2020年5月2日土曜日

CatalyticにMitsunobu:その光延、Perfect Catalysis (そしてRedox-neutralへ)

苦手な新宿で初夏に一杯やったときのメモです。

-愛酒家 ぼるが  memo-
住所:新宿区西新宿1-4-18

-お通し (no charge)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
キャベツと胡瓜の浅漬け。これ、物凄く旨い。漬かり方が絶妙の塩梅で、酒の肴に最高。







-にごり酒 (増税前で700 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
(多分)ウィスキーグラス(オールド・ファションド)に入って常温で提供される(この発想はなかった)。甘めで普通に美味しいです。






-やきとり5本 (増税前で500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
多分、ハツ、シロ、カシラ、レバー、皮なんじゃないかなと思う。塩かタレが選べて、「塩」をセレクト。
ハツはキュキュッとしたフレッシュな食感と味。シロは何とも言えない食感がクセになりそうな驚きの旨さ。カシラはキメ細かい肉質で心地よい弾力がある最高の食感で、ややソリッドな旨味が詰まっている。レバーもフレッシュで堪らない旨さ。そして、皮もベーシックに美味くて、非の打ち所がない(こんなに嫌味のない皮ははじめてかも)。
5本全てがハイ・グレードな旨さ、。

-黒生ビール (増税前で500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
カラメルとロースト感リッチ。しっかりボディーで旨い。

このお店は昭和24年創業で、新宿西口の最古参(らしいです)。先代が山好きで、店内は山小屋の雰囲気で、山里で採れる食材を多く取り入れたメニューなんだとか(らしいです)。

店内の様子を(部分的に)ご覧ください↓

蛇口からは普通にお水が出ました。あと、暖簾の奥の焼き場のあるお勝手から伝わってくる熱気が尋常じゃないです(灰がヒラヒラとカウンターに舞ってくるし)。あと、年季の入ったピンク電話もあって、昭和レトロ感満載です。


閑話休題


ども、前々回からの

Redox-neutral organocatalytic Mitsunobu reactions
Science2019365, 910-914.

のメモの続きです。

前々回→http://researcher-station.blogspot.com/2020/05/catalyticmitsunobuperfect-catalysis_2.html
前回→http://researcher-station.blogspot.com/2020/05/catalyticmitsunobuperfect-catalysis_6.html

これまでは前振り(イントロ部分)のメモでしたが、今回(最終回)は本論をメモします。
(もろぴー先生のブログで詳細がレポートされてますが、敢えてボクもメモしていきます
see https://moro-chemistry.org/archives/2815 ロゴのフォントがホント好きです)

前回のメモ(see http://researcher-station.blogspot.com/2020/05/catalyticmitsunobuperfect-catalysis_6.html)で光延反応の触媒化の研究をざっくり概観しましたが、それらの手法はいずれもRedox Recyclingに基づいた触媒化です。ホスフィンやアゾ化合物を触媒で回すわけですが、それらの再還元と再酸化に化学量論量の試薬を必要とするので、完全無欠の触媒反応とは言えません。

Catalytic Mitsunobu reactions based on redox recycling

そんなincompleteなcatalysisをPerfectに仕上げたのが本報です↓

This work : redox-free catalytic Mitsunobu inversion

DADは使ってないけど、(推定)メカニズム的には光延反応でいいんじゃないでしょうか?そして、使用する試薬の数と量が減るので地味に仕込むときのハンドリングが捗ります。但し、加熱して水を共沸脱水で取り除くのが必須。ホスフィン触媒はbench-stableでクロマトなしにマルチグラムスケールで合成できます。


基質一般性です↓
C-O bond formation

いい感じの反転率ですが、キレキレではないようです。

C-N bond formation & C-S bond formation

Stereoinversion with only a solvent exchange between the steps
Active pharmaceutical ingredient synthesis

