2016年5月22日日曜日

Diazo Transfer: アミンからアジドへ

北千住の居酒屋さんのメモです↓

-さかなさま memo-

-お通し (411 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
何かが練り込まれたお豆腐に、帆立チックな魚介が添えられている。豆腐からも魚の旨味がする。

-牡蠣 塩煮付け (951 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
珠洲(すず)塩煮付け。岩手県牡鹿産牡蠣4個入り。
塩味の効いたスープが旨い。塩味がとても旨い。スープは温く、穏やかな味つけで、牡蠣の滋味深い味が良く伝わってくる。一緒に入っている大根がほこほこしていて旨い。他、セリ、ネギ、柚子などで香味が整えられている。
大根がスープを良く収蔵していて、塩の旨味を存分に伝えてくれる。

-ぶりかま塩焼き (918 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
京都丹波産のぶり。表面の皮はパリっといていて香ばしく、中の身はとてもfreshかつjuicyで、旨味の波が怒濤のごとく押し寄せてくる。ぶりの味が濃くて旨い。塩の味がとても滋味豊かで、甘みと旨味を感じる。この塩がぶりの旨味を引き立てている。
テーブルに「珠洲の塩」が備えられており、塩味が十分の行き届いていない部分はこの塩をほんの少し振りかけて調整してやるとよい。ぶりの旨味とお塩のシナジーを感じる。
あと、大根おろしが秀逸。大分粗めにおろされていて、ツブツブ感を強く感じる。辛みは無く、大根の優しい甘味を感じる。汁気があまりなく、コリコリした食感が楽しめる(これには驚いた)。箸休めにとても良い。ぶりかまからは旨味しか伝わってこないので、大根おろしの辛味や汁気は余計なものなんどろうと想像します。絶品の領域。

-赤いさき お刺身 (864 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
鹿児島県坊岬産。身は弾力に富み、少し硬さを感じる。鯉のあらいに少し似た食感。味は鯉よりも魚々しくて淡白。
山葵は(多分)本山葵。山葵醤油で食べたけど、塩を振って食べても良かったかも。

-生ジョッキ (616 JPY)-
-REVIEW-
銘柄は、サントリーモルツ。ほんのり柑橘の香りが漂って良い。

-黒龍 本醸造 (800 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
雪冷え〜花冷えでいただく。topにちょっと生臭さを感じる。少し吟醸香を感じる。全体的に穏やかな味わいで、ほんのり優しい甘味、酸味、滋味を感じる。

-雅の詩 (735 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
少し熱めの燗でいただく。上燗から熱燗くらいら?老香がとても素晴らしい。甘•酸•渋•苦•旨味といったtaste mixが、自己主張し過ぎることなく、優しき調和している。
とびっきり旨いやさしい味の紹興酒みたおだよ。香味がとてつもなく豊潤。特A級の味。


他の気になったメーニューに、こんなのがありました↓
•あなご白焼き (石川県奥龍登) 1,026 JPY
•鯛茶漬け 788 JPY
•あっさり珠洲の塩ラーメン 734 JPY
•天然寒ぶりのしゃぶしゃぶ鍋 1,814 JPY (2人前から)
•鯛のダシの湯豆腐的なもの

このお店は、通常メニューの他の本日のメニュー(お魚)があって、捌く前の魚をザルに入れて見せてくれます。また、店員さんはオススメをアピールしてくれて料理を選びびやすいです。店内は清潔でおしゃれな感じ。接客態度も良好。また行きたい店と思いました。


閑話休題


古いんだけど、こんな文献を読んでみました↓

Direct Synthesis of Organic Azides from Primary Amines with 2-Azido-1,3-dimethylimidazolinium Hexafluorophosphate
Eur. J . Org. Chem., 2011, 458-461.

九州工業大学の北村先生のグループの報告で、Diazo transfer試薬を使って、1級アミンからアジドを合成するっていうお話です。

アジドの合成と言えば、ハロゲン化アルキルとアルカリ金属アジドとの求核置換反応が最も一般的な合成法ですが、tert-アジドを合成しようとすると立体障害のために上手くいかないこともしばしばのようです。加えて、アリールアジドを合成しようとした場合、アルキルアジドと較べて基質一般性が低です(求電子剤にハロゲン化アリールやアリールジアゾニウム塩が用いられるが、前者は強力な電子求引性基がないとSNArは困難で、後者はジアゾニウム塩の安定性によって使える基質が制限される)。

で、他の合成法は何があるの?と言うと、1級アミンに対するジアズトタンスファーがあって、本報のお題はこれです。


この種のトランスフォーメーションは、Cu(II)触媒存在下、TfN3を作用させて行うのが一般的にようです(J. Org. Chem.197237, 3567-3569.; Tetrahedron Lett.199637, 6029-6032.; J. Am. Chem. Soc.200224, 10773-10778.; Org. Lett.20035, 2571-2572.; Tetrahedron Lett.200647, 2383-2385.)。
TfN3を用いる反応はマイルドな条件で反応が進行し収率も良いようですが、TfN3に爆発性があるのが問題です。最近ではimidazole-1-sulfonyl azideの塩酸塩が安定でTfN3と同等の反応性を示す試薬として報告されています(Org. Lett., 2007, 9, 3797-3800.; 結晶性で、分解温度である80˚Cより低い温度領域で安定)。

