前回のブログでは、有機リチウムを使った反応におけるパラメーター
1) 反応溶媒
2) 反応の方法(試薬を加える順番、反応温度とか)
3) 試薬
4) 基質と求電子剤との相性
のうち、反応溶媒と反応の方法についてメモりました。
で、今回は残りのメモです↓
The Reagents
まず、添加物(additive)についてですが、Lewis basic solventもadditiveとして作用しますが、本章では主にリチウム塩について言及しています。
LiBrは、MeLiのether溶液製造の際、自然発火性を低減させる効果があるようです。それから、有機リチウムとカルボン酸のリチウム塩から生成する付加体はケトンの合成に有用とのことです。
例えば上記schemeにおいて、1 eq.のLiBrを加えた後に4 eq.のsec-BuLiを作用させると収率87%。一方、LiBrを使用しないと、トリアニオン(中間体)を溶解させるために6 eq.のsec-BuLiを使っても収率はたったの55%。
ref. J. Am Chem. Soc. 2002, 124, 8514.
あと、
ROLi / Yield of homoenolate (%)
EtOLi / 65
n-PrOLi / 74-82
BnOLi / 70-82
Li(CH2)2OLi / 31
LiO(CH2)3OLi / 44
Me2N(CH2)2OLi / 38
TMEDA / 28%
ref. U.S. Pat. 5,977,371 (1999); J. Am. Chem. Soc., 1996, 118, 11970.
出発物質のエノレートが会合体を形成していて、リチウムアルコキシドがその会合状態を崩すのに役立っているってころなのかな?
次、トランスメタル化です。
この反応なんですが、
1) n-BuLi (1.2 eq.), -40℃
2) p-methylthiobenzonitrile in THF, -40℃ to reflux
っていう条件で、48-56% yield。
1) n-BuLi (1.0 eq.), -40℃
2) KOtBu (1.0 eq.)
3) p-methylthiobenzonitrile in THF, -40℃ to rt.
だと80-85% yield。
Kカチオンがカルバニオン中心の反応性をUP↑させます。
ref. Tetrahedron Lett. 1994, 35, 273.; Chem. Br. 1993, 1037.
あともう一つ↓
ref. J. Org. Chem., 2002, 124, 8514.
ZnCl2とトランスメタル化させて根岸カップリング。
最後、Base Reagentです。
ref. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 8514.
lithium amikdozincate (tetramethylpiperidine, t-BuLi, zinc halideから調製)を使うと、反応温度0℃でもベンザインが形成することなしに目的物がGETできます。
base / yield / anti:syn
LHMDS / 80% / 15:1
NaHMDS / 45% / 1:2
KHMDS / 20% / 1:1
ref. J. Org. Chem. 2001, 66, 2343.
塩基のメタルの種類によってこんなに違います。
Z=OMe, SMe, NMe2, Cl
ref. J. Org. Chem. 2002, 67, 234; PharmaChem 2002 1, 5.
regioselectivityが変わります。
ref. J. Org. Chem. 1994, 59, 6391.; U.S. Pat. 5,310,928 (1994)
最初のトリチル化で、ろ過して四級塩を取り除くんだけど、ろ液には未反応のPh3CClが混入する。ところで、次のステップのlithiation-boronylationでは、ベスト•プラクティスはn-BuLiの使用量を1 eq.とすること。過剰にn-BuLiを使うと、
という副反応により新たなelectrophileが生成し、o-位に-B(OiPr)Bu基が入ったものができてしまう(Heterocycl. Chem. 1995, 32, 355.)。
また、Ph3CClはb-BuLiと反応する。なので、1stステップの反応終わったら、系内に残っているPh3CClをn-BuLiでピッタリつぶして、そこから1 eq.のn-BuLiを作用させるという工夫が必要になります。ちなみに、終点ではトリチルアニオンのピンク色がでるそうです。
Substrate-Electrophile Compatibility
ref. U.S. Pat. 4,935,530 (1990)
リチウムアミドでアルデヒドを保護する例。
ref. U.S. Pat. 4,897,493 (1989)
下段のスキームで、4 eq.目のLDAはトリアニオンの可溶性の会合体の形成に関与していると思われるとか。ちなみに96% crude yield。
ざっと論文のメモをしてみました。リチオ化って、教科書にも沢山書いてあって、有機合成上もっとも汎用性の高い反応の一つだけど、それゆえ作業が無意識にルーチンになりがちな気がする。有機金属試薬ってその会合状態が反応性に与えるインパクトが大きいのだけれど、構造式描くときは簡略化して描いてしまうので、ついそういったことを忘れてしまう。そういった注意点を改めて再認識させてくれる論文でしたね。あとプロセス化学者として興味深かった。
レビューって概観できるのがいいよね(そのまんまだけど)。
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