Ether synthesis

あと、触媒の構造活性相関です↓

やはり水酸基の役割が重要で、環状のオキソホスホニウム塩形成の重要性が示唆されます。

最後にこの触媒を使った光延反応の(多分最大の)ポイントですが、反応の進行には、pronucleophileが安息香酸(pKa(H2O)=4.2)では酸性度が足りなくて、4-ニトロ安息香酸(pKa=3.4)程度の酸性度が必要となります(でも収率低い)。2-ニトロ体くらいから実用に耐えれる感じになってきて、ジニトロ安息香酸(pKa=1.4)くらいになると、もうイケイケです。

それにつけても、触媒をシンプルにうまくデザインしたなと感心します(っていうか、オレより何十倍も頭いいから当然か)。古典的な光延反応だと水をDADとホスフィンに分配して取り除いてるけど、共沸脱水で取り除くっていうアイデアも好きです。そのために加熱が必要になっちゃうんですが、モレシーとかの乾燥剤いれたら室温でも反応進行しちゃうんですかね?誰か試した人がいたら教えてください(選択性ももっと上がるかもしれないし)。

それから光延反応のDAD系試薬って沢山報告されてるけど、それらの立体特異性って常にパーフェクトってわけじゃないですよね。基質と試薬毎に選択性をまとめた表てないんですかね?(もの凄い地味な作業だけど)

以上、(国内)二流大出のテクニシャン(研究補助員)のしつこい光延反応メモでした。
(オレの学生時代のボスって、光延先生とご学友だったんだよね)


CatalyticにMitsunobu:その光延、Perfect Catalysis (Catalysisへの道)

随分前(増税前)に、浅草は雷門近くにあるおでん屋さんに行ったときのメモです。

-ひょうたんなべ 雷門店 memo-
住所:台東区浅草1-2-9

ちなみにこのお店は、ボクの大好きな駒形どぜうの系列店らしいです。

-お通し (350 JPY + tax)-
もずく酢。胡麻が振り掛けてあって、その香りが香ばしい。

-おでん-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
薄味ながら、ちょっとくどいくらいに昆布が効いていて少しぬめりを感じるツユ。具材への味の染み込みは軽微。昆布テイストが濃厚なので、深く味が染みていない方がいいのかもしれない。全体的に普通に美味しい。
特筆すべきは竹の子のおでんで、とっても柔らかくて、最高の食感。
お豆腐は焼き豆腐で湯豆腐ライク。
じゃがいもとツユの昆布テイストの相性が素敵。
大根 (160 JPY +tax) ★★★☆☆
玉子 (180 JPY + tax) ★★★☆☆
じゃがいも (160 JPY + tax) ★★★★☆
豆腐 (180 JPY + tax) ★★★☆☆
竹の子 (230 JPY + tax) ★★★★★


-トマトチーズ (420 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
別枠のおでんメニュー。出来上がりまでに大分時間がかかるので、早めに注文すべし。
トマト1個をお出汁で炊き込んで、トップにチーズを載せた一品。お出汁は前述のおでんの昆布風味リッチなものではなく、コンソメベースのお出汁で全体的に洋風な仕上がり。
トマトは少し酸味と青臭さが残っている。
熱を纏ったトマト、チーズ、コンソメのハーモニーには素晴らしいものがある。少し残ったトマトの酸味と青臭さともよく合う。率直に言ってとても旨い!また食べたい逸品。

-ほや酢 (600 JPY + tax)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
もみじおろしの載ったホヤに、かなり酢の効いた酢醤油が添えられて提供される。
酢醤油をつけずにそのまま食べるとあまり香味が拡散せず、蕾が閉じたイメージの大人しい味だけど、上品でけっこう旨い。
酢醤油をつけて食べると、色々な香味が解き放たれる。華やかな香味も解放されるが嫌味な香味もけっこう感じる。基本フレッシュで美味しい。

-じょっぱり (460 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
教科書のような淡麗辛口。クセが無く、料理に合わせるのにもってこいの日本酒と思う。

-果実酒 ゆず 栃木 (400 JPY + tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
甘さはけっこう控えめで、柚子の香味ふんだんでジューシー(juicy)かつフレッシュ(fresh)感がふんだん。これはクセになりそうな旨さ。

満足に足るお店なんだけど、お店の位置が公衆トイレの近くなのが玉に瑕です。


閑話休題


ども、前回(http://researcher-station.blogspot.com/2020/05/catalyticmitsunobuperfect-catalysis_2.html)からの

Redox-neutral organocatalytic Mitsunobu reactions
Science2019365, 910-914.