†ところで、「気ままに有機化学」さんの記事によると、imidazole-1-sulfonyl azideの塩酸塩は吸湿性で、衝撃にセンシティブだとか。一方、硫酸塩やテトラフルオロホウ酸塩は、塩酸塩と反応性は同等で、保存の安定性が向上し、衝撃に対するセンシティビィティも低下するそうです(http://chemistry4410.seesaa.net/article/254457550.html)。

ここでちょっと、著者等の以前の報告を紹介↓
Synthesis, 2009, 2943-2944.

著者等は2-azido-1,3-dimethylimidazolinium chloride (ADMC)がRegitz Diazo Transferに有効だという報告をしました。ただ、ADMCはその吸湿性故に単離することが出来なかったと言います。

で、This Workは、ADMCの物性(吸湿性)を改善しつつ、1級アミンに対するジアゾトランスファーに対して有効な試薬を開発するというものです。そして、著者等が新たに開発した試薬が、2-azido-1,3-dimethylimidazolinium hexafluorophosphate (ADMP)です。

ADMPは安定な結晶性の固体として単離され、-10˚Cで少なくとも2ヶ月は保存可能です。安全性に関しては、落槌感度試験と摩擦感度試験で共に陰性、熱分解温度はca. 200˚Cと、ADMPはかなり安全かつ安定な化合物であることが確認されています(でも、アジドなんで取扱いには十分注意な)。ちなみに、TCIで売ってます(13,400 JPY / 5 g, http://www.tcichemicals.com/ja/jp/support-download/tcimail/application/152-27.html)。

さて、1級アミンに対するDiazo Transfer反応はというと、

21 examples, up to 99% Yield

無置換または電子供与性基を有するアニリンは室温でスムースに反応が進行します。モノハロゲン置換アニリンも50˚Cに加熱して反応させれば高収率で対応するアジドが得られます。特筆すべきは、強い電子吸引性基(-CN, -NO2)を持つ求核性の低いアニリンを基質に用いた場合でも、加熱(50˚C)して過剰(2 eq.)の試薬(ADMP)を作用させれば反応が進行することです(それぞれ61%, 63%)。さらに、o-二置換アニリン(2,6-dimethyl)でも円滑に反応が進行します(ADMP (1.5 eq.), DMAP (1.1 eq.), 50˚C, 3.5 hr)。ただ、2,6-dichloroanilineだと収率はたったの22% (ADMP (2 eq.), DMAP (3 eq.), 50˚C, 4 hr)で、著者らはその低収率の原因を求核性の低さのためとしています。

アルキルアジドの合成も可能ですが、塩基のチョイスによって収率(選択性)が激変するようです。例えば、2-phenylethylamineを基質に用いた場合↓


同様にシクロヘキシルアミンを基質に用いた場合も、DMAP (31%)よりもEt3N (85%)が有効な塩基になります。
α-メチルベンジルアミン、トリチルアミン、1-アダマンチルアミンといた嵩高いアミンを基質の場合、DMAPを塩基に用いることで高収率で対応するアジドを合成できます(それぞれ73%、99%、71%)。
まとめると、このジアゾトランスファー反応では、基本DMAPが有効な塩基だけど、より求核性の強い1級アミンを基質に用いる場合はより求核性の高い塩基が良いということです。
あと、塩基は、(1) 「反応で生成する酸の中和」と、(2) 「ADMPの活性」の二つの役割を果たします。
以上、これらのことから導きだされる推定反応機構はこちら↓


塩基が1級アミン(基質)よりも求核性が高い場合、塩基はまずADMPと反応して中間体 Iを形成し、これが1級アミン(基質)と反応して中間体 IIを与え、分子内でのプロトン引き抜きによって目的のアジドを生成します。
他方、1級アミン(基質)が塩基よりも求核性が高い場合、求核性が高い場合はADMPのabを攻撃し、目的のアジドとグアニジンを与えます。

そ最後にADMPの他のジアゾトランスファー試薬に対する優位性をメモしてフィニッシュしましょう↓

ADMP、結晶性の固体で、従来の同種の試薬と比較して安全性と安定性に富み、取扱いが容易。活性は高く、反応の進行にCu(II)触媒も必要なく、副生するのはDMIはaqueous workupで除去が容易。ボク的に興味深いです。 TCIのWeb Site (http://www.tcichemicals.com/ja/jp/support-download/tcimail/application/152-27.html)を見ると、Regitz Diazo Transferにも普通に有効みたいだし(Synthesis, 2011, 1037-1044.)。機会があったら使ってみたい試薬と思いました。
以上、二流大出のテクニシャン (研究補助員)のDiazo Transferメモでした。


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