とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, February 6, 2011

アイデア•ブランドを斬る

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業」を読了しました。

邦題はなんかミーハーで胡散臭いタイトルになっていますが、原題は「DIFFERENT」で、内容は分かり易い語り口ながらも硬派です。

著者は、一般的なマーケティングは、「差別化が重要」と主張しながらも、最終的には製品やサービスの差異を失わせてしまい均質なものにしてしまうと述べています。そして、消耗戦へと突入すると。

例えば、こんな感じ↓

a) マーケターの行動
企業の戦略には、強みと弱みがあって、必ずしも各戦略オプションや製品特性のバランスがとれているわけではない(デコボコだ)。で、デコボコさ加減を目の当たりにしたマーケターは反射的に弱みの改善に集中し、各特性のバランスを取るという行動にでるそうです。そして(某国の電気メーカーのように)もん切り型で際立った特徴のないありきたりな製品になってしまうと言います。自社の強みをさらに強化するといった(真の差別化)戦略(偏りが拡大する)は、マーケターの取りそうにない行動なのだとムン先生(著者)は言います。

b) 製品拡張
i) 付加型
付加型の製品拡張は、時間の経過に伴い、当初の製品(オリジナル)に機能をドンドン追加して行き、製品をよりよく、より新しく、そしてこれまでにない製品へと展開していきます。製品展開のステップは次のようになるそうです。
(1) 企業は消費者に、新しい便益を加えた価値提案を行う
(2) 消費者が喜ぶ
(3) 競合がそれに追いつこう(真似よう)とする
(4) 付加された価値提案が、そのカテゴリーの標準となる
(5) 顧客満足度を再度測定。昨日はありがたがられていたモノも今日は当然だと感じられている。
(6) 競争の結果、カテゴリー内で最低限要求されるハードルが高くなる。
(7) ステップ(1)に戻る。

消耗戦の無限ループですね

ii) 増殖型
企業は見逃していた消費者のポケットの到達しようと努力を尽くし、市場をどんどん小さなサブセグメントへと切り刻んでいく(セグメンテーションの究極の姿)。同時にそのセグメントは有名無実化していく。すなわち、選択肢の激増と、意味ある違いの縮小という最悪の状況に転落する。そして、製品の拡張はコモディティ化と高コスト化を加速させる。


しかしながら、全ての企業が没個性化に陥り、(日本の電機産業のように)均質化していく訳ではありません。エッジを効かせた商品(サービス)展開により、顧客から高いロイヤルティを獲得している企業もあります。著者はそんな魅力的な企業群をアイデア•ブランドと称して、次にように分類しています。

A) リバース•ブランド(世の流れの逆を行く)
カテゴリー内の拡張傾向を無視し、顧客が期待している拡張への流れを意図的に断ち切る。他社が競争に欠かせないとみなしている便益の提供を控えようとする。余分なものをそぎ落とすが、予想もしない形で贅沢なものに変える。除去すると同時に向上させる。品質を高めながらも削ぎ落とす。基本と卓越性の融合。
Ex.) グーグル、ジェットブルー、IKEA、In-N-Out (ハンバーガー・チェーン)、Wii(任天堂)

B) ブレークアウェー•ブランド(既存の分類を書き換える)
カテゴリーの境界を飛び越え、製品の定義に挑戦する。消費者の分類プロセスに意図的に介入し、デフォルトに代わるカテゴリーを提示する。
Ex.) AIBO (ペット, ソニー)、フラペチーノ (コーヒー味のミルクシェイク, スターバックス)、プルアップス (使い捨てトレーニングパン=幼児の下着, キンバリークラーク)、シルク・ドゥ・ソレイユ、スウォッチ (日常のファッションアクセサリー)、ALESSI (キッチン用品を芸術品に)

C) ホスタイル•ブランド (好感度に背を向ける)
顧客を魅了する従来の原理の遵守を拒絶するアンチ・マーケティング)
Ex.) MINIクーパー (SUV人気の中にあっての「XXL XL L M S MINI」というプロモーション)、レッドブル (液体コカイン、缶入り覚醒剤、液体バイアグラと揶揄される一方で、「レッドブルは飲み物ではない。生き方だ。」という熱狂的な支持者がいる)、ビルケンシュトック (ちっとも美しくない実用一点張りのサンダルや靴)、マーマイト (古くなったガソリンのような味、神々の美酒、「好きか嫌いか」というスローガン)、BAPE (全て限定品。店舗はたいてい裏通りにあり、見つけにくい)、ホリスター (ターゲットは、「人気者でスマートできれいな子供たち」、「クールな子供たち」、「好感が持てる友人の多い魅力あふれる典型的なアメリカ人の子供」。たいていは当てはまらず、排他的。二十歳以上なら疎外感を感じるといい、店員も選別する)、ベネトン (奇抜な広告)
個人的にはKING JIMもホスタイル・ブランドに該当すると思います。

D) 複合型アイデア•ブランド
Ex.) アップル (リバース・ブランド、ブレークアウェー・ブランド、ホスタイル・ブランドの全ての要素を兼ね備える)

E) その他のアイデア•ブランド (ひと目でわかる違いを出せる)
Ex.) ハーレーダビッドソン (独自のコミュニティーを形成)、ダウ・リアルビューティー (美人モデルではなく、日常にありふれた女性を使ったプロモーション)

ところで、ムン先生(著者)は、「マーケティングとはつまるところ、消費者に消費するモノを選り好みさせるプロセス」だと喝破します。

均質化に収斂していく古典的なマーケティング・スタイルでは、消費を選り好みさせることはもはや困難なのでしょう。

ちょっと「ブルーオーシャン戦略」に内容が似てるなと思いました。差別化戦略の有用性は広く周知されているにも関わらず、レッドオーシャンで消耗戦を強いられている企業が少なくないような気がします。要は、知るは易し、行なうは難しというところなのでしょうが、本書の内容は示唆に富み、一読に値する良書と思いました。


Labels:

0 Comments:

Post a Comment

<< Home