のメモの続きです。

で、今回のお題は、光延反応の触媒化の歴史です(イントロに書いてあった)↓

まずは、

• Toy's Organocatalytic Mitsunobu Reaction

J. Am. Chem. Soc.2006128, 9636-9637.
やっぱ触媒化でエポックメーキングなのは、Toyの報告でしょうか。ボクの記憶が間違ってなければ、なんてったって初めての触媒的光延反応ということでたくさん引用されてるし。
化学量論量のDEADを使った場合(普通の光延反応)よりも収率が低下。2 eq. の酢酸が生成するので、pronucleophileが十分にacidicでないと副生成物(acetate)が生成します。
そして、この方法の2nd genaration (improvement)として、4-ニトロ安息香酸を3,5-ジニトロ安息香酸に換えて反応を行うとacetate副生を抑制できるそうです。(Synlett 20107, 115.)。


続いて、

• Catalytic Mitsunobu Reaction with an Iron Catalyst and Atmospheric Oxygen (Taniguchi)

14 examples, 28-92% yield
Angew. Chem. Int. Ed.201352, 4613-4617.
see
http://researcher-station.blogspot.jp/2015/03/catalyticmitsunobu-catalytic-mitsunobu.html
https://researcher-station.blogspot.com/2015/03/blog-post_28.html

金沢大のTaniguchiの報告で、触媒的光延反応の二番目の例です。フタロシアニン鉄(Fe(Pc))と空気でヒドラジンを再酸化します。7例はキラルな基質を使っていて、反転率はそこそこ良好(1例は完全反転)。DEADを使ったオリジナルの方法と同様に立体障害に弱いようで、(-)-mentholを基質に用いると、収率も反転率も低いです。
そして著者自身も、基一般性と収率が不十分でオリジナルの光延反応に遅れをとっていることを認めています。そこで、この方法を徹底的に最適化しブラッシュアップした手法を再度報告しました↓
Chem. Sci.20167, 5148-5159. (open access)

詳細な検討の結果、以下のことが明らかになりました。

a) 溶媒効果がとても大きい。
b) MS 5Aがクリティカル。他のモレキュラシーブスではダメで、しかもかなり厳格に活性化しなければいけない。
c) DADの芳香環上の置換基の影響は、
   光延反応は、4-OMe < H < 3,4-diCl < 4-CNの順に速く、
   ヒドラジン→アゾの酸化は、4-MeO > 3,4-diCl > 4-CN ≈ Hの順に速い。
   4-NO2体は反応条件下で分解してしまう。
d) 4-CO2Et体と4-CF3体は3,4-diCl体とほぼ同等の活性
e) 3,4-diCl体と比較して4-CN体の活性は高いが、反転率は少し劣る
f) トータルでみて、3,4-diCl体と4-CN体がいい感じ。
g) 3,4-diCl体は求核剤がカルボン酸のとき仕様の触媒
h) 4-CN体はカルボン酸以外の求核剤仕様の仕様の触媒

そして基質一般性はこちら。まず1級アルコールとの反応↓

続いては、以下に示す光学活性二級アルコールを使った立体反転例です。
で、立体反転の結果です↓

なかなかいい感じゃないですか?

著者らは反応機構についても検討していて、DEADを用いた典型的な光延反応と酷似していることを示しました。

加えて、試薬の熱安定性も調査しています。

触媒のアゾ体はX=3,4-diCl体もX=4-CN体も結晶性の固体で、周囲条件下で二ヶ月間は安定です。因みに、ボクの大好きなDMEADは周囲条件で二ヶ月ほっとくと部分的に分解が確認されるそうです。さらにTG-DTA測定も行っていて、
i) 発熱ピーク無し
ii) X=3,4-diCl (mp: 52.1˚C)→重量の減少を伴って191.3˚Cに吸熱ピークを検出
iii) X=4-CN (mp: 55.4˚C)→重量の減少を伴って225.7˚Cに吸熱ピークを検出
という結果だったそうです。
そして、
iv) ベンゼン-d6溶液をオートクレーブで200˚Cで10分間加熱しても、1H NMRからno
 decomposition

