2009年10月17日土曜日

JR東:コングロマリット・プレミアムの真実 (2)

JR東は本業の鉄道以外に次の領域に多角化しています↓(分類は独断と偏見による)

a) 小売り
b) 食品•外食
c) 金融
b) 広告
c) ホテル
d) 不動産

鉄道業を単に人を輸送すること捉えると、上記多角化領域は本業とはなんの関わりもないように感じられます。しかしながら、JRの持つ首都圏のキー駅に人を誘導するという切り口から眺めると、途端に強い関連性と補完関係が見えてきます。
JR東の首都圏のキー駅は、莫大なトラフィックを集めることができ、かつかなりのスペースを有しています。ところで、(飲食店とかも含む)小売業では、その業績と来客数が密接に関わっている可能性が高いと直感的に考えられます。で、首都圏キー駅は集客する必要が皆無と言えるほどの莫大なトラフィックを抱えています。はっきり言って、なんら付加的な努力をしなくても、既にそこに大勢の顧客がいるのです。しかも、そこそこの(余裕)スペースがある。となれば、(鉄道以外に)何か商売しない手はありません。
鉄道によって集客した客を、小売りスペースや飲食スペース(エキナカ)に囲い込まない手はありません。この改札を出なくてもショッピングできるという利便性は、そのスペースの魅力が増せば増すほど指数関数的に増すと思います。だって、欲しいものがすぐそこにあるという状態になるのだから。

また、Suica(電子マネー)は少額決済を得意としていると思うんだけど、これはクレジットカードの弱点を補完していると思います。そして、SuicaはJRという巨大鉄道インフラの公式通貨という圧倒的有利な地位を利用して多くの顧客の懐に収まっていると思います。さらに、合理的な人はSuicaなどの電子マネーとクレジット機能を一枚のカードとして保有したがるでしょう。だって、そうすることで利便性が圧倒的に高まるのだから。それから、ルミネカードとかはルミネへの顧客誘導に有効と思います。

それから、ホテル事業の展開も合理性があると思います。すなわち、鉄道による輸送を「旅」(ビジネスユースも含む)という文脈で考えると、駅からほど近いところにあるホテルの利便性はけっこう高いと思います。

あと、広告スペースの多様化には舌を巻きますね。かつて(もう随分前)は、駅構内、ホーム、電車の中吊りやまど上がいいところだったような気がするのだけれど、現在は、つり革広告からADトレイン(1編成の車両を1社独占)までとその多様性を増しています。莫大な首都圏の昼間人口(1千万超)に効率的にリーチできるんだから、そりゃあ活用しない手はないでしょう。


はっきり言って、JR東の多角化領域は「莫大なトラフィックの有効活用」ということに収斂しているようにコンキチには思われます。これこそがJR東のコア•コンピタンスと思いますね。


一方、多悪化企業はどうかということで、その一例として日立製作所を取り上げてみましょう。ちなみん、日立の事業領域とそれらの売上高と営業利益はこんな感じです(2009年3月期)↓

事業領域売上高営業利益
情報通信システム25,944億1,766億
電子でバイス11,510億273億
電力•産業システム33,105億242億
デジタルメディア•民生機器12,165億▲1,055億
高機能材料15,568億277億
物流及びサービス10,899億230億
金融サービス4,120億102億

で結局7,378億の赤字(3期連続)です。

で、各事業領域の具体的な製品は、

a) 情報通信システム/ システムインテグレーヨン、アウトソーシング、ソフトウェア、ハードディスクドライブ、ディスクアレイ装置、サーバ、汎用コンピュータ、通信機器、ATM
b) 電子デバイス/ 液晶ディスプレイ、半導体製造装置、計測、分析装置、医療機器、半導体
c) 電力•産業システム/ 原子力発電機器、火力発電機器、水力発電機器、産業用機械•プラント、自動車機器、建設機器、エレベーター、エスカレーター、鉄道車両、電動工具
d) デジタルメディア•民生機器/ 光ディスクドライブ、プラズマテレビ、液晶テレビ、液晶プロジェクター、携帯電話、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、情報記録媒体、電池、業務用空調機器
e) 高機能材料/ 電線•ケーブル、伸銅品、半導体用材料、配線板•関連材料、有機•無機化学材料、合成樹脂加工品、ディスプレイ用材料、高級特殊鋼、磁性材料•部品、高級鋳物部品
f) 物流及びサービス/ 電機•電子機器の販売、システム物流、不動産の管理•売買•賃貸
g) 金融サービス/ リース、ローン、生命•損害保険代理業

強烈に多角化していて、同一分類内においても、全然関係ないだろっていうものが結構目白押しな気がします。少なくとも家電事業からは完全撤退したいな、コンキチは。まあでも、事業縮小って言っても、しがらみ(雇用)があるからそう簡単ではないんでしょうが、マチュアな市場で、関連性の薄い事業に多悪化しといてコングロマリット•プレミアムはないと思います。
see
http://researcher-station.blogspot.jp/2009/01/2_31.html
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20051215/226336/

よく多角化戦略のメリットとして、事業ポートフォリオを分散させることによって、事業リスクを回避する的なことが書かれていると思いますが、それは選択と集中によりリソースを結集させている競合他社の存在を忘れた戯言と思いますね。


つづく

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