しするそうです(Transition Met. Chem., 2006, 31, 405-412.; Prog. Inorg. Chem., 2005, 53, 71-561.; Prog. Inorg. Chem.200553, 1-69.)。

このような情報をキャッチして、バルク供給している三つのジチオカルバメートを使って、Cu除去の検討を開始します。

Commercially Available Dithiocarbamates 
(readily available in bulk quantities)

因みに、ジチオカルバメートは、pH 7.0以上で安定で、低pHでは分解してアミンとCS2を放出するという性質があります。

で、検討の結果、毒性とパフォーマンスを考慮して、APDTC (Ammonium PyrrolidineDiThioCrabamete)を採用します。除去操作は至って簡単で、

a) 反応後、50度まで冷ます
b) 窒素雰囲気下、APDTA (30 mol%使用しているCuI に対して2.27 eq.)を加えて1時間撹拌
c) セライト濾過し、さらに精密濾過(孔径: 1 µm)

です。処置後の有機層の残留金属濃度は、APDTA処理した後の濾過温度が50℃で、20-24 ppm (15 g〜90 kg scale)。30˚Cで3 ppm (156 kg scale)です。そして、4の副生も0.10%(HPLC area %)に抑えられます。

さらに、種々の遷移金属錯体を溶かしたモデル溶液(4000 ppm)を作って、金属に対して2.2 eq.のAPDTCで同様の除去操作を行うと、Pd, Cu, Al, Fe, Ni, Ruは<10 ppmの濃度まで除去できました(Rhは<10〜85 ppm)。

それでは、最後にUllmannカップリング (1+23)以外の反応例への応用をメモしてフィニッシュしたいと思います↓

Miyaura Boration

Heck reaction


Sonogashira Coupling


Ru-catalyzed Hydrogenation

使った金属に対して、たった2.2 eq.のジチオカルバメートを作用させて濾過するだけで、こんなに高効率で金属を取り除けるなんて、マジ驚きです。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。


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