また、触媒のヒドラジン体のTG-DTA分析から
v) X=3,4-diCl (mp: 114.0˚C)→重量の減少を伴って250.3˚Cに吸熱ピークを検出
vi) X=4-CN (mp: 138.1˚C)→重量の減少と一部分解を伴って267.4˚Cに吸熱ピークを検出。

という結果で、著者らは、アゾ体もヒドラジン体も常圧下で急激な分解はなく、TG-DTAでの重量の減少は沸点に到達したことによる蒸発であると結論付けて触媒の高い安全性をアピールしています。これら4化合物のプレリミナリーなDSC測定も密閉容器で実施されていて、300˚C以下で発熱ピークは検出されていません。少なくとも、DAD系試薬より安定性は高そうです。
(密閉容器でDSC測定しているので、TG-DTAの重量現象は分解に伴う気体の放出せはないんだろうと思います)。


そして、上記二報とは毛色の違った触媒化がこちら↓

• Mitsunobu Reaction Catalytic in Phosphine (Buonomo and Aldrich)

14 examples, 50-84% yield
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 13041-13044. (open access)

ToyとTaniguchiの報告はアゾ-ヒドラジンを触媒的に回す方法でしたが、BuonomoとAldrichの報告はホスフィンを触媒的に回す方法です。ホスフィンを触媒的に回す光延反応の初めての報告ですね。
光学活性二級アルコールの立体反転は二例あって、結果はこんな感じ↓

触媒バージョンは化学量論量バージョンと比較して収率は低下しますが、光学純度は同等です。

そして著者らは、自らが開発したホスフィン触媒化光延反応とTaniguchiの開発したアゾ-ヒドラジン触媒化光延反応を融合したFully Catalytic Mitsunobu Reactionを提示しました。


報告はアキラルな基質二例だけですが、シュゴイ!と思っていたら、触媒的光延反応の第一人者であるTaniguchi (金沢大)からまったがかかりました。TaniguchiらはThe "Fully Ctatalytic Synstem" in Mitusnobu Reaction Has Not Been Realized Yet (Org, Lett., 2016, 18, 4036-4039.)で、BuonomoとAldrichの"Fully Catalytic Mitsunobu Reaction"は(反応機構が)光延反応のプロセスを経ておらず、それ故、光延反応としてワークしていないと指摘します。ついでに堅牢な反応とはいい難く、トレースすると結果がブレブレでラセミ化もけっこう進行してしまう困ったちゃんであることが分かりました(最適な条件の範囲が狭い?)。それでは、以下にTaniguchiらの検証結果をメモしていきます。


• The "Fully Ctatalytic Synstem" in Mitusnobu Reaction Has Not Been Realized Yet (Taniguchi)
Org, Lett.201618, 4036-4039.

まずはTaniguchiのオリジナルメソッド(Angew. Chem. Int. Ed.201352, 4613-4617.; Chem. Sci., 2016, 7, 5148-5159.)の追加情報です。
THF中で反応を行う場合、MA 5Aの活性化がよりシビアになります(最適溶媒はトルエンだけど、BuonomoとAldrichのホスフィン触媒を使った反応に条件を合わせている)。

続いて、BuonomoとAldrichの反応をトレースした結果です↓

68% yield, >99.5:0.5 er (R/S) Buonomo and Aldrich (ACIE2015)
38-46 % yield, 76:24〜87:13 er (R/S) Taniguchi et al.

