2012年7月29日日曜日

Creative Intelligence: Apple's Value Chain

アップルのデザイン ジョブズは“究極”をどう生み出したのか」を読了しました。

アップルと他社との比較、iPhone 4Sの分解から見たプロダクト・デザインへのこだわり、インタビュー記事(関係者、非関係者)などからアップルのデザイン活性型経営とはどういったものかを解説した本です。

個人的には、冒頭のバリュー・チェーンへの投資からみえるアップルの思想、ジョナサン・アイブのインタビュー記事(1999年当時)、猪子寿之(チームラボ代表, ホントこの人飄々としてて面白いよね)のインタビュー記事、それからiPhone 4Sの分解にみるアップルの他社とは異なる製品デザインへのアプローチが興味深かったです。

で、特に興味深かった、アップルはバリュー・チェーンにどれくらい投資して、優れたユーザー体験を"デザイン"しているかというところをメモしてみます↓

アップルは"デザイン"の力を「製品発表会(Keynote)」、「広告」、「店舗」、「パッケージ」、「製品」、「インターフェース」、「サービス・ソフトウェア」に存分に注力してユーザーに最高の体験を供与しています。で、どれくらいリソースを注力しているかということが数字で示されています↓

a) 製品発表会/ 準備期間2ヶ月
ジョブズは2ヶ月前から準備をはじめ、何時間もリハーサルにかけたっていうのは有名な話。プレゼンの神様は誰よりもその準備に時間を掛けていたということを覚えておくべき。

b) 広告/ 774億3900万円 (2011年9月, 1 USD = 83 JPY)
ソニーの投資額は3964億2500万円(2011年3月期)でアップルのおよそ5倍の投資額。2011年10月~12月、米アップルの売上高は3兆8400億円(463億USD, 1 USD = 83 JPY)は同時期のソニーの2倍以上の売上げ(see http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17022_X10C12A4000000/。アップルは製品ラインを絞って集中投資している。

c) 店舗/
1年間に新規オープンしたアップルストア1店舗当たりの平均設備投資額/ 12億7400万円
1店舗あたりの平均従業員数/ 100人強
アップルストアを重要な顧客接点の場と考え、相当デザインや素材にこだわったのは有名な話。1店舗あたり100人強の従業員で質の高いホスピタリティーを実現。

d) ジョブズが関与したパッケージのデザイン特許/ 8件(7件はデザイン特許)
ジュブズは、箱から製品を取り出す初めての瞬間(ユーザー体験)を重用視していたのは有名な話

e) 製品デザイン/ 1年間の設備投資額 3320億円(2011年9月, 1 USD = 83 JPY)
ソニーのそれは2049億円((2011年3月期)。凋落したとはいえ、モノ作りメーカーとしてかつて世界を席巻したブランド「ソニー」よりもはるかに大きな設備投資は注目に値する。アップルはファブレスメーカーだけど、製造委託先加工工場の既存リソースで製品を造っている訳ではない。何千台単位の切削加工機やレーザー加工機を製造委託先に貸し出すことで生産設備をしっかりと握っている。そのことにより、製造委託先が他のメーカー向けに同じ加工技術を提供することはなく、アップルのデザインの流出を防いでいる。アップルは実現したい(製品)デザインの合わせて加工設備をゼロから導入しているのだ。あるサプライヤーの幹部に「アップルのモノ作りに対する知識は、生産の現場で働く工場の技術者よりも豊富だ」と言わしめるほどという。

f) インターフェース/ 卓越したGUIみれば分かるでしょう。ゲイツマイン搭載OSは未だに漢字トークのGUIを本質的に超えてないと思う。

g) サービス/ 4482億円(iTunes Store, App Store, iBookstoreの売上げ) (2011年9月, 1 USD = 83 JPY)
全体の約5%の売上げらしいです。ちなみにグリーは1400億円(2012年6月期見込み)。


凄くないですか、アップル!


アップルのバリューチェーンは、最良のユーザー体験を演出するためにデザインされていると思いませんか?


これって、なかなかできてる企業ってないですよね(ボクの中では、スターバックスくらいか)。しかも、アップルはファブレスメーカーでありながら、究極のモノ造り企業ということが分かります。

よく、日本の家電メーカー(ソニー、パナソニック、シャープ)って自動車メーカーと並んでモノ造りメーカーの代表格みたいに言われるけど、既にオワコンですよね。訳の分からないラインナップ勢揃いで、カニバリゼーション、多すぎる選択肢による顧客の商品選択の複雑化、製造ラインの複雑化を顧みない姿勢にはドウカシテルゼと思ってしまいます。せめてキャノン級に悔い改めて欲しいと思います(キャノンは御手洗社長のもと、キーテクノロジーに集中して高収益企業へと復活した)。

以上、二流大(一応、東大様に主要大学に選んでもらえた)出のなんちゃって研究員のつぶやきでした。

あっ、それからCreative Intelligenceって元米国アップルマーケティング担当バイスプレジデントの前刀禎明氏がデザイン活性型経営のことをそう評したって書いてあったような気がします。

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