とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Sunday, October 31, 2010

Japan as No. 5

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」を読了しました。

はっきり言って、周囲の注意を惹きつけるセンセーショナルなタイトルです。そして、どうやら、我が国の2005年の農業の国内生産額は826億ドルで、中国、アメリカ、インド、ブラジルについで世界第5位らしいです。先進国の中でアメリカに次ぐ農業大国というイメージのあるフランス(549億ドルで6位)を大きく引き離していて驚きです。農業GDPで比較しても世界第5位といいます。

ただ、金額ベースなので、No. 5という地位を素直に鵜呑みにすることはできませんね。だって、我が国の農産物の輸出水準は極めて低く、国内には購買力のあるそこそこ潤沢な市場があるんですから。ついでに、品目によっては高い関税障壁があったり、それに関連した国家貿易などのシステムにより、輸入原材料のコスト高に起因するファイナル製品の高価格化を考慮すべきなんじゃないかなと思います。

なので、ちょっと胡散臭い気持ちにもなりますが、本書に記述されている情報は価値の高いものが多いとは思いました(真実なら)。

例えば、

a) 小麦の国家貿易
小麦の関税は250%。国は国家貿易により無関税で小麦を輸入し、それを安く流通させることでウハウハしているらしいです。
30,000 JPY/1tの小麦を買う場合、250%の関税価格では、105,000 JPY。一方、国家貿易品は1t当たり17,000 JPYのマージンを抜くので47,000 JPYと言います。きてるね

b) 輸入バターでウハウハ
輸入バターは1次税率は35%(600 tまで)で、2次税率は(29.9%+179 JPY)/1 kgだそうで、1次関税対象量は、国際航空会社や国際物産展にあらかじめ割り当てられているそうです。普通に輸入しようと思ったら、二次税率を払った挙句、農畜産業振興機構にバターを買い入れてもらい、農水大臣が定めた806 JPY/kgの輸入差益を上乗せされた価格で買い戻さなければならないそうです。
国際価格500 JPYのバターを1 kg輸入したとすると、

500 + 149 + 179 + 806 = 1,634 JPY

で、これに流通・小売のマージンを載せると小売価格は2,000 JPYを超えるといいます。
(だから、糞マズイマーガリンを食わなきゃいけないわけ?)
究極の錬金術だね

c) 差益関税
基準輸入価格 (546 JPY/kg)を決め、安い輸入豚肉は基準価格との差額を関税として徴収される。基準価格より高い豚肉には4.3%の関税がかけられる。
で、外国産豚肉で最も需要があるのは、モモや肩肉などの低価格部位(加工用)。トンカツやヒレカツ用の高級部位は国産が用いられているらしいです。で、結果、加工業者は安い部位に加えて(必要のない)高い部位を合わせて輸入して帳尻を合わせようとするらしいです。結果、本来必要のない高い部位の輸入品を売りさばくのは困難でダンピング販売されるそうです。ちなみに加工された豚肉製品の関税は10%。
さらに、海外の業者は安い肉がメイン商品だから、彼らは基準価格内でできるだけ高い値づけをするそうです。なんて外国の業者に優しい利他的な制度なんでしょう

c) ニュージーランドの奇跡
ニュージーランドの農産業は補助金廃止&関税低減することにより発展したらしいです。補助金が廃止された1985年から現在までに、農業生産額は160%伸長し、農業のGDP比率は14%→16%に向上し、輸出は4倍になったそうです。っていうか、計画経済は破綻し、保護主義は産業の競争力を奪うという事実と、戦略論を公教育の場で学習させた方がいいですね

d) 補助金なんていらない
日本で補助金に頼らず経営している農家は多数派だといいます。農業8兆円産業のうち、自立志向の農家が5兆円以上を産出しているんだそうです。で、野菜、花、果物農家が潤っているらしいです。一方、大規模な米、畑作農家は補助金のおかげで何とか黒字になっているのが現状とか。でも、米作農家を守るために、減反させて、補助金だして、778%の関税かける意味ってあるのかなと思いますね(っていうか、需要が無いものを無理に作らせる意味が見出せない)。本来つぶれるべきものがゾンビのように存続して、世の為になったためしってありますか?さくさく、TPPに参加しちゃって下さい。


とまあ、農業素人のボクには参考になる情報がけっこうあってためになりました。ただ、話の論理の展開とデータの見せ方はかなりイマイチと思いましたね。論理展開に微妙に整合性が感じられないんだよね。

あと、著者は(我が国でしか議論の遡上にのぼらない)食料自給率を算出する計算式の齟齬を指摘してるけど、ボクはその言葉自体に力を見いだせないな。そういう(飽食を前提にした)指標を提示するくらいだったら、適正カロリー補完率にしたほうがいんじゃない?っ思います。っていうか、そもそも経済的に豊かな国では、食の多様性や選択肢が広がるから輸入が増える。特に我が国では、政府の戦略論を完全に無視した保護政策によって輸出が抑制されているようだから、農水省の定義する自給率は低下するに決まってる。鎖国して輸入ゼロにすればオートマティカリーに食料自給率は100%になりますよ。そのかわり、スコッチもシャンパンもボルドーのフルボディーの赤ワインもボク達の口に入ることはなくなるでしょうが。

「食糧自給率なんて妄言」そんな気持ちでいっぱいの二流大出のなんちゃって研究員の戯言でした。


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