Taniguchiらは三回反応を繰り返していて、収率の低下に加えて選択性も緩慢であることを確認しています。。

さらにもう一つ追試↓

Buonomo and Aldrich   69% yield, 94:6 er (R/S(ACIE2015)
Taniguchi et al.   51% yield, 23:77 er (R/S)

驚くべきことに、選択性が逆転してリテンション優勢です。

最後は"Fully Catalytic Mitsunobu Reaction"の検証です。

• Buonomo and Aldrich   68% yield (ACIE2015), 0.5 mol scale, reaction vessel: 15 ml
   MS 5A: activated  by heating at 200˚C under reduced pressure, O2: generated from NaClO and H2O2

• Taniguchi et al.   38% average yield0.5 mol scale, reaction vessel: 35 ml
   1st run : 40%, MS 5A: activated  by heat gun in vacuo (ca. 0.1 mnHg, 5 min), O2: commercially available oxygen

   2nd run : 37%, MS 5A: activated by Bunsen burner in vacuo (ca. 0.9 mbar, 5 min), O2: generated from NaClO and H2O2

   3rd run : 36%, without the hydrazine catalyst, MS 5A: activated  by heat gun in vacuo (ca. 0.1 mnHg, 5 min), O2: commercially available oxygen

収率が再現できません。再現が得られない理由としては次のことが考えられると思います。
 i) MS 5Aのメーカーとかロット:Taniguchiらはアルドから入手。Buonomoは不明。
 ii) MS 5Aの活性化法:やんわり活性化している感じのBuonomoらの方が良好な結果がなのが納得できない(Buonomoらは200˚Cで長時間活性化いているのかもしれないけど)。
 iii) 容器の大きさ:同スケール、同濃度で反応を実施してるけど、容器の多いさが違うので、酸素の量と圧力が異なるはずです。溶媒量は共に3 ml。Buonomoは15 mlの容器。Taniguchiは35 mlの容器。

容器の大きさが一番の違いに思えるんだけど。撹拌効率も違うだろうし。まあでも、ボクには何が原因なのかよく分かりません。

それから、Taniguchiらのトレース結果(1st run, 2 nd run)とヒドラジンなしの反応(3rd run)がほぼ同じ収率となり、ヒドラジン触媒が反応に関与していない可能性を醸し出しています。

立体反転の度合いが確認できる光学活性な二級アルコールを使った反応の結果がこちら↓

1st run : 4% yield, 12:88 er (R/S), MS 5A: activated  by heat gun in vacuo
2nd run : 7% yield, 9:91 er (R/S), MS 5A: activated  by heat gun in vacuo
3rd run : 6% yield, 16:84 er (R/S), MS 5A: activated by Bunsen burner in vacuo

低収率な上、リテンション優勢です。

というわけで、BuonomoとAldrichの開発した"Fully Catalytic Mitsunobu Reaction"は控えめに言って全く堅牢でないことが明らかになりました(ブレブレでした)。疑いの目でみれば、そもそも光延反応の最大のウリと言ってもいい立体反転の検証を行っていないのが不思議で仕方がありません(光延反応の立体特異性はアートと称されるほどだからね)。なにはともあれ、The "Fully Ctatalytic Synstem" in Mitusnobu Reaction Has Not Been Realized Yet なわけです。


このあたりが浅学なボクが認識している光延反応の触媒化の道程です。そして、"Fully Catalytic"の道は未だ険しいのだなと思っていたら、2019年に"Fully Catalytic"の上をいく"Perfect Catalysis"な光延反応が彗星のように登場しました。それが、

Redox-neutral organocatalytic Mitsunobu reactions
Science2019365, 910-914.

です。

次回、Redox-neutralでPerfect Catalysisな光延反応をフィーチャー(メモ)していきます。つづく.....


CatalyticにMitsunobu:その光延、Perfect Catalysis (イントロ編)

初夏に木更津であさりを喰ったときのメモです(二軒)。

まず、一軒目。駅近のお弁当やさんです。

-吟米亭 浜屋 memo-

住所:木更津市富士見1-10-24
http://5han.co.jp

-あさり飯 (増税前で895 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
蓋を開けると、たっぷりのたけのこ煮のスライスと、そこそこの量のあさりの時雨煮で覆われた炊き込みご飯が目に入る。あと、海苔も少々まぶしてある。
たけのこはの食感は歯切れよく、あっさりした味付けで旨い。あさりは弾力に富み、その独特の滋味深い香味がたっぷりで、さらに濃いめの甘辛い味付けが重ねられた重層的な味わい。生姜の香味付けは軽微で、あさりの味を損なわないほどよい薬味感がよいです。
そして、ご飯がとっても美味しい。ふっくらと炊き上がっていて、外郭をしっかりと感じ取れる食感。味付け薄めなので食べ飽きすることなく最後まで美味しくいただけます。
で、炊き込みご飯の醍醐味っていったら、ご飯と具をまとめて掻き込むことによって生じる食材のハーモニーなわけで、たけのこ、あさり、海苔、ご飯の融合は最高でした!
しゃっきりとしたたけのこの食感とあさりの弾力、濃い味のあさりと薄味のご飯といったコントラストが楽しく、海苔の香味がトータルな味わいに奥行きを与えます。
おかずのレンコンの挟み揚げ、さくらんぼ、柴漬けは普通な感じだけど、箸休めに良いです。
かなり満足のいく仕上がりのお弁当なので、木更津に行ったらまた食べたいです。


もう一軒はこちら↓

-宝家 memo-
創業明治30年の老舗。元女優の鈴木希依子さんが若女将を務めます。

住所:木更津市中央2-3-4
http://takaraya.awk.jp

-お通し (350 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
嶺岡豆腐です。とろみのついた出汁醤油に浸っていて、本山葵とクコの実(を戻したもの)を戴いています。
嶺岡豆腐はねっとりしっとりした食感で舌に吸い付くようなキメ細かい質感で、チーズケーキのような味わいでもの凄く旨い!真剣(マジ)、異次元に旨い!

-日本酒 一合 (冷) (680 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
温度は雪冷え(ca. 5˚C)程度。辛口を想わせる力強い香り。その匂いとは裏腹にふんわりとした甘さの柔らかい酒質で、嫌味なところが全くない。かなり旨いね。

-あさりの酒蒸し (800 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
これは旨い!!!あさりは心地よい弾力に富み、シンプルに自然な滋味深い味。全く嫌味なところが無くって、上品な仕上がり。
ツユは、トップにあさり独特のフレーバーがきて、その後に上品で澄み切ったお出汁の味が染み渡ります。あさりの上に載っている水菜のフレッシュ感は薬味として上手く働いていると思う。葱はちょっと味がキツイ。
総じて、絶品の酒蒸しに仕上がっていると思いました。

-勝山港直送!桜鯛の昆布締め (1,000 JPY+tax)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
お造りの表面はしっとり滑らか。力強い淡白な味で、透明感のある旨味が深い(昆布で締めて旨味成分アップか?)。
お塩でいただくのも悪くないけど、キリッと締まった辛めのお醤油で合わせた方が味の輪郭がくっきり出る。
薬味は本山葵だと思うけど、山葵なしで食べた方が旨いと思う(山葵は酒のツマミに)。

-ザ・プレミアム・モルツ 瓶 (700 JPY+tax)-
中瓶です。

-あさりのかき揚げ (950 JPY+tax)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
ポッテリした見た目のかき揚げで、見た目通りあまりカラッと揚がっていない。内部は一部衣がネチョネチョしていて美味くない。タネは玉葱、人参、葱にあさり。玉葱はフレッシュ(fresh)かつスイート(sweet)で旨かったけど、あとは全然ダメ。肝心のあさりは量が少なく、その良さが完全に消されている。あさりを油で揚げる意味が全く見出せない一品。


何故かあさりのかき揚げは最低でしたが(たまたま?)、それ以外はハイ・クオリティーでした。接客も良かったし、また行きたいです。


閑話休題


過去に幾つか光延反応についてメモしてきましたが、またしつこく光延反応のメモです。
しかも、最近新着論文ウォッチを怠けているので、また「たゆたえども沈まず」さんの"2019年論文オブザイヤー改め2019年論文を振り返る話"からネタを拝借させていただきました。

というころで、今回読んだ論文はこちら↓

Redox-neutral organocatalytic Mitsunobu reactions
Science, 2019, 365, 910-914.

触媒的光延反応のお話です。しかも、Perfect Catalysisです。

まず本題の光延反応に入る前にイントロ部分に書いてあった、アルコールを求電子剤に見立てた求核置換反応について、比較的最近の研究成果をフィーチャー(メモ)してみます。


I   まずは、ラセミ体の二級アリルアルコールとラセミ体のアルデヒドから、ステレオダイバージェントに四つのジアステレオマーをつくり分けるという画期的な報告↓

Stereodivergent dual-catalytic α-alkylation of aldehydes


Science, 2013, 340, 1065-1068.

なかなか壮観です。アルコールはIr(L)とπ-アリル錯体を形成、アルデヒドはアミン(A2, A3)とシッフ塩基を形成し、そこから不斉中心を構築します。他44 examplesで、基質一般性が高そうです。


II   それから"borrowing hydrogen" strategyを使ったN-アルキル化。コンセプトはこんな感じ↓

Science, 2010, 329, 635-636.

アルコールを酸化して一旦アルデヒドに誘導した後、アミンとのシッフ塩基形成させ、最後に還元(還元的アミノ化)するという一連の反応を触媒的に一気に敢行します。Hydrogen neutralでバイプロがお水(H2O)だけというのがウリです。それでは、実例を二つ↓

(1) Ruが触媒する"borrowing hydrogen" strategyで、80 examples以上の大作です。
J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 1766-1774.

ざっくりした反応の特徴としては、
a) 立体障害に弱めな感じ
b) 1級アミンのアルキル化では、3級アミンへのオーバーアルキレーションはかなりの程度抑制される
c) アミノ基が置換している不斉炭素の立体化学は保持(retention)される(A, B)
d) アルコールが一旦酸化されるメカニズムなので、水酸基の置換している不斉炭素の立体化学は完全に消失する(C)。Dはreversible oxidationが起こっている。
e) Eは中間体のアルデヒドもしくはイミンのエノール化が起こっている。
f) N,N-ジメチルエタノールアミンを用いた反応ではイミン交換反応(transimination)も起こるので注意。

g) ヒドロキシエーテルを用いた反応に注意が必要です↓


(2) 安価な鉄を使った"borrowing hydrogen" strategyです。

Nat. Commun., 2014, 5, 5602.

26 examples

アニリンのアルキル化では、アニリンに置換している官能基の種類や置換位置によって反応性が大きく異なります。例えば、

i) 置換位置は、ortho > meta > paraの順で反応性が高い
ii) アニリンに電子吸引性置換基があると反応性が乏しくなる
iii) p-置換ハトゲン化アニリンの反応性は、F > Cl〜Br > Iの順
iv) モレキュラシーブスの添加が反応性の向上に有効
v) メタノールではうまくいかない

です。それから、アニリン誘導体の場合、三級アミンはできません。

それから脂肪族アミンのアルキル化はこんな感じ↓



III   二級および三級アルコールをそのまま求電子剤として使って、スルホンアミドで立体特異的に置換するという反応↓

Angw. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 1727-1731.

まずは分子間反応で試しています↓
12 examples, 33->99%

このうち一例だけ光学活性アルコールを試しているんだけど、その立体化学は残念な結果↓

分子間反応では全然ダメな選択性も二級アルコールの分子内反応であれば良好です。光学純度がピカピカな基質ばかりを調達できたわけではないので、選択性はenantiospecificity(es)で表されています。


三級アルコールでは選択性がイマイチ。特に電子吸引性置換基が入ると、収率、esともに低下します。
9 examples, 27-72% yield, 54-89%es

DFT計算の結果から、Fe(SbF6)3が活性種のようです。


IV   アルコールを立体反転させたメシラートの触媒的合成法

Org. Lett.,  201315, 38-41.
15 examples


反応溶媒はクロロホルム。ジフェニルシクロプロペノン (8)が触媒量だと、良好な選択性を出すためには18時間に渡るスローアディションが必要です。15例。立体反転率は85-98%で、おおむね94%超といったところ。。


ここまでが、非光延な反応のイントロ紹介メモです。鋭意研究が進められていろんなことが出来るようになったんだなと思いますが、秀でた立体特異性やO-アルキル化といった光延反応のケミストリーの魅力は十分に具現化できていません。やっぱ、光延反応を超えるのは光延反応。すなわち、光延反応の触媒化しかないということで、次回「Catalysisへの道」に続